IBIZA 2004

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Welcome to Party Island- Quick Guide to Ibiza -

Ibiza photo1熱狂と興奮に包まれた真夏の3ヶ月間、突如としてヨーロッパのダンスミュージックシーンの聖地へと変貌を遂げる地中海の島イビサ。世界のトップDJたちをフィーチャーしたパーティーが毎日のように用意され、ゴージャスな雰囲気を備えたクラブが軒を連ねるこの島には、その最高の瞬間を目撃しようと、全世界から大勢のダンスミュージック・ファンが押し寄せ、6月の中旬のオープニングから9月の中旬のクロージング・パーティーまでの間、まさに連日連夜のお祭り騒ぎが毎年繰り広げられている。

クラブは島内の至るところに存在するが、特にIbiza TownとSan Antonioの間の地区には 世界的にも有名な魅力的なクラブが密集し、スタイリッシュでセレブな雰囲気が売りのEl Divinoから、洞窟の様な造りをもったギネス・ブック公認の世界最大のクラブPrivilegeに至るまで、それぞれの店が独自のカラーとコンセプトを打ち出して、様々な趣向を凝らしたパーティーで激しく凌ぎを削っている。

そもそもイビサがヨーロッパで注目を浴び始めたのは1987年のこと。Nicky HollowayやDanny Rampling、Johnny Walker、それにPaul Oakenfoldといった4人のDJが、ヴァカンスでこの島を訪れた時に遡る。かつて70年代の頃は、ヒッピーの多く集まる場所としてその名を馳せていたイビサには、この地域特有の快楽主義的な思想が根付いており、それに触れる事で大いに感化された4人は、その考え方をイギリスに持ち帰ることを決意。同じ頃にアメリカから押し寄せていたハウスミュージックの波と、エクスタシーという新たなカルチャーの力を借りつつ、セカンドサマー・オブ・ラブという一大ムーブメントをイギリス中に巻き起こす事に成功する。そして、この大きな流れの中で、突如としてシーンの中で注目される事となったイビサ島は、その後も、ダンスミュージックの聖地として、毎年数多くのダンスミュージック・フリークが訪れる場所へと変貌を遂げていくのである。

Ibiza photo1 やがて、多くのメディアによって取り上げられることで、毎年数えくれないくらいの観光客を迎え入れるようになったイビサは、やがてCreamやMinistry of Sound、Gatecrasherと言ったイギリスに拠点を置くレーベルやプロモーターたちが、プロモーション目的で独自のパーティーを展開する場所としてもクローズアップされていく事になる。ある者は去り、ある者はその場に留まったが、30ユーロと言う高い入場料から得られる興行収入は勿論、毎年訪れる何万という音楽ファンに対して、自らのレーベルの作品やブランド・イメージを訴求できると言うプロモーション・メリットの大きさは計り知れず、彼らの本格的な参入によって、イビサは文化的な匂いのする聖地から徐々に巨大なビジネス市場へとその姿を変えていくのである。

その結果イビサは、ありとあらゆるエレクトロニック・ミュージックを代弁していく場所へと成熟。今では、Cafe Del Marの夕陽をバックにプレイされるアンビエント・ミュージックから、Sven VathとRichie HawtinのオーガナイズするCocoonのパーティーで聞かれるようなアップリフティングがテクノに至るまで、様々なタイプの音楽が、日夜を問わず訪れたお客を魅了し続けている。勿論、それなりに値段が張る入場料やドリンク代との引き換えではあるが・・・。

Ibiza photo1 さて、クラブやサン・アントニオのような観光客相手のスポットを別としても、イビサには昔の姿をそのままに留めた、美しい地中海のパラダイスがまだまだ残されている。雲のない青い空、人里離れたところにひっそりとあるビーチ、そして起伏の激しい内陸部。これら大自然が生み出した財産は、イビサに観光スポットとしての魅力をも充分に与えてくれていると言えよう。また、数千年の歴史を誇るこの島には、豊かな歴史的遺産もたくさん残されており、オールド・イビサ・タウンはそれを最も顕著に表している場所として多くの観光客が訪れている。一方、新市街とハーバー・エリアは、トレンディーなレストランやバー、そしてデザインー・ブランドのショップなどが立ち並び、より発展した近代的な雰囲気とコマーシャルな側面を持つ地区として多くの観光客の人気を集めており、この旧市街と新市街の二つの地区のコントラストが、この島のひとつの魅力であると言ってもよいだろう。

ローカルのスペイン料理に関しては、島内のどこでも楽しむことが出来、最高の料理を提供してくれる高級レストランもいくつか存在している。勿論、こういった場所はいくらか値段も張るところが殆どであるが、特に郊外に位置するレストランの立地環境やその周りの風景は筆舌に尽くしがたいものがあり、それだけのお金を払っても充分に価値のあるものだと言えるだろう。ただ、東京やロンドンで軽く食事を済ませる時に払うような金額で楽しめるチョイスは極めて限られており、あったとしても殆どは極めてベーシックなものしか味わえないのが現実のようだ。

イビサへの往来は非常に簡単で、スペイン本土からの便やヨーロッパの主要都市からの直行便が毎日出ているので、こちらを利用する事になる。また、数週間滞在する事を予定している人には、フライトとホテルがセットになった安いパック料金も予定されており、到着と出発の日にちはフィックスされていると言う制限もあるが、ハイシーズンにおいては特に威力を発揮する格安プランであると言えるだろう。

Ibiza photo1 以上、駆け足ではあるがイビサの入門編的なガイドをお届けしてきたわけだが、ダンスミュージックのファンであるならば、一度は必ず訪れてみたい場所である事は間違いないだろう。確かに、ここ数年来の急速なコマーシャル化に眉をひそめる人も少なくはないし、かつての黄金期にこの島を訪れた人からすれば、「イビサは変わってしまった」と言う事なのかもしれない。セレブを気取った人が闊歩し、サッカー選手や映画俳優がVIP席に陣取っているのを見て、「これはアンダーグラウンドではない」と批判する人も少なくないだろう。しかし、イビサには能動的に楽しみと快楽を追い求める人に非常に寛容である伝統が今も息づいており、自分なりの楽しみを見出せば、必ず最高のサマーシーズンを最高のダンスミュージックと共に過ごすことが出来るはずである。しかも、まだSven VathもRichie HawtinもSteve LawlerもJohn Digweedもガンガンにプレイしているのである。あと、5年経てば、「2004年の頃はまだまだアンダーグラウンドだったなぁ」なんて振り返っている人がいるのがこの世界の常だし、「今さらイビサは無いでしょ」とか食わず嫌いを言っている人に限って、現地に行くと一番楽しめてしまったりするものである。

まだまだ現役バリバリのダンスミュージックの聖地イビサ。今年の日本の猛暑に辟易している人は、この機会に一度出かけてみてはどうだろうか。きっとそこには、あなたのダンスミュージック・ライフに影響を与える何かがあるはずだから。勿論、休みが取れればの話だが・・・。

Text by Matt Cheetham & H.Nakamura(HigherFrequency)