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Tim Deluxe / Ego Death

Tim Deluxe / Ego Death

発売日 : 2006/09/27
レーベル : AT Records / Beat Records
カタログ : BRC-157
フォーマット : Original CD
発売国 : Japan / UK
スタイル : House

ここ日本でも絶大な人気を誇り、先日の来日ツアーでは全国の会場を超満員にして圧倒的な人気ぶりを改めて見せ付けたロンドン出身のスーパー・スター Tim Deluxe が、3年ぶり2枚目となるオリジナル・アルバムをリリース。世界的な大ヒットを記録した前作 “The Little Ginger Club Kid” では、陽気なラテン・フレイヴァー満載のトラックの数々を聴かせてくれた Tim であるが、”Ego Death” という不穏な雰囲気が漂う印象的なタイトルが付けられた本作では、自身とじっくりと向き合った結果生まれたのであろうダークで深遠な世界観を展開し、ドラマティックな変貌による驚きと確かな成長の手応えを、聴く者に同時に与えることに成功している。

タイトル・トラックでもある一曲目 ‘Ego Death’ は、これから幕を開けるアルバムの方向性を明快に指し示す、タイトル・トラックに相応しい本作の象徴的な楽曲。フロア向けのダンス・トラックとは対極に位置するアンビエントなリズムとクラシカルなピアノの旋律が全編を支配したサウンドは、アルバムの持つ雰囲気を一発で理解させる、非常によく出来たイントロになっていると言えるだろう。続いて耳に飛び込んでくる ‘Let The Beats Roll’ は、打って変わってキャッチーなピアノ・リフとリズミカルなヴォーカルが跳ねたリズムに乗って飛び回る躍動感溢れるトラックだ。とは言え、そこにファースト・アルバムを髣髴とさせる無邪気な陽気さはなく、彼の変化が決して表面的なものでないことを理解させてくれる。

ちょうどアルバムの折り返し地点に位置する6曲目 ‘D.O.A. (Return To The Earth)’ は、優しく爪弾かれるアコースティック・ギターとシンプルなリズムをバックに女性ヴォーカルが哀愁漂うメロディをなぞっていくポップ・ソング。そのメロディの美しさは、ダンス系のプロデューサーとは思えないほど見事な出来であり、 Tim のメロディ・メーカーとしてのセンスを存分に発揮した楽曲となっている。そんな小休止を挟んでからは、五線譜の上で艶かしい上下運動を繰り返す流麗な歌声とブーストしたシンセ・ベースの対比が不思議な情感を生み出す ‘Rubber Seduction’、スペーシーでスピード感溢れる音作りに思わず体が動き出しそうな ‘Espoo’s Rose’ へと続いていき、今年2月に自身が設立した AT Recordings より送り出した先行シングル ‘I Don’t Care (Part 2)’ へと突入していく。

“The Little Ginger Club Kid” に収録されていた大ヒットナンバー ‘It Just Won’t Do’ でフィーチャーしたヴォーカリスト Sam Obernik を迎えて話題を呼んだ ‘I Don’t Care’ であるが、本作に収録されているのはヴォーカル無しのインスト・ヴァージョン。アルバムの後半で敢えて分かり易い華やかな盛り上がりをつくらず、本作の通奏低音として流れる深遠な世界観とダークな雰囲気の流れを汲むインスト・ヴァージョンを収録した勇気ある選択に、Tim の一歩成長したアーティスト性が伺えると言っても過言ではないだろう。そして、アルバムのラストを飾る ‘Refrections’ は、どこかキッチュな雰囲気が漂うポップなトラック。長く暗いトンネルを抜けた後に差してくる一筋の光のような雰囲気を持つこのチューンは、一曲目の ‘Ego Death’ がアルバムのイントロの役割を果たしたのと同様に、本作のエンドロールとしてここまでじっくりとアルバムを聴いてきたリスナーを優しく包み込み、アーティスト Tim Deluxe による真摯なチャレンジである "Ego Death" が遂に終わりを迎えることを、そっと聴き手に告げていく。

“The Little Ginger Club Kid” では、ありのままの自分を表現したいという理由から自身の幼少期の写真をアルバム・ジャケットに使った Tim Deluxe。本作ではサウンドのベクトルはダークな方向へと大きく転換したが、それも絶大なる成功を収め、過剰な期待やプレッシャー受けるという厳しい状況に置かれた自分のありのままを表現したが故だろう。そんな表現者としての芯の部分で揺ぎ無い姿勢を持っているからこそ、このアルバムはただ暗澹とした作品にはならず、果敢な挑戦心が溢れんばかりに感じられる意欲作となっているのである。

日本盤にはボーナス・トラックとして 'I Don't Care (Part 1)' と '555' の2曲を収録。 'I Don't Care (Part 1)' は、前述した Sam Obernik のヴォーカルをフィーチャーしたヴァージョンとなっているので、シングルを持っていないファンには嬉しい特典だと言えるだろう。(Yoshiharu Kobayashi ; HigherFrequency)

収録曲

01. Egodeath
02. Let The Beats Roll
03. You Got Tha Touch
04. 6 of 1
05. Little Dream
06. D.O.A. (Return to Earth)
07. Rubber Seduction
08. Espoo's Rose
09. I Don't Care (Part 2)
10. Blotter
11. Reflections

Bonus Tracks for Japan only
12. I Don't Care (Part1)
13. 555



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