HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Rasmus Faber


Steve Angello や Axwell といった DJ / プロデューサーの活躍で今大きな注目を集めているスウェーデンのハウス・シーンに置いても、ジャンルの垣根を軽快に飛び越えるクロス・オーバー・サウンドで頭一つ抜け出た存在として認知されているプロデューサー Rasmus Faber。

Defected のオーナー Simon Dunmore に見出されるきっかけとなった記念すべき曲 'Never Felt So Fly' や、自身のレーベル Farplane Records からの第一弾シングルでありクラブ・ヒットとなった 'Ever After' 、そして Reel People による 'The Rain' のリミックス・トラック等も収録されたベスト盤的なアルバム "So Far" をリリースしたばかりの彼が、この度プロモーションのために来日。同アルバムや、6月に控えた来日公演、また彼自身の音楽観について話を聞かせてくれた。

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> Interview : Matt Cotterill (HigherFrequency) _ Translation & Introduction : Yoshiharu Kobayashi (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 昨年9月に来日されたときは E メール・インタビューでしたので、今回はこうしてお会いできて嬉しいです。最近は、どのような活動をされていたのですか?

Rasmus Faber : とても忙しくしていたよ。実は、前回と今回の間に3回もアジアに来ているんだ。本当にタイトなスケジュールの旅だったけど、おかげでスウェーデンの長くて厳しい冬から逃れることが出来てラッキーだったとも言えるね。実際、今回スウェーデンを出発した日には雪が降っていたんだ。東京に着いたときも雨が降っていたけど、それでも助かったと思ったくらいさ。スウェーデンに較べれば全然ましだからね。

HRFQ : 雪以外には何にでも感謝といった感じですか?

Rasmus : そんなところさ。

HRFQ : 前回のインタビューでは、あなたのバックグランドや、Defected の Simon Dunmore と仕事をするに至った経緯を伺わせてもらいました。それなので今回は、もっと今の活動に焦点を当てたインタビューをさせてもらいたいと思います。まず5月24日にリリース予定のアルバムについてお話を伺わせてください。このアルバムには昔の曲もたくさん入っているのて、まるでベスト・アルバムといった感じですよね。

Rasmus : そうだね

HRFQ : これは少し変則的なやり方ですよね?と言うのも、まずオリジナル・アルバムを幾つか出してから、ベスト・アルバムを出すというのが一般的ですから。

Rasmus : でも、多くハウスのプロデューサーにとってはアルバムさえリリースしないのが普通だよね。ハウスはシングル中心の市場になっているから、僕もアルバムを作るつもりで曲作りをしていなかったんだ。日本ではダンス・ミュージックのプロデューサーもアルバムを作るのが普通なのは知っているけど、ヨーロッパやアメリカではそうではないんだよね。ハウスのプロデューサーがアルバムを作るのには長い時間がかかるものなんだよ。だからこのアルバムは、コンピレーションとオリジナル・アルバムのちょうど中間のような感じにしてみたのさ。それに、これまでの活動をまとめて次に進むためにも、こういったアルバムを作るのはいいことだと思ったんだ。

HRFQ : E メール・インタビューをしたときに、現在オリジナル・アルバムを制作中と仰っていましたが、今のところどれくらいまで出来ているのですか?

Rasmus : 今は色々なことを試しながら模索しているような段階なんだよね。このアルバムではフロア仕様の曲調とはちょっと距離を置いて、誰もがすんなりと受け入れられると同時に、高いクオリティをキープした普遍的な作品を作りたいと思っているんだ。だから、今は色々なアイデアを試して、それがどうなっていくか見ているのさ。色々なシンガーを使ってみたり、僕自身が歌ってみたりということもあるだろうね。

HRFQ : 面白そうですね。では、次の質問です。あなたはシングルの 'Ever After' によってハウスというジャンルに分類されることになりましたよね?

Rasmus : ああ、特にここ日本ではそうだね。

HRFQ : 日本人はジャンル分けが好きですからね。そのようにあなたをハウスというジャンルに分類するのは正しいと思いますか?

