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Hiroshi Watanabe

Hiroshi Watanabe Column

Text & Photo : Hiroshi Watanabe

Hiroshi Watanabe Interview

こんにちは。ワタナベヒロシです。 この場をお借りして普段気になる事、感じる何かをそのまま書いていこうと思います。どうぞ宜しくお願い致します!



さて、今回は、作るという作業の真意に少しだけ迫ってみたいと思う。

僕はご存知の通り音楽を普段作っている訳ですが、ふと何故作っているのかと思う時がある。 どのジャンルであろうと恐らくは同じ問いが出来ると思うし、何かをやり始めたときというのはもちろん何も考える余地もない程に、これしかない!というパワーとエネルギーに満ち溢れ、とにかく作り続ける訳だが、しばらくすると一通りの事をまずはやり尽くしてしまう時が来る。その時一瞬迷ったり、あるいは、人によってはその時点に来たところで終わりとなったり、先が見えなくなるということもあるだろう。しかし、その境界線を上手く超え、自分自身の本当の姿や求めている実態が掴めてくると、その後は次第にオリジナルの世界に取り憑かれていくことになる。何が自分のやりたい事か?と…。真のオリジナリティとは恐らく、全くその他のものには目もくれず、ただひたすらに自身の内面との対話をしてくのだと思う。ただ、これは時として孤独であり、苦痛でもある。それでいて、快感でもあり、達成感を感じるその瞬間というものが訪れる時、とてつもない爽快感、優越感、快感を感じる。きっとこれにはある種の中毒性というものもあるのだろうと感じることさえあるくらいだ。

僕の場合に限って言えば、毎回、何かを作り上げる時、その時、その時、ある種の恐怖心を覚えることがある。要するに毎度自分を試している感覚か、もしくは再度自分の納得できる最高なものを作り上げることが無事に出来るのか?という不安とでも言うべきだろうか。DJであれ、ライブであれ、同じことを感じるのだけれど、とにかくこの不安感や緊張感というものが常にあるのは確かだ。しかし、この感覚がないというのは、僕には恐らく逆の意味でより重大な問題となる気がしてならない。何かを全力でする行為の前に必ず感じるこの緊迫感こそがきっと、自分の精神を震わせ、感じるレベルをマックス状態に引き上げる僕にとっての麻薬みたいなものなのだろう。今までごく身近な人にはこんな話をしていたけど、こうやって書く事は恐らく初めてかもしれない。果たしていつまで自分はこの行為を必要とし、し続けるのかは自分にも分からないし、誰かが知ることではない。だから人の一生は面白いのだと思う。

僕は、いくつかの名義を分けて(KAITO,TREAD,32PROJECT,HIROSHI WATANABE,QUADRA, NITE SYSTEM)作品をつくり上げてはいるが、基本的なこのバイブレーショは何も変わらず、というよりも全く同じであり、感じようとするポイントを微妙にズラしているのだと思う。これはいつも不思議に思うことだが、完全に作業に入り込めば「時間」という感覚は全くに無になってしまう。自分なんてまだまだ33歳の青ッ子だけど、それでも振り返ればこの同じ行為を既に約20年はやっていることになる。しかも、今現在に至るクラブミュージックを作り始めてから14年が経つ。子供で言えば生まれてからもう中学生だ(でも、まだ中学生という見方もある)。僕なりに時間を費やし、ずっと同じことをしてきているわけだが、知らず知らずのうちに、こういった時間そのものもまた自分の自信へと繋がっているとも言える。でも本当の自信とは、やはり自己満足な部分からではなく、世に送り出した作品が誰かのもとへと渡り、僕が感じたその何かがそれぞれの人の心によって新たに解釈され、そして感じてもらえるという素晴らしい出来事の積み重ねによって生れ出てくるものだと思っている。ただ、全てはこの恐怖心との闘いであり、そのハードルを乗り越え、喜びを得るというプロセス。この繰り返しだ。

