HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

BLACK CREAM feat. DONATO DOZZY @ CLUB MAGO, NAGOYA

DATE : 30 January, 2010 (Sat)
DJs : Donato Dozzy, Apollo (eleven), Se-1 (eleven)
VJ : Imaginaryflower
Sound : Asada -airlab-
Photo by Kanji Furukawa
Text by Terumi Tsuji




3年連続で Labyrinth に登場し、テクノファンを唸らせたイタリアの奇才 Donato Dozzy が、待望のジャパンツアーで再来日した。残念ながら今回は著者の住む大阪でのギグがなかっため、グルメツアーも兼ね名古屋まで遠征をすることに。

20時前に名古屋へ到着し、まずは名古屋の中心地 「栄」 へ。Daft Punk のPVに出てきそうな近未来的なビル
「オアシス21」 の屋上に上り、気分はすでに”プチ観光”。名古屋は大阪に比べて道路も広く、街並もエレガント。言葉も違えば、食文化も違う。新幹線で45分しか離れていないに関わらず、ちょっとした異文化体験が出来てしまう。「腹が減ってはクラビングは出来ぬ!」 ということで、名古屋名物 「ひつまぶし」 を食べに行くことに。元祖ひつまぶしとして有名な 「蓬莱軒」 の贅沢なひつまぶしに舌鼓を打ち、至福のひとときを過した後は、MAGO のある新栄へ移動。後から到着した大阪の友達と合流し、いざMAGOへ。

メインストリートに面したエレベーターを使って地下へ降りると、クラブのエントランスに辿り着く前にラウンジスペースが広がっており、DJブースからは昔なつかしのダンスミュージックが流れている。リフレッシュできるスペースがあるのはとても有り難いなと思いつつ、足早にクラブへ潜入することに。エントランスを抜けると、まずはチルアウトできるラウンジエリアがあり、その隣にバーエリア、そして最後がフロアという構成。どことなく神戸の troopcafe を思い出させる作りだ。

まずはお決まりのテキーラオレンジをオーダーすると、ちゃんとガラスのグラスでサーブしてくれた。しかもオレンジのスライスまで入っていてかなり本格的。500円でこのクオリティーは大阪ではまずありえない。この時点ですっかりMAGOファンになってしまった著者だが、なんとトイレにはテイクフリーのキャンディー(大阪風に言えば"飴ちゃん")まで置いてある!ホスピタリティーに関しては、間違いなく5つ星だ。ということで、今度は肝心の音を確かめにフロアへと向かった。


DJブースでは、Black Cream のレジデントSe-1がミッドテンポなテクノをプレイ中。バーカウンターで聞いている時には正直それほどピンとこなかったが、実際にフロアへ足を踏み入れると、まずは音のクリアにまたまた驚かされる。しかも低音、中音、高音すべてのバランスがいい。音の粒子が体に浸透して行く感覚は、Labyrinth を彷彿とさせるほどだ。必要最低限のライティングがモノクロのVJをより引き立たせ、聴覚&視覚ともに刺激する。

徐々にbpmも早くなり、フロアがいい感じに温まったところで2番手の Apollo にチェンジ。Donato が登場する前にフロアが沸点に到達してしまわないように、ダウンテンポなトラックで一旦フロアをクールダウンし、ゆっくりと空間を作り上げて行く。Black Cream に関しては、クオリティーの高いアンダーグランド・サウンドで名古屋のテクノフリークを唸らせているという評判を各方面から聞いていたのだが、今回彼らの音を聴いて思わず納得。大阪にいると中々出会うことが出来ない各土地の逸材に出会えるのも、アウェイ遠征ならではの醍醐味だ。

Apollo のセットがハードになって行くにつれ、フロアにオーディエンスが増えてくる。そしてフロアが満杯になったころ、やっと Donato がブースに姿を現した。普段はバイナルユーザーの Donato だが、今回は3都市を回るクラブツアーということで、アナログの音源を Mac に取り込み TRAKTOR を使ってのプレイ。プレイ時間が長い Labyrinth とは違い、今回は限られた時間の中でストーリーを作らないといけないということを意識してか、始めからかなり激し目のトラックを次々とドロップしていく。Labyrinth で初めて来日した時から彼のプレイを見続けている著者だが、クラブということで今までの数学的なセットに比べると少々アグレッシブな感じは否めない。ただ激しい中にも、マインドに訴えかけるようなヒプノティックなトラックを織り交ぜて行く辺りが流石だ。


フロア中央で一心不乱に踊っていると、「コレ飲む?」 と隣で踊っていた女の子から声をかけられた。「ありがとう」 とドリンクをいただき、お返しにフリスクをプレゼントする。昔はこういった”物々交換”の光景がどこでも見受けられたが、悲しいかな最近はこういった姿を見かけることは殆どなくなってしまった。ただ名古屋には、今でもそんな古き良き時代のパーティーピープルがまだまだ健在だ。フロアの指笛や奇声(!)が飛び交うのも名古屋ならでは。名古屋は昔からゴアトランスが盛んで、著者も頻繁に名古屋近郊のアウトドアパーティーに遊びに行っていた。名古屋にはその頃のピースな空気がまだ残っているのか、たまたま著者が行く名古屋のイベントがそうなのかは分からないが、このユルい感じがとっても心地いい。この心地よさも Labyrinth のフロアに非常に似ていて、Labyrinth の思い出が次々とフラッシュバックしてきた。

Donato の音に酔いしれながら、しばらく Labyrinth の思い出に浸っていると、突然フロアにカラフルな光が差し込んできた。今までミニマムなライティングとVJのみだったのだが、フロアが盛り上がってきたためライティングとストロボが投入されたようだ。目を瞑り音に集中しようとするも、どうしても気が散ってしまう。個人的な好みになってしまうが、Donato の奏でるサウンド自体がカラフルなため、ライティングやストロボといったエレメントは必要ない。一旦切れしまった集中力を取り戻すのは難しく、また音に入り込むことが困難だっため、フロアを離れバーエリアでゆっくりと音を楽しむことに。

Donato 自身が 「マイクロトランス」 とカテゴライズするデリケートなサウンドを、一度はクラブという閉鎖された空間で全て体に取り込んでみたいと常々思っていたが、実際に体験してみると彼の音は自然の中で聴くのが一番シックリ来ることに気がついた。またしても個人的主観で申し訳ないが、少なくとも著者的には Donato の音を100%を楽しむには、星空の下で自由きままに踊るというスタイルがベストだと確信。ただクラブとアウトドアの違いを身を以て体験出来たということでも、今回の名古屋トリップはとても意味のあるものだった。そしてオーディエンスからの拍手と共にインテンシブな4時間セットが終了。渾身のプレイを終えたばかりの Donato にまた必ず苗場で再会することを約束し、MAGOを後にした。

 





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