Rasmus : 正しいと思うよ。僕は自分でハウスというフォーマットを選んだわけだし、自分でもその選択には満足しているからね。ハウスというフォーマットに自分が受けた影響を落とし込むことによって、より多くの人に聴いてもらえる音楽にできる。それは一人の音楽好きのミュージシャンとして、本当に嬉しいことさ。そうすることによって、様々な違った音楽を分かりやすい形で提示できるのだからね。

HRFQ : ハウスは他の色々な音楽もその中に取り込むことが出来るので、そこに基盤を持つのはいいことだと思います。

Rasmus : そうなんだよね。そういった意味では、ハウスというのはユニークなジャンルだと思う。ジャズやソウルやラテンといった僕のバックグランドにある音楽はもっと限られた人向けだけど、それがハウスというフォーマットに落とし込まれると、一気に普遍的な音になってしまうんだからね。それに、日本ではそういった音楽的要素の豊富さは気にする必要は無いと思うけど、ヨーロッパやアメリカではちゃんと音楽を聴かせるためには、リスナーにある種のトリックを仕掛けないといけないんだ。「この音楽はハウスですよ、ダンス・ミュージックですよ」といった感じでね。まずそういうことをして、それからようやく自分の…。

HRFQ : 自分の世界にそっと導き込むわけですね。

Rasmus : そう、トリッキーなコード進行とかを使ってね。

HRFQ : 日本でも近いうちにそうしなくてはならない時が来るかもしれませんよ。分かりませんけど。

Rasmus : そうでないことを祈るよ。できれば、このままであって欲しいね。日本でもヨーロッパでも流行の浮き沈みがあるのは同じだと思うけど、どんな音楽が受け入れられるかというのは、その土地が持つ音楽的な土壌によって違うと思うんだ。だから、僕は色々なマーケットをターゲットに活動して、自分の色々な面を出していけたらと考えているよ。ヨーロッパではこうして、日本ではまた別の方向でちょっとやってみて、といった具合でね。

HRFQ : さて、ここまでは作曲についてお話を伺ってきましたが、今度はリミックスの仕事について伺わせてください。あなたはこれまでに Junior Jack や Kings of Tomorrow など数多くのリミックスを手掛けてきましたよね。リミックスの仕事は好きですか?

Rasmus : ああ、好きだよ。僕はリミックスでも自分の曲を作るのと同じようなアプローチを取っているんだ。原曲が元々持っている他のジャンルからの影響を、ちょっと取り込むようにするというね。例えば、 Junior Jack の "E Samba" はもっとラテンの要素が全面に出るようなリミックスにしたし、Kings of Tomorrow は元のメロディが Duke Ellington の曲からとったものだったから、ミュージカルっぽい感じで仕上げてみたんだ。そう、だからリミックスは大好きだよ。

HRFQ : 曲のエッセンスを取り出して、それをどこまで広げられるか試してみるのが面白いということですね。

Rasmus : それもあるし、自分一人で曲を作っているときには思い浮かばないようなアイデアが出てくるのも楽しいんだよね。

HRFQ : そうやって出てきたアイデアを自分の曲に取り入れることもあるんですか?

Rasmus : あるとも。どんな作業からだって影響は受けるものさ。それに僕はリミックスにだって思い付いたアイデアは全部注ぎ込むようにしているんだ。いいアイデアはオリジナル用に取っておくなんてことはしないよ。それくらいリミックスも大好きなんだ。

HRFQ : Steve Angello,、Sebastian Ingrosso、Axwell といった他のスウェーデンのアーティストとも交流があるのでしょうか?

Rasmus : ああ、彼らとは知り合いさ。でも、今君が名前を挙げた3人以外にも、もっと仲のいいミュージシャンの知り合いがいるよ。この3人はとてもタフな音楽を作るから、知り合いの中では一番音楽的に遠いのではないかな。Axwell とは結構近いものがあったけど、今や彼はもっとタフな音楽を作るようになっているからね。でも、S.U.M.O、Markus Enochson、Tiger Stripes、Stonebridge といった人たちとは近いものを感じるな。

HRFQ : 次々と新しい人たちが出てきていますよね。

Rasmus : そう、それで僕たちはお互いのことを知っているし、いい意味での競争心もあるから、小さな仲間のグループみたいなものを作っているんだよね。そのグループでは、年に一度集まって週末をゆったり過ごしたり、音楽のことを話し合ったりするんだ。

HRFQ : ちょっとしたヴァケーションみたいなものですかね?

