HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Royksopp


アナログ・シンセなどから生み出されるレトロなメロディーに、無機質でクールなビート、そしてアンニュイなヴォーカルが重なり合う……ノルウェイから飛び出したエレクトロ・デュオ Röyksopp によって 2001年にリリースされた "Melody A.M." は、普段はダンス・ミュージックという、いわゆるアンダー・グラウンドな響きのする音楽に馴染みのない ポップ / ロック・リスナーを4つ打ちのビートで躍らせ、果てはコアなダンス・ミュージック・リスナーさえも虜にしてしまった。

そんな万人に愛されるポップ・センスを持ちながらも、常にクールな存在である希少なユニット、Röyksoppが、"Melody A.M." から約4年という期間を経て、待望のセカンド・アルバム "The Understanding" をリリースすることとなった。全世界のミュージック・ファンが待ち望んでいるであろうリリースを目前にして、ゴールデン・ウィークにかけて、Röyksoppの二人がプロモーション来日、幸運なことに、HigherFrequency もTorbjørnとSveinの二人に対面、ニュー・アルバムや出演の決まっているFUJI ROCK FESTIVAL'05、そしてHigherFrequency読者なら誰もが気になる、彼らのスタジオ・セット・アップにまで渡って話を訊くことが出来た。

> Interview & Translation & Introduction : Kei Tajima (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 久々に来日されていかがですか?

Torbjørn : すごく嬉しいよ。日本はすごく興味深い場所だからね。やることがいっぱいあるし、行くところもいっぱいある。興味のあるものが買えるし、それに、日本の人々は僕たちのやっていることに対して、すごくいい反応をしてくれるんだ。だから日本は大好きだよ。

Svein : (テーブルの上のスナックを手にとって)こういう美味しいスナックもあるしね。このハニー・マスタード味なんて最高だよ。

HRFQ : ノルウェーにはないんですか?意外ですね。

Svein : ないと思う…ノルウェーでは食べたことないな。

HRFQ : 食べながらインタビューしていただいても大丈夫ですよ。

Svein : そうだね!でもまずは日本酒を飲んでからにするよ。その後に食べようかな。

HRFQ : フジ・ロック '03で、初めてあなた方のライブを観たのですが、本当に素晴らしかったです。

Röyksopp : ありがとう。

HRFQ : グリーン・ステージのBjörkを見終わった後、急いでレッド・マーキーまで移動したので、ギリギリのところで間に合ったのですが…その時のギグの印象を教えてください。

Torbjørn : 良かったよ。まるで夢みたいだった。森の真ん中にステージがあってさ…僕たちは森が大好きなんだ。

Svein : まず、オーディエンスの反応の良さにものすごく驚いたよ。会場にいたほとんどの人が僕たちの曲を知っているかのようだった。だからちょっとビックリしたけど、すごく楽しかったよ。でもあの時は、森の真ん中にあるライトに照らされたステージで、たくさんの人のハッピーな表情を見てるってだけで幸せだったなぁ。

HRFQ : 今年もまたフジ・ロックへの出演が決まっていますね。

Torbjørn : そうなんだ。7月にね。今年も同じステージでのプレイなんだけど、また出演することが出来てすごく嬉しいよ。前回のギグがすごく楽しかったからね。今年のライブも楽しめるといいな。

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HRFQ : 通常はどんなセット構成でライブされているんですか?どんな機材を使っていますか?

Svein : 実は(今回のアルバムに合わせた)新しいライブのセットアップはまだ試していないんだけど、ひとつだけ間違いないのは、僕と Torbjørn がプレイするってこと。実際には、恐らくは前回やったライブをある程度なぞらえたセットにはなると思うけど、今回は新しい曲もプレイするし、それに僕たちはいつも違った方法で自分たちの曲をプレイしようとしているからね。でも、根本にあるアイデアはいつも「自分たち自身が楽しんでライブをしよう」ってことさ。そこにオーディエンスも加わって、楽しんでもらうこと…それが僕たちの考えてることなんだ。

Torbjørn : どんな機材を使っているか詳しく説明した方がいいのかな?本当に知りたいの??

