HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Transit Kings

アンビエント・テクノの重鎮 The Orb の中心人物 Alex Paterson と、The Orb の創設メンバーの一人であり、'90年にリリースしたアルバム "Chill Out" で歴史に深く名を刻んだユニット KLF での活動でも知られる Jimmy Cauty、Pink Froyd のセッション・ベーシストとして有名な Guy Pratt、そしてサウンド・エンジニアの Don Beken といった何とも豪華なメンバーで結成されて話題を呼んだ Transit Kings が、待望のファースト・アルバム "Living in a Giant Candle Winking at God" のリリースから僅か2週間足らずで、Fuji Rock Festival に出演するために来日を果たした。

アンビエントから、テクノ、ブレイクス、ドラムンベース、そしてロックまで、あらゆるジャンルの音楽を取り込んだサウンドを聴かせるアルバムと同様に、非常に自由度の高いセットを苗場の地で響かせてオーディエンスを楽しませてくれた Transit Kings。そんな貫禄溢れるプレイを聴かせてくれる直前に HigherFrequency に話を聞かせてくれた彼らの語り口は軽快で、アルバム制作の裏話から、現在バンドを離れている Jimmy や Guy のことまで、ジョークを交えながら楽しく教えてくれた。

> Interview : Matt Cotterill (HigherFrequency) _ Translation & Introduction : Yoshiharu Kobayashi (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : ‘The Last Lighthouse Keeper’ では、コメディ番組 The Fast Show の Simon Day がヴォーカルを務めていますね。彼を起用することになった経緯を教えてもらえますか?

Alex Paterson : 俺にとって、ツアー・バスで見る The Fast Show の存在はかなり大きかった。活動を始めたばかりの頃は、何年間もツアー中に見ていたものさ。一度、The Orb として Top of the Pops に出たとき、若い頃の Father Ted に会ったんだ。彼はアンビエント・ハウス DJ を題材につくったエピソードを教えてくれたんだけど、その話は基本的に The Orb からアイデアを盗んでつくったって言うんだよ。「そいつはいい!」って思ったから、’The Last Lighthouse Keeper’ は Simon Day を使って喜劇っぽい感じでつくることにしたのさ。それに、Simon は Guy Pratt と仲がいいってことも分かってね。ちなみに、Guy も Transit Kings のメンバーだけど、今ここにはいない。というのも・・・Guy はどうしようもない奴だからさ(笑)あいつは素晴らしいくらいにどうしようもない奴だよ。とにかく Guy は有名なバンドと仕事をするのが好きなんだ。ロックンロール・アニマルみたいなものさ。Simon Day を巻き込んだのは Guy なんだけど、Simon がスタジオでやったのは、ただひたすらわめき散らすようなことだけさ。歌詞の内容は灯台管理者についての長い話みたいな感じだね。

HRFQ : 歌詞は Simon が書いたのですか?

Alex : 歌詞も全部その日のうちに出来たんだ!歌詞の内容は・・・かなり性差別的なものだけど、21世紀のこのご時勢でも受け入れられているのさ。みんな笑いながら聴いてくれるよ。女の子たちがアパートや螺旋階段を掃除して回ることについて歌っているんだ。最高さ!

HRFQ : Guy Pratt が Edinburgh Festival に出たのが興味深かったのですが。

Alex : そう、今やあいつはコメディアンにもなったのさ。Guy の生い立ちについて知っているか分からないけど、あいつの父親は俳優だったんだ。ラッキーなことに、Guy と俺は同じ学校に通っていて、14、15歳くらいのかなり若いときから知り合いだから、何でも好きなことが言えるんだ!同じ理由で、あいつも俺のことなら何でも好きに言えるし、それで傷つくことはない。本当に昔からの知り合いだからね。

HRFQ : ということは、あなたたちは互いに悪口を言い合えるのですね。みんな同じレベルにいるわけですから。

Alex : そう、いい意味でね。でも、あいつのことを酷い言い方でこき下ろすことはない。あいつは本当にいい友達で、そんなに酷くこき下ろす必要は無いからね。・・・でも、ただあいつはどうしようもない奴なのさ!(笑)

HRFQ : Transit Kings にとってはコメディも少しはインスピレーション源になるのでしょうか?

Alex : なるんじゃない?コメディっぽい曲でアルバムをつくることだって出来たさ。アルバムを聴いた人は、みんな ‘The Last Lighthouse Keeper’ を聴くと微笑んでくれるよ。

HRFQ : アルバムのタイトルは “Living in a Giant Candle Winking at God” で、収録曲の中には ‘America is Unavailable’ というタイトルのものがあります。どちらも面白いタイトルだと思うのですが、このタイトルは何についてですか?

