HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

THE LABYRINTH 2007 @ KAWABA CAMP SITE, GUNMA

DATE : 14〜17th September, 2007 (Fri〜Mon)
LIVE : Minilogue, Cobblestone Jazz, Alex Smoke, Aril Brikha, Random Factor, Silicon Scally
DJ : Adam Beyer, Three, Ryan Elliot, Surgeon, Dave Mothersole, D-Nox, Donato Dozzy, Marcus vs k.a.b., Alex Smoke, Ben Annand, So, Seb, Maxx Relax, Hiyoshi
PHOTOGRAPHER : Munehide Ida
TEXT : Ryo Tsutsui (HigherFrequency)



「最高の音楽を、最高のシステムで聴くこと」をコンセプトにスポンサーも一切つけず、自分たちが思うグッドミュージックを届けることに専念し、1500枚限定のチケットが入手できずに参加を断念する人が続出するなど、ダンスミュージックファンからの熱い注目と尊敬を集めているパーティ Labyrinth。事前に各方面からのすばらしい評判を聞いていただけに、いったいどのようなパーティなのだろうと期待を胸に現地へと向かった筆者であった。

山のふもとのショッピングセンターで必要なものの買出しをしているときから、これから Labyrinth に向かうとおぼしき人々をちらほらと見かけ、こちらの期待も高まる中、現地に到着したのが土曜日夜。昼の間は音をいったん止めていたとのことで、まだ音楽はスタートしていなかったが、とりあえずテントを張って一息ついたあと、場内を散歩してみた。ダンスフロアに足を踏み入れるとインディアン風のテントをモチーフにしたDJブースとその周りにクレーンで持ち上げたファンクション・ワンのスピーカーの塊、地面にも低音を担当するウーハーが積まれ、どのような音を聴かせてくれるのだろうと期待が膨らんだ。その周りにはうっすら芝生の生えた広場が広がり、心地のいい風が吹くなか、東京では見られないような綺麗な星空をひとしきり眺めて楽しんだ後、いったんテントに戻ってゆっくりしていると、土曜日のトップバッター Alex Smoke のセットが始まった。


半日休んだ後のセットにふさわしく、ゆったりとスタートしたセットは彼なりのダウンビートといった趣、筆者も持参した焼酎でお湯割りを作り、アウトドア気分を満喫しつつ、ゆったりとした音楽に耳を傾け、友人たちとたわいもない話に花を咲かせた。中盤、トム・ヨークの楽曲なども織り交ぜ、イギリス人らしさも見せつつ、微妙にテンションを上げてゆき、Surgeon へとバトンタッチ。
Surgeon もじわじわとテンションをあげていきながら徐々に硬質なサウンドへと展開していった。ところどころで観客の歓声が筆者のテントまで聞こえてくるほどの盛り上がりを見せ、早くもエンジンスタートといった感じを演出。その後を受けたのは Ben Annand, 南カルフォルニアの砂漠地帯で行なわれ、カリスマ的な人気を誇るパーティー Moontribe のレジデントの一人とのことで個人的にとても楽しみにしていたか、その期待を十分に満たしてくれる充実のプレイを見せてくれた。乾いたテックサウンドにハウスやテクノ、どことなくトランス的なテイストまでを自然に取り入れたサウンドは西海岸独特の雰囲気を存分に感じさせてくれた。
充実したサウンドにどっぷりつかって楽しむ中、だんだんと空も明るくなり始め、登場したのが Aril Brikha、朝の澄んだ空気の中、自身のニューアルバムから 'Room 337' や 'Kept Within' などの開放的な楽曲でセットを開始し、いきなりフロアを自分の世界へ。この Aril Brikha のセットがファンクション・ワンのしっかりしたサウンドとあいまって最高に気持ちよく、朝をむかえたフロアをますますディープな世界へといざなっていった。途中には彼が持つ、永遠の名曲 'Groove La Chord' も投入し、あちらこちらから嬌声があがるなか、失速することなくセットを終了。
そしてその後を受けたのが Cobblestone Jazz 、人気の Wagon Repair を牽引する Matthew Jonson を中心とした3人組の即興ライブテクノバンドだが、いったいどのようなライブを見せてくれるのか、かねてから是非生で聴いてみたいと思っていただけに否が応でも期待は高まった。うなるようなベースラインにリズムマシンが鳴らすファットなドラムサウンド、不穏なパッドサウンドに乗る美しいジャズキー、個性がぶつかりあいながらも融合する3人の音は,自由でありながらテンションも高く、非常に説得力のあるサウンドであった。大ヒットとなった 'Dump Truck' や 'India in Me' も投入し、大いに盛り上がったが、特に 'India in Me' がライブであれほど映える曲だったとは、筆者にとってはうれしい驚きであった。
そしてその後を受けたのが Marcus vs KAB、その場の空気をならすように徐々にテンションを落ち着かせてゆき音がおとなしくなるとともに筆者もあえなくダウン。筆者にとっての一日目が終了した。


