HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

Reinhard Voigt

CYCLONE 3RD ANNIVERSARY SPECIAL feat.REINHARD VOIGT & DJ GODFATHER @ WOMB, TOKYO

DATE : 10th September, 2004 (Fri)
PHOTOGRAPHER : Mark Oxley / Official Site
TEXT : H.Nakamura (HigherFrequency)



人気テクノ・パーティーCycloneが3周年を迎え、そのアニバーサリー・イベントの第一弾が、9月10日に渋谷のWOMBにて開催された。記念すべきこのイベントのゲストを飾ってくれたのは、ケルンのシーンを世界に知らしめたレーベルKOMPAKTのレーベル設立メンバーの一人であり、ドイツ・テクノシーンの最重要人物の一人として常に数えられるReinhard Voightと、デトロイトにおいて最近のムーブメントとなりつつある"ゲットーテクノ&エレクトロ・サウンド"を強力に牽引するDJ Godfather。デトロイトとケルン、この地理的にも文化的にもかけ離れた二つの都市で、それぞれ独自に進化を遂げてきたテクノ・ミュージックを比較体験する絶好の機会となった。まずステージ上には、昨年まで東京で活躍し、現在はロンドンに居を構えるMAXXRELAXが登場。ソリッドなテックハウスでフロアをウォーム・アップしていく。そしてこのパーティーを3年間に渡って牽引してきたレジデントMIKUがプレイをスタートする頃にはフロアも徐々に人で埋まり始め、ブロークンなミニマル・ファンクからスタートしたMIKUのセットが、ロッキンなエレクトロ・チューン、そしてプログレッシブな香りを持つトラックへと徐々に加速して行く中、フロアの温度は更に上昇を続ける。

Reinhard Voigt
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と、そのMIKUがプレイする傍らに見覚えのある顔が…。そう、何とReinhardがプレイの1時間前にも関わらず早くもステージに上がり、MIKUのサウンドに合わせてクラウド達に負けないくらい盛り上がっていたのだ。時にはフロアへと下り、サウンドを確かめるように体を揺らすReinhard。この人は本当に音楽が好きなんだなぁと改めて実感させられた光景であった。そして、いよいよブースの脇に設置されたライブセットのカバーが外され、ケルンが誇るサウンド・マイスターのライブセットがスタート。セットアップは、WINDOWSと思しきラップトップにコントローラー1台、それにFruity Loopsをホストとした至ってシンプルなものである。ブリープ・サウンドがWOMBの空間にこだまし、硬質なリズム・パーツを持つテックハウス風のミニマルチューンで幕をあけたReinhardのセットは、曲と曲の間でブリープが微妙に変化していく形で2曲目に突入。リズム・ループとブリープ音というシンプルなストラクチャーでありながら、それぞれのパーツが絡み合う事でグルービーなリズムが奏でられていく。そしてパーカッシブなブリッジと共にスタートした3曲目ではピッチも一気にアップ。フロアの盛り上がりは早くも最高潮になる。そして、徐々にベース音が低い場所でうねるジャーマン・テクノ風のトラックへと展開。疾走感はますます加速し、重いビートと縦ノリのグルーブを持つバンギンなチューンに筆者も完全にノックアウトされてしまう。

Reinhard Voigt Reinhard Voigt
Reinhard Voigt Reinhard Voigt
Reinhard Voigt

ステージ上のReihardは、コントローラーを振り回さんばかりの勢いでノブをツイストし、時に右手を高く掲げながらフロアの更なる歓声を煽り、クラウド達と完全に一体化したパフォーマンスを見せてくれていた。そして、極めつけは、16音符で延々と鳴り響く大音量のハイハットから始まったラスト・トラック。いつ終わるともしれない、ブレイク前のスネアロールにも似たこのハイハットの洪水には、多くのクラウドがやられてしまった事だろう。そして、ファットなビートがビルトイン。クラウド達にキッチリ止めを刺して、この日のReinhardのライブセットが終了した。個人的な感想では、ちょっと曲と曲の間のブリッジが冗長になる場所があって、出来る事なら後半の数曲はブリッジなしで一気に殺して欲しかったという希望はあったが、各曲のクオリティとその構成美は本当に素晴らしく、又しても取材を完全に忘れてしまう時間を過ごす事になってしまった。

DJ Godfather DJ Godfather
DJ Godfather DJ Godfather
DJ Godfather

さて、Reinhardの後を受けて登場したのが、本日のアニバーサリーイベントもう一人のスペシャル・ゲスト、デトロイト・ゲットーからの刺客DJ Godfather。地元デトロイトで開催するレジデント・パーティーには、毎週2,000人を超えるオーディエンスが押し寄せ、自ら提唱するデトロイト・ゲットー・エレクトロと共に、世界各地のクラブを荒らしまわっている男だけにフロア全体の期待が高まる。Reinhardのライブ最後のトラックがちょっと唐突に終わった為、少し間が空いてしまったが、そこへいきなり超絶スクラッチをかましての高速ブレイクビーツがカットイン!ものの30秒もしないうちに、さっさと次の曲へとスイッチし、フロアはあっという間に興奮のるつぼに包まれる事になる。BPMが軽く160を超えているような、まさにゲットーの持つ猥雑さと荒削りな雰囲気を体現したような高速トラックを次から次へと繰り出すDJ Godfatherは、時にはクロスフェーダーを駆使した2枚使いプレイでトリッキーなビートを生成したり、また時には、高速BPMも何のその、超絶スクラッチでブレイクビーツを作り出してしまう荒業まで披露しながら、笑顔一つ浮かべずにむしろ淡々と怒涛のサウンド・ワールドを展開していく。そして、ふとブースの横に目をやると、既にライブを終えたReinhardが、高速ビートに体を預けながら相変らず盛り上がっている。この人は本当に音楽が好きなんだろう…。

DJ Godfatherのサウンドは、ドラムン・ベース的なブレイク・ビーツを持っているものの、そのサウンド感は全くそれと異なったものであり、簡単に言えばエレクトロ・サウンドを高速回転させたような雰囲気をもつスタイル。慣れないクラウドの中には少し戸惑いを隠せない人も居たようだが、筆者にとってはこの奇妙キテレツとも言えるサウンドが何とも興味深く、特にReinardのプレイと比較をするとその味わいはひとしおであった。ドイツとデトロイト、それぞれの場所でダンスミュージックが独自に進化・発展し、ある種固有の生態系の中に息づいている…まさにダンスミュージックが生物と同じような進化を遂げている姿を、この日は目撃出来たような気がした。

DJ Godfather DJ Godfather
DJ Godfather
DJ Godfather
Reinhard Voigt Reinhard Voigt
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