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Hiroshi Watanabe

Hiroshi Watanabe Column

Text & Photo : Hiroshi Watanabe

Hiroshi Watanabe Interview

こんにちは。何が楽しいのか、また、面白いのか、また苦しいのか。音楽を作る時、写真を撮る時、それぞれの瞬間にどういった事が起こっているのかを追ってみたいと思います。



音楽と写真、あくまでこの二つの行為は、僕にとって互いに良い刺激となり、制作過程において対象的な作業から非常に制作意識のバランスを良く保ってくれて いるのです。

音楽を制作するという時、どうしたって一瞬では作り上げる事は出来ない訳で、最低限ある一定の時間を要しながらまとめ上げて行く訳です。一つ一つの音、 リズム、それらを繋ぎ合わせるパーツやエフェクト、そしてミックスダウン。僕の場合はあまり順番もなく、全ての行程を一人ですることから、想像する瞬間と仕 上げるという行為は殆ど同時に進んで行きます。コラム1でも書いた通り、自分の中で何かが弾けて想像が膨らまないと感じる時などは、非常に不安になったり怖 くなります。(正直に)自分で良いと思える楽曲が出来る度に、「なんて自分は凄いんだ!!!」などと思うクセに、こんな時はとにかく臆病者になっていることが殆ど です。以前は、そんな時でも結構強引に集中して、何とかやってしまう事も多かったのですが、今ではあまりそうはしません。より自然に自然にと、自分が感じれる 状態に、いかに初めから意識を作り上げておくか、という具合になって来ています。何故かというと、恐らく楽曲に込められている感情、もしくは愛情、もしく は想念、もしくは真心などと言ったことが制作において重要なエネルギーとなり、それらを用いて作業が出来ないということへ不安になり、軽い感じで作ることが出来 なくなってきているからだと思うのです。

恐らく、そういう年齢になっているんだと思います。僕は今年で34歳、「まだまだ」とか「若いから」とはそろそろ言えない頃となり、解斗も来年小学生だという中で真剣になっているからだと感じます。

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そんな中、僕は常日頃写真を撮っている訳ですが、写真に何がそんなに魅了されているのか言うと、音楽の制作行程とは違い、撮るという行為そのものは一瞬、 一瞬、この一瞬に掛かっていて、それらの感じた一瞬一瞬を後に自分の感性で選んで行くという非常に単純で明快、シンプルな行為にあると思うからです。(撮影手法、技術は実に奥深いです)撮るという行為の他に、もちろん作品となれば時間を掛けて選び、プリントしたり、製本にしたりと音楽と似た行程はあるので すが、「とにかくシャッターを切る!」という一瞬に快感があるような感じがします。ファインダーを覗いていても、覗いていなくても、「今だ!」と思った瞬間に自 分の指先が精密にシンクロし、時間を切り取った瞬間。これをし続けることが何とも爽快で楽しい。もちろんツールという観点から見ても非常に心をくすぐられ る。カメラという機械、音楽を作る機材、どちらもほんとに魅力的でいつでも触れていたいもの。僕に一つ欠けている部分があるとすれば、イチローが常に 言っている「道具を大事に大切にすること」かも知れない、、、僕は大事に使っている。だけど使って使って汚くなっていく様も快感だったりする。(笑)も ちろん余程酷い扱いはしないから、僕の使っているものがみんなボロボロではないけど。でもなんだかそれだけ使う様が愛くるしくなってくるんですよね。(笑) イチローみたいに常に使い終わったら奇麗に磨かないといけないかなぁ…。僕の大事なカメラ、レンズたちは磨かれるのを待っているのかも知れないな。(笑) このコラムを書き終えたら、良い機会なので奇麗に掃除してみよう。ちなみに僕の車も同じで、使っているということ自体がどうも愛着の証みたいに思っている僕 は、どうしても気が付くと車内、車外ともに大変なことになってしまっている。子供達も容赦なく汚すので車はなかなか大変。でも掃除すると気持ち良い。頑張 ろう。

あれ、気が付いたら話がかなり脱線してしまっている、、、、、

イチローを何処かで意識しているせいかも知れない(苦笑)

とにかく、写真は撮った後コンピュータの画面を眺め、最高なショットを見ることが出来ると何とも言えない至福の瞬間が訪れ、心が満たされる思いがあり、そ の気持ちは決して自分だけのものにはしたくはなく、当然、被写体のモデルと共有したいと思う。「素敵な瞬間をどうぞ見て下さい!」といつまでも大切に、心にそ の時を納めて欲しくなるのです。要するに、シャッターを切って楽しむ時間と、同時に相手に心から喜んでもらいたいと思う想いとが融合して、感情が倍増して いるんだと思います。もちろん、被写体が人物でない時には、自分自身の感性を磨こうという思いが強いかも知れません。僕の大好きな写真家に、"ハービー山口 さん"という方がいます。本当に素敵な写真ばかり撮られていて、自身の人生、思いを綴ったエッセイを何冊も出しています。お会いしたことはまだありません が、彼が言うのは、「写真を撮る自分自身のテーマが見つかった時が写真家になった時!」だと言います。これはほんとに大事なことだと思うのです。「何をそこまでし て撮りたいのか、エネルギーを注ぐのか?」というのは、写真を撮る上でかなり重要なポイントです。写真を真剣に取り組んでいる人はみんなこの自分なりのテー マを常に探し、追い求めています。

