HigterFrequency パーティーレポート

Exit Festival 2004

FUJI ROCK FESTIVAL 09

FUJI ROCK FESTIVAL 09 REPORT

DATE : 24-26 July 2009 @ NAEBA / DAY 01
PHOTOGRAPHER : Masanori Naruse, Yasuyuki Kasagi, 宇宙大使☆スター

TEXT : Motoki Tanaka a.k.a Shame

DAY 01 - 24 July (Fri), 2009
LINEUP : Doves, Lily Allen, Patti Smith, Paul Weller, Oasis, Guitar Wolf, Major Lazer, ハナレグミ, Robert Randolph & The Family Band, The Neville Brothers, Gong, Tortoise, Simian Mobile Disco and more





もはや夏の風物詩と言っても過言ではないほどに音楽ファンに定着した Fuji Rock Festival。待ちかねたこの日がついにやってきた。 綿密な予習の上、Longwave から Basement Jaxx まで満喫すべく木曜の夜に東京出発し、苗場に到着したのは深夜3時。雨の中テントを立てて、期待に胸を躍らせながら就寝した。 目を覚ましたのは午前10時頃。例年茹だるような暑さの中で目が覚ましてきたが、テントを穿つ音から判断するに雨はまだ止んでないらしい。 まどろみに身を任せ、ふと時計に目をやった時には11時半。 既に Longwave の開始時間を回っており、慌てて身支度をして飛び出すも、ゲートに辿り着いた頃微かに聞こえたのが最後の曲だったよう。結局その姿すら見届けることが出来ずに終わり、悪天候に出鼻を挫かれた形となった。

気を取り直すべく付近を散策していると、Green Stage では昨年に続いて出場となったUKの新星、White Lies のライブが開始。 Red Marquee から堂々の Green Stage 昇格となった彼ら、白黒で統一した衣装で見た目はスタイリッシュな好青年といった印象だが、80年代の俗な響きを放つシンセの音や艶っぽさを含んだボーカルは耽美的なニューウェーブの雰囲気を想起させる。 セットを締めくくったニューシングル、Death では合唱も巻き起こり、まだまだ粗削りな部分は感じさせるものの、この一年で大舞台映えするバンドへと成長した様子。準備体操には十分すぎるほど体を動かせてもらった。

EXIT FESTIVAL 09
FUJI ROCK FESTIVAL 09
FUJI ROCK FESTIVAL 09 FUJI ROCK FESTIVAL 09
FUJI ROCK FESTIVAL 09 FUJI ROCK FESTIVAL 09

次なる目当てはフランスの Anthony Gonzalez のソロプロジェクトのM83。Sasha や James Holden といったトップDJからも支持が厚く、ここ日本でも根強い人気を持つエレクトロ・シューゲイザーバンドだが、意外にも今回が初来日。 Red Marquee へ近づくと Kim & Jessie のドリーミーな甘いメロディーが聞こえてくる。吸い寄せられるように中に入ってみると、まずはその音圧に圧巻。 キーボード兼コーラスの女性とドラマーを従えたシンプルな体制ながら、三人の繰り出す全ての音が大きなうねりとなって押し寄せ、フロアを包み込んでいた。持ち味の憂い漂うサウンドで観衆をすっかり陶酔させたかと思えば、後半は力強いビートで攻め立てにかかる。 分厚いベースにスペーシーな轟音が絡み Marquee 内は突如としてクラブのピークタイムと見紛うような熱気に包まれた。 WIRE のようなテクノフェスに出演しても遜色を感じさせないであろう圧倒的なパフォーマンス。終演後、周りの満足げな顔が印象的であった。

続いては二回目の Fuji 出演となる Lily Allen。そのビッグマウスで常にゴシップに事欠かない彼女は、2007年の Red Marquee での初出演時には Green Stage を見て 「何でアタシがあそこじゃないの?」 と言い放ったという。そんな念願(?)適ってか Green での登場となった今回、以前のあどけなさが残る印象とは一転、タイトな黒のワンピースに生足ハイヒールというセクシーな出で立ち。更に目の周りを青く塗りたくったどぎついメイクや妖しいお面を被ったりと、奇抜なファッションでも我々を楽しませてくれる。 序盤は2ndの曲を中心に、様々な音楽の要素を消化したポップソングを繰り出していく。ヒット曲の 'Smile' では後半ドラムンベースに転調させるなど、趣向を凝らしたアレンジで飽きさせず。Britney Spears のカバー 'Woomanizer' ではまるで自分の持ち歌かのように堂々と歌い上げていた。 ハイライトとなったのはタイトルからしてインパクト大の 'F**K You'。 サビでは Lily のアクションに合わせ、モッシュピットと最前列が揃って中指を突き立てるという異様な光景が広がった。うーむ、壮観。 バンドの演奏技術に助けられた面はあるものの、KAOSSILATOR を弄りながら気ままにステージを練り歩く Lily の姿にオーディエンスはすっかり魅了されていたようだった。

FUJI ROCK FESTIVAL 09
FUJI ROCK FESTIVAL 09
FUJI ROCK FESTIVAL 09 FUJI ROCK FESTIVAL 09

オアシスで腹ごしらえを済ませ、Green に腰を下ろしているとニューヨークパンクの女王 Patti Smith が登場。往年のスターらしい貫禄を纏いながらもステージを横断し、にこやかに観衆に手を振る姿は愛らしさすら感じさせる。 序盤は 'Dancing Barefoot' から始まり、ミディアムテンポのナンバーで進行していく。Lenny Kaye を中心としたバンドの演奏力にも定評があるが、やはり Patti の力強い歌声は唯一無二のレベル。大自然の中に埋もれることのない圧倒的な存在感を放っていた。 「この曲を Micheal Jackson に捧げる」 というMCに歓声が沸く中、名残惜しみつつも Green Stage を後にした。

