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Air

Air / Pocket Symphony

発売日 : 2007/02/28
レーベル : Toshiba Emi
カタログ : TOCP66654
フォーマット : Original CD
発売国 : Japan
スタイル : Downtempo, Electronica, Pop

インディー・ロック、エレクトロニカ、アンビエント、そしてポップ・フィールドにまで多くのファンを持つ JB Dunckel と Nicolas Godin からなるフレンチ・デュオ Air の3枚目となるオリジナル・アルバムが届いた。'04年にリリースされた "Talkie Walkie" 以降、3年ぶりとなる本作 "Pocket Symphony" は、Airのキャリアを総括するようなクオリティーの高い音の結晶と、日本の伝統的な楽器である琴や三味線を導入するという、兼ねてから日本びいきなことで知られる彼ららしい新たな試みが融合した素晴らしい仕上がりとなっている。

おとぎ話のようにメランコリックでミステリアスな Air の音世界はオープニング・トラック 'Space Maker' で静かに幕を開ける。まるで時を刻むかのようにカチカチと鳴り響く鋭い音に耳を傾けると、次第にギターやピアノといったメロディーが重なり、壮大なオープニングが演出されるというこの楽曲は、瞬時にして聴き手にこのアルバムの素晴らしさを伝えてしまう程のインパクトを持っていると言えるだろう。2曲目の‘One Upon a Time’ では、まさに Air の真骨頂とも言うべく、エヴァー・グリーンな魅力が炸裂。ガラスのように儚そうでありながら、不思議な温かみを持つ独特のヴォーカルと、ドラマティックなピアノのメロディーが絡み合ったこの楽曲に続いては、イギリス、シェフィールドを代表するバンド The Pulp のヴォーカリスト Javis Cocker をヴォーカルに迎えた ‘Hell Of a Party’三味線の旋律と共にスタートする。正直、今回のアルバムに日本の楽器が取り入れられると聞いた時、その仕上がりが素直にイメージ出来なかった筆者ではあったが、Nicholas Goldin 自らが師匠から手ほどきを受けたという三味線が奏でる音は非常に繊細で美しいものであり、そんな三味線と絡み合う琴やピアノのメロディーは主張しすぎず、Jarvis の怠惰で渋い歌声を優しく包み込むように流れる。そんな楽曲からは、日本人の伝統や精神を正しく理解し、尊重する彼らの気持ちが伝わってくるようだった。

'Mayfair Song' 、'Photograph' といった、前作 "Talkie Walkie" で表現された景色の延長線上を映し出したようなスウィートな楽曲の数々に続き、先ほどの ‘Hell of The Party’ と同様に琴がフィーチャーされている 'Mer Du Japon' が始まる。日本語で "日本の海" を表すタイトルが示しているように、しっかりとした重みのあるベースの上に、ドラマティックで壮大なメロディーが波打って広がっていくこの楽曲は、優雅でありながら、ロック・コンサートさながらの力強い高揚感を与えるという不思議な魅力を持っており、今後始まる彼らのライヴ・ツアーでも目玉の楽曲となりそう。10曲目に収録されているのは、ソロ・ユニット The Divine Comedy の名義でも知られるアイルランド出身のアーティスト Neil Hannon がヴォーカルを務めた 'Somewhere Between Walking And Sleeping' 。出だしはストレートなヴォーカル・トラックといった印象だが、個性的なメロディーを奏でるピアノやエコーする Neil の声によって徐々に奇妙な雰囲気がビルドアップされていき、タイトルの通りまるで半分眠っているかのような気分にさせられてしまう不思議な楽曲だ。エンディングには、温かく降り注ぐ春の太陽をイメージさせるメロディー、そして Air 独特の浮遊感とストレンジな感覚が前面に押し出された楽曲‘Night Sight’を収録。ラストらしく微かな余韻を残すように消え去っていくこの楽曲には、誰もがもう一度プレイボタンを押したくなるような名残惜しさを覚えてしまうはずだ。

「今までの作品より、バラエティーに富んだ仕上がり」というインタビューでのメンバーの言葉通り、Air の持つフェミニンで繊細なフワフワとした魅力はもちろん、以前までの作品とは異なり、時に男らしく、奇妙で、渋い魅力がぐんと引き出され、音の構成やバランス、アート…といったすべての面において完成度の高い仕上がりとなっている本作。今年最初の傑作と言っても過言ではないだろう。(Kei Tajima ; HigherFrequency)

収録曲

01. Space Maker
02. Once Upon a Time
03. Hell Of A Party
04. Napalm Love
05. Mayfair Song
06. Left Bank
07. Photograph
08. Mer du Japon
09. Lost Message
10. Somewhere Between Walking And Sleeping
11. Redhead Girl
12. Night Sight
13. Time Capsule [Bonus Track]

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