HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Phil Mison Interview

盟友Jose Padilaと共に、Cafe del Marの全盛期を支え、イギリス初のチルアウト系コンピレーションを作った事でも知られるDJ Phil Mison。彼がコンパイルしてきた"Real Ibiza"シリーズは、良質なダウンテンポ・トラックが満載されたチルアウト系のバイブルとして、世界中のファンから愛され続けている。またPhilは、Christophe Gozと共に結成したユニットCantomaにおいても、昨年9月にデビューアルバム"Cantoma"を発売。官能的とも言えるまでのサウンドスケープで、世界のチルアウト・ファンをメロメロにしてくれたばかりである。

過去に二度来日を果たし、日本でもすっかりお馴染みの顔となった感のあるPhil Mison。そんな彼に、HigherFrequencyロンドン特派員 Matt Cheethamがインタビューに成功。Cafe del Marの夕陽を10年近くに渡って見つめてきた彼に、確実に成熟しつつあるチルアウト・シーンの現在について話を聞いた。

> Interview : Matt Cheetham (Samurai.fm) / Translation : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 2004年ももう半分以上が経過しましたが、今年はどんな年ですか?

Phil Mison : とてもいい感じだよ。今年は世界中を旅してるんだ。4月にはフィリピンでDJして、すごくよかったよ。あと、スカンディナヴィアへもツアーをしてノルウェイとスウェーデン、デンマークを回ったし、イビザにも少し行ったし。いろいろなとこに出かけて、すごくいい感じだよ。

HRFQ : いつ頃DJになりたいと決心されたんですか?

Phil : 今まで一度もDJになろうと思ったことはないんだよね。自然とそうなったんだ。 DJになろう!みたいな大きなプランを立てたことはなくて、ただいつもレコードは買っていて、自然とDJになったって感じだね。アート・スクールを卒業して、News Internationalに2・3年勤めたあと、なんとなくDJを始めたんだ。

HRFQ : どうしてチルアウト・ミュージックやチル・アウトのイベントは、そのほかのハードなエレクトロニック・ミュージックに比べて注目されることが少ないのだと思われますか?

Phil : でも、最近ではThe Big Chillのように、決して大きくないけれど、他のダンス・ミュージックのフェスティバルと比べても引けをとらない、高いクオリティのチル・アウト系のイベントも出てきているよ。それに、最近の流れとして大きいハード・コアなダンス・ミュージックのイベントに行きたいと思う人は少なくなっているみたいだし。もちろんクラブに行く人は踊りたいと思って行くんだから、普通のクラブ・イベントでは踊れるダンス・ミュージックを流すけれど、The Big Chillはそれに少し反したセオリーを持っているイベントなんだ。若い頃にダンス・ミュージックを聴いて育ってきた大人のリスナーは、もうクラブでハードなテクノを聴きたいとは思わないんだよ。あと、健康的で、チル・アウトとテクノの中間をとったようなバレアリック・シーンというのも出てきたし。

HRFQ : あなたはイビザのCafe Del Marで、2年間レジデントDJをつとめられましたね? どうしてそれ以降イビザでプレイすることをやめてしまったのですか?

Phil : もう十分だと思ったんだ。2年間レジデントをつとめたし、あの島の音楽も変わってしまったし。イギリスのクラブ・カラーに染まってしまった感じがして、そういうのはあんまり好みじゃないからね。ああいうハードな音楽にはまったことはないんだ。

HRFQ : イビザでの一番の経験はなんでしたか?

Phil : そこで経験したことすべてかな。一番の経験というと難しいけど、ベストだった瞬間をあげるとすれば、夜の11時くらいに、バーが人でいっぱいになった時。DJしながら、人であふれて波打ったようになったバーを見てたのを覚えてるよ。日中や、サンセットのイビザも素晴らしいけど、夜のギグもすごくよかったよ。

HRFQ : あなたが訪れた国の中で、一番素晴らしいレフト・フィールド/アンビエントのシーンがあるのはどこですか?

Phil : 海外でプレイする時はレフトフィールドやアンビエントはかけないから、ここで言うのは難しいけど…多分イギリスが一番だろうね。the Big Chillのようなレフト・フィールド/アンビエント専門のイベントがあるのはイギリスだけだしね。

HRFQ : あなたがプレイしたり、参加した中で一番のイベントは何ですか?

