HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Black Strobe Interview

「随分と新しい戯言だな!」

エレクトロ・ハウスのパイオニアであり、人気沸騰中のフレンチ・デュオ Black Strobe のスポークスマン Ivan Smaghhe は、かつてのジャーナリストとしての要素をまだ忘れてはいないようだ。以前 Bob Sinclar がインタビュー中に「フランスでは、成功して富を手に入れたアーティストは嫉妬され、友達も去ってしまう」と発したコメントを批判し、こう語った。

「彼のように友達が居なくなるほどの金持ちなるにはほど遠いよ。もし疎遠になってしまった友人がいるとすれば、俺が彼らを怒らせるようなことをしたか、ホントの友達じゃなかったってだけさ」

百万長者とまでは行かないとしても、先日発売になったリミックス・アルバム “The Remixes” を聴く限り、彼らが今フランスで最も影響力のあるプロデューサーであることは間違いなさそうだ。今回のアルバムには Depeche Mode の‘Something To Do’を筆頭に、Martin Bros‘The Biggest Fan’、Sweet Lights‘Abusator’、David Caretta‘Moscow Reisen’ のリミックスが収録されており、エレクトロ・ハウス界の重要プロデューサーと呼ぶに相応しい素晴らしい仕上がりとなっている。しかし‘エレクトロ’とカテゴライズされることについて、彼は皮肉まじりに答える。「100%同意は出来ないな。‘エレクトロ’(電子音)ニクスには間違いけどね」

Black Strobe のオフィシャル・サイトによると、彼らはスタジオの壁に理想とするジャンルを殴り書きすることでインスピレーションを得ていたという。「ダークなディスコサウンド、スーパー・ゲイハウス、ソフト・ゴスなど、人々に敬遠されることを恐れないエレクトロニック・ミュージックを作りたんだ」と彼は語る。

Ivan Smagghe と Parisiens Arnaud Rebotini は、’80年代にとあるロック・コンサートの最前列で運命的な出会いを果たす。’90年代に入り、2人はパリのレコード・ショップ Rough Trade で一緒に働いたのち、’96年には当時の退屈なディスコ・ハウスやクラブ・シーンへ一石を投じるべく、ファースト・シングル‘Paris Acid City’をリリース。Justice やドイツのエレクトロ・デュオ Digitalism、そして彼らが所属する Ed Banger や Kitsune といったかつてのアンダーグランド・レーベルが、次々とメインストリームに取り込まれている中、Black Strobe は結成から11年経った今もなお、エッジの効いたニッチな存在であり続けている。それは、決して Black Strobe の音が一般受けしないということではない。スタジオの落書きや Kill The DJ (DJ を殺せ)というイベント名からも想像出来る通り、彼らの持つダークなイメージによって、彼らは 音楽シーンの異端児と呼ばれるようになったのだ。そしてこのイメージは、大ヒットナンバーを生み続けても変わることはないだろう。



以下は対談形式でのインタビューの模様をお伝えする
(Translation by Terumi Tsuji)

Skrufff (Jonty Skrufff) : 2月には待望のファースト・アルバムが発売になりますが、今回のアルバムには何曲くらい新曲が収録されてますか?

Black Strobe : たくさん、というかほとんどが新曲だよ。昔のナンバーには別れを告げたんだ。とりあえず今の所はね。

Skrufff : これまでの成功のおかげで、Black Strobe のイメージがすっかり出来上がってしまったと思うのですが、ファンの期待に応えるようなアルバムを作ろうと思いましたか?それとも意表を突く内容にしたかったですか?

Black Strobe : 正直そのバランスを取るのがすごく難しかったんだ。自分たちが何を表現したいのかは勿論のこと、みんなが求めているような無難なものを作るのか、それともまったく違う方向に行くのかすごく悩んだよ。多分アルバムを聴いてもらえば、自ずと答えが分かって貰えると思うな。どうするのがベストなのかをよく考えた結果出来たのがこのファースト・アルバムなんだ。きっと全体を通して、驚くことの方が多いんじゃないかな。

Skrufff : オリジナル楽曲作りはリミックスよりプレッシャーを感じたりするものですか?