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ところで、音楽と写真、この二つは楽しみ方が全く違います。音楽は音であり耳で聴き、写真は映像であり目で見て感じる。ダイレクトなのは明かに目で見る方だと思うのです。音は形ではないことから、映像よりはより抽象的な感覚で処理される訳です。好きか嫌いかということだけなら、両者は同じ割り振りが出来るのです が、楽しむ、味わう、感じるということになると、絵として見える写真は音よりもダイレクト過ぎてしまい、時に見過ごしてしまったりどう感じていいか分からな かったりしたりします。今、僕はとても大切なプロジェクト、Tiny Balance DVD の第二弾の制作を終えようとしていますが、絵と音楽というものを同時に完成させようと思うとどれだけ大変かということを実に味わっています。音 楽の横の流れに対して、写真のダイレクトな瞬間である縦の流れ、(その集合で横の流れとなる訳ですが)この二つを同時に感じ、思いを込めながら作り込む。僕にとってはこのプロジェクトは新たなチャレンジでした。でも面白い。想像、創造、とはなんなんでしょうね。限りがなく、どこまでも探究出来るので間違いなく死ぬまで終らないんでしょうね。

もっと究極なことを言えば、これらの二つの行為、だけでなく全ての創作するという想念はまったく違いがなく同じなんだと思います。やはり辿り着くところは 自分がどんな人間で居れているのかどうか、、、、最後はここに答えが来る。より謙虚に謙虚に、誠実に、愛を持って生きたいな。

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2年程前だったか、近所の近くの公園でカメラを持って撮影をしていたら、なんてことのない普通のオジちゃんが自転車で通りかかる時に、僕を見ながら「頑張れよ〜」と非常にナイスな顔をして言い放ってそのまま去って行ってしまったことがある。僕は心から嬉しかった。ありがとう!と大きな声で言い返せば良かっ たと悔やむ。そんな何気ない人への温かさを忘れてはいけないと思う。「ありがとう」頑張るよ。道具も奇麗に磨かなきゃ!(笑)ではまた。

HIROSHI WATANABE プロフィール

1971年東京、作曲家の父、ジャズピアニストの母の間に生まれる。 家の中には常に音楽が溢れている環境で育ち幼い頃より父親の使用するシンセサイザーへと自然に興味を持つ、それが現在の活動に繋がる原点、彼自身の独特な 音世界を創作するスタート地点となるのである。高校卒業後渡米し、ボストンのバークリー音楽学院にてMUSIC SYNTHESIS(シンセサイザー)を専攻。卒業までの刺激的な留学生活の中でテクノ、ハウス・ミュージックと出会いニューヨーク行きを決意する。 99年6月から本格的に日本に拠点を戻して以降は GACKT、松田聖子、パフィー、篠原ともえ、浜崎あゆみ、Sing Like Talking、星野晃代、CANON、PENICILLIN、工藤静香、小松未歩、meg、曽我部恵一、JAFROSAX、等々数々の日本人アーティストのリミックスを手掛け、資生堂、メナード、日新フーズなどのCM音楽制作、いしだ壱成主演のTVドラマ「ピーチな関係」への楽曲提供、また2001年、 2002年の秋に開催された新鋭のファッションデザイナー FRANCK JOSSEAUME 『HEART ATTACK』 Spring/Summer Collection 用楽曲を製作、2002年夏には現在日本を代表する舞踏家”HIRO TATEGATA”とのコラボレーション「TRYOUT2002夏/汚れなき痴人」で TATEGATA 氏のダンスに自身の持つ様々な音楽手法を取り入れたサウンドトラックを制作手掛けるなど多方面で活動している。

最近ではグラフィックデザイナーの北原剛彦氏とプロダクション「norm」を立ち上げ、2人のコラボレーションによる新名義“TREAD”で2001年の夏より現在に至るまでに4枚のアルバムをリリースする。同年の夏にはドイツ、ケルンにあるレーベル”KOMPAKT”より新たに KAITO という名義で 『BEAUTIFUL DAY』 『EVERLASTING』 『AWAKENING』 を立続けに発表し、02年秋にアルバム 『SPECIAL LIFE』 03年冬に 『SPECIAL LOVE』 をリリース。02年 からはヨーロッパにも活動の場を本格的に広げ、バルセロナ”SONAR Music Fesfival” ドイツのケルン”POPKOM”、ベルリン、スイス”VISION FESTIVAL”などでDJ、ライブを行う。また同02年より本格的に写真家としても活動を始め、渋谷”seco bar”青山”loop”といったクラブ・スペースや青山"eel's bed ギャラリー"にてより本格的な個展 『TINY BALANCE』 を開催、04年3月には青山"Sign"ギャラリーにて個展 『HEART to HEART』 を開催。更には音楽のフィールドを舞台音楽への世界へと広げ、03年末に岸谷五朗氏プロデュースよる森雪之丞氏のポエトリーリーディング 『POEMIX』 にオリジナル楽曲制作、04年春には辺見えみり主演、鴻上尚史氏の新作舞台『ハルシオン・デイズ』の楽曲制作などを手がけている。



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