HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Wally Lopez


「VIP エリアとか、VIP パーティーには全く興味がないんだ。そういう類の人には会ったこともないしね。僕って結構普通なんだよ」

Ibiza の自宅で電話インタビューに応える Pacha のプロデューサー / DJ Wally Lopez は、このように、Pacha によく来店することで有名な P Diddy をはじめとするセレブには会ったことがないと語ったものの、クラブそのものは溺愛していると話した。

「あそこにいるとすごくスペシャルな気持ちになるんだ。なぜか分からないんだけどね。Pacha よりいいサウンド・システムのあるクラブや、新しいクラブに行ったことはもちろんあるけど、なぜか Pacha はいつでも特別なんだ」

「あのサクランボのマークだって何だか特別な感じがあるけど、よく考えてみると不思議だよね。だって、ただのサクランボだよ?でもみんなあのマークが大好きなんだ。この夏には Pacha マークのついたTシャツが30万枚を売れたんだって。ものすごいよね」

マドリッドを拠点に活躍する、物静かで謙遜なスペイン人アーティストは、流暢と言うにはあと一歩といった、しかし熱意に溢れた英語でこのように語り、彼自身も、イギリス的ユーモアを理解する、断固としたイギリス・マニアだと語った。

「イギリス人の友達がたくさんいるし、ベイクド・ビーンズ&トーストが大好きなんだ」

「クラブ・ビジネスをスタートさせたのはイギリス人だし、イギリスの持つクラブ文化の大きさには驚きの一言さ。スペインでは未だに音楽文化より、町文化の方が栄えているんだ。それを変化していけるかは僕たちにかかっているんだ」

こう話す Wally がそういった変化を望む気持ちを込めてリリースするのが、"Perceptions of Pacha Vol.2"。アーティスト / ミックスの混合アルバムであるこの新しいアルバムには、なんと18カ月もの月を費やしたという。Pacha のレジデント DJ / トランペット奏者 Gordon Edge 、Mucho Muchacho (MC) 、Beatmaster G 等をフィーチャーした本作は、Farley & Heller がミックスを手掛けた Pacha Perceptions シリーズの第一弾のリリースから5年の歳月を経ての発売となる。また、皮肉なことにミックス第一弾がリリースされた年は、Wally が始めてお客として Pacha を訪れた年でもあったという。しかしそんな彼も、その6ヶ月後には、クラブとレジデント契約を果たし、現在に至るまでレジデントとして活躍を続けているのだ。

以下は対談形式でのインタビューの模様をお伝えする
(Translation by Kei Tajima)

Skrufff (Jonty Skrufff) : "Perceptions of Pacha Vol.2" は、当初半年前に発売される予定でしたよね?何が原因で遅れてしまったのですか?

Wally Lopez : 本当は夏の初めにリリースされる予定だったんだけど、権利関係でちょっと問題があったんだ。アルバムに取り込み始めたのは昨年の夏で、それからトラックをつくったり、コラボレーションしたりと、全部で1年以上かかったね。

Skrufff : そういった長い作業の中、どういったポイントで完成の決意をされたのですか?

Wally Lopez : 分からないな。少しばかり調整をして、あるトラックではシンガーを変えたからヴォーカルをやり直さなくちゃいけなかったりしたけど、そんなに多くは変更しなかったかな。Pacha でのパーティーをイメージして、トラックをつくったんだ。全部で14曲出来たけど、結局アルバムに使ったのはそのうちの12曲だったね

Skrufff : 今年のイビザに対するあなたの "Perception" (見解) を教えてください。

Wally Lopez : Danny (Danny Whittle、Pacha のブランド・ディレクター) と同じことを感じてるよ。どこが危機なんだ?ってね。今シーズンの Pacha は毎晩満員だったし、イビザ島全体も例年より繁盛していたよ。ただ変わったのは、人々が持っているお金が少なくなったということ。前まで15日ステイしていた人が、今年はその半分しかステイできないといった感じにね。ただ、イビザを訪れる人が例年の倍以上いたから、僕たちとってはさらに良い状況だったね。

Skrufff : 初めてクラバーとして Pacha を訪れた時に、Pacha でDJをする決意をしたという話は本当ですか?

Wally Lopez : そうだね。あれは4〜5年前だったかな。そんな前ではないかもしれないけど、当時は El Divino でプレイしていて、彼女と一緒に Pacha に遊びにいったんだ。ちょうど Paul Oakenfold が Perfecto のパーティーでプレイしていたんだけど、彼女に「いつかここでプレイ出来るようになると思う?」って訊かれたんだ。その時僕は、「もし僕が努力すれば、7〜8年後には出来るかもね」って答えたんだけど、結局その年の冬にはレジデントとしてプレイするようになったんだ。わずか6ヶ月以内にね。

Skrufff : その6ヶ月の間に何が起こったのですか?

Wally Lopez : その夏に何枚かいいトラックをリリースしていて、Danny から僕のレーベルにブッキングのメールが入ったんだ。だから Pacha でプレイして、彼らが僕の音楽を気に入ってくれて、それで決まったというわけさ。

Skrufff : さっき彼女の話が出ましたが、Pacha のレジデントDJともなると、女性からの誘いが絶えないのではないですか?どうやって対処しているんですか?

Wally Lopez : そんなのは作り話だから、対処なんてする必要はないんだ。ブースの周りに集まってくるのは、音楽好きだけだよ。

Skrufff : スペインの人々は、多くのイギリス人と同じように、イビザを "神秘的なパーティー・アイランド"として見ているのでしょうか?

Wally Lopez : 「今年の夏はより多くのスペイン人がイビザを訪れたんだ。以前よりもっと多くのね。僕の拠点であるマドリッドからもたくさん来たんだ」

Skrufff : '80年代に、スペイン人のクラバーはイビザに行っていたんですか?

Wally Lopez : そうでもなかったね。問題は文化なのさ。イギリスには当時から大きなクラブ・カルチャーがあったけど、スペインにはなかった。'80年代にはイビザはヒッピーが訪れるような島で、クラバーの行くところじゃなかったんだ。少なくとも今みたいな感じではなかったよ。

Skrufff : シーズンの終盤から、朝6時以降オープンしているクラブに警察が襲撃し始めましたが、これに対してどう思われますか?

Wally Lopez : 新しい法律みたいなんだよね。何でも学校が開校したっていう話で、子供には悪影響ってことなんじゃないかな。Ministry (of Sound) でプレイしたときも朝6時きっかりに終わってたしね。子供が学校に行かなくちゃならないのは分かるけど、イビザは音楽の島なんだから、当局にもそれを忘れないで欲しいよ。

Skrufff : 例えば、Erick Morillo のようなビッグDJになりたいとか、そういった大きな野心は持っていますか?

Wally Lopez : いいや、僕が望むのは自分の音楽に対してハッピーでいられることだけなんだ。Morillo になりたいとは思わないな。自分らしくいたいよ。

Skrufff : イビザでDJすることを夢見ているDJたちに何かアドバイスをいただけますか?

Wally Lopez : まず、ビッグ・スターになりたいと思ってはダメなんだ。僕にとってDJは趣味であって、昔からよく、「旅するお金やクラブで楽しんでプレイするのにお金を払ってもらっている」と話していたものだよ。大事なのは楽しむことと音楽カルチャーだってことをDJは忘れちゃいけないんだ。有名になることだけど考えていてはいけないよ。

End of the interview

"Perceptions Of Pacha" は発売中


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