HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

HigterFrequency パーティーレポート

electraglide presents Warp20 (Tokyo) @ 幕張メッセ

DATE : 21 November 2009 (Sat)
LINE UP : Battles, Chris Cunningham Live, !!! (chk chk chk), LFO, Clark, Flying Lotus, Andrew Weatherall, Hudson Mohawke, Steve Beckett (Warp レーベルオーナー ), dot i/o, DJ Yogurt, Fumiya Tanaka, O.N.O,
rei harakami
PHOTO by Masanori Naruse, Yosuke Torii, Junko Yoda, Teppei
TEXT by Yuki Murai (HigherFrequency)

イベント詳細


electraglide、あえてこのレポートでは、愛称の 『エレグラ』 と呼ばせていただきたい。

エレグラといえば日本のクラブミュージック・シーンを語る上で決して外せない名前であり、クラブミュージックをよく知らなかった時期の筆者ですら名を聴いたことがあった程だ。もちろんその理由は、現在のクラブシーンの動向としてより顕著になってきたライブアクトの導入、それもエレクトロニックに限定されない、かなりロック的・バンド的な要素を持ったラインナップを初期の頃からフィーチャーしていた部分にある。現在からは想像し難いほどロック界とクラブ界の間にあった壁が分厚かった2000年代初頭から、それらを総括できるアーティストをブックし、聞き手側の意識にあった壁を壊すきっかけを与えていたエレグラは、当時から間違いなくシーンの行く末を見越していたといえるだろう。

今年、筆者が行く機会を逃したまま伝説となっていたエレグラが突如復活し、しかもスタート以来独自の輝きを放ちつづける名レーベル Warp の20周年との共催ということであれば、もはや行かないという選択などあり得ない。そんなわけで、電車に揺られること一時間強、筆者にとって今年数度目となる幕張メッセへと足を運んだのである。

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この日は、Warp の若き超新星・Hudson Mohawke のライブに間に合うように出発したつもりだったのだが、ちょうど来場者が集中した時間にあたってしまい、クロークにかなりてこずったため残念ながらステージを見ることができなかった。アーティスト写真などを見るとまだうっすらとやんちゃさが感じられる Hudson Mohawke だが、最近はさるビッグなポップ・スターからの楽曲プロデュース依頼もあったという実力はすでに折り紙つき。ステージ側から聴こえてきた彼のキラー・トラック 'FUSE' のきらめく響きは実に堂々たるもので、今後も目が離せないニュー・アクトとしてクラウドに印象づけられたことは間違いないだろう。

ようやくフロア入りし、早速 !!! (chk chk chk) のライブへ。'Hello? Is This Thing On' をリリースした頃から個人的にも非常に注目していたが、生で見てみるとバンドサウンドの魅力が前に出ており、バンドとしての実力、経験がしっかりと感じられた。サウンドの安定感に支えられてヴォーカルが非常に際立っており、女性ゲストヴォーカリストの堂々とした歌い上げぶりはもちろん、メインボーカルの Nic の声のセクシーさには 『この声、ずっと聴いていたい!』 とついつい思ってしまう程であった。

続いて Warp のレーベルオーナー Steve Beckett のDJがスタート。オーナー直々の "Warp ベストセレクション" といった模様のセットは興味深かったが、しばしの休憩を挟んで Clark のセットへ。ちょっとドロドロとした感じの音を想像してはいたのだが、そのときは丁度かなりエネルギッシュでハードな、早めの音を出していた。レーザー光線がフロア中央につるされた円形のオブジェに当たり拡散していく様子がサウンドと非常にマッチしていて圧巻の眺めであったが、ちょうど、お目当ての Battles のライブがその後すぐに迫っており、気持ちがいまいち入りきれなかったことが個人的に非常に反省したい部分だ。

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昨年のフジロック出演のインパクトもあってか、Battles はセッティングの段階から大勢のクラウドがステージ前に詰め掛けていた。圧倒的な演奏力、トリッキーなエフェクター使いなど、確かに Battles のサウンドには前のほうで見たくなる要素がふんだんにある。ご多分に漏れず、筆者も気持ち前列側に出ていき、ステージを見守ることにした。

