HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

「アクシデントというより、'Hasard' について話したいね。'Hasard' は僕たちの音楽の一部であり、人生を左右するものなんだ。音楽も左右されているよ。」

フランス・エレクトロニック界の天才 Priciples Of Geometry に、アルバム "Lazare" の制作の際、幸運なアクシデントで生み出されたものはどれぐらいあったのか聞いてみると、こんな思慮深い答えが返って来た。それはまるで彼らの音楽の複雑性を反映しているようだった。

Priciples Of Geometry こと、Guillaume Grosso, Jeremy Duval の2人は、共に流暢に英語を話し、自分たちの考えを伝える際には慎重に言葉を選んでいるようだった。インターネット辞書によれば、この 'Hasard' というフランス語は 「チャンス」、「危険」、「運」、そして、「アクシデント」 を意味するそうだ。
二人は何故この言葉を使ったのかをこのように説明してくれた。

「 'Hasard' を英語に訳したらどうなるかを考えたんだけど、良い言葉が見つからなかったんだ。たとえば英語の 'Chance' っていう言葉は、フランス語では 『運』 っていう意味になる。でも僕たちは 『運』 だけの話をしてるんではないんだ。運 (Chance) というよりも運命 (Fate) の一部として物事が引き起こされることがあるっていうのを指摘したかったんだ。運命があって、そして運がくるんだよ。」

Principles Of Geometry は2007年、『過去10年で最も優れた作品』 とアンダーグラウンド・シーンから評価を得たアルバム "Lazare" を発表したにもかかわらず、それが未だにアンダーグラウンドのままになっているのは、あまり 「運」 がなかったようにも思える。しかし、彼らは二人ともこのアルバムが辿っている運命に対して非常に満足しているようだった。

「僕たちがやりたかったのは、自分達が聴きたいものを作り出すことだったんだ。そして "Lazare" を作っているとき、僕たちが聴きたかったのは 『人生』 だったんだよ。僕たちはこの人生というものを、最もシンプルで、かつありのままに表現したんだ。光、闇、愛、怒り。これが僕たちが焦点を置いてる真実なんだ。でも、人間の真実を定義したわけじゃない。このアルバムでは、もっと個人的な感情を表現したかった。そうすることで "Lazare" には命が吹き込まれたんだ。」

では彼らは "Lazare" がオーバーグラウンドにクロスオーバーしなかったこと、そして、もし Massive Attack やPortishead のような形でリリースをしていれば、ミリオンヒットにも繋がったかも知れなかったと気づいた時、運が無いとは思わなかったのだろうか?

「はは、全然だね。"Lazare" は今でもちゃんと認識されている作品だよ。それが自分達が成し遂げたことさ。もちろん、UKでもこのアルバムが流通されたら嬉しいけどね。」

現在も彼らはフランスの老舗レーベル・TIGERSUSHI から エレクトロニックのバラードをリリースしているが、それらはメディアの権威や、Border Community の "流行請負人" である James Holden、そして僕自身 (Skrufff) も魅了し続けている。

「まず初めに、僕たちの音楽を愛してくれることに感謝してるよ。音楽は理解され、シェアされていることによって命を授かるんだ。それが音楽が存在する理由だからね。そして James Holden、僕たちも君が大好きだよ。」

Interview & Introduction : Jonty Skrufff (Skrufff.com)
Translation : Shogo Yuzen



triangle

Skrufff : まず君たちの現状を聞きたいんだけど、今はどんなことをやってるの?新しいアルバムがリリースされたりする?

P.O.G : 今度 TIGERSUSHI からリリースされるコンピレーション "More GDM" に収録される 'Americhael' っていう新曲のマスタリングを終えたところだよ。このコンピレーションはレーベルの10周年記念のリリースなんだ。そして、'Americhael' は目下制作中の新しいアルバムにも収録される予定だよ。あと、EPも制作中だよ。
僕たちは音楽に時間をかけるんだ。まるで木材を扱う大工みたいにね。

僕たちの音楽の裏には商業的戦略なんて無いから、僕たちは音楽だけに集中することができる。だから、僕たちは作品の準備がきちんと整って、完成された状態のものしかリリースしないんだ。みんなが僕たちを待ってるっていう風にも思ってないから、特に急かされていることもない。だから、僕たちは気にせずにずっとシンセの音をいじってるんだよ。オタク的な幸せだね。他には、自分達の趣味でリミックスを作ったりしてる。良いものが出来上がった時は、アーティストにリリースしてもいいかを聞くようにしてるんだ。

