HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Reinhard Voigt Interview

ドイツの中西部ライン河畔に位置し、優美な大聖堂でも知られるケルン…。香水の「オー・デ・コロン」の語源 (仏語で「ケルンの水」の意味)としても知られるこの麗しき古都の名前は、ある一つのレーベルが果たした目覚しい躍進によって、突如として世界中のテクノ・ヘッズに知られるところとなる。そのレーベルの名はKompakt。洗練されたテクノサウンドを純粋に追及し、数多くのフロア・アンセムを世に送り出してきたドイツの最重要レーベルの一つである。

そのKompaktの中心人物として90年代初頭から活躍し、洗練されたミニマリスティックなテクノ魂を世の中に披露してきたプロデューサー Reinhard Voigt (ラインハルト・ヴォイト)が、9月10日に開催されたWOMBの人気パーティーCycloneの3周年を記念するパーティーに参加するために来日した。

ミニマル帝王としてドイツのみならず世界で活躍しているMike InkことWolfgang Voigt(ヴォルフガング・ヴォイト)の実の弟としても知られるReinhard。近年では"How We Rock"(2002),や"Kontakt" (2003)、それにMichale Mayerや兄Wolfgangと共に手がけたSpeicher シリーズ (3,5,7,10)などのヒットによりますます勢いに乗る彼に、HigherFrequencyがじっくりと話を聞いた。

> Interview : Laura Brown (ArcTokyo) _ Translation : Eri Nishikami _ Photo : Mark Oxley (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

triangle

HRFQ : 日本は初めてですか?印象をお聞かせください。

Reinhard Voigt : ワンダフルとしか言いようがないね。こうやって素晴らしい街や人々に出会えるし、音楽をやりながらこんな風にあちこち旅することが出来るのって、やっぱり最高だよ。初めて日本に来た時は兄貴と一緒で、彼の大阪と東京でのプレイについていっただけだったんだ。そのころ兄貴はMike Inkの名前でプレイをしていて、あれはたしか田中フミヤのTorema Recordのパーティーだったと思う。ところで、フミヤは僕が今まで見たDJの中で一番すごいと思うDJなんだ。テクニクスを3台使ってあんなに速く、しかも正確にプレイするなんて、最初に見たときは信じられなかったよ!まぁ、今回僕も日本でいよいよプレイすることになるんだけど、とても楽しみだね。長いフライトには疲れたけど…。

HRFQ : プレイするときはDJそれともライブですか? ライブでやるときはどんな機材を使うんですか?

Reinhard : ラップトップにフルーティー・ループっていうソフトを入れて使っているよ。最近では多くの人がライブでAbletonのLiveを使っていて、僕も昔は使っていたんだけど、フルーティー・ループの音が気に入ってからは、Liveからこのソフトにスイッチすることにしたんだ。で、これをシーケンサーとして使って、あとはサウンドカードとコントローラー。これでフリケンシーをいじったりしている。これがライブをやる時のセットアップかな。でも、とにかくフルーティー・ループは音がいいんだ。僕が知っている限り、他にこのソフトを使ってるのってカナダのAkufenくらいかもね。ある時僕のライブが終わったあとに彼がやってきて、「何のソフトを使っているんだい?」と聞くから教えてあげたら、彼も「俺もすぐにこのソフトに変えなきゃ」って言ってたのを覚えているよ。彼もとにかく音の良さが信じられなかったみたいだね。

HRFQ : Kompaktレーベルで最近契約した新人アーティストには誰がいますか?

Reinhard : つい最近契約したのはフランクフルトのKlimekで、アンビエント系のアーティスト。まあ、彼はそんなに新しいアーティストというわけでもないんだけどね。あと、スペインからデモテープを送ってきたアーティストがいて、この間聴いてみたら良かったので、是非リリースしたいと思ってる。今連絡を取り合ってるところなんだけど、たぶん次のニューアーティストは彼になるだろうね。でも、Kompaktとしてのニューアーティストって言うのは最近いないね。最後に出したのが日本人が一人とフランクフルトから2人、それからイギリスから一人。スペイン人に関しては、ひょっとしたらサブレーベル(Kompakt Extra)のSpeicher(シリーズ)で出したほうが良いかもしれない。ストレートなテクノ系12インチになると思うからね。まだ、どのアーティスト名になるか彼から教えてもらっていないんだけど、驚くべき作品になると思うよ。

Reinhard Voigt Interview

HRFQ : デモを聴くときにはどういった視点で聴いていますか?

Reinhard : 僕らのところには世界中からデモが届けられていて、いつも仕事がひと段落着いたところでリスニング用の部屋にこもって、僕とMichael (Mayer), あとWolfganf (Voigt) とYurgenで送られてきた音源を聴くようにしている。その時にはいつも、何かスペシャルな部分を探そうとするんだけど、実際に送られてくる音の多くは僕らのサウンドをコピーしたものが多いんだ。でも、こういった音には僕らはあまり反応は示さなくて、"これはちょっといいんじゃない!"って言えるスペシャルなものを見つけると、もう一度よく聴きなおしたりしている。今まで聴いたことがない、熱のこもった特別なサウンド、どこに行っても絶対見つからないサウンド… そんな音楽を僕らは探してるんだ。

HRFQ : Kompaktの音、コンセプトとは?

