HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

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CABARET Celebrate the 5th anniversary of UNIT!! @ UNIT, TOKYO

DATE : 10 July 2009 (Fri)
【UNIT】
GUEST DJ : Daniel Bell (7th cith, Elevate), Cassy (Cocoon, Perion, panoramabar)
【SALOON】
DJ : yone-ko, keisuke kondo, masda, yasu
LIVE : sackrai
PHOTOGRAPHER : ryu kasai
TEXT : Mitoki Nakano


今回の Cabaret は、UNITの5周年のアニバーサリー企画のひとつとして開催され、さらに Red Bull の協賛の元、先着100名に特設バーカウンターで Red Bull を購入した方に Cabaret Crew のトラックを収録した、今回限りの12inch レコードをプレゼントという特別企画も実現された。ゲストDJは、Cabaret おなじみの Daniel Bellと昨年大盛況を収めた Cassy の2人。この話が持ち上がってから、ずっとずっと首を長くして待ち望んでいた Party がついにやってきた。

今回のゲストDJである Daniel Bell は、現代のミニマルテクノ/ハウスを語る上では避けて通れない唯一無二のイノヴェーター/グルーブマスター。デトロイト出身の Daniel は、90年代初期に Richie Hawtin とのプロジェクト cybersonik でシーンに登場。1992年に自身のレーベル Accelerate を立ち上げ、Daniel の有名なクラシック 'Losing Control' もこの頃生まれた。Theo Parrish や Rick Wade とも各々共にレーベル設営・運営に携わっており、2000年に入ってからはベルリンに活動の拠点を移す。現在では Ricardo Villalobos が提唱する不定形即興ライブ・プロジェクト Narod Niki にも参加している。日本においては、去年の Taicoclub での DBX 名義のライブと早朝からラストまでを担当したDJが記憶に新しいのではないだろうか。

さらには、昨年 Party の最後に号泣するオーディエンスもいた程の熱狂ぶりを巻き起こした Cassy。彼女は、カリブ人の父とオーストリア人の母によりイギリスで生まれ、オーストリアで育つ。ウィーン、ロンドンで役者/歌唱者としてのトレーニングを積んだ後、2003年にベルリンに移住。たちまちベルリンアンダーグラウンドシーンで一級の評価を受け、世界中から注目を浴びている Berghain/Panorama Bar のレジデントDJを務めている。

Cabaret Crew の原点であり、頂点でもある Daniel がゲストということで彼らの意気込みも強く感じられた。そして、真のクラブDJと言える Cassy の組み合わせでいかなる化学反応が起きるのか楽しみだ。

オープン少し前に会場のUNITに着くと、もうすでにオープンを待つたくさんのお客さんが列を作って、並んでいる光景に遭遇する。待ちきれないお客さんが輝いた目でオープンを今か今かと待っているのを目にしたら、皆同じ気持ちなんだと素直に嬉しくなり、ダンスフロアに向かうテンションも出来上がってきた。さっそく、リミテッドのレコードを手に入れようとSALOONに直行し、Red Bull で乾杯する。同じように急いでSALOONに訪れる人達が次々に訪れ、安堵の笑みをこぼしていた。

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早速、メインフロアに行ってみると、オープンから Daniel のDJが始まっている。いつもなら、1時を過ぎたあたりから人が入り始めるのに、今日はもうすでにフロアに人が溢れている。やっぱり今日は特別な日なんだなと心躍る。彼のDJを聴いていると、ミニマルとはどういうことかという答えがまさに息づいている。極端なまでにストリップ・ダウンした最小限の音と構成でグルーブを生み出していくという独自のDJスタイル。無駄なものを削ぎ落とし、キックとハットの間にあるファンクネスを最大限に抽出して、爆発させる。マニアックな選曲とどこでどう繋げてるのかわからないぐらいの丁寧なミックス技術で、モダンなミニマルテクノ/ハウスをハウスマナーで繊細に繋げていく。上げないし、下げない。一定のグルーブを延々と刻んでいくように、どこまででも行けそうな延々と終わらないグルーブ。淡々としているように思えて、気づいたら完全にハマっていた。そして彼の音の渦に取り込まれて、抜け出せなくなる。そんなプレイ。単純に上げて、下げてを繰り返すのではなく、欲しい所に欲しいだけトランシーな部分を持ってきて、後は途切れる事無く続く、いぶし銀のような渋いグルーブ。

途中、今回の限定レコードの Masdaの 'in need in deed' を使う場面も見られ、親交の深さが伺える。「もうすごい、大好き、ありがとう」 ってことしか頭に浮かばないくらいに、完全に操られてしまっていた。汗だくになって踊りながら、周りを見渡してみると、満面の笑顔で踊る友人達に囲まれ、その他にもフロアを埋め尽くす、たくさんのクラウドの魅了され、恍惚とした表情で踊る姿が見受けられた。まだまだ早い時間帯にも関わらず、フロアはパンパンになるくらいの混み具合で、ただいるだけでも暑かった。そのうえ、フロアにこだまする狂喜の叫びや、Dan への声援や、踊り狂うクラウドの躍動すべてが、その空間を熱くさせていた。

