HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Playhouse, Cocoon, Get Physical といった名門レーベルからのリリースや、自身のレーベル Tuning Spork, Contexterrior の運営など、長年に渡って techno/minimal シーンの最前線で活躍している Jay Haze。
最近では Fuckpony 名義で Bpitch Control よりアルバム "Let the Love Flow" をリリースし、キャッチーでポップな一面を披露するなど、アーティストとしての進化を続けている。また、DJs for DRC (Democratic Republic of Congo) の発起人としてコンゴ民主共和国のためのチャリティー活動を行い、多くのアーティストを巻き込んだムーブメントを産み出すなど、音楽の枠を越えた活動にも積極的である。

このたび、その DJs for DRC の一環として東京・大阪 2都市での来日公演を間近に控えた Jay Haze に電話インタビューを行い、音楽に、またチャリティー活動にかける思いを語ってもらった。アメリカ、ペンシルバニアで生まれ育ち、フィラデルフィア、アムステルダム、ベルリンと拠点を移し、国際的に活動しているアーティストとして、あるいは自らが語るように一人の 「西洋人」 として、抱えているジレンマや感じている責任の大きさを隠すことなく発せられたピュアな言葉の数々は、エレクトロニックミュージックのシーンに関わる世界中の人たちに向けた力強いメッセージである。

Interview & Introduction : Hidehiko Takano

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HRFQ : Bpitch Control からリリースされた Fuckpony 名義でのアルバム "Let the Love Flow" は、今までの作品と比較すると全体的にソフトでキャッチーな仕上がりになっている印象があります。これは Fuckpony 名義ということで意識的に違うものに仕上げたのでしょうか?

Jay Haze : 作品作りにあたって意図的に何か目新しいことをやることはなくて、あくまで結果としてそうなっているんだ。僕にとって音楽は自己表現であって、成長無しに同じところにとどまることはないようにしたいと思っているんだ。自分自身、素晴らしい演奏家であったことは一度もないけど、そうなれるように常にチャレンジしているんだ。だから、演奏技術が高まるたびに、より正確に自分の感情を表現できるようになるんだ。僕の作品を聞いてもうと、毎回リリースのたびに、より音楽的になっていっていることに気づいてもらえるんじゃないかな。今までリリースした12inの履歴を辿ってもらえれば僕が段々と音楽的な知識を習得して、それを作品に盛り込んでいることを感じてもらえると思うよ。より音楽を学ぶことで、より可能性を広げられているんだ。

HRFQ : それはつまり、これから先もスタイルを進化させ続けていく、ということでしょうか?

Jay Haze : そう願っているよ。僕は一着のスーツに、一つのスタイルだけで収まるようなタイプではないんだ。色んな格好をして、色んなスタイルを身に着けたいんだ。色んな感情を持っているからね。

HRFQ : ニューアルバムのプロモーションの一貫として撮影された動画 (Part 1, Part 2) を見る限り、ベルリンでのスタジオ環境に満足されているようですが、今後ベルリンを離れ、アメリカ、故郷のペンシルバニア、あるいはどこか北米の都市に戻ることを考えたことはありますか?

Jay Haze : ペンシルバニアに戻りたいとは思わないね。ひょっとしたらニューヨークなんかは良いかもしれないけど、実際アメリカに戻るかってなると微妙だね。警察国家みたいにになろうとしている政治的な現状を受け入れられないよ。(ベルリンを離れるとしたら)きっと、第二、第三世界と呼ばれるようなエリアに移ることになるんじゃないかな。僕がライフワークとして取り組みたいと思っているチャリティー活動をする上で、より多くの可能性を秘めていると思うからね。自分を必要としてくれている人たちがいる場所にいたいんだ。例えばブラジルではチャリティワークとして貧困問題などについて取り組めると同時に、クリエイティブなシーンも広がっているからね。そういった新興国に移ることになるんじゃないかな。

HRFQ : 今話に上がったチャリティワークの第一歩だと思うのですが、現在取り組まれている DJs for DRC について、きっかけなども含めて教えてください。