あと、今は 3D映像ショーの制作プロジェクトにも参加しているよ。ブリストルを拠点にしてる "Anti VJ" っていうクリエイター集団と一緒にやっていて、僕らがドラマーと一緒にエレクトロニック・ミュージックをライブ演奏して、3Dメガネをかけた何百人の観客にアシッド感のある 3D映像を見せる、ってものなんだ。面白いでしょ!かなりいい感じだよ。


基本的には映像に音楽という効果を付け加えて、さらにその他のものにも付け加えて…っていう感じで進めてる。僕たちは結果を見いだすために模索するんじゃなくて、さらに模索するために模索するんだよ。

Skrufff : 二人にとって、曲を作ることはどれくらい大変?

P.O.G : 僕たちは特に方向性を決めて曲を作ったりはしないんだ。何よりもまず感情 - これこそが僕たちにとっての「音楽」- と、全体像を生み出すところから始めるんだ。僕たちにとってこれが完璧なトラックを仕上げる上で必要不可欠なんだよ。全てのトラックが創造で、全ての創造は楽園に辿りつくこと、そして、苦悩によって成り立つんだ (10% の楽園と 90% の苦悩だね)。まるでカタルシスみたいなものさ。そして、自分達が生きていることを実感できる。これが僕たちが音楽を作る唯一の理由なのかも知れない。
制作の過程では常に二人で作ってるよ。僕たちは二人とも頭脳派で、血はつながってなくても双子のようになることができるんだ。

Skrufff : 何からインスパイアされるのかな?

P.O.G : インスピレーションは自分達の感情の中から見つけるよ。

Skrufff : トラックはどういうところから作り始める?例えば 'Golem' では?

P.O.G : 基本的には全部のものを少しずつ作り始めるかな。良いシンセで曲のストリングのリフを作ったり、イメージを作り上げたりする。なんでもいいんだよ。'Golem' は泥を二人で固めて、命を吹き込んだんだ。他の曲もそうだけどね。(※ Golem とは泥で作られた想像上の人造人間のこと)

Skrufff : 何故、未だに多くの人達に君たちの音楽が届かないんだと思う?

P.O.G : もし大衆を相手にするなら、まずはマーケティングの部分での戦略を見いださないといけないだろうね。たとえば Johnny Clegg Trousers や Cyborg Supplies みたいな、メジャーレーベルの力を借りたりだとかね。そうやって何かしらのPR戦略を作り出さないといけないんだろうな。
もしかしたら、僕たちの音楽は真実を求める少数派の人達だけに受け入れられるのかも知れないね。わからないけど…。本当は何者でもないのかも知れないし。

Skrufff : 僕はもし Massive Attackが "Lazare" をリリースしていれば、すぐにミリオンヒットになっていたと思うんだけど、今日の音楽業界で成功することの鍵は何だと思う?

P.O.G : 単純に、商品をうまく打ち出すことじゃないかな。

Skrufff : 君達にとってイメージやブランディングは大事?

P.O.G : ごめんね。僕たちはブランドじゃないよ。

Skrufff : ライブをすることについてはどう思ってる?お金のためにやる必要はある?

P.O.G : ライブは大好きだよ。すごく不思議なんだ。制作の時には頭脳派なのに、ライブの時だけはすごく本能的になれるんだ。今は "a la cool" でツアーしてるよ。正しいタイミングに正しい場所でパフォーマンスするんだ。ライブはコミュニケーションだと思ってるからね。ライブで演奏するのは難しい音楽だけど、時々本当にお客さんが一体になってるのを感じるんだ。本当に素晴らしいよ。 そして、ライブはあくまで僕らの人間性でやってる。オーディエンスに何かを与えようとしてるだけなんだ。 あ、でもお金を稼ぐためにウェンブリースタジアムでヘリコプターから登場してライブをするつもりだよ。絶対来てね!(笑)

Skrufff : 二人のことを 「ヒゲ面の宇宙ヒッピーオタク」 なんて呼んでる雑誌やプレスもあるけど、髭を生やすのはどうして?最後に全部の髭を剃ったのはいつ?

P.O.G : 僕たちは時々こう言うんだけど、『髭は2つ目の笑顔に値する』 んだ。髭を全部剃る意味なんてよくわからないな。

End of the interview


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