Alex : 色々なことについてなんだけど、基本的には9/11から受けた印象についてだね。アメリカに関しては注意深くならなくてはいけないと思う。今年、Kompakt から‘God Bless America’ っていうタイトルの12インチをリリースしたんだ。凄いタイトルだろう!’America is Unavailable’ っていうタイトルは ATM の注意のコメントから来ているんだ。「申し訳ございません。アメリカの ATM は現在使用できません。また後ほどお試しください」っていうね。そこからタイトルを付けたというわけさ。

HRFQ : アルバムのリリースに併せて映画を制作したそうですが・・・

Dom Beken : 映画をつくる計画はあるよ。Simon Day と撮影をする予定なんだけど、今はプリプロの段階だから、まだどうなるか分からないんだ。首を長くして待っててよ。完成したらすぐ教えるからさ!

HRFQ : あなたたちもその映画には出演するのですか?

Dom : 名場面を演出してみせるよ。でも、どれだけアニメーションを使って、どれだけ俳優を使うかはまだ決めていないんだ。もうアルバムの曲は聞いたかい?

HRFQ : 今ちょうど Alex と ‘The Last Lighthouse Keeper’ について話していたところなんです。Simon Day は何でも好きなことを歌うことが出来たので、その場で歌詞を考えたと言ってましたよ。

Dom : 元々彼は全く別のトラックで歌っていたんだ。そのトラックはループされて3時間もあったのに、あいつらったら俺にエディットするように頼んできてさ!!

HRFQ : ‘04年の正月に東京でライブをして、ニュー・アルバムからの曲を試していましたよね。なぜ東京を選んだのですか?

Alex : 正直に言うと、イギリスのメディアが俺たちのパフォーマンスについて書き立てる心配が無いくらい遠い土地だと思ったから、というのが理由の一つなんだ。ちょっとパラノイアみたいだけどね。でも、その手のネタでイギリス人は結構楽しめるものなのさ。8月にはイギリスでもギグをするから、そこで何かしらのフィードバックを得ることが出来るだろうね。

HRFQ : あれからアルバムのリリースまで2年半かかりましたね・・・。

Alex : 実は、あのアルバムをつくるのに5年もかかってるんだ!(笑)

HRFQ : 2倍もかかってるんですね!

Alex : セカンド・アルバムがどうなるかなんて想像もつかないよ!

Dom : このアルバムに6年もかかったから、次のアルバムは6週間でつくってみせるよ!(笑)どの曲にもたくさんのヴァージョンがあるから、次のアルバムでは Transit Kings の持ち曲全てが順番に収録されていくことになるだろうね。聴くのに8年間もかかる世界初のアルバムさ!500枚組の DVD セットもできるね!(笑)

HRFQ : Tokens EP にはアルバムからのトラックがいくつか収録されていますが、この EP のリリースしたのはなぜでしょうか?

Alex : 正にその “Token” というタイトル通り、アルバムの一部になるという証拠の EP だからさ。基本的には言葉遊びだね。

HRFQ : Jimmy Cauty が EP で何曲か書いていますが、現在彼はバンドから長期的に離れている状態ですよね。

Alex : もし俺たちが凄いビッグになったら、あいつもまた帰ってくるさ!(笑)ほら、基本的には金が入ってくれば、あいつも戻ってくるんだ(笑)あいつの悪口も言おうか?Guy Pratt について言ったばかりだけど!

HRFQ : Jimmy の名前は、あなたのクリスマス・カード・リストにまだ載っていますか?

Alex : うーん・・・いい質問だね・・・たぶん Jimmy の前の奥さんが載ってるよ!(笑)先週彼女から、「行く、行く。XXX」っていうメールをもらったんだ。

Dom : Jimmy の前の奥さんと変なメールを送り合う仲なのかい?(笑)

Alex : いや、そうじゃなくて。The Orb がブライトンでプレイするから観に来る?とメールを打っただけなんだけど、彼女が「行く、行く、行く。XXX」って返してきたのさ。おい、お前、ちょっと黙れってば!(笑)

HRFQ : さて、The Orb、KLF、Pink Floyd、The Smithsなど、あなたたちに関係のある大物たちについてお話を伺ってもよろしいですか?

Alex : The Smiths には耐えられない!あいつは今 DJ をしてるんだよね?

