Fatboy Slim

ENGLISH WHO IS FATBOY SLIM


Fatboy Slim


WHO IS FATBOY SLIM ?

 

Text by Kei Tajima (HigherFrequency) / 写真提供 : Sony Music Japan International Inc.

Fatboy Slim - ダンス・ミュージック好きでなくても、音楽好きであれば必ず耳にしたことがあるだろうこの名前。果たして太っているのか、それとも痩せているのか分からない、ユニークな名前を持つアーティスト Fatboy Slim こと Norman Cook が、全世界を笑顔で埋め尽くすようになってから早15年が経つ。多くのアーティストがたった一曲ヒットを飛ばしては次々と消えていくダンス・ミュージック・シーンで、これだけの長い間人々に愛され続け、作品をリリースすれば大ヒットし、ギグをすれば必ずと言っていいほどチケットをソールド・アウトさせている正真正銘の人気者である彼が、今回、ファン待望の初のベスト・アルバム をリリースすることになった。ベスト盤と言えば、楽曲と共にアーティストの過去を振り返る絶好の機会。ただ、Fatboy Slimの場合、“The Rockafeller Skank” や “Praise You” など、「Fatboy アンセム」と呼ぶべくトラックは次々と頭に浮かんでくものの、以外とそのオルター・エゴであるNorman Cook という人物と、このアーティストが歩んできた(意外と)険しい道について、詳しく知っている人は少ないのかもしれない。多くのファンが待ち望んでいるだろうこのベスト盤発売を前に、彼の知られざる過去を知れば、アルバムの聴き方もまた違ってくるはず。ここでは、ブランド力があまりに強いからか、その楽曲があまりにも有名だからなのか、意外と知られていない Fatboy Slim a.k.a. Norman Cook という人物に迫ってみたいと思う。

ブライトン出身というイメージの強い彼だが、実はイングランド南東部にあるサリー州ブラムリー生まれのレッドヒル育ち。ブライトンに移り住んだのは大学入学のタイミングだった。ブライトンでの大学時代にはあちこちのクラブでDJをして過ごしていたが、音楽全般に詳しいファンならば知っているだろう Housemartins としての活動が始まったのもこの頃である。Isley Brothers のカヴァーとしてリリースした ”Caravan Of Love” が大ヒットしたことで一躍有名になったHousemartins は、結局、現在のFatboy Slim の音とは全く結びつかない(筆者も初めて曲を聴いたときはかなり驚いてしまったものだ)この一曲をヒットさせ、’88年に解散。再びブライトンに戻った Normanはリミキサーとしての活動をするようになる。この頃、Luke Cresswell、Andy Boucher、Lindy Laytonらと Beats International を結成した Norman は、”Dub Me Good To Me” でイギリス・チャートのナンバー1ヒットを打ち出すものの、プライベートな面では離婚を経験し、神経衰弱に陥ってしまう。これがきっかけで2年ほど音楽活動を離れることとなったNorman は、彼の人生においてもどん底の時期を過ごしたのだった。そんな「暗い影」とも言うべく時期から、Norman を救ったのは、やはり音楽だった。ある夜友人に誘われてライヴに足を運んだ彼は、Robert Owensの ‘I'll Be Your Friend’ を聴き、大いにインスパイアされる。その後トロンボーン奏者である Ashley Slater をはじめEddie Stevens、Jim Carmichael らと Freak Power を結成、’Turn on,Turn in,Cop out’ などのヒットを飛ばし、再びシーンに返り咲いたのである。ちなみにこの頃から、Freak Power のクレジットに時々表れるようになっていた Pizzaman や Fried Funk Food 、Mighty Dub Katzといったプロジェクト名は、すべて Norman によるもの。(Fried Funk FoodはAshley Slater と、Mighty Dub Katz はGareth Hansome とNormanによるユニット)Fatboy Slim の名義を使い始めたのもこの頃である。


