HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Frank Lorber Interview

若干16歳にしてドイツはフランクフルトの伝説的なクラブ Omen でレジデントを務め、現在は Sven Vath 率いる Cocoon の中心メンバーとして目覚しい活躍をみせている Frank Lorber は、31歳にして既に15年にも及ぶ DJ 歴を誇る若きベテランである。先日、盟友である Pascal F.E.O.S. と共に来日して ageHa@studiocoast でプレイをした際も、ドッシリとしたグルーヴを持つエレクトロ・セットを披露して、シーンの移り変わりを巧みに読み取りながらプレイ・スタイルを進化させることができる鋭い嗅覚を持った DJ / プロデューサーであることを真正面から証明してみせたのも記憶に新しい。

そんな Frank がプレイをする直前に、HigherFrequency はインタビューを敢行。DJ を始めた当初のことから、最近特に力を注いでいるという自身のレーベル Nummer-Schallplatten のことまで隈なく話を聞くと、15年にわたる長いキャリアの中でも全く揺らぐことの無い彼の音楽に対する純粋な愛情が言葉の端々から滲み出ていることを確かに感じ取ることができた。

> Interview : Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation & Introduction : Yoshiharu Kobayashi (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : あなたが運営しているレーベル Nummer・・・すみません、どうやって読むのか教えてもらえますか?

Frank Lorber : (Nummer) Schallplatten だよ。英語圏の人にとっては難しい発音だろうね。

HRFQ : Schallplatten はレコードという意味ですか?

Frank Lorber : そう、レコードのこと。レーベル名はドイツ語にしたいと思っていたんだ。だから、ナンバーって意味の Nummer と、レコードを意味する Schallplatten を使ったのさ。

HRFQ : なぜ ‘03年に Nummer-Schallplatten を始めようと思ったのですか?あるとき突然思い立ったという感じなのでしょうか、それとも前々からレーベルを始めたいと考えていたのですか?あなたはこの業界で長いキャリアを持っていますから、そこが少し気になったんです。

Frank Lorber : 俺は ‘94年に Pascal F.E.O.S. との共作で初めてレコードをリリースして、これまでもたくさんの作品を発表してきた。でも、しばらくやっているうちに、レコード出すためのシステム全体が嫌になってしまったんだ。つまり、レーベルに作品を送って、応えを待つといったようなことがね。応えが来ないときだってあるしさ。だから、’03年にはもうそんなシステムにうんざりしてしまっていたし、10年以上のキャリアのおかげで業界の仕組みも分かっていたから、自分でレーベルをやるのが一番簡単だという結論に達したんだ。そういった、ある意味、自分の誇れるやり方で作品をリリースしていけば、後々「あれでよかったんだ」って言えるだろう。色々なレーベルから作品をリリースできたのは嬉しかったけど、色々と時間がかかり過ぎてしまうからね。

HRFQ : 先ほど、初めてリリースした作品は Pascal との共作だとおっしゃっていましたが、他にもたくさんのコラボレーション作品を発表していますよね。一人で作品をつくるよりも、誰かと一緒に作業するほうが楽しいのでしょうか?

Frank Lorber : ああ、コラボレーションの方が好きだね。俺はスタジオにこもって作業するのが好きなタイプじゃない。自分では 80% DJ で、20% スタジオで作業するプロデューサーだと思っているよ。自分のスタジオも持っているけど、他のミュージシャンから影響を受けて作品をつくる方が好きなんだ。Pascal や Johannes Heil のスタイルはよく知っているし、一緒に作業するといいものができるのも分かってる。だから、誰かとコラボレーションする方が好きなんだ。

HRFQ : あなたのスタジオは、 Eye Q や Harthouse が以前あったところにありますよね。この二つのレーベルは、ドイツではかなり重要な存在でしたか?