たっぷりと休養をとり、いったん山を下っての温泉まで堪能し、しっかりと英気を養って戻ったころ、場内は Maxxrelax のゆったりとしたサウンドで最後の爆発の前の静けさを迎えていた。筆者も周辺を散歩しつつ、友人を見つけてはお互い、誰がよかったなどといいあったりしつつ宴会を開始。ひとしきり盛り上がった後、そろそろ踊りに行こうと向かったフロアでプレイしていたのが Adam Beyer だった。
Adam Beyer といえば'90年代後半より活躍し、いわゆるハードテクノ的なイメージを持つアーティストだが、近年ではハードサウンドとミニマルサウンドを融合したような楽曲でシーンに新鮮な驚きを与えており、Labyrinth でもそのサウンドは健在であった。ただ残念だったのはロングセットを組み立てていった終盤、一番張り詰めた場面でレコードの針が飛んでしまい、いったんなくしてしまったプレイのハリを取り戻せないままプレイが終了してしまったことだろうか。
そして続いて登場したのが Ryan Elliot、6月に Labyrinth のオーガナイズチーム Mindgames 主催の Haus_Tek Vol.3 にも登場し、すばらしいプレイだったと話題になっていただけに、そのプレイを心待ちにしていた筆者だったが、前半はクリッキーな楽曲をプレイしたかと思えば、急に激しい曲をプレイしたり、グルービーな楽曲で盛り上がってきたと思ったら、まったく雰囲気の違うミニマル然としたトラックをかけたりと、ちぐはぐなプレイでストレスの溜まる展開に、すっきりしないものを抱えながら、かといって期待をあきらめてテントに戻る気分でもなく、ふらふらしていると、徐々にグルーブが整ってゆき、それとともに自然と体を動かしたくなるようなサウンドへと変貌、気づいたときにはファンキーなベースラインに引っ張られるように踊らされていた。前半のちぐはぐなプレイと比べるとまるで別人のようなプレイに筆者と同じ感想を持っていた友人と「これわざとやってたらすごいね」などと言い合っていたが、実際のところどうだったのかは不明だ。
そして登場したのが2度目の登場となった Alex Smoke、前日のダウンテンポなセットとうって変わってダンス仕様なセットを披露。 そしてこのセットがすばらしかった。ミニマルサウンドに近い抑制のきいたビートに比較的トランシーなウワものがのった音像は非常にクールで、かつ盛り上がるところはきっちり盛り上がるというかゆいところに手が届くプレイで、最高のパーティータイムを演出してくれた。また印象的だったのがトリを務めることになる Three が途中、ステージの真ん中に腰掛け、Alex Smoke の楽曲に狂喜乱舞する観客を見据え、ゆっくりとこぶしを突き上げ観客の盛り上がりに答えていた姿で、その姿をみて最後に向けて否応がなく期待が高まるのを押さえることができない筆者であった。そのナイスなバイブを引き継いだのが Donato Dozzy、マイクロトランスというサウンドを提唱しているということでいったいどのような音楽なのか興味津々であったが、そのサウンドは若干アブストラクトな感じもするディープなミニマルビートに、確かにどことなくトランス的な雰囲気を感じさせるウワものが乗る非常に個性の強いサウンドで、そのディープかつ説得力のある世界観には、あちらこちらで気持ちよさそうに踊る人が目立っていたのが印象的であった。
そして次に登場したのが D-Nox、 日が出て熱くなってきたフロアもなんのその、ハリのあるビートに様々な要素をいきおいよくミックスしてゆくおなじみのサウンドでその場を引き継いでゆき、会場はすっかりパーティータイムへ、いきおいのあるサウンドのままラストまで駆け抜けた。


筆者はこの辺でいったんテントに戻り、身支度を開始。暗くなる前に、最後に思いっきり盛り上がれるように荷物を車に先に積んでしまおうという予定だったが、同様の動きをとっている人も多く、いよいよパーティー全体がラストの盛り上がりを前にそわそわしているような独特の雰囲気を感じつつ、車に荷物を運び入れ、再びフロアへ。ステージではすでに Minilogue がプレイを開始していた。
今回の Labyrinth では二人そろって複数回出演、Marcus に至ってはこの Minilogue での登場で3回目の登場と、大活躍だったが、それもうなづけるクオリティーで、音楽的に非常に柔軟でありながら、踊らすところでしっかりと踊らす構成力、中盤から終盤に向けて大きなうねりを作り出しながら観客を盛り上げていった手腕はさすがというべきであろう。ここでのプレイが今までで一番よかったという感想を複数の人から聞いたところからもこの日の出来のよさがうかがえる内容であった。
そしてその充実のプレイ引き継いだのが Three、ゆっくりと登場し、頭の上で手を叩き、Minilogue を称える姿は貫禄そのもの、いったん音を止めて、ゆっくりと間を取ってプレイをスタートさせた。ゆったりとしたビートに気持ちのいいパーカッションがのったトラックでスタートしたプレイ、特に奇をてらうわけでもなく、独特なテンポながらオーソドックスに楽曲をつないでゆくスタイルに筆者は出だしから引き込まれてしまった。音数のそれほど多くない、テック過ぎないテックサウンドで、やさしくその場に引き込んでゆくような音を基調としながら、耳をつんざくようなノイズが鳴り響くブレイクを効果的に使用するなど、ファンクション・ワンの持つポテンシャルをこれでもかというほど引き出す力量と、ストーリー感あるれる構成でトリにふさわしいすばらしいプレイを披露していった。最高に充実したプレイに身を任せながら、感動とともにラストまで時間を惜しむようにその場の空気を堪能し、プレイが終了しても帰りたがらない観客を眺めながら、しっかりとした信念をもったオーガナイザー陣と充実した出演者、本物のダンスミュージックラバーズが作り出すこのパーティーのすばらしさを痛感し、今後もこのようなすばらしいパーティーを作り続けていって欲しいと強く願う筆者であった。

ORGANZA 10 feat. ALEX UNDER 1st ANNIVERSARY !!

 

関連リンク