Fatboy Slim

そのFatboy Slim 名義で Damian Harris 主宰のレーベルSkint からリリースした ‘Santa Cruz’ が、The Chemical Brothers の2人がレジデントを務めていた伝説のパーティー The Heavenly Sunday Social や、ロンドンのクラブでプレイされるようになり話題になったことを受け、ブライトンのBig Beat Boutique でレジデントDJ を務めるようになった Norman は、DJ として急激に名を上げていく。Big Beat Boutique にはイギリス中から人々が集まり、大繁盛し始めた。ここに来て、プロダクション / リミックス業など、あらゆる仕事すべてに運が回り、’Everybody Loves a 303’ 、’Punk To Funk’ 、’Everybody Loves a Carnival’ など、出す曲すべてが大当たり。そして、’96年にはあのビッグ・ビート旋風の到来を象徴する名盤 “Better Living Through Chemistry” をリリースするのだ。思えば、筆者もたまたま聴いていたラジオで ’Going Out Of My Head’ を聴き、そのアシッド〜ブレイクビーツが絶妙に融合されたクレイジーな世界に魅了され、次の瞬間にはあの「フロッピーCD」を手にレジに並んだものだった。しかし、Fatboy Slim の名前を全世界に知らしめた作品といえば、’98年にリリースされたセカンド・アルバム “You’ve Come Long Way, Baby” のほかに無いだろう。冒頭でも述べた “The Rockafeller Skank” や ”Right Here,Right Now”、”Praise You” など、数々のヒット曲が含まれたこのアルバムは、彼のキャリアの中で最も成功したアルバムであり、Fatboy Slimを世界的スーパースターへと押し上げた出世作。また、この作品で超有名人になったジャケットのファット・ボーイは今回のベスト・アルバム含め、数々の作品で登場している。

ここからの快進撃は改めて記す必要もないほど周知の事実のはず。“You’ve Come Long Way, Baby” のリリース後は、世界各国でスケジュールされたギグをこなしながら、リミックス業を行うなど、多忙な日々を過ごしていた Norman。特に ‘99年にリリースされた Groove Armada の‘I See You Baby’のリミックス作品は、ここ日本でも大ヒットとなった。The Doorsの Jim Morrison のヴォーカルをサンプリングした ‘Sunset (Bird Of Prey)’ 等が収録された ‘00年発売の3rd アルバム “Between The Gutter And The Stars” も大ヒットとなり、全世界で200万枚を超えるセールスを記録。このようなモンスター級のアルバム・セールスの他に、Fatboy Slim が起こした有名な社会現象といえば、あの Big Beach Boutique 2 だろう。彼の地元であるブライトン・ビーチで行われたこの野外イベントには、総勢25万人(その規模は東京ドームの5倍!)が集まり、その様子はCD・ DVD化され、世界中のクラブ・ファンの視線をブライトンに集めることとなった。今後再びイベントがお家元ブライトンで開催されるかは不明だが、Big Beach Boutique の血は各国で引き継がれており、’04年にはブラジルのリオ・デ・ジャネイロでイベントが開催され、36万人のブラジリアンが Fatboy Slim の紡ぎだすクレイジーなリズムに踊り狂った。(ブラジルと言えば、’06年2月に行われたリオのカーニバルに参加した Fatboy Slim。その時の映像はベスト・アルバムのDisc2に日本盤のみ限定で収録されている)翌年の’05年発売された4thアルバム “Palookaville”では、Fatboy Slim のサウンドの鍵であったサンプリングをカットし、大きくシフト・チェンジ。生音にこだわり、Housemartins時代のように、自らも楽器を手にした Norman が、Blur の Damon Albernなどとコラボレーションのもと制作した本アルバムは、日本で見事にゴールドを達成した。また、同年に行われた Glastonbury Festival 、Fuji Rock Festival では、耳だけでなく目でも楽しめる3Dコンサートを実施し、Fuji Rockでは土砂降り&稲妻の中グリーン・ステージに埋め尽くされたクラウドを熱狂させたことは記憶に新しい。

Fatboy Slim



最後に、Norman に関するもう一つの事実を述べると、他の大御所DJと比べて、ネガティヴに批判を受けることが少ないということ。計800万枚以上のCDを売り、妻であり、イギリスの有名なTVプレゼンター Zoe Ball、そして一人息子と共にあの Paul McCartneyも住む高級住宅地に住み、長年の間シーンのトップに君臨している。通常ならば批判の対象にされがちな条件が揃っているのにもかかわらず、不思議と彼をバッシングしたがる人は少ない。それは、彼が誰もが羨むような「スター性」と、誰もが身近に感じるような「素朴さ」の両方を持ち合わせているからではないだろうか。例えば、いくら大金持ちでも、Norman が ゲームの中のHugh Heffner (Play Boy 誌の社長)のような生活ぶりをしているとは、とても思えない。オフの日には、息子とサッカーをして遊んでいるNorman を思い浮かべる方がしっくりくるように感じるのだ…。

Who is Fatboy Slim ??

- サッカー観戦目的と豪語しながらも、日本全国を満員御礼ツアーしてしまう世界一のサッカー・フリークDJ

- 世界一アロハ・シャツが似合う DJ

- 世界一のパーティーDJ

要するに彼は、世界一憎めないチャーミングなオジサンDJなのだ。



関連記事


関連リンク