Frank Lorber : ドイツだけじゃなくて、世界中のテクノ・シーン全体にとって重要なレーベルだったんじゃないかな。Harthouse や Eye Q が ‘90年代初期にリリースした作品のサウンドは、俺も含めてたくさんの人に影響を与えたと思う。だから、本当に重要なレーベルだったと言えるね。大物やいいアーティストの作品をたくさんリリースしてきたレーベルさ。

HRFQ : Nummer-Schallplatten もそんなレーベルにしていきたいと思っていますか?

Frank Lorber : そう思ってる。俺はレーベルの仕事に持てる限りの時間を注ぎ込んでいるんだ。アートワークから何から全部自分でやっているから、本当に忙しく働いているよ。

HRFQ : 今は 2 Dollor Egg や Sikora といったアーティストを抱えていますが、これからもっとたくさんのアーティストの作品をリリースしていくつもりですか?それとも今の所属アーティストの作品のリリースに集中するつもりですか?

Frank Lorber : もっとたくさんのアーティストの作品を出していきたいね。例えば、Agaric という名前で活動している San Lebowski ってアーティストがいるだろう。彼は今結構名前が知られているけど、できれば俺はあまり有名なアーティストの作品は出したくない。だから、俺は San に新しい名義を使ってくれるように頼んだんだ。「あの Agaric をうちのレーベルから出しているんだ」 と言う方が簡単さ。でも音楽ってものは、そのアーティストが有名だからじゃなくて、曲がいいからという理由で売られるべきだと思ってるんだ。だから、Agaric じゃなくて新しい名義を使ってくれと頼んだのさ。こういったやり方は上手くいっていると思う。Nummer-Schallplatten から出すアーティストを決めるときは、‘90年くらいからの自分のレコード・コレクションをみてみるのさ。それで、例えば ‘95〜96年ごろに活躍したサンフランシスコの Kit Clayton っていうプロデューサーに電話して、「あなたの昔の曲の大ファンなんですけど、Nummer から曲をリリースすることに興味はありませんか」って言ったんだ。でも、彼はアンビエント作品をつくっていたから、試しに「もっとダンスフロア向けのものをつくってみませんか」と頼んでみたのさ。そしたら彼はテクノ寄りの曲をつくってくれたから、今年の年末にはリリースすることにしたんだ。

HRFQ : その曲は別名義でリリースされる予定ですか?

Frank Lorber : いや、それは Kit Clayton 名義でリリースされるんだ。彼は別名義を使うことに興味が無いみたいだったからね。

HRFQ : あなたも別名義で作品をリリースすることはあるのですか?

Frank Lorber : ほとんどは Frank Lorber としてリリースしているけど、Johannes Heil とのプロジェクトで Project 69 という名義も使っているよ。そのプロジェクトで別名義を使っているのも同じ理由で、Frank Lorber と johannnes Heil と名乗るのは安易過ぎると思ったから、別のプロジェクト名を使ってみたんだ。

Frank Lorber Interview

HRFQ : ‘93〜94年ごろは Omen でレジデントを務めていましたが、初めて海外でギグをしたときでもありますよね。初めて海外でプレイしたときはどんな気分でしたか?

Frank Lorber : 最高だったよ。まだ若くて経験も少なかったからね。当時、俺は本当に若かったんだ。今は31歳だけど、Omen でレジデントを始めたときはまだ16歳だった。本当に早くから DJ を始めたから、初めてロンドンでプレイしたときもまだ17歳だったんだ。だから、かなりナーヴァスになっていたけど、本当に興奮したのも覚えているよ。誰かが俺のために航空券を手配して、ホテル代も払って、クラブでのプレイに対して報酬まで出してくれることにびっくりしたものさ。本当に新鮮だったね。

HRFQ : 日本など海外に行くことは、今でもあなたにとってエキサイティングなことですか?