Jay Haze : なぜ DJs for DRC が始まったのかというと、それが必要だったからさ。クラブシーンの、エレクトロニックミュージックのアーティスト達にとって必要だったんだ。お客さんとか、消費者を巻き込むことにこだわりはなくて、あくまでDJとかプロデューサーの仲間に向けたきっかけ作りだったんだ。アーティスト仲間に対して、彼らが何かに貢献できることを知らせるためのね。年にたった一回、ギャラの半分を寄付するだけでも変革を起こせるってこと知ってもらうための、ちょっとしたきっかけ作りだったんだ。それが今は一つのムーブメントになっているんだ。年末に向けての3,4ヶ月間、アーティスト達がギャラの半分を寄付するっていうムーブメントにね。 今後は、年に1回、あるいは数ヶ月に1度、みんなで議論する場を設けてたりして、取り組むべきテーマを検討するつもりだよ。その時その時でなすべきことが何なのかを互いに提案し合うんだ。

そもそも、なぜコンゴ民主共和国を取り上げたかというと、あそこの現状があまりにも酷いからだよ。一般のメディアは何が起こっているかを取り上げなくて、黒いカーテンに覆われている状態なんだ。だから、僕らはそのカーテンの中で何が起こっているかをみんなに見えるようにしなければいけなんだ。僕らは、人類一人一人が、メディアに取り上げられないものに対しても認識し、十分に自覚を持っていることを示さなければならないんだ。そうしなければ我々の人生がメディアにコントロールされてしまうからね。メディアが提供してくるものだけにしか関心を持てなくなってしまったら、我々はメディアの奴隷になってしまうよ。僕はこの問題をちゃんと理解出来るくらいに、アーティスト仲間が賢いって信じているんだ。

HRFQ : DJs for DRC には色々なアーティストが参加し創めていると伺っていますが、活動を開始してから、何か具体的な変化を感じますか?

Jay Haze : もちろんさ。みんながこの問題について話題にするようになった、意見を言い合うようになったというのが確かな変化だよ。「どう思う?」、「何が出来ると思う?」 みたいにね。僕に向けて、「参加したい」 って言ってくれたり、「何が出来るだろうか?」 と尋ねてくれたり、ポジティブな反応をもらえているよ。DJ同士がクラブで会話する時に、DJs for DRC についてどう思う?っていう感じで会話がなされるんだ。好き、嫌いに関係無く、まずは話すようになったということが確かな変化なんじゃないかな。

HRFQ : 個人的にも、 日本で少し前に放送されたCBSのドキュメンタリー 「War Against Women」 を見たこともあり、この話題についてインタビュー質問するのはとてもタイムリーな話題であると同時に、難しい問題でもあると思います。

Jay Haze : とにかくコンゴでは酷いことがたくさん起こっているんだ。社会構造的として、武力の元で女性達が性的虐待の恐怖にさらされているんだ。集団に犯され、妊娠して生まれたために、誰が父親かも分からない赤ん坊がたくさんいるんだ。僕ら西洋人が依存している鉱物資源の採掘のために鉱山で働く子供達がいるんだ。お金を払われることもなく、学校に行くことも出来ない子供たち。何も学ぶこともなく、完全に無知なままの子供たちが奴隷として支配されているんだ。20年間の内紛で何百万人もの人たちが亡くなっているんだ。まるで第二次世界大戦、あるいはそれ以上の悲惨さでね。なんでそんなことが起こらなければいけないんだろうか?考えるだけでも気分を悪くするようなことが起こっているんだ。

HRFQ : イギリスを拠点とする機関 Merlin を通じてコンゴに働きかけている、と伺っていますが?

Jay Haze : Merlin はこの活動の初期に、Fabric のミックスCDで上がった収益を寄付するにあたって協力した機関だけど、それ以降は、もっと直接的に、コンゴの機関と協力して行っているよ。女性の性的虐待問題や難民問題、兵役を強要される子供達とか、色々な問題に取り組んでいる現地の機関と協力して行くつもりだよ。あらゆる角度から向き合って行きたいんだ。

HRFQ : 様々な面で、より直接的に働きかけて行くということですか?

Jay Haze : そうだね。来年2月にはドキュメンタリーを撮影するために実際に現地に行く予定で、今はそれに向けて準備中だよ。このプロジェクトでアシスタントをお願いしている人がいるんだけど、彼女はチームを編成したり、ロジスティクスを確認したり、週に3、4日を準備に費やしているよ。 コンゴに行ってドキュメンタリーを撮影して、僕らの寄付の対象となる協力機関が実際にどんな活動を行っているかを伝えることで、寄付を促進し、多くの人を巻き込んでいくんだ。

HRFQ : コンゴでのドキュメンタリー撮影以外に今後の DJs for DRC の活動をどのように展開していきたいとお考えですか?「9月以降、年内のギャランティーの半分を寄付」 など、2009年の活動についての情報はあるのですが、来年以降も何かしら継続する予定ですか?

