HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

WOMB ADVENTURE’08 @ MAKUHARI MESSE, CHIBA

DATE : 20 December, 2008 (Sat)
【WOMB WORLD WIDE Area “CONTAKT”】
LINE UP : Richie Hawtin, Magda, Troy Pierce, Marc Houle, Heartthrob, Gaiser, Fabrizio Maurizi
VJ : Ali.M.Demirel
【BLACK DISCO Area】
LINE UP : Hadouken!, Shitdisco, Gildas & Masaya (Kitsune), Shinichi Osawa, Dexpistols, Masatoshi Uemura (Bonjour Records)
LED & LASER : The Blue-Rays × UNU
ENTRANCE GRAPHIC INSTALLATION : Re:vise _ TOTAL DIRECTION : Numan
PHOTOGRAPHER : STRO!ROBO, Masanori Naruse
TEXT : Midori Hayakawa (HigherFrequency)&Yuki Murai (HigherFrequency)


クリスマスを目前に控えた12月20日、WOMB が遂に挑む大型屋内フェスティバル WOMB ADVENTURE が幕張メッセにて開催された。以前より紙面にて当イベントをプッシュしてきた我らが HigherFrequency チームも、年末のパーティーラッシュの中揃って現地へ駆けつけ、『WOMBが描くフューチャー』というキャッチコピー通りのこの巨大イベントの一部始終をじっくりと堪能することができた。


都内から幕張行きの電車が思いの外遅い時間まであることに若干驚きつつ、筆者が到着したのは Richie Hawtin 率いる Minus クルーの10周年記念スペシャル・ショーケース "CONTAKT" のファイナル・ギグが始まる午前1時。先日当サイトでもインタビューに応じてくれた大沢伸一をはじめとする、キッズ層を中心に支持を集めるエレクトロ系ラインナップを揃えたもうひとつのステージ "BLACK DISCO Area" の動向が少々気にかかりつつも、わらわらとした人ごみを焦り気味にかき分け、稀代のショーのオープニングを見守るべく、WOMB WORLD WIDE Area "CONTAKT" の最前列近くに陣取った。

真っ黒のカーテンが引かれた前に、大人数でのライブに対応した横長の特設DJブースが運びこまれ、これだけの規模のフェスティバルでは珍しいほどのコアな雰囲気溢れるクラウド達からの、期待の高まりと緊張感が肌から伝わってくる。 やがて、待ち構えた耳に厳かなストリングスの音が鳴り響いた。ところどころから沸きあがる歓声、巨大なLEDスクリーンにちらちらと追いかけっこをするように映る、小さく丸い光。ブレのない演出にじわじわと鳥肌が立つ。

続いて、"APPROACH", "IDENTIFY", "CONTAKT"(接近、認証、接触)そして、"WELCOME TO CONTAKT"
『CONTAKTへようこそ』 とバイリンガルで文字が流れると、いよいよクラウドからの歓喜の声が一斉にアリーナを震わせた。


それまで正直「いわゆるビッグ・フェス向けのセットだろうな」と斜に構えた気持ちがどこかしらにあったことは否定できないのだが、その瞬間、そういった気持ちは全てどこかへ吹き飛んで、Minus クルーが提示したひたすらにスタイリッシュな格好良さ、アリーナ・クラスに相応しい格好良さを目の当たりにして感情の目盛りが一気に振り切れてしまい、たった今始まったばかりというのに既に泣きそうになってしまった。

音の展開も「フェスティバル」という概念に甘えることがなく、クラブでのセットをそのまま理想的に拡大したようなディープなスタートで、筆者の周囲の人々も実に気持ちよさそうに踊っているのが印象的だった。大きい会場になるほど少々踊りにくくなるものだが、少なくとも筆者が居たフロアのほぼ中心付近では存分に踊れ、目をつぶって音に集中していても平気な程で、意外な快適さにあっという間に時間が過ぎていく。

全体に漂うテッキーで抑えた硬質な雰囲気を、Magda がウォームでダーク、でもちょっぴりファンキーな彼女のテイストでやわらかく底上げしていく様や、Marc Houle の個性的なパーカッションの組み立て、計算された構造美のテクノでしっかりと踊らせる Troy Pierce の手腕、Magda の肝いりで Minus に加入した経緯を持つという Heartthrob の、どこかにロック・テイストを感じさせるユニークなグルーヴ、それらを一括してクールなスタイルで地ならししていく Gaiser…。

加えて、Run Stop Restore や Louderbach など、チーム内ユニットでのセットも披露され、パーティー全体の流れを守りながらもしっかり色を出す Minus アーティストのポテンシャルの高さや、Minus の音をこれだけ堪能しきれる贅沢さにいい意味ですっかり参ってしまったが、やはり何より特筆すべきなのは Richie Hawtin のゆるぎないカリスマ性であろう。これだけの個性派揃いの「クレイジーな家族(Magda インタビューより)」の中にあって、Richie に交代した瞬間すぐに分かってしまう力強いグルーヴ感、アリーナ・クラスのフロアをぐいぐいと引っ張っていく力量には改めて感動を覚えた。

一方 BLACK DISCO Area の方は、WOMB WORLD WIDE Area より天井が低く、横に長いLEDライトスクリーンが設けられ、ものすごい活気が凝縮された空間が出来上がっていた。Osawa Shinichi を筆頭にまるで盛り上がるオーディエンスを操っているかのような選曲、プレイテクニックはまさに圧巻。原色のライトや激しく交差するレーザーも伴ってテンションは常に最高値に至っていた。


個人的にとても楽しみにしていた Ali. M. Demirel のビジュアルライブは、日本ではこれまで見たことがないほどの巨大なLEDスクリーンの上に、彼特有の緻密に計算されたミニマルな映像、まるで生き物のようにうごめき瞬きをする暇もないほど目の前に広がる彼の世界に引き込まれ、持っていかれっぱなしだった。すごい!の一言。無機質でモノクロなイメージの音に、あえてカラフルで大胆な映像を融合させていたのに驚かせられたり、日本に対する、私達に対する彼等からのメッセージを文字という映像でこれ程までにというくらい直球に打ち出してきたのには、オーディエンスみんなを自然と笑顔にさせ、その空間はまさに気持ちが一体となった素晴らしい瞬間だった。またこのプロジェクト "CONTAKT=繋がる" の本当の意味を現実に、この場にもたらし、そこにいた何千人という人達と、言葉では言い表せないこの瞬間を共有できたことに感銘を受けたし、さらにそこから始まる何かをしっかりと心に感じることができた。

ショーケースの最後、白地に赤の日の丸から、Richie が満開の桜をバックに自身のアンセム・チューン 'Spastik' をドロップし、フロア全体が湧き上がった瞬間は、まさにクラブ・ミュージック・ファン冥利につきる、’08年最高の出来事であった。

スクリーンに繰り返し流れた「Minus は、日本が大好きです!」というコメントに、「俺も Minus が大好きだよ!」と筆者の近くにいた誰かが叫んでいた。筆者ももちろん、おそらくあの現場で、多くの人がそう感じていたのではないだろうか? ともすれば陳腐になってしまいそうな言葉を、臆せずにまっすぐ伝えることで気持ちを表現する大切さ…そんな照れくさいことまでも最高に格好良い形で伝えてくれた、Minus クルーの今後の展開から目が離せそうにない。

良い意味でのクラブ・ミュージックの固定観念を打ち砕く、まさに革命的な最高のエンタテイメント・ショーを魅せてくれた WOMB ADVENTURE だった。

 



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