Phil : The Big Chillはいいよ。今年の始めに行ったフィリピンも良かったし。ビーチで夕暮れ時にプレイしたんだ。どこでもいいけど、雨のふっている時に、どこかのしけたバーでプレイするよりかは、暑いさなかにビーチでプレイするのがいいね。音にも格段の違いが出てくると思うよ。

HRFQ : どのプロモーターが良いチル・アウトのパーティーを行なっていると思いますか?

Phil : マンチェスターにAficionado'sっていうクラブがあるんだけど、毎週日曜日にバレアリックのイベントをやっていて、これがスゴクいいんだ。あとはRadio 1のRob Da BankのSunday Bestもいいパーティーをやってるね。

HRFQ : 成功するチル・アウト・パーティーの秘訣とはなんですか?

Phil : デコレーションが大きくものを言うよね。チル・アウトのパーティーにはあまり行かないんだけど、Sunday Bestはいろんな音楽を流すいいパーティーだと思うよ。ただアンビエントだけを流してたら、やっぱり人も飽きてしまうよね。だから、いろいろなジャンルの音楽をかけなきゃいけないとも思う。でも、やっぱりデコレーションが一番大事かな。あと分別のあるいいお客さんも良いパーティーには欠かせないね。

HRFQ : 現在、どのアーティストがチル・アウト/バレアリック・シーンを良い方向に引っ張っていると思われますか?

Phil : パリのBuddha BarのRavinかな。先週も彼を見るためだけにパリに行ってきたんだけど、彼は素晴らしいよ。ソーホーのHakkasanでプレイしているFrancesというDJもいいし、Rob Da Bankも、マンチェスターで活動している友達のMoonbootsもいい。日本人のアーティストではCalmが好きだな。何年か前に彼のアルバムを初めて買ったんだ。Bayakaというアーティストも、チルなワールド・ミュージックに日本らしいエッセンスの加わったおもしろい音楽をつくっていて、好きだよ。

HRFQ : オンラインであなた自身のウェブ・サイトや、Cantomaやあなたに関する詳しい情報が載ったページを見つけられなかったのですが、なぜインターネットでの露出にあまり力を入れていないのですか?

Phil : そう、力を入れるべきなんだよ!いつも「ウェブをみたけど、君の情報はどこを見ても見つからないよ」って言われてしまうんだ(笑)。だからちょっとでもお金を使ってなにか作るつもりだよ。シンプルなインフォメーションやバイオとか、知りたい人が見れるようにね。

HRFQ : インターネットの普及は音楽業界にとってプラスになっていると思いますか?それともマイナスだと思われますか?

Phil : 悪い影響なんじゃないかな、だって今は現物のCDをわざわざ買いに行かなくても、簡単に音楽をダウンロード出来てしまうからね。あんまり良くないことだと思うよ。コピーされたCD-ROMだったらCDプレイヤーでプレイできないとか、そういうシステムをつくるとか何かすればいいのに。僕はただ手書きで名前が書いてあるようなつまらないCD-ROMをいっぱい持っているよりも、CDのパッケージとかアートワーク自体が好きだからCDを買いに行くのが好きなんだ。

HRFQ : じゃあ、まだCDを買っているんですね。

Phil : もちろんだよ。手持ちのCDを全部聴き尽くして飽きてしまったら、また新しいCDを買うしかないじゃないか。僕はだいたい毎月150ポンドくらい新しいCDに費やしてるよ。

HRFQ : これから2、3年にかけてのあなたのプランを教えてください。

Phil : どうだろうね!でも音楽はつくり続けると思う。あとは様子を見ながら2、3年過ごしてみて、それから考えるよ。でも、今のところは世界中を旅してDJをしたり、音楽をつくったり、リミックスをしたりすることで十分幸せかな。Cantoma のほかに、Reverso 68っていうプロジェクトを友達のPete Herbertと始めるんだけど、既に12インチもリリースしてあって、Bentの"Comin' Back"のリミックスもしたし、今度Lazy Boyのミックスもする予定なんだ。

HRFQ : これからもイビザでプレイし続けたいと思いますか?

Phil:誰かが以前、「イビザは、少し放っておくとまたむず痒くなって、思わずまた掻いてしまうかゆみみたいなもの。必ずまた戻りたくなってしまうような島だ」と言っていたけど、僕はまたイビザに住みたいかどうかはわからないな。でも、イビザを訪れるのはいつでも楽しいし、また行きたいとは思ってるよ。

End of the interview

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