Hiroshi Watanabe Interview

僕にとっての音楽活動の本当の意味というものは、恐らくまだまだこれから謎を解いていくのだろうと思っている。でも、少しずつは以前より明確になって来ている。この答えというものは一生を掛けて感じるのかも知れないし、何処かのポイントでより明確になり次のステップへと移行するのかもしれない。どちらになるのか分からないけど、でもこの先に起こりうる全ての事柄を人生として受け止め、楽しんで行きたいと思っている。家族と共に…。僕は。既に息子、解斗から多大な力をもらっている。この子との出会いが無ければ当然 KAITO というものは存在しなかっただろう。プロジェクト KAITO は何処まで続くのか分からないけど、でも今の自分の存在を沢山の人に知ってもらえる実に大きな意味をもたらしている。自分と家族、子供たちとの出会い、全ては必然的に起こっているはずであり、解斗だけではなく、二男、三男との出会いもまた、これからの人生においてとてつもない意味を持って出会っていることは間違いないはずだ。そう思うと楽しみである。


HIROSHI WATANABE プロフィール

1971年東京、作曲家の父、ジャズピアニストの母の間に生まれる。 家の中には常に音楽が溢れている環境で育ち幼い頃より父親の使用するシンセサイザーへと自然に興味を持つ、それが現在の活動に繋がる原点、彼自身の独特な 音世界を創作するスタート地点となるのである。高校卒業後渡米し、ボストンのバークリー音楽学院にてMUSIC SYNTHESIS(シンセサイザー)を専攻。卒業までの刺激的な留学生活の中でテクノ、ハウス・ミュージックと出会いニューヨーク行きを決意する。 99年6月から本格的に日本に拠点を戻して以降は GACKT、松田聖子、パフィー、篠原ともえ、浜崎あゆみ、Sing Like Talking、星野晃代、CANON、PENICILLIN、工藤静香、小松未歩、meg、曽我部恵一、JAFROSAX、等々数々の日本人アーティストのリミックスを手掛け、資生堂、メナード、日新フーズなどのCM音楽制作、いしだ壱成主演のTVドラマ「ピーチな関係」への楽曲提供、また2001年、 2002年の秋に開催された新鋭のファッションデザイナー FRANCK JOSSEAUME 『HEART ATTACK』 Spring/Summer Collection 用楽曲を製作、2002年夏には現在日本を代表する舞踏家”HIRO TATEGATA”とのコラボレーション「TRYOUT2002夏/汚れなき痴人」で TATEGATA 氏のダンスに自身の持つ様々な音楽手法を取り入れたサウンドトラックを制作手掛けるなど多方面で活動している。

最近ではグラフィックデザイナーの北原剛彦氏とプロダクション「norm」を立ち上げ、2人のコラボレーションによる新名義“TREAD”で2001年の夏より現在に至るまでに4枚のアルバムをリリースする。同年の夏にはドイツ、ケルンにあるレーベル”KOMPAKT”より新たに KAITO という名義で 『BEAUTIFUL DAY』 『EVERLASTING』 『AWAKENING』 を立続けに発表し、02年秋にアルバム 『SPECIAL LIFE』 03年冬に 『SPECIAL LOVE』 をリリース。02年 からはヨーロッパにも活動の場を本格的に広げ、バルセロナ”SONAR Music Fesfival” ドイツのケルン”POPKOM”、ベルリン、スイス”VISION FESTIVAL”などでDJ、ライブを行う。また同02年より本格的に写真家としても活動を始め、渋谷”seco bar”青山”loop”といったクラブ・スペースや青山"eel's bed ギャラリー"にてより本格的な個展 『TINY BALANCE』 を開催、04年3月には青山"Sign"ギャラリーにて個展 『HEART to HEART』 を開催。更には音楽のフィールドを舞台音楽への世界へと広げ、03年末に岸谷五朗氏プロデュースよる森雪之丞氏のポエトリーリーディング 『POEMIX』 にオリジナル楽曲制作、04年春には辺見えみり主演、鴻上尚史氏の新作舞台『ハルシオン・デイズ』の楽曲制作などを手がけている。


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