夕闇が差し掛かった Heaven に登場したのはシカゴ音響派の重鎮 Tortois。 ステージ中央に向かい合わせに配置されたツインドラムの物々しさに期待も高まる中、静かにメンバーが入場。中心メンバーの John McEntire の合図で始まったオープニングトラックは 'Prepare Your Coffin'。新作で提示したようなロック色の強い幕開けだが、以降は彼らの多様な独創性を示すかのように幅広い楽曲で展開された。 曲が終わるたびにメンバーがパートを交代するのは、それによって生まれる微妙なニュアンスの違いを表現するためだろうか。 計算しつくされた手法で激しさと繊細さの混在を寸分の狂いもなく表現し、空の表情が変化していく黄昏時の Heaven というこの上ないシチュエーションを幻想的に彩っていた。

FUJI ROCK FESTIVAL 09
FUJI ROCK FESTIVAL 09 FUJI ROCK FESTIVAL 09

White に戻るとちょうど演奏が始まったのが、ペダル・スティール・ギターの名手として名高い Robert Randolph と、その名の通り親族で構成されている Family Band。 見てくれはヒップホップかとも思ってしまうが、出す音はゴスペルの影響が色濃く伺えるブルージーなロックミュージック。 スティールギターをかき鳴らしてはスモーキーなグルーヴを生み出し、時折熱のこもったシャウトを響かせていた。 ライブではトラックリストを全く決めず、ジャムバンドのセッションのように進行していくのが特徴の一つ。中盤では Micheal Jackson の 'Don’t stop till you get enough' のフレーズを織り交ぜるという小粋な演出も見られ、ぐずついた天気の中集まったオーディエンスを沸かせていたようだ。

Green まで戻ると降りしきる雨の中でピアノの音色を響かせていたのはモッズ・アイコンの Paul Weller。 The Jam、Style Council での活動を経てからのソロ転向、今や齢50を超えた今でも張りのある声のトーンは全く衰えを感じさせないし、端正なルックスは一昔前に流行ったチョイ悪親父といったところか。ややお腹の出具合は気になるものの、タバコを吸いながら歌う姿が何ともセクシーだ。 「酷い天気の中聞いてくれてありがとう」 と観客に気を遣いながら、ラストトラックには The JAM 時代の代表曲の一つである 'Town Called Malice'。雨は強さを増す一方だったが、お馴染みのスキャットで飛び跳ねている間は雨のことなどすっかり忘れていた。 これまで音楽に対して実直に取り組んできた彼の職人気質が伺えるステージだったように思う。

FUJI ROCK FESTIVAL 09
FUJI ROCK FESTIVAL 09
FUJI ROCK FESTIVAL 09 FUJI ROCK FESTIVAL 09

この日のトリはもはや説明不要のロックバンド Oasis。3月に単独公演で来日したばかりではあるが、大自然に包まれたこの環境の中では一味も二味も違ってくるに違いない。 弱まる様子が全く見えない雨の中、ライブ入場時のテーマ曲とでもいうべき 'Fuckin’ in the Bush' に合わせて面々が登場すると、Liam はタンバリンを口に咥えてマイクスタンド前に仁王立ち。 彼らしいふてぶてしさを目せつけ、観客のはやる気持ちに応えるように 'Rock’n’Roll Star' で勢いよくスタート。一曲目にして合唱状態になり、畳みかけるように 'Lyla', 'Shock Of The Lightning' とヒット曲を連発。観客のテンションは一気に最高潮へ達した。 合間に Noel のソロコーナーでしっとり聞かせ、リアムが戻ってからは 'Songbird', 'Slide Away', 'Morning Glory' と休む間もなく押しまくる。 クライマックスは数多い代表曲の中でも特に人気の高い 'Wonderwall' に 'Live Forever' またも Noel のソロで屈指の名曲 'Don’t Look Back In Anger' での立て続けの大合唱。 'Champagne Supernova' では Liam がタンバリンを頭に乗せ、おどけた仕草で3万人の大観衆を楽しませていた。 ラストにはこれまた定番の Beatles のカバー 'I Am The Walrus' を披露。労働者階級の英雄たちは堂々たるパフォーマンスで初日の Green Stage を締めくくった。

一日のアクトが全て終了し、これからフジのもう一つの醍醐味である夜の部に突入…と思いきや、降り続いた大雨によるところ天国付近の川の増水ため、Orange Court でのオールナイトフジは中止。 これにはうなだれた様子の人も多く見受けられたが、気を取り直してテントで小休止。 Gang Gang Dance を見届けに再度会場向かうと、Marquee 内はまだまだ踊り足りない人たちで満員状態だった。

三日目に出演する Animal Collective をはじめ、先鋭バンドの台頭でにわかに活気づくブルックリンの音楽シーン。この Gang Gang Dance もまた、個性派が一堂に会す中で一際異彩を放つ存在といえよう。 ドラムとパーカッションが織りなされるトライバルなリズムと、粒子のように飛び交うノイズギター、そして浮遊感溢れるシンセ。覚醒へと導くそのサウンドは気を抜くと涅槃までひとっ飛び。 まるで呪術を思わせるエキゾチックな妖しさに満ちたステージで、戦慄のサイケデリアを見事に描き出していた。 続く Diplo がアッパーなサウンドでフロアを暖め始めたころ、疲れもピークに達しテントへと退却。 長い一日だったが宴はまだまだ始まったばかりだ。

FUJI ROCK FESTIVAL 09
FUJI ROCK FESTIVAL 09
FUJI ROCK FESTIVAL 09