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この時、私はとても胸の熱くなる想いでいっぱいで、目頭が熱くなった。とても個人的に思いで深く、同時に感慨深かった。私がまだクラブに行き始めたばかりの頃に、Cabaret Crew である Yone-ko に Daniel の mix をもらった。その頃の私にとって、彼の音楽は本当に鮮烈に、クールに色濃く焼き付いた。それからどんどんテクノの魅力にはまっていった。そして、その年の誕生日にちょうど Daniel のDJで一夜を明かした。それから毎年誕生日近くになると Daniel は来日し、欠かす事無く Party に参加してきた。今回の Party にはその頃出会った友人も数多く参加しており、そんな中で彼のDJで踊っていたら、今までのいろいろなことが走馬灯のように蘇ってきて、今ここでこうして踊っていられる自分はなんて幸せなんだろうと思ったら、とても胸が熱くなった。

その時、その場所に自分がいて、そこでしか味わえない音楽をリアルタイムに体験する感覚がいかに身体的で、精神にも深く関わっているのかということを知った瞬間だった。ふとした瞬間に音楽が呼び覚ましてくれる郷愁は、今体験したがごとく鮮やかにキラキラと輝いている。そんなピュアな気持ちを思い出しながら、ひたすら音の波に埋もれながら踊り続けた。

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次は、いよいよ Cassy へとバトンタッチされる。ファットな低音をベースに流れるような曲調のハウスグルーブを展開していく。硬質な低音のキックと鋭利なハットを刻みながら、呟くようなヴォイスサンプルや柔らかなシンセの音が緩やかに響く。オールドスクールからニュースクールまでの幅広い選曲で、テクノとハウスを、新旧を行き来するような絶妙な表現力。性差も含め、いろんな垣根を越えた、力強い大きなグルーブに包まれながら、踊る事に特化されたプレイに舌を巻く。どんどんひっぱられて、深いところまで溜め込んでからの爆発的なブレイクにクラウド達も感嘆の叫びを漏らす。フロアに満ちて来る熱気を肌に感じる中で、皆が皆、同じゴールを目指して、踊っていることに高揚感と多幸感でいっぱいになり、ピークを迎えた。

このミュージックトリップのサポートをしてくれるのは、VJの迫田遥。決して、音楽の邪魔をすることはなく、素敵な音の旅のアテンドを務めてくれる。ミニマルに構築されたヴィジュアルをアシッドテイストに染め上げる、独自の感性の上に成り立った世界観を魅せてくれる。今夜だけ、音の形や色が次々と目に映るような共感覚者になった気さえ起こってくる。ますます非現実感を帯びた世界に足を踏み入れ、いよいよ幻想の音世界から戻れなくなってしまった。

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一方、SALOONでは、各々個性豊かな面々がフロアを沸かす。オープンから Keisuke Kondo のDJプレイ。ダビーな音から始まって、スッカスカでクリッキーなミニマルハウスの中にねじ込まれたファンキーなグルーブでフロアを温めていく。

次は、Sackrai の Live が始まる。地味めのディープミニマルを基本に、アーバンな雰囲気を持ったサウンド。深さと抜けの良さ、両方を合わせ持ち、柔らかさと妖しさの中で展開されていく。緻密な音の中でたおやかに変化していくグルーブに、クラウドも徐々に熱を帯びてくる。

Yasu のDJが始まる頃には、フロアもかなりいい感じに出来上がってくる。ルーディーでダークな印象の攻めるプレイ。低域に軸を置きながら、時折ノイジーな音やトリッキーな音を挟みながら畳み掛けてくる。「やばい!」 という声が響くぐらい、男気のある力強いプレイだった。

そして、Masda。上品なセクシーさを纏った、ミニマルなグルーブを中心に、イレギュラーに捻くれた音で遊びつつも、安定感のあるどっしりとしたプレイ。渋さと深さの合間に垣間見える、ファンクネスが光る。

最後は、Yone-ko。硬めのキックと鋭いハットでぐいぐいとハメていく。壮大な宇宙の中で、時代を超えた真にクールなサウンドが鳴らされる。確固たる世界観の中で、築き上げられる繊細なグルーブの変化に身を任せる。真っ平らなグルーブの中で、進んでは戻り、ぐるぐると底なし沼のようにはまっていく、グルーブ地獄。あっという間に朝を迎えてしまった。

この後、SALOONで Daniel と Cassy の貴重な Back to Back が行われ、まだまだ踊り足りないクラウドをフロアにがっちりとロックし続け、貪欲なパーティーフリーク達の心を満足させていた。

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私がこのpartyで特に印象的だった事は、SALOONに人が途切れなかったこと。普通はメインフロアにオーディエンスが流れがちなのに対して、サブフロアであったSALOONにいつも人が溢れており、それも休んでいる人ばかりではなくて、前のめりにダンスしている人が多く、メインフロアに負けないくらいの盛り上がりを見せていたのには驚いた。これは、彼らがゲストに頼るのではなく、彼ら自身が真のダンスミュージックを追求して行く中で、作り上げ、目指す Party の方向性に揺るぎないスタンスがあったからに違いない。彼らが純粋に聴きたアーティストだけを呼ぶ姿勢からは、アーティストに対する深い敬意が感じられた。だからこそ、いつ、どこへ行ってもいい音ばかり、安心して遊べるクオリティの高い Party が実現できたのではないだろうか。

Party のクローズ間際に感じた、あの一体感は Cabaret Crew の音楽への熱意に反応したクラウド達との共鳴に他ならない。ダンスする人々の躍動がそのまま音楽となるような、心から満たされ、陶酔できる貴重な Party だった。今回のレコードに針を落とせば、いつでもあのときの熱狂を思い出すことができる。本当に素敵なプレゼントをもらった。今度はどんな素晴らしい夢へとトリップさせてくれるのか、逸る気持ちを抑えきれない。

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