Rasmus : まあ、そんなところだね。実際、僕たちはみんな週末には DJ があるから、週末に集まるのは無理なんだけど。だから僕たちは平日の夜にどこかへ行って、サウナに入って音楽のソフトウェアとかのことについて話したりしているんだ。イギリスみたいに競争が激しくてピリピリしているところとはだいぶ違うよね。

HRFQ : あなたたちのやり方のほうが賢いし、素晴らしいと思いますよ。ところで、あなたのライブには様々な要素が詰め込んであって、とても賑やかな感じがしますよね。ライブについて少し教えてもらえますか?

Rasmus : 僕にはミュージシャンとしてのバック・グラウンドがあるから、いつかは僕のアルバムでプレイした人全部を集めたフル・バンドでやってみたいと思っているんだ。でも、実際フル・バンドでツアーをするのはお金もかかるし難しいよね。だから今は、僕の曲に一番参加してくれている二人と一緒にライブをやっているんだ。一曲以外は全ての曲でプレイをしているパーカッション奏者、よく使っているヴォーカリストの Melo、そしてルネッサンスの時代のように DJ をしながらキーボードを弾く僕といった編成さ。とにかく、僕たちはたくさんのライブをやるから、去年からずっと忙しくしているよ。僕たちはクラブでやるにも十分にコンパクトな編成だし、ライブハウスでやるにも問題ないだけの人数が揃っているわけだから、本当にちょうどいい組み合わせだと思うね。

HRFQ : 今回はプロモーション来日であって、ツアーをする予定は無いのですか?

Rasmus : うん、今回は無いよ。関係者向けの小さなギグはやるんだけど、ちゃんとしたツアーは6月末になる予定なんだ。6月24日に Unit でギグをやるんだけど、そのときは東京以外も回る予定だね。

HRFQ : Unit は、いいクラブですよ。サイズもちょうどいいですしね。さて、もう少しだけインタビューを続けさせてください。あなたは前回のインタビューで面白いことを言っていましたよね。「有名なDJに褒めてもらえるのも嬉しいけど、普段ハウスを聴かないような人たちが僕の作品を気に入ってくれたときが一番嬉しいんだ。例えばジャズ・ミュージシャンとか、ヒップ・ホップが好きなキッズとか…」という発言のことですけど。

Rasmus : ある意味、僕は折衷的な音楽の作り方を目指しているんだ。と言っても、そこにマイナスの意味はないよ。歳をとったジャズ・ミュージシャンにも理解されるけど、クラブ・ファンからもジャジー過ぎるといって敬遠されないような、ちょうどいいバランスを目指そうとしているという意味さ。実際、それは本当に難しいことだけど、僕がいつもチャレンジしていることでもあるんだ。よくプロデューサーには音楽的なことで褒められるけど、それよりそんなにダンス・ミュージックのことをよく知らない人から気に入ってもらえた方が僕は嬉しいよ。小難しいことは考えないで、あるがままを楽しんで欲しいんだ。

HRFQ : そのようにして受け入れられる音楽は、ジャンルの壁を破って普遍的な魅力を持っているということですよね。前回、あなたは日本にはそんな沢山のファンはいないと思うと仰っていましたが、今や状況はすっかり変わりました。最後に、あなたの沢山のファンに向かってメッセージをお願いできますか?

Rasmus : ええと、そうだな。正直、まだ僕には日本に沢山のファンがいるのが実感できてないんだ。だから、みんなライブに来て僕に顔を見せて欲しいな。そうすれば、ようやく僕も実感できるからね。

HRFQ : お話が聞けて嬉しかったです。本日はお時間ありがとうございました。これからも頑張ってください。

Rasmus : ありがとう。

End of the interview

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