Jay Haze : そもそも DJs for DRC はきっかけ作りだったから、来年どんな活動をしていくかはこれから検討して行くよ。最初のステップとして基金を設立して、色々なテーマに取り組んで行くつもりなんだ。音楽も含めたクリエイティビティを打ち出して行きたいと思っているよ。あらゆるクリエイティビティは人々の魂を癒せるって考えているからね。そういったクリエイティビティを享受できない状況にある国に対して、必要としている人達に対して届けて行きたいんだ。

HRFQ : それは、この先、例えば数年後、コンゴの問題だけでなく、地域も内容も含めて、取り組む範囲を拡大していくということですか?

Jay Haze : まさしく。コンゴは最初のきっかけだから、この先はこの最高のチームと一緒になって取り組んで行くべき課題を選んで行くよ。対象を変えてステップを踏んで色々なものに貢献して行く方が、一つのことだけに集中しているよりもモチベーションを継続できるだろうからね。世界各地に助けを必要としている人たちはいるし、僕らが光を照らすべき問題はたくさんあるんだ。どんな光でもいいから、とにかく照らされるべきものがたくさんあるんだ。

HRFQ : 日本にいる人たちに対して DJs for DRC に関して望むことはありますか?

Jay Haze : 日本にいる人たちには、どうか、何でもいいから出来ることをして欲しい。とても強力な貨幣を持っているのだから、円でわずかな寄付をすることで大きな変化を起こせるんだ。僕らは思いを持っている人たちに対して常にオープンだよ。ただ、人々を助けたという気持ちさえあればいいんだ。コンゴで起こっていることに必要以上に巻き込まれる必要は無いんだ。そういったことは僕みたいな人間の役目な訳だし、誰かに対して無理強いはしたくないからね。

HRFQ : DJs for DRC はアメリカ人アーティストであるあなたがドイツを拠点に、世界中の仲間と一緒にコンゴに向けて働きかけています。アメリカ、オランダ、ドイツと拠点を移し、国際的に活動してきた立場から、これから国際的に活躍したいと思っている日本のDJ、プロデューサー、プロモーター達に向けて何かアドバイスはありますか?

Jay Haze : 最も重要だと思うことは、自分の思うままの自分であるということ。自分が進みたいと思う道を進むということじゃないかな。これは決して日本人にとってだけではなくて、誰にとっても重要なことだけど、日本の場合、これを実践するのが難しいんだと思うよ。島国であることとか、多くの人が密集していて十分なスペースが無いことだとか、色々な理由で実戦するのは難しいんだと思う。でも、日本に行くたびに、名前を聞いたことが無いくらいなのに、音楽に対して物凄い知識を持っていて、「おっ、なんだこれ!」 ってびっくりさせられるようなDJと何人も会ったことがあるんだ。だからこそ、自分自身の道を進む、ということが日本人にとって重要だと思うな。

あと、大事なのは、グローバル、インターナショナルになるために、他の文化を理解するように努めることじゃないかな。そして、そこに交わって行くことを恐れないこと。日本では、たくさんのものが強力にマーケティングされていて、広告がたくさんあって、雑誌とかでは 「こんな格好をすべきだ」、「こうやって振舞うべきだ」 といった情報が発信されていたりして、みんなが画一的だったりするから、自分のスタイルを打ち出すのは難しいんだと思う。街中でクレイジーな格好、クレイジーな髪の色をしているように見えても、みんな同じような感じだからね。

もう一つ、言いたいことは、とにかく、街中で、電車の中で、あるいは、今の僕らのようにSkypeとかでも、お互いに会話をしようよってこと。日本人は多くの時間を電車の中で過ごしているんだ。お互いに会話することなくね。そんな人たちが漫画を読んだり、ゲームをプレイしたりする代わりに電車で互いに会話をするようになったら、日本がどのくらい変わるか想像してごらん?電車の中というのは他の誰かと会話するのに完璧なチャンスなんじゃないだろうか。自分も相手も何もしていなくて、ただ、待っているだけなんだから、会話をすればいいんだよ。そうすることでどれだけ変われるだろうか。会話することで、もしかしたら自分がやろうとしていることについてどうすればいいかのアイディアが得られるかもしれない。誰かの人生を助けることができるかもしれない。会話するだけでね。日本のホワイトカラーの多くは朝早くおきて、時間をかけて会社に行って、仕事を終えてまた、時間をかけて電車で家に戻って、食事して寝る。そんなことを繰り返しているんじゃないだろうか?日本では、自分のための時間が少ない人生を送っているんじゃないだろうか、って思うんだ。

HRFQ : 実際に日本の電車の中で誰かに話しかけたりしたことがあったりするのですか?