サウンドの緻密さから、演奏に集中する感じのライブかと思っていたが、ライブ未発表曲や新曲まで披露した予想外のサービス精神旺盛さに感激。なかでも、フロントマンの Tyondai Braxton の 伸びやかで天然・天才っぷり溢れるサンプラーやエフェクトの使い方('Race:In' 冒頭のシンセ音に聞こえていた部分をそのまま口笛で再現していたのには完全にやられてしまった)や、ドラムの John Stainer の 常軌を逸したかのような神業ドラムテクニックには、ただひたすら驚きの連続。手元が見えないほどの細かさとスピードでタムやスネアを打ちながら、ジャケ写真などでも見られる、異常に高い位置に設置されたシンバルを、腕を目いっぱい伸ばしてジャストのタイミングで叩く John の格好よさといったら!

ヒットチューン 'Atlas' ではクラウドとバンドの間で自然とコール&レスポンスが起こっており、全体がとても良いバイブレーションに満ちていた。1時間15分というライブバンドとしては異例のロングセットだったが、あっという間に時間が経ってしまっていた。

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現地合流組の知人と待ち合わせをしたりなどもあってまたも長めの休憩となり、次にステージに戻ったのは Chris Cunningham のライブから。VJライブがどのように行われるのかも興味深かったが、映像と音の完全なシンクロが脳髄にバリバリとくる。エレクトリックなサウンドに、暴力や背徳心をアートな表現に高める Chris Cunningham ワールド全開のライブであった。途中途中で入ってくる刺激的な映像にいちいち盛り上がってしまうのもまた一興。クラウドの誰もが映像を凝視し、動きもしない状況自体もかなり面白かった。

Andrew Weatherall のセットのラストを見届けようと隣のフロアへ向かうと、これぞ番長節な、ワルなエレクトロを豪快にドロップしているちょうど真最中。先ほどの Chris Cunningham のライブでかなり深い世界にアタマをもっていかれていたので、4つ打ちのグルーヴ感で踊っていると何やら自宅に帰ってきたような妙な安心感を覚えた。バキバキにアゲているのに、荒さやトゥーマッチさをまったく感じさせないのは、ひとえにDJとしての腕前の高さといえるだろう。気持ちよく踊りきったところで、Flying Lotus に交代。

この時間になってくると、さすがに眠気に耐え切れなかったのか床に横になって寝てる人々も見受けられ、入り口側の Warp Films の映画上映ブースにもかなり人が集まっていた。筆者はすっかり音に集中していたため映画を見るチャンスがなかったが、見ていた人の話によると、さすが Warp が手がけるだけあって、チルアウト目的で来ても、いい意味で全くチルできなくなってしまうような、捻った内容のものが多かったそうだ。

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Flying Lotus のセットがスタート。彼も Hudson Mohawke 同様、まだ歳は若いが、彼の作る楽曲の深み・重みから天才的(先ほどからつい「天才」と書きすぎているが、Warp にはそう形容したくなるアーティストが本当に多すぎる!)なセンスが際立っている期待の超新星だ。シックでシリアスな "LA/EP" などのイメージがあったが、彼のDJセットは、もうテクノだ、ヒップホップだ、というようなジャンル分けがまったく意味をなさなくなる凄さがあり、全く違う作りの音をたやすくミックスし、しかもとても楽しそうにそれを表現してくる。途中に Michael Jackson の 曲のかなりドープなリミックスが入ってきたり、MCで 大笑いしたりと、音の深さとエンターテイメント性が完全に同居。これがきっと新時代の音なんだろう…という予兆すら感じ取れた。Warp は本当にとんでもないアーティストを発掘したものだ。

エレグラの最後を締めくくる適任者といえば、もうこの人しかいないであろうLFO。ライブが始まった瞬間から場内の空気がLFO色に一転、筆者は直接体験したことはないが、レイヴ全盛期のエネルギーをまさにこの場に体現させたかのような力強さがLFO一人の繰り出すサウンドから放たれ、そのサウンドにクラウド全員が盛り上がる強烈な一体感は感動的だった。終始かなり速めのBPMにもかかわらず、結局最後まで笑顔で踊れてしまい、実に晴れやかな気持ちで会場を後にすることができた。

お世辞抜きで本心から Warp 最高!エレグラ最高!と思える、充実した内容に感謝!
そして是非、来年の開催にも期待したい。

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