Reinhard : もう12年もやっていると、ミニマルサウンドというものに対しての責任を負っているって感じはあるね。僕らはいつも新しい要素を取り入れようとしていて、ミニマルだろうがアンビエントだろうが、あまりそれは重要ではない。とにかく何かスペシャルなもの…それが大切なんだ。しかも、「次はこれをやろう」っていう明確なプランっていうものも余り考えてない。いつもプランは自然とでてくるっていうか、なにか面白そうなことを見つけたらそれに向かって突き進む!って感じなんだ。

HRFQ : Kompaktはレーベルであると同時にディストリビューションもやっていますよね。将来的にディストリビューションの仕事はmもっと増えていくと思いますか ?

Reinhard : いや、そのつもりはないね。ディストリビューションの仕事に関しては既にパンパンで、しばらくこれ以上広げるつもりはないんだ。一年半前に引っ越した時には、まだディストリビューションやエクスクルーシブ・レーベルとの仕事に割ける余裕はあったんだけど、ディストリビューションだけでも本当に大変な仕事でね。いつの間にかそれがKompaktの一番メインの仕事になっていったんだ。今では60くらいのレーベルを抱えていて、しかもバックカタログの在庫も全部うちで管理している。よく、「5年前に出てたファースト・シングルがほしい」とかいうオーダーが入るんだけど、そういったものにもキチンと対応できるようにしておかないといけないからね。

HRFQ : ディストリビューションの仕事には、どの程度かかわっているんですか?

Reinhard : いや、僕は全くかかわっていなくて、それに関してはMichael Meyerが責任をもっているんだ。僕のKompaktでの仕事はどちらかと言うと帳簿管理。請求書をコンピューターに入力したりすることが多いね。

HRFQ : エレクトロ・クラッシュのムーブメントも、かなり収まってきた気がしますが、次は何が来ると思いますか?

Reinhard : 確かにエレクトロ・クラッシュ・シーンは終わったね。まぁ、ロンドンのファンには、そんなことは言っちゃダメだけど…(笑)。でも、次に何が来るかっていうのは場所にもよるよね。例えばケルンではハード・テクノが流行っていて、特に新しい音って言うのは出てきてない。あまりハードじゃないミニマルっぽい音にはまってる人もいるし、あと、ドラムン・ベースもドイツでは相変らずの人気だし。結局はあまり代わってないのかもしれないね。みんな新しいトレンドの到来を待っているんだけどね!でも、テクノは将来的にもっと大きくなっていくんじゃないかな。ミニマルからハードなものまで含めてね。

HRFQ : 何か新しい作品に取り組んだりしていますか?

Reinhard : 最近Alter Egoのアルバム9曲目のRAWってトラックのリミックスをやったんだけど、最近で言うとそんなものかな。あと、Kraftwerkのリミックスもやることになったから、どんな感じにしようか今考えてるところで、他にも兄貴と一緒にやったVoigt on Voigt名義の作品が10月半ばにリリースされる予定になっている。まぁ、時間があったら、テクノの12インチなんかもKompaktからリリースしてみたいね。あと、来年になったらアルバムのトラックにもう少し時間を割きたいと思ってるんだ。

Reinhard Voigt Interview

HRFQ : MP3ダウンロードが広まったことで、レーベルにどのような影響があったと思いますか?

Reinhard : う〜ん、簡単には答えられないなぁ。これは音楽シーン全体の問題だからね。 まぁ、インターネットからフリーでダウンロードできてしまうんだから、どのレーベルにとっても頭の痛い問題であることは間違いないと思うよ。実は今、自分たちのサイトにMP3がダウンロードできるショップを作ろうとしているところで、今年中には立ち上げたいと思ってるんだ。だから、僕らも実際にこの分野に関わっていくことにはなるんだけど、どういう影響が出てくるのかについては、うまく答えることはできないな。まぁ、いずれにしてもメジャーレーベルに比べれば、それほど大きな問題にもならない気がするけどね 。

HRFQ : コピープロテクションについてはどうするつもりですか? たとえばアップルのi‐TuneストアはiPODがないと再生できないなど、かなり厳しいプロテクションを実施していますが、あなたもさっきおっしゃっていたように、アンダーグラウンド・シーンではそれ程神経過敏にならなくても良いような気がするのですが…。実際にKompaktのシステムはどうようにされるつもりですか?

Reinhard : 今のところ特別なプロテクションは考えていないんだ。ひょっとしたら何らかの悪影響があるかもしれないけどね。でも、将来的には何らかのプロテクションを付けることになると思うよ。実際、以前リリースしたコンピレーションには、特別なプロテクションを付けたこともあるしね。まぁ、しばらくは何らかのダメージがあるかもしれないけど、今はクラッキングされないように、よりプロフェッショナルなプロテクションを検討しているところなんだ 。

HRFQ : 新しいレーベルで最近気になったものはありますか?

Reinhard : ケルンのTrapezはいいね。このレーベルのオーナーは(Triple R)は、本当にうまくやっていると思う。あとTrapezと同じ人間がやってるレーベルでTraum(Schallplatten)とか、ケルンのAreal、このあたりのレーベルがお気に入りだね。どの曲をリリースするのかを決めるのは本当に難しいことなんだけど、彼らはその意味で本当に良い仕事をしていると思うよ。ストックもちゃんとあるし。

HRFQ : 日本のファンになにかメッセージを。

Reinhard : これからも変わらないでほしい。日本のピースフルなところが大好きだからね。みんな礼儀正しくてフレンドリーだし、クラウドは音を聴くために集まっているし。とにかくパーティーし続けてほしい!あと、日本人がドイツに来ると、とても楽しんでいってくれるみたいだね。彼らにとってはそんなに退屈じゃないみたい(笑)。それも変わらないで欲しいな。

End of the interview

関連記事


関連サイト