Black Strobe : もちろんすごいプレッシャーを感じるさ。でなきゃファースト・アルバムだってとっくに完成してたはずだよ。

Skrufff : Black Strobe のツアーでライブ・セットを披露する予定はありますか?

Black Strobe : それに関しては Arnaud に尋ねるべきだね。俺はライブはやらない主義なんだ。自分たちの楽曲をステージでプレイするのも大嫌いだし、ミュージシャンとしては失格かもな。DJ という勇気さえあれば何でも表現できるキャリアが長過ぎて、それ以上冒険する気になれないのかもしれない。アーティストがライブ中にする馬鹿げたパフォーマンスは見てる分には楽しいけど、自分がするのはゴメンだね。シャイだから…。

Skrufff : メインストリームのハウス DJ が、揃ってあなたたちのようなスタイルにシフトして来ていることについてどう思われますか?「自分たちと同じようなトラックばかりプレイするようになるのでは?」と心配したことはありませんか?

Black Strobe : う〜ん…、それはないな。ただこの流行のおかげで、最悪なクラブでもマシな音がかかるようになって、喜んでる人も多いはずだよ。ま、俺はそんなクラブには元々足を運ばないし、関係ないけどね。それに人と違ったスタイルでいることが俺たちの目標なんだ。メインストリームが俺たちのスタイルに近づいてきたことで、また新しいサウンドを作る楽しみが増えたってわけさ。

Skrufff : 成功する前とした後では、スーパースター DJ に対する考え方も変わりましたか?また長年にわたって人気を維持するためにはスキルや努力は必要でしょうか?

Black Strobe : スーパースター DJ と呼ばれる DJ の殆どは手を抜いてると思うよ。彼らは重いレコードバックを持たずにすむから、バイナルの代わりに Final Scrach でプレイするんだ。「Abelton を使えばクリエイティブな作品が出来る」とかいう DJ もいるけど、それって「クールなレコードを探すのを止めました」って宣言してるようなものさ。ある超有名なスーパースター DJ が、あらかじめ録音してきた2枚のCDをDJブースでかけだしたときは、まさに「ワォ!こんなのアリかよ!?」って感じだったよ。

Skrufff : Kill The DJ のレーベル・ナイトでレジテント DJ もされてますが、酔っぱらいや強引なクラバーで嫌な目に遭ったことはありますか?

Black Strobe : ここ数年でそういったクラバーから身を守る術を身につけたよ。

Skrufff : DJ 中に話しかけられるのは気にならないですか? Madonna や Fischerspooner といったミーハーなリクエストをされることもあります?

Black Strobe : 最近は随分減って来たかな。ただそこまでコマーシャルなものは少ないけど、3ヵ月前にbeatport で1位になったような、所謂流行の楽曲のリクエストはしょっちゅうさ。

Skrufff : 数年前の Fabric のインタビューで「気分屋というレッテルは、昔レコード・ショップで働いてた時に付けられた」と話してらっしゃいましたが、最近は以前に比べて穏やかになられましたか?今でも怒ることはありますか?

Black Strobe : 丸くなったといえば丸くなったけど、今でもキレそうになる時はあるよ。これは全てシャイで内気な性格の裏返しなんだ。シャイな人間でも大口を叩くこともあるのさ。でも前より感情をコントロール出来るようになったかな。今でも腹を立てることは日常茶飯時だけど。こうやってインタビューで気分屋だって公言しておくことで、話しかけにくい雰囲気を作ってるんだ。

Skrufff : 「毎年20人程の日本人が、フランスのブランド・ショップで酷い接客をされ パリ・シンドローム と呼ばれる鬱症状に悩まされている」と新聞で報道されていますが、それについてはどう思われますか?あなたご自身、日本人客に冷たい接客をしたことはありますか?

Black Strobe: 有り得る話だね。フランス人タクシー・ドライバーなんてホントこの世のものと思えないくらい最悪さ。ただレコード・ショップのスタッフが愛想悪いというのは、世界共通じゃないかな…。

End of the interview




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