昨日の Ultra Festival の後、ホテルに帰って睡眠を取るはずだったものの、ホテル近くのカフェ＆バー Cafeteria で Desyn Masiello、Demi、Omid 16Bによる S.O.S. が行われていることを知り、「ちょっとだけ…」のつもりがついつい長居してしまった筆者。そして翌日、ぐっすり眠り込んでしまった一行は昼の１時過ぎにあわてて起床し、タクシーに乗り込んで Pawnshop 101: Sunday School for Degenerates に向かう。タクシー内では、寝坊したことで自己嫌悪に陥っていた筆者だが、この遅刻のおかげでマイアミ・マジックとも呼ぶべきギグを目撃できることになるとは、その時は予想だにしていなかった。

観光ムード漂うマイアミ・ビーチ市とは一点、昼間でもひんやりとしたダウンダウンならではの雰囲気のエリアにある Pawn Shop に登場すると、ダンス・フロアでは Mathew Jonson が彼の楽曲の作風とは一風変わったアッパーなテック・チューンをプレイしていた。フロアには James Holden がプライベートで遊びに来ているという光景も見られ、「アット・ホームな感じのパーティーなんだなぁ」とつくづく感心しながらフロアを歩き回り、何やら盛り上がっているテラスに向かってみると、そこには信じがたい光景が。まるで特設ブースのように、ぶっきらぼうに青いシートがかけられた DJ ブースで、なんとあの Richie Hawtin と Luciano、Loco Dice というスゴイ３人組がバック・トゥー・バックを繰り広げているではないか！！しかもフロアやブースの裏には Adam Beyer や Steve Bug、Damian Lazarus、Sven Vath …といった錚々たるメンツがお忍びで遊びに来ており、そんなプライベート・パーティー的な雰囲気に慣れない筆者は、ついつい「これが日本だったらギャラは合計でいくら…？」といった考えをめぐらしてしまうのだった。とにかく、マイアミで足を運んだイベントの中でも、エレクトロ〜ミニマル・サウンドにはピッタリの開放感を持つテラスと、ダークなフロアを持つイビザの DC10 を思わせるような造りのこの Pawn Shop でのギグは、昼間から Red Bull を片手に最高のサウンドをエンジョイするという至福の時間を与えてくれた。久々に「音」そのものをエンジョイすることができた筆者は、ライティングも映像もなく、アルコールも入っていないただ起きぬけの体をここまで刺激してくれた彼ら３人のセットに感激しながら、夕方近くまで踊り続けるのであった。

Pawn Shop でのサプライズ・ギグを楽しんだあとは、Nocturnal で行われていた Cocoon Club に向かう。ここでは James Holden と Cocoon のドン Sven Vath がプレイ。屋上の Crobar24 では、コンピレーション・シリーズ "Balance" のリリース・パーティーとして、"Balance 009" を手掛けた Paulo Mojo と、"Balance 008" を手掛けた Desyn Masiello がプレイしていた。そんな Crobar24 では、オープンからプレイしていた Desyn に変わって登場した Paulo Mojo によるファンキーでいかにも「マイアミ」な雰囲気のハウス・ミュージックで盛り上がっていた。ドリンク・カウンターの中に DJ ブースが設置してあるという面白い造りのラウンジでは、Tiefschwarz がゆったりとしてエレクトロ・ハウスをプレイし、吹き抜けのフロアを見下ろすようにブースが設置してあるメイン・フロアでは、James Holden が、グリッチーなセットを展開する。メイン・フロアの DJ がボス Sven に変わると、フロアも次第に混雑を極め始め、激しいテクノ・ビートやダークなサウンドが支配し始める。セットが終了する前にタイムアップしてしまった筆者だが、残っていた友人によると、この日はお忍びで Richie Hawtin や Adam Beyer が訪れ、噂ではブースから追い出されるまでセットを行っていたそう。想像するだけでスゴイ光景だ…。