HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

Cristian Vogel

TRESOR SERIES : 02 feat. CRISTIAN VOGEL & STEWART WALKER @ UNIT, TOKYO

DATE : 3rd June, 2005 (Fri)
DJs : Cristian Vogel & Sodeyama
LIVE : Stewart Walker
PHOTOGRAPHER : Mark Oxley / Official Site
TEXT : H.Nakamura (HigherFrequency)



3月4日に代官山 UNIT にてスタートしたドイツの名門テクノ・レーベル Tresor の東京におけるフラッグシップ・パーティー"Tresor Series"。第一回目は、Neil Landstrumm と Dave Tarrida のダブルヘッダーにて集まった多くのクラウドを盛り上げてくれたが、その第二弾が今度は Cristian Vogel と Stewart Walker という二人の才能を招聘して開催された。Cristian は昨年2月の ageHa 公演以来、一方の Stewart は昨年8月の Yellow での公演以来の来日であり、特に Stewart が前回見せた神がかり的とも言える素晴らしいライブ・パフォーマンスはいまだに筆者の脳裏にこびりついており、大きな期待を胸に抱きながらのレポート取材となった。

丁度 Stewart のライブが始まったタイミングで、Crisitan とのインタビュー取材が入ってしまったため、筆者がフロアに戻れたのはそのライブがちょうど半分くらいを過ぎたころ。Stewart の繰り出すクールでインテリジェンス溢れるミニマル・トラックに、フロアのテンションも丁度ピークへと差し掛かっているところであった。お客の入りは超満員のすし詰め状態というわけではないが、フロア全体がほぼ満遍なくクラウドで埋めつくされた状態。筆者も早速フロアのど真ん中に飛び込み、8ヶ月前の鮮烈な記憶と共に、彼のサウンドにしばらく身を沈めることにする。

Stewart Walker
TRESOR, CRISTIAN VOGEL & STEWART WALKER TRESOR, CRISTIAN VOGEL & STEWART WALKER
TRESOR, CRISTIAN VOGEL & STEWART WALKER TRESOR, CRISTIAN VOGEL & STEWART WALKER
TRESOR, CRISTIAN VOGEL & STEWART WALKER

Stewart のセット・アップは、前回の来日時と同様にアウトボード系を中心としたシンプルなもの。しかし、前回は AKAI の MPC 1000 と Pioneer EFX500 だったものが、今回は同じ MPC でも前の型の MPC 3000 を使用しているようだ。前半の部分が聴けなかったのは残念だったが、気を取り直してしばらく聴いていると、彼特有のクリッキーで硬質なループが徐々に高揚感をあおり、特に派手なフレーズや効果音が使われていないのにも関わらず、ごく自然に自分自身の体感温度が上昇していくのを感じる。さすがに前回のような神がかったプレイとまでは行かなかったが、彼のライブは常に全くのゼロからリアルタイムに構築されていくスタイルを取っていることから、その内容とかテンションが毎回異なるのは当然のこと。最後の2曲あたりでグイグイっと持ち上がってきたところで「終了」となってしまい、ちょっと不完全燃焼な感じは残ったものの、トータル的には相変わらずクオリティの高いライブであったと言えるだろう。

Sodeayama

Stewart Walker
Cristian Vogel Cristian Vogel
Cristian Vogel Cristian Vogel

そして、Stewart のライブの後は Cristian Vogel がステージに登場、いかにも 彼らしい歪んだノイズ系サウンドでセットをスタートする。やがて重たいテクノ・ビートがフロアに響き渡り、展開は次第にクリッキーな四つ打へ。時折いわゆる「変態系」のミニマル・トラックでビートを崩しながらも、一定のグルーブ感を築きながら徐々にフロアの温度を暖めていく。しかし、それだけで終わらないのが Cristian Vogel というアーティスト。グルーブに身を任せている我々の首根っこを掴んだかと思うと、いきなり地面に叩きつけるような意表を突くようなプレイが中盤あたりから飛び出し始める。四つ打が続いたかと思うと、いきなりミックスもせずにディスコ・パンクやゲットー・エレクトロ風なトラックへと突入。そしてまた四つ打に戻ってグルービーな流れを作ったかと思うと、今度はノイズ系のエクスペリメンタル・サウンドをオーバーラップ風に炸裂させ、その次には官能的なミニマル・ハウスをフロアにぼんやりと浮かび上がらせていく…。自分の脳裏に浮かんだ感覚を頼りに、それでいて不思議な統一感を保ちながらミックスしていくセンスは、とてつもなくフリーキーであり、もはや一つのジャンルとかスタイルでくくることが不可能な領域に足を踏み込んでいるとさえ言える。筆者も何度となく地面に叩きつけられながらも必死に付いていこうとしたものの、ついに力尽きてフロアから脱落してしまう。最後には、それでも付き従う熱狂的なクラウドたちを前に、半ば教祖然とした雰囲気で自らの世界に没頭する Cristian の教祖然とした姿が印象的であった。

Cristian Vogel
Cristian Vogel


 

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