HRFQ : Johnny Marr ですね。ええ、彼は DJ を始めました。

Alex : そうだよね。あいつの DJ は、The Cult の Duffy のと同じくらい酷いよ!

HRFQ : マンチェスターのギタリストたちについての話だとも言えますね。2人ともギターをプレイしていますから。さて、少し辛い話になってしまいますが、数週間前に Syd Barrett が他界しました。もちろん Guy Pratt は Pink Floyd と非常に関係が深い人物です。Syd が Pink Floyd や音楽シーン全体に果たした貢献についてはどのような意見をお持ちですか?

Alex : アルバムが Syd が死んだのと同じ週にリリースされたのは妙な気分だったね。それに、ちょうど俺たちが John Peel セッションで使った ‘Shine on you Crazy Diamond’ のギター・リフの使用許可を取ろうとしているときでもあったし。間違いなく、あの曲は Pink Floyd のメンバーが Syd について歌った曲だろう。本当におかしな縁だと思うね。ただ同じ週に出たというだけだけど、実際に彼は死んでしまったのだからね。Pink Floyd のレコードを何枚か取り出して聴いてみたよ。‘Be Careful with that Axe Eugene’ とか ‘See Emily Play’ とかさ。でも、実は Pink Floyd の音楽はそんなに好きじゃないっていうのもおかしなことだよね。

Dom : 俺は好きだけど。

Alex: 好きじゃないのに好きだとは言えないよ。まあ、言うことも出来るけど、嘘をついてるってことになる。それじゃよくないだろう。

Dom: 俺たちにとって Syd の死は歴史上の出来事みたいなものなんだ。つまり、ほら、彼が Pink Floyd にいたころは俺たちもまだ生まれていなかっただろう?いや、生まれたばかりだったかも。たぶんその頃は二日酔いで疲れきっていた今朝よりも生き生きとしていたんだろうな(笑)

Alex: ‘60年代なら Pink Floyd より Cassius Clay についての方がよく覚えているよ。なにせ、Syd がバンドを辞めた当時、俺はまだ・・・ええと・・・6歳だったわけだからね。もし Guy がここにいたら、もっといい応えを言ってくれたと思うよ。そういった意味では、あいつは Pink Floyd ファミリーの一員だからさ。

HRFQ : では、最後に Transit Kings の今後の活動についてコメントをいただけますか?

Dom : ええと、今から2、3時間のうちにギグをすることになっていて、その後はイギリスに戻る予定さ。ちょっと休みを取るんだ(笑)それから時期をみて、次のアルバムをつくるつもりさ。

Alex : このアルバムに飽きてしまう前にね。

Dom : それに、みんながこのアルバムを気に入ってくれるかも知っておかないとね。このアルバムは、意識して一定のジャンルやスタイルに捉われない内容にしたから、予定外にこんなにも時間がかったんだ。でも、きっと誰かが聴いてみたいと思うアルバムになっていると思う。このアルバムはドラムンベースでもあるし、ディスコでもあるし、何でもありなんだ。

Alex : それにインディでもあり、ポスト・ロックでもある。でも、これは今の音楽が抱えている問題なんだ。今はレッテルの中に更にレッテルをつくるようなことをしているから、そういったシーンの流れについて行くか、何か違ったことや革新的なことをするかを選択しなくてはいけない。でも、個人的にはそういったことはもう十分やってきたと思ってる。Transit Kings は、そういった意味じゃ凄くいいことをやってるんじゃないかな。おかげで結構時間がかかってしまったけど、一定のスタイルに収まらないものが出来たね。これまで俺がつくってきたどんな音楽よりも、Transit Kings にギターがフィーチャーされているのはそういうこと。このアルバムは、今までとは違った新しい体験なんだ。

Dom : 意識して作曲に力を入れて、サンプルは少なめにした。その二つの要素を新しいやり方で混ぜ合わせてみようとしたんだ。俺たちのスタジオ・ワークのやり方っていうのは、文字通り全ての機材をセットアップして、録音できる状態にしたら、後はただプレイして、どうなって行くか成り行きに任せるっていう感じさ。ラッキーなことに、このメンバーだと色々なアイデアが浮かんでくる。Guy から影響と Alex からの影響と俺からの影響っていうのは、実際に全部が全く違ったものなんだ。

Alex : Jimmy からの影響もね(笑)あいつは物凄い騒音みたいなのを立てるからさ、ハハ!

HRFQ : さて、質問は以上です。今日のギグを楽しみにしていますよ。これからも頑張ってください!

Alex & Dom : ありがとう。

End of the interview

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