Jay Haze : もちろんさ。何度もね。そして必ず返してくれたよ。そうやって友達になったよ。電車で話したりして日本でたくさんの友達をつくったよ。今までで合計7ヶ月くらい滞在したことになるけど、たくさん友達がいるよ。だからこそ、お互いに話しかけることが重要だって言いたいんだ。僕がやったことで、それだけ効果があったんだからね。電車に乗っている日本人は話したくないわけじゃないんじゃないかな?ただ、最初に話しかける人になりたい人がいないってことなんじゃないかな?僕は電車に乗って何もしていないで退屈するくらいなら、誰か話す相手が欲しいよ。それがユニバーサルな感覚なんだよ。そういった意味で、日本人はおとなしいんじゃないかな。

HRFQ : 今回の来日にあたってどのような期待をされていますか?オーディエンスに見せたいこと・伝えたいことや、滞在中にしてみたいことなどがあれば教えてください。

Jay Haze : また日本に戻れるのを楽しみにしているよ。仲間と会ったり新しい人と出会ったり、クラブでみんなの笑顔を見て、かっこいいバイブを感じ取りたいね。

HRFQ : 最後に、HigherFrequency読者に対してメッセージをお願いします。

Jay Haze : 日本で会えることを楽しみにしているよ。みんながガンガン盛り上がってくれることを期待しているよ。そして、"Let the Love Flow (愛を満たそう)" 。クラブから、日本から、世界から、Let the Love Flow。

End of the interview



Fuckpony "Let The Love Flow" は BPitch Control から好評発売中。


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root & branch presents UBIK featuring Jay Haze aka Fuckpony
2009年11月27日 (Fri) @ UNIT
Open/Start : 23:30
Door : Y3,500 _ WF: Y3,000 _ ADV: Y2,500

【UNIT】
DJ :
Jay Haze aka Fuckpony (TuningSpork, Contexterrior, BPitch Control) - DJs for DRC Gig
DJ WADA (CO-FUSION)
YUSAKU SHIGEYASU

【SALOON】 "freebase" 1st Anniversary
DJ :
TAK-03X
suganuma
mitchelrock

HOST : chelcom


SEKTOR ~DRC presents JAY HAZE JAPAN TOUR~
2009年11月28日 (Sat) @ TRIANGLE
Door : Y2,000 + 1D _ ADV : Y1,500 + 1D

Guest DJ : Jay Haze aka Fuckpony (TuningSpork/Contexterrior/BPitch Control)

DJs :
KUNIMITSU (Tetra Logistics)
Masaaki Fujimoto (SEKTOR)
AIDA (FOCUS) / kazuya tanaka
t.k.c.(virgin/ELELEL)
yacht
FUMI
RYO YOSHIDA
YuYa


<DJs for DRCとは?>
DJs for DRC は規模の大小を問わず世界中の全てのDJが参加出来る、コンゴ民主共和国の戦争被害者を救援を目的とする新しいチャリティー・プロジェクトであり、創設者である Jay Haze は、クラブ業界がその芸術的表現や快楽主義と同等に社会的貢献が出来るということを証明する為、グローバルなエレクトロニック・ミュージック・シーンに意識改革を求めている。2006年に和平協定が調印されたにもかかわらず、今だにコンゴ民主共和国の東部では、反乱/性的暴力/飢餓と病気に覆い尽くされており、国家の歴史は不安定性と戦争と共に歩んできたといえる。DJs for DRCはDJに今年中の1つのギグを選んでギャラの50%を寄付するを提唱しており、Tiefschwarz, Loco Dice, DJ Sneak, Tiga などは、既にこの活動への参加を表明している。集められた義援金はイギリスを拠点とする Merlin (http://www.merlin.org.uk/) とアフリカに拠点を置く慈善団体を通して、コンゴ民主共和国の市民の為の健康管理/医療/性的暴力の被害者/上水道整備等に使われる。



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