HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Yukihiro Fukutomi

’90年代から Nite Grooves、 King Street Sounds、 Jazzanova Compost Records といった名門レーベルで活動し、’02年にリリースした Love Each Other (A Danny Krivit Edit) をはじめとする数々の楽曲がNYの Body & SOUL 等でアンセム化したことでも知られるハウス / クロスオーバー・シーンの重鎮、福富幸宏。DJとしても「ハウスの本質と多様性」を追求すべく長きに渡ってプレイしてきた彼が、来る11月12日に通産7枚目となるニュー・アルバム "Contact" をリリースすることが明らかになった。

今回のアルバムでは彼の中にある様々な音楽的要素がそれぞれ接点となり、1つにまとめることによって今までの作品には見られなかった新しいタイプの楽曲が多数存在するとのこと。新境地を見事に打ち出し、さらなる活躍が期待される彼に HigherFrequency が初のインタビューを決行。気になるニュー・アルバムについてはもちろん、テクノ・シーンでも話題となっている別名義について、本アルバムと同時リリースされるジャズ・シンガー akiko のプロデュース・ワークについてなど、ベテランならではの深みある話を多数訊くことができた。

Interview : Masanori Matsuo (HigherFrequency)

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Yukihiro Fukutomi - 'Contact' Promo movie

HigherFrequency (HRFQ) : 11月12日にリリースされる通算7枚目のアルバム"Contact" ですが、本作はどんなコンセプトで制作されましたか?

Yukihiro Fukutomi (YF) : ジャズやソウルであったり、またはテックであったり、別々のものと認識している人もいると思うんですけど、少なからず接点があって。そういうものを繋いでいって、いろんな世界へ連れて行きたいという感じで制作しました。僕のDJも、共通点のある音楽をかけながら、様々なスタイルの音楽に展開していく、という感じなのですが、もともとハウス自体がそういうDJスタイルであり、クロスオーヴァー・ミュージックだと思っているんです。ダンスミュージックの多くは、昔から色んなものが常に混在しているし、色々な音楽をルーツに持っている。そういったものを改めて明確にするというテーマもあります。

HRFQ : "Contact" というタイトルにはどのような意味が込められてるのですか?

YF : 様々な音楽の「接点」をつないでいくというコンセプトですね。テックなものから黒っぽいディスコ、そこからアフロっぽいブロークンビーツに行って、ジャズの入ったテック・ハウスに戻ってくるみたいな。そういった接点を見出したうえで流れを作っています。ですけど、一般的には「連絡をとる」という意味ですよね。そういう意味ではダブルミーニング的なタイトルです。音楽を介したコミュニケーションの為に、この作品が機能してくれればいいと思いますし。

HRFQ : アルバムの制作期間はどれくらいでしたか?

YF : 3ヶ月ぐらいですね。

HRFQ : 実際の制作はどういった環境で行なっているんですか? バンドっぽい楽曲も多数収録されていましたが。

YF : 基本的には自宅スタジオでベーシックを作っています。そのまま一人で完結するものもあります。「バンドっぽい」というのは生楽器が多く使われている、という事だと思いますが、レコーディング自体は各楽器別々にやっています。PCにレコーディングして、あとから一体感を出す様に編集しています。

Yukihiro Fukutomi

HRFQ : あなたの別名義では、Carl Craig ライクなテクノっぽい作風もお持ちですね。今回のアルバムの7曲目 'Nesting' でも感じられましたが、ここ最近はテクノ系のシーンにも着目しているのですか?

YF : はい、そうですね。でもシーンがどうこうというよりは、昔から「音楽」にフォーカスすることの方が多かったですね。10年くらい前の早くてケミカルなテクノは自分の好みではなかったんですけど、最近のは好きなものが多いですね。こちらの見る目が変わったのか、シーンが変わったのか、どちらとも言えないですけど。今のテクノのマーケットは安易でつまらないものも多いですけど、すごく実験的で面白いものもたくさんある。それはとても自由なシーンだからこそだと思うし、今はすごく面白いと思うんですよ。ものすごく幅があるじゃないですか。

HRFQ : 今回のアルバムと同時リリースされるジャズシンガー akiko さんのアルバムにも参加されてるとのことですが、こちらではどういった関わりをされたのですか?

YF : 一曲は僕が前に彼女と作った曲のセルフ・カバーですね。それ以外は akikoちゃんが作った曲のトラックをプロデュースを行いました。そっちはやっぱり歌が中心にあるものなので、所謂 NuJazz 的な作風で制作しました。

HRFQ : 今後はアルバムのリリース・ツアーが待っていますが、日本全国を徹底的に回るといった凄いスケジュールですね。名古屋では Brisa さんとの共演もあるそうですが、東京と地方のシーンの違い、また地方の魅力などがありましたら教えてください。

YF : 僕は東京出身なんですけど、感覚として東京以外の人の方がおしゃれだと思うんですよ。情報に対して貪欲というか、音楽に対しても最近はそういう傾向があって、そういった貪欲に追求してる人たちには「全力でぶつかる」姿勢を心がけています。一般的に昔では、東京のDJは地方で「営業プレイ」を行うイメージもあったかもしれませんが、今では状況さえ揃えば無理にお祭り騒ぎにしなくてもいいという感じ。もともと僕は営業プレイはあまり出来ないんですし。

HRFQ : 最後に、HigherFrequency 読者へメッセージをお願いします。

YF : 今回のアルバム "Contact" のテーマにも共通するんですけど、とにかく続きを探して欲しいと思うんですよね。例えばテクノの人が続きを探してデトロイトへ行くのもいいのですが、そのルーツもありますし。そこにはジャズやソウルやファンク、また現代音楽的ミニマルやエレクトリックミュージックなどがすごく繋がっていると思うんです。そういったものに偏見なく向き合ってほしいと思います。

End of the interview


■Yukihiro Fukutomi 『Contact』Release Tour

福富幸宏 ”Contact” リリース関連情報






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