HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

Hi-TEK SOUL @ Ministry of Sound, LONDON REPORT

DATE : 27 March, 2010 (Sat)
Line up
BOX : DERRICK MAY, Osunlade, Theo Parrish
BAR : Jim Masters, Alexander Robotonick, Kirk Degiorgio, Tomoki Tamura

Photo and Text Takahiro Nakayama




Derrick Mayが1年に3回のペースで Ministry of Sound にて主宰する 「Hi-TEK SOUL」 の今回のゲストは Osunlade と Theo Parrish。 一見まとまりがなくも見えるが 「Hi-Tek Soul」 の名前にふさわしいソウルを持つDJ達の夢の共演。 一晩でこのラインナップが楽しめるのがダンスミュージックの聖地ロンドンの素晴らしいところである。

メインルームに負けずとも劣らない Bar のラインナップは、Jim Masters, Alexander Robotonick, Kirk Degiorgio と玄人好みのヨーロッパの大御所達。それにまぎれてロンドンを代表する日本人DJ Tomoki Tamura が Bar room のオープニングDJとして登場。
Ministry of Sound の Bar room は Bar と言っても、日本のトップクラブのメインフロア以上の大きさで、3000人を収容する超巨大クラブの真ん中に位置する豪華なセカンドルームである。DJブースの位置が今年に入って変わったことで以前よりもさらに広くなった。

オープニングから会場に到着。
ゆっくりとビールを飲みながらメインルームがオープンする12時まで Bar でまったり。 MoS は世界各国からのクラバーが毎週末集まる人気クラブなので、オープンしてすぐにフロアが人で埋まっていった。


オープンから1時間ほどで Bar が満員状態になったところで、メインルームがオープン。MoS には4つのルームと大きな庭があり、メインルームがオープンするまでの時間は会場内を散策する人が多く、ビールを買うのも一苦労の混雑である。

メインルームがオープンすると同時に Theo Parrish を楽しむべく移動。
Theo Parrish はイーストロンドンにあるクラブ Plastic People で第一土曜日にレギュラーのパーティーを主宰しており、オープンからラストまで一人で汗だくになりながらプレイする為に毎月デトロイトから来ている。Theo は Plastic People が大好きらしい。
Plastic People は収容人数が150人くらいの小さなクラブで、カーテンで仕切られたダンスフロアには照明が一切ない。
真っ暗で天井が低く狭いフロアには巨大な Funktion One のスピーカーが四隅に一発づつ配置され耳が痛くなるくらいの爆音がスピーカーからながれている。まったく普通の常識では考えられない規格外のクラブである。
筆者も Plastic People の不思議な魔力に魅了されている一人で、Theo がプレイする第一土曜日は毎月出席している。
毎月 Plastic People で Theo Parrish を体験している筆者には MoS の最新のサウンドシステムで、Theo がどのようなプレイをするのかというのが楽しみで仕方がなかった。Plastic People と Ministry of Sound はまったく異なる性質を持つクラブであり、ダンスミュージックを奏でるクラブという共通点以外は全てが対極だからこそ、普段見れないような Theo が見れる事を期待していた。


メインルームのDJブースに入って一番始めに驚いたのは、Pioneer のCDJ 2000が7台も設置されていた事である。今年に入って新しく導入されたらしい。ミキサーも左から Pioneer のDJM 1000、Alen & Heath Xone:92、さらに Alen & Heath のロータリーミキサーが配置され、各ミキサーに対して、ターンテーブル2台、CDJ 2000が2台接続されている。DJは好みのミキサーを選んでプレイできるのだ。
さすが世界一ビジネス的に成功しているクラブ、ちなみに Plastic People のCDJは半分壊れている。

Theo Parrish が選んだミキサーはいつも彼が愛用しているDJR400、もちろん持ち込みである。ずらりと並ぶCDJ 2000は未発表音源などプレイする時に使用し、レコードを中心にスピン。これだけ最新の機材が揃っても何も変わらないマイペースさが好印象であった。
さらに彼のプレイのトレードマークといも言えるEQ使いは、MoSでも健在でロータリーのミキサーに取り憑かれたかのようにEQを離そうとしない。時には不協和音を奏でる事があっても、それも予定調和という Theo Parrish のプレイスタイルが好きだ。
大きなハコということも意識している様子もなく、James Brown の 'People get up and drive your funky soul' など彼の十八番である曲を披露しながら自身のトラックからデトロイト初期のテクノまでを混ぜまくる彼のスタイルはどこでプレイしても縦横無尽のやりたい放題である。


写真を撮ったり、フロアで踊ったりしているとアッと言う間に2時間が経ち、Osunlade が登場。
Theo とは対照的に、Yoruba のヒット曲を中心に安定したミックス・スキルでオーディエンスを完全にRock! 
'Pride', 'My reflection', 'The day we met for coffee', 'Mirror Dance'、さらには 'Mirror Dance' と Dennis Ferrer の 'Hey Hey' を混ぜたremixなど、ハウスのビッグチューンが飛び出し続け、それに呼応するようにオーディエンスの熱気も本日最高潮に。
この日の Osunlade はオーディエンスが求める音をフロアに提供する完全なるプロフェッショナルであった。
パーティーが終わった後に Osunlade が一番よかったという友人の声も多数聞いた。しかし天の邪鬼な筆者にとっては、ここまでわかり易いと感情移入できず1時間くらいで飽きてしまい、庭で一服したり、Bar で Alexander Robotonick に心を奪われてみたりするも集中力が低下してきた。
夜もどんどん深くなり、外が少し明るくなり始めた5時、ついに Derrick May が登場。

ここで踊らないと男が廃ると、意味不明な事を自分に言い聞かせてフロアに足を向けるも一度下がった集中力は簡単に取り戻す事はできない。Derrick May のハードなミックスにもついていけず、6時すぎにはクラブを後にした。

パーティーが終わるまでにクラブを去ることに若干の敗北感を感じるのは筆者だけだろうか、最後までフロアで踊り続けて照明がついたときの不思議な充実感は、一晩中音楽に夢中になっていたオーディエンスにとってのひとつの達成であると思う。

ロンドンはこの日からサマータイムがスタートしたので、家に帰って時計の針を一時間すすめた。
寒くて長い冬が終わり、夜遊びに出るのが心地よい夏の始まりである。





関連記事


関連リンク