HRFQ : そうですね。興味のある読者はたくさんいると思いますよ。

Torbjørn : 今までにいろんなものを試してきたよ。ラップトップやハード・ディスク・レコーダー、サンプラーにエレクトロニック・パーカッション、ライブ・ベース、アナログ・パーカッション、ヴォーカル……

HRFQ : かなりあるんですね。

Torbjørn : それにエコー・ペダルなんかも使ったよ。

HRFQ : 分かりました。ラップトップとおっしゃっていましたが、Abelton Live などのソフト・ウェアは使われるんですか?

Torbjørn : (Live は) あまり使っていないね。たまに古いシーケンサーを使ったりすることもあるけど、もう14年も使ってる古いものだから、あまり信頼出来ないんだ。これからも使っていこうとは思ってるけど。

HRFQ : さて、6月22日にニュー・アルバム 'The Understanding' をリリースされますよね。プレス・リリースによると、今回のアルバムは前作の 'Melody A.M.' より、さらに叙情的で、メロディックに仕上がっているとそうですが、今回はどういったコンセプトの下にアルバムを制作されたのですか?

Svein : (CDのジャケットを見せながら)こういうコンセプトさ。

HRFQ : なるほど(笑)。ジャケットに意味が込められているんですね。

Torbjørn : 今回のアルバムでは、新しいことにトライしているし、叙情的なアプローチも以前より強いと思うよ。僕たちは何もインスト・バンドをやっているわけじゃないし、今回はちょっと自己中心的になって、自分たちの好きなことをやってみただけなんだ。僕らはいつも、自分たちにとって面白いことをやるように心がけてきたし、今回のコンセプトもライブでプレイしているうちにどんどん膨らんでいって、1枚のアルバムにした時にどのようにワークするのか、試してみたくなったって感じかな。

ただ、面白いのは、こういった叙情的なアプローチを加えることによって、聴く側の解釈の幅がぐんと広がるということ。同じ曲を聴いているのにもかかわらず、とてもアップ・リフティングで明るい曲だと思う人もいれば、ある人はとても悲しい曲だと思う。こういう場合、もちろんどちらの解釈も間違っていないんだけどね。つまり、同じ曲でも聴く人の性格やバック・グラウンド、好みなんかによって印象が全く違ってしまうってことで、アルバムのタイトル'The Understanding' はそういった考えから付けられたものなんだ。世の中に果たして"全ての人が同じ解釈をする音楽"なんてあるのか、それとも音楽とは聴く人の解釈によってクリエイトされるものなのか…そういった僕たちが持つ疑問を、ここで投げかけているというわけさ。

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HRFQ : 今回のジャケット・デザインもすごくスタイリッシュですね。'Melody A.M.'の時と同じデザイナーが手がけているんですか?

Svein : そのデザイナーとは違って、今回はパリを中心に活躍してるアート・ディレクターの作品なんだ。彼とは以前から交流があってね。今回のジャケットの仕上がりには僕たちもすごく満足してるんだ。

HRFQ : そうですね。すごくいいと思います。

Svein : このロゴは本物の木で作ってあるんだよ。

HRFQ : これが新しいロゴなんですね?

Svein : そうだよ。

HRFQ : 今回のアルバムでは、何人かヴォーカリストをフィーチャーされていますが、Get Physical Music の Chelonis R Jonesなど、個性的な面々がそろっていますよね。選出の基準はなんだったのですか?

Svein : 顔がいいこと!(笑)

HRFQ : (笑) 顔がいいことですか?

Svein : …というのは冗談だけど、その人のキャラクターが重要なキーだったかな。ヴォーカリストとして、個性のある人。今回フィーチャーしたのは、"What Else Is There"っていうトラックを歌ってくれた スウェーデンの Karin Dreijer 、"49 Percent"を歌ってくれた Chelonis R Jones、それに同郷のノルウェーの Kate Havnevik。彼女は"Circuit Breaker "と"Only this moment"を歌ってくれたんだ。

HRFQ : 3人とも、違ったバック・グラウンドを持ったシンガーですよね。Chelonis R Jones はGet Physical Musicというディープ・ハウス系のレーベルのアーティストですし、Karin Dreijer の所属するバンド The Knife は、インディー・ロックですし…

Torbjørn : インディー・エレクトロかな…

HRFQ : 以前から彼らとは交流があったのですか?

