HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

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CABARET feat. VERA @ UNIT , TOKYO

DATE : 27 March 2009 (Fri)
GUEST DJ : Vera (Oslo, Mara Trax, cargo edition/Frankfurt)
DJ : Yone-ko (Runch), So Inagawa (Telegraph, Nrk, Minimood), Masda (Coupe), Keisuke Kondo (Frankie Rec., 9 Volt), Kon, Sin (Tree River), Suganuma (Microsurf)
VJ : Sakota Haruka
PHOTOGRAPHER : Noriaki Tomomitsu (HigherFrequency)
TEXT : Mitoki Nakano





アメリカはネヴァダ州・ブラックロック砂漠において行われる何でもありのフェスティバル・バーニングマン。このフェスの合言葉は「No Spectators(傍観者になるな)」。 この合言葉を一夜にして、再認識できるパーティーが 「CABARET」 だと私は確信している。 パーティーは、環境と音楽を提供する側とそれらを享受するオーディエンス側の深淵な対話が築き上げる、素晴らしい時の華という産物である。パーティーは自分も一人の参加者であるという意識を持つことが重要であり、同じ姿勢、気持ちで熱狂するクラウドの中で音楽もまた、命を持って、活きてくる。クラブに足繁く通う、パーティーフリークなら自分と音楽が共鳴した瞬間の奇跡的な一体感を体感したことがあると思う。そういった感覚を呼び覚ましてくれるのが、この 「CABARET」 だと思う。

今回のゲストは Vera。フランクフルト在住の女性アーティストで、名門クラブ Robert Jonson で長年レジデントを務める実力派の DJ であり、Oslo などから良質なトラックをリリース、更には Federico Molinari との共作や Miss Fitz とのユニット Mara Trax としても活躍する才能の持ち主である。この度、待望の初来日を迎えることとなった。 今回の合言葉は、「Let’s Go Deep!」。そう聞いて、どんなディープな空間が繰り広げられるのかと高鳴る胸を押さえながら、今日の会場である UNIT へと足を運んだ。

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メインフロアでは Masda が渋い選曲で地味に低く攻めてくる。余裕のある、安定したプレイで徐々に深みへと引き込んでいく。低空飛行の旅に酔いしれていると、いつのまにか底なし沼の中にどっぷりと浸かっているのに気づかされる。 ちらほらと人が集まり始め、 So Inagawa の Live が始まる頃には、すっかりと暖まったフロアからは歓声が飛び交い始める。いつもより更にストイックなプレイからは、官能的な側面までも匂わせつつ、クラウドをグルーヴの渦の中にハメていく。
SALOON に降りてみると、Kon がパーカッシブな音で小気味のいいグルーヴを鳴らしており、Sin も前のめりにぐんぐんとフロアを引っ張っていき、メインに負けないぐらいにオーディエンスを沸かせている。

Party も盛り上がる時間帯を迎え、メインは Yone-ko にバトンタッチされる。独自の確固たる世界観に裏打ちされたサウンドは壮大な宇宙の中にある近未来を想わせる。彼の紡ぎだす、繊細で美しい音空間の中で自由に気持ちよく旅をする。この辺りから、叫びにも似た声が場を満たし、熱気に包まれる。辺りを見回すと、満面の笑みで気持ち良さそうにダンスするクラウドがいて、自身も最前列で休みなく足が動き続ける。友人と顔を見合わせ、無言で音楽の力を共有し合う。

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その頃 SALOON では Suganuma が絶妙なタイミングで音を次々に繰り出し、男気溢れるプレイを魅せてくれる。上も下もすべてがクオリティの高い音ばかりで行ったり、来たりと頻繁な移動に嬉しい疲れを引きずって、メインに戻るとついに Vera の登場。 女性だということを忘れてしまうくらいのアグレッシブなプレイに打ちのめされる。新旧を織り交ぜた、幅の広い選曲の中にも核となる信念が感じられ、一貫したハウスグルーヴに自ずと身体が反応してしまう。まさに現場で培われてきた、ダンスすることに特化した力強いプレイ。Vera の後ろには、ミニマルな中にもアシッディな雰囲気を感じさせる、迫田遥の VJ が広がり、聴覚だけでなく、視覚的にも非現実的な夢の世界へのトリップへと誘う。最後には、何度もアンコールを要求する、前のめりなオーディエンスに笑顔で答えながら、ディープな空間をきちんとまとめあげていた。
フロアにこだまする、「Vera ありがとう!」 の言葉がとても印象的で、アットホームな雰囲気の中、心から満たされたクラウド達の拍手で最後を締めくくった。

メインが終わった後も SALOON では、Keiske Kondo がファンキーな勢いのあるグルーヴで踊り足りないクラウドの熱狂を包み込んでいた。

ダンスすることの快楽に陶酔することのできた、本当に満足した一夜だった。

私が願うのは、Vera のインタビューの中でも語られていたが、パーティーがマンネリ化し、音楽と嗜好品を消費する場になってしまっている現状に向き合い、クラバーひとりひとりがパーティーを作りあげていくという意識をもって、コール&レスポンスの中で生まれる、音楽という文化を思いだすことである。そういうことを再認識させてくれる、とても貴重な空間だった。私はまたいつか胸に去来する、精神と身体の化学反応が起こす花火のような一夜の夢の思い出に浸る時が幾度も訪れるだろうことに今から心躍らせている。また同じような感動を、常に前進し続ける 「CABARET」 に期待している。

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