HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

WIRE 07 @ YOKOHAMA ARENA

DATE : 1st September, 2007 (Sat)
DJ : Dave Clarke, Dero, Disco Twins, DJ Koze, Felix Krocher, Fumiya Tanaka, Jesse Rose, Michel De Hey, Renato Cohen, Takkyu Ishino, Toby, Westbam
Live : Joris Voorn, Ken Ishii, Motor, Ryukyudisko, Reinhard Voigt, Robert Gorl, Spirit Catcher
VJ : Devicegirls, Naohiro Ukawa
PHOTOGRAPHER : Main Floor Photos by Tsukasa Miyoshi _ 2nd Room Photos by Takayuki Mishima _ Second Stage by Masanori Naruse
TEXT : Masanori Matsuo (HigherFrequency)


石野卓球が主宰を務める日本最大級の屋内レイヴ・パーティー WIRE が今年も横浜アリーナで開催された。昨
年同様に9月に行われ、数ある夏フェスの中での「閉め」的な存在としてすっかりと定着してきた同パーティーであるが、今年も世界中からこの日のために多くのテクノ・アーティストが集結し、 Westbam、 Dave Clarke などのアップ・リフトなアーティストは ウエスト・ステージで、 Radio Slave、 DJ Koze などのミニマル・ライクなアーティストはイースト・ステージでそのハイ・レベルなパフォーマンスを披露してくれた。合計で約12時間のノンストップ体勢で行われた今回の WIRE も、 コアなクラバーからフェス ティバル好きの音楽ファンまで、例年にも増した老若男女の際立ったクラウド達が非常にピースフルな雰囲気で空間を堪能。会場内に足を踏み入れると、すでに WIRE Tシャツやタオルを身につけた多くの 'WIRE クラウド' を中心とした混雑ぶりで、’99年開催以来の横浜アリーナ入りである筆者にとっては、9年前の記憶がフラッシュ・バックすると同時にメイン・フロアーでの巨大なフロアー、シャワーのように降り注がれるカラー・レーザー、デコレーション等の進化ぶりに強烈なインパクトを与えられることとなった。


そこでプレイしていたのは、オランダが誇るスターDJ、 Michel De Hey。ここ数年ですっかりミニマル/テック・ハウス・スタイルに移行した彼だが、昔のハード・テクノ時代から共通する持ち前の空間的グルーヴと、フェスティバル慣れした落ち着いたミックス・ワークによって、完璧ともいえるウォーム・アップを披露していた。 Michel によるプレイで陶酔感を覚えつつも、 WIRE 初登場であり Get Physical Music などといった旬なレーベルで活躍している Jesse Rose もチェックすべく、セカンド・フロアーへ移動。その空間は、東京のクラブでいう中箱ほどのスペースがあり、スーパーなイベントながらも妙な落ち着きも感じさせるものであった。 Jesse のプレイは、先日リリースされた彼のミックスCD "Body Language 3" とはまた違い、ブレイクで派手な声ネタが出てくるトラックなど、いわゆるファンキー・ハウス的なセットを披露。テック・ハウス系のセットを予想していただけに驚きも隠せなかったが、テクノ・ファンをもロックするそのスキルは確かなものであった。

その後は、 Black Strobe によるライブをチェックするため再びメイン・フロアーへ。エレクトロ・ハウスの重要 DJ としても名高い Ivan Smagghe 脱退後の彼らは、噂どおりゴシック風味全開の完全なるロック・サウンドを披露。1万人規模の巨大なフロアーをロック・コンサートさながらの空気に包み込んだあとは、 WIRE の顔である石野卓球の姿がブースに現れ、相変わらずの人気振りがうかがえる絶え間ない歓声とともに The Chemical Brothers の新曲 'Do It Again'、 Supermayer 'Two Of Us' などのエレクトロ系や、疾走感のあるハードなトラックでぐいぐいと攻め上げていく卓球節全開のセットを繰り広げていた。ラストにはなんと、 DJ Hell による "DJF 750" にも収録されていた80年代のイタロ・ディスコ・クラシック Hypnosis 'Pulstar' をドロップ!それに激しく反応していたのはさすがに年齢層の高いクラウドばかりであったが、投入するミックス・テクニックも含め、この展開には筆者も鳥肌ものの感動を覚えてしまった。そちらと平行して、セカンド・フロアーの DJ Koze → Reinhard Voigt による Kompakt からの刺客によるセットも堪能。得に DJ Koze が放つトリッキーな技術を駆使したミニマル・サウンドは、まさにドイツの今を体験できるようなアンダーグラウンドかつハイ・センスなもので、回りからも「ヤバイ、ヤバイ!」という声が多かったのも印象深い。



そんなミニマルな流れを極めんかのごとく、続いてセカンド・ステージに登場したのが個人的にも注目していた Radio Slave こと Matt Edwards だ。昨年の初来日を体験しそびれていただけに期待も相当なものであったが、そのプレイは想像をはるかに超えるハイ・レベルなもの。ハウス・ベースのリズムにミニマルかつダビーな要素が染み込んだ彼節のトラックをタイトに繋ぎ、下げすぎず上げすぎずの絶妙なグルーヴ感でじわじわとハメていくという、ある意味洗脳に近い心地よさを与えてくれた極上のセットだった。さらに個人的ではあるが、大注目していた Dave Clarke によるプレイもメイン・フロアーで堪能。アフロ手前のようになった新たなヘアー・スタイルに少々度肝を抜かれつつ、 Pioneer の DJM-800 とラップ・トップを駆使したハードでバンギングなピュア・テクノ・サウンドを巨大フロア一杯に解き放ってくれた。彼の醍醐味であるエレクトロ・パンクやゲットー系のトラックはセット時間の短さなのか、あまりプレイされることはなかったが、’90年代からシーンの第1線で走り続ける彼のボス的な貫禄だけでも十分ノックアウトさせられたといえる。

Dave Clarke のあとはラストのシュランツ・ハリケーンにそなえ、フード・エリアに並ぶアジア料理や、友人達との会話を休憩がてらに楽しみつつ、セカンド・フロアーを鮨詰め状態にした Fumiya Tanaka による3デックスのハウス系セット、ハード・テクノとエレクトロ・ハウスを織り交ぜた Intec 節のサウンドを放った Renato Cohen、 得意の空間シンセが深い時間帯の良き回復薬になり、大ヒット・チューン 'Incident' もドロップするなどしてピュア・テクノ・ファンを歓喜の渦に巻き込んだ Joris Voorn などを小刻みに堪能し、シュランツ界からの使者である大トリ、 Felix Krocher を無事に迎えることとなった。 Felix については、筆者も初体験となる BPM 150 以上の超ハード・セットを予想していたが、序盤は、アコーディオン調のネタが印象的な Samim 'Heater' といったミニマル/テック・ハウス系のトラックを連発していくことに。これが意外にも慣れたミックス・ワークで、思わずそのグルーヴへ引き込まれていくと、徐々に音数が増し、岩をも砕くようなスーパー・ハード・テクノの世界へ変貌。皆が期待する真の Felix Krocher セットの始まりだ。その後は Underworld の 'Born Slippy' や、スーパー・マリオのバンギン・バージョンなどを盛り込んだヘビーかつユニークな展開で攻め上げ、他のフェスにはない弾け飛ぶようなフィナーレを満員のクラウドを前に披露してくれたのであった。




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