Torbjørn : 特になかったよ。

HRFQ : では、アルバムをつくることになって、初めてアプローチしたんですね?

Torbjørn : そういうこと。結果、期待通りの作品に仕上がったから本当にラッキーだったね。作ってる最中は「大丈夫かな?こっちの意図を分かってくれるかな?上手く行くかな?」って心配することもあったけど。

Svein : 例えて言うと、音楽の "ブラインド・デート" みたいなものだよね。会う前は、相手のことを少しは知ってるけど、それはほんの氷山の一角にしか過ぎない。そして、初めて彼らと会ってスタジオに来てもらって…ある種、賭けみたいな部分もあったわけだけど、ラッキーなことに本当に満足のいく結果に仕上がったよ。要するに、みんなと幸せなゴール・インをしたってわけさ!

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HRFQ : あなた方がどうやって個性的なエレクトロニック・サウンド 、特にアルバム 'Melody A.M.' の収録曲、"Eple" のあの音をクリエイトしているのか気になっている読者も多いと思うのですが…あれはシンセサイザーですか?

Svein : あの主旋律はいろんな音がレイヤー状にミックスされたものなんだ。でも、あの音の核になっているのは、ウーリッツァーなんかのエレピの音をサンプルしたもの。サンプリングしたものをプレイバックしているんだ。上手く言えないけど…。

Torbjørn : 僕たちがどうやって音をつくっているか、的確に言葉で表すのは難しいな。まぁ、キーワードを挙げるとすれば、それはアナログやシンセ、サンプラー、それに古いタイプのシーケンサーといったものになるんだろうけど、それ以外にも個性的な音をつくり出す方法はたくさんあるからね。例えば、僕らはアナログ盤のカッティング・マシーンを持っているから、実際にアナログ盤に取り込んだサウンドを得ることだって可能だし…。それに、レコードをスクラッチした時の音、わかるでしょ?その音もよく使ってるよ。

HRFQ : あなた方の音楽は、ハウス・リスナーからロック・リスナーまで、様々なジャンルの音楽ファンからサポートされていますよね。なぜだと思いますか?

Torbjørn : もちろんその理由は知ってるよ。でも誰にも教えたくないんだ。もし教えたらみんなが真似するでしょ?

HRFQ : 分かりました(笑)。

Svein : 企業秘密さ!

HRFQ : もし、あなた方の音楽を一つのジャンルにカテゴライズするとすれば、何と呼びますか?

Svein : 僕たちがまだ出始めたばかりの頃、"Progtronic - プロガトニック"という呼び方をしたイギリス人ジャーナリストがいたんだ。エレクトロニックとプログレッシヴ・ロックの中間をとった呼び方なんだけど、言い方が気に入ってね。果たしてその表現が正しいかは分からないんだけど、言葉自体は気に入ってるかな。

Torbjørn : 僕的には、その言い方ではごく一部分しか表現出来ていないと思うな。確かに、僕たちはジャンルの域を超えた音楽をつくることに成功したと思っている。でもだからといって、僕たちの音楽がジャンル分けの出来ない、全く新しいものだと言い切ることも出来ないんだ。だから、僕たちのサウンドには、皆に親しみのある音楽の要素と、全く新しい要素が両方含まれているのさ。

そもそも、全くジャンル分け出来ない音楽なんて存在しないし、そんなことは不可能に近いと思うんだ。それに、僕たちは自分たちの音楽を誇りに思っている。自慢をしているわけじゃないんだけど…。自慢するのは嫌いさ。でも、あえて正直に言うと、やっぱり誇りに思っているよ。

HRFQ : これが最後の質問です。日本のファンに何かメッセージはありますか?

Torbjørn : いくつかあるよ。続けて言っていくね;

いつもサポートしてくれてありがとう
コンサートで会えるのを楽しみにしてるよ。
自分らしくいてね。
あと……お金を無駄遣いしないように!

HRFQ : (笑)どうもありがとうございました!

Röyksopp :ありがとう!

End of the interview

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