HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Surgeon

90年代から緻密に音を解剖・再構築する"凄腕テクノ外科医"として、独自の地位を築いている Anthony Child こと Surgeon。しばしば懸命に音楽を追求する姿勢がそのまま視野の狭さにつながってしまうこともあるクラブ・ミュージックの世界において、ダブからハードミニマル、果てはダブステップの作品までリリースしてしまう振り幅の大きいスタイルをキャリアの初期から発信しつづけている、稀有な才能の持ち主である。

その音像から厳しく難しい人物という印象があり、質問の一言一言にも緊張を感じたが、返ってきた解答からは厳しいというよりは実直な人柄と、まっすぐに音へ向かう姿勢が感じられ、読む人それぞれに新しい発見がありそうな示唆に富んだ深い内容となっている。また、今回の日本ツアーに向けてのスペシャル・プロモMIXも掲載。是非楽しんでほしい。

Interview & Introduction : Yuki Murai (HigherFrequency)
Translation : Shogo Yuzen

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HRFQ : まず、あなたの印象的なDJネームの由来を教えていただけますか?

Surgeon (Anthony Child) : 僕のひいおじいさんが Victoria 女王の子供たちを診てた王族の医者だったから、うちの家族の歴史を引き継ぎたかったんだ。

HRFQ : 音楽的なバックグラウンドを教えてください。色々な音楽を聞かれてきたかと思いますが、エレクトロミュージックに出会い、DJを目指されたきっかけはなんだったのでしょうか。

Surgeon : 34年前に父親が持っていた 冨田 勲 のレコードを聴いて、エレクトロミュージックにハマッたんだ。特に彼のバージョンの 'Clair De Lune' を聞いて感化された。定期的にクラブでプレイを始めたのは17年前だけど、それよりも前から友達のパーティーとかではプレイしていたよ。

HRFQ : よく来日されており、日本語も習っていると聞いたのですが、日本のどんなところが好きですか?日本から何か音楽的に影響を受けた部分はありますか?

Surgeon : 1996年に初めて日本に来てから何度も来日してる。日本の好きなところはたくさんあるよ。日本には精神的なつながりを感じる。もちろん音楽の面で日本の影響を受けたところはあるだろう。Tresor からリリースされた僕のファーストLPの '9 hours into the future' や 'East Light' がそれのいい例かな。

HRFQ : 東欧や南米など、日本には中々情報が伝わってこない地域でも沢山ギグをされていますね。ツアー中に遭った面白い経験や、おすすめの国、地域、ヴェニューなどありましたら教えて下さい。

Surgeon : ブラジルはすごく面白い。先月行ったところだ。温かい文化や美味しい料理もある。Tacacaっていう舌をしびれさせるアマゾンのスープを食べたんだ。 http://dj-surgeon.blogspot.com/2009/03/tacaca.html

HRFQ : ここ数年のミニマルテクノブームの一方、あなたも共作されている Shed や Martyn のように、Basic Channel などの影響を感じるダビーなテクノが徐々に復興してきているように感じます。あなたご自身も、若手プロデューサーからは、そのルーツの一員として認識されているのではないかと思われますが、現在の状況をどう感じますか?

Surgeon : 表面的な音ではそんなにだけど、姿勢や音の操作の部分ではダブ・レゲエに大きな影響を受けているよ。

Surgeon

HRFQ : 近年は、少しだけ BPM を落としたダビーな印象のある作品を発表されていたので、RA の Podcast でのハードなスタイルでのプレイにはちょっと驚きました。つい先日リリースされたリワーク作品 'Hello Oslo' もそうですが、最近はまたハードな印象の作品を作ってらっしゃるのですか?何かきっかけがあったのでしょうか。

Surgeon : 昔の僕の作品に比べて最近の Remix の方が遅いって?面白いね。それは BPM が変わったんじゃなくて、聴覚的に遅くなったように感じるだけさ。僕は音楽を早いか遅いか、ソフトかハードかなんて基準では判断しない。そんな判断の仕方は絵を見て 「この絵は赤が多すぎるから良くない」 って言ってるのと同じだと思うよ。

HRFQ : あなたの楽曲は、BPMが早いものや、変則的なビートであっても、流れるように気持ちよく聞け、また、気持ちよく踊れるように感じます。そういった部分は、曲を作る際にご自身でも気を遣っていたりしますか?

Surgeon : そうだね。一番大切なのはグルーヴだよ。

HRFQ : あなたはいち早くDJプレイに Ableton Live を使用し始めたことでも知られていますが、曲作りでもソフトウェア・シンセなど、PCを使用していますか?あの深いキックの音を聞いていると、とてもそうは思えないのですが…。

Surgeon : 制作ではソフトウェアもハードウェアも両方使う。時間をかけて、耳でしっかり判断すればいい音にできるんだ。

HRFQ : 2007年の UNIT でのギグで、テクノ・セットとオルタナティブ・セット - スタイルが違う2つのセットを披露されていたそうですが、大変面白い試みですね!何故このようなことを思いついたのでしょうか。また、同じような試みは他の国でも披露されていますか?

Surgeon : いろんな音楽をかけるのが好きなんだ(商業的なものはかけないけど)。だけど、いつ何をかけてもいいってわけじゃない。もし客が僕がテクノをプレイするのを聞きたいと思ってたら、彼らの期待をうまく汲まないといけないんだ。僕は音楽のジャンルの幅を広げることが得意だけど、ディスコとクラシックなシカゴ・ハウスの両方をセットの最初から最後までかけることはできない。ロンドンでプレイする時はこういう「フリースタイル」な選曲をすることが多いよ。

HRFQ : 現在注目しているアーティストやレーベルがありましたら教えて下さい。

Surgeon : Scott Walker, 藤 あや子、 Whitehouse, Antibalas, Stars of the Lid, Velvet Underground, Coil … いろんな音楽が好きだよ。

HRFQ : DJとしてストイックに活動しているイメージが大変強いのですが、オフの日にはどのように過ごしていますか?音楽以外では他にどんなことに興味がありますか?

Surgeon : アシュタンガ・ヨガにハマってる(それもすごくストイックにやっている事だ)。NHKの相撲の試合を見るのも好きだよ。

HRFQ : 長年、クラブ・ミュージックの世界で独自性を保って歩んでらっしゃいますが、これから世界に挑戦しようとしてる日本のDJ / プロデューサー達に向けて、あなたの経験から何かアドバイスをいただけますでしょうか。

Surgeon : 自分のアイデアや音楽のテイストを鍛えるのは大事。流行なんか追っかけたら、一歩遅れることになるからね。

HRFQ : 今後のご予定を教えてください。

Surgeon : 長生きして成功すること。

HRFQ : 最後に、あなたのプレイをフロアで心待ちにしている日本中のファンに、一言メッセージをお願いいたします。

Surgeon : (原文ママ) 日本のファンが いちばん すきです。 5がつに あいましょう!

End of the interview




CLUB MUSEUM 6th Anniversary! "House of Industrial God"
2009年5月8日 (Fri) @ UNIT _ 23:30〜
Door : Y 4,000 _ W /F: Y 3,500 _ W/CM Members Card: Y 2,500
【UNIT】
SPECIAL GIGS : Surgeon "4 Hours DJ Set" + Doris Woo Special Visual Show
DJ : Kihira Naoki, Rok Da House
VJ : Autonograph, Rayscape

【SALOON】
DJ : Murata (オンドサ)
Naoki Shinohara (Lantern / microsurf)
herba (bein)
rubicqube (bein)
Dovuaski (Enter Sandman Tokyo)

Surgeon



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