Frank Lorber : もちろんさ。日本は旅して回るにはお気に入りの国の一つなんだ。いつ来ても素晴らしいし、飽きたことも無い。「明日はニューヨークでプレイしなくちゃ。次の日は東京か、ああ・・・」って考える DJ もいるだろうけど、俺はそういったタイプじゃないんだ。いつでも旅することを楽しんでるよ。今回は友達と一緒に回っているんだけど、彼女と一緒のときもあるし、いつも素晴らしい経験させてもらっていると思うね。

HRFQ : 10年間も続けていて、まだそういった新鮮な気持ちを失わないのは素晴らしいですね。

Frank Lorber : そうだね、たぶんずっとこの気持ちを失うことは無いと思う。だから、いつも新しいことをみたり学んだりして、若々しい気持ちのままでいられるんだろうね。心からこの仕事ができることを嬉しく思っているよ。自分の好きなことをさせてくれることを神様に感謝して、毎日お祈りをささげているんだ。音楽は俺の趣味であり仕事でもあるから、本当に感謝の気持ちでいっぱいだね。

HRFQ : 新しいミックス CD “Frank Lorber In The Mix- Play” が出たばかりですが、前作をリリースしてから4,5年が経っていますよね。どうしてこんなにも時間がかかってしまったのでしょうか?なぜこれほどの長い間リリースせずにいたのですか?

Frank Lorber : 分からないよ。前作は ‘01年ごろに出したんだけど、そのころは色々と旅して回っていたし、レーベルを始めようっていうアイデアが思い浮かんでいたから、新しいミックス CD を手掛ける時ではないと思ったんだ。色々なアイデアが頭の中にはあったさ。でも、俺はいつもビジネスのことばかり考えてるようなタイプじゃない。名前を売るためにスタジオに入ってミックス CD をつくることを考えたりはしないんだ。自分でもよく分からないけど、新しい ミックス CD をつくるにはちょっと時間が必要だったのさ。

一年前にも Cocoon の人間が同じようなことを聞いてきたよ。音楽性が変わってきたから、そろそろ新しいミックス CD をリリースしてもいいんじゃないかって。今回新しいミックス CD を出した一番の理由はそこだね。‘01年に出した前作は、今とは全く違うスタイルのものだからさ。いつだって新しいレコードを探しているから、俺のプレイ・スタイルは常に変化し続けてる。音楽的なスタイルが変っているから、リスナーにも今俺がどんなプレイをするのか聴いてもらうときだと思ったのさ。それが今回のミックス CD を出した一番の理由なんだ。でも、今はほとんど時間をレーベルの仕事に割いているよ。

HRFQ : ということは、Nummer-Schallplatten から他のプロデューサーの作品をリリースしていくことに今は力を注いでいるということですね?

Frank Lorber : もちろん。例えば、2 Dollar Egg は個人的にもいい友達なんだけど、彼らは2人組で・・・だから、彼らは 2 Dollar Egg って名前なんだけどね。昼間の仕事を終えると、彼らはスタジオに行くエネルギーが残っていないみたいなんだ。疲れているし、自分たちの生活もあるからね。でも、才能のある人たちなのは間違いないから、ちゃんと環境を整えて、作業を続けてもらえるように努力しているんだ。話し合って、励ましたりしながらね。

HRFQ : そういった仕事はビジネスと捉えていますか、それとも趣味的なものなのでしょうか?

Frank Lorber : 趣味的なものだね。もちろんビジネス的な側面もあるよ。でも、基本的には楽しいからやっているんだ。俺は本当に音楽が好きだし、10年、15年のキャリアがある今は、音楽シーンについても結構分かってる。どういう仕組みか分かっているから、その中でやっていくのも前より楽なんだ。だから、大変な仕事だとかビジネスだとか考えずに済むのさ。もちろん俺のやっているのも大変な仕事ではあるけど、毎日朝8時から8時間ずっと壁を塗っているような仕事こそが本当に大変な仕事だと思うよ。だって、誰もそんな仕事好きじゃないからね。

HRFQ : 本日はお時間をいただき、ありがとうございました。どうぞ他の DJ のセットもご覧になってきてください。

Frank Lorber : ありがとう。

End of the interview


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