HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Todd Terry Interview


「時代は変わったのさ。レコードは売らなくたっていい。その代わりにギグをしなきゃならないんだ。以前はギグをしなくてもいいように、レコードを売っていたのにね。俺も最近はフリーでレコードを配ってるよ。その方がいいプロモーションになるし、ギグの誘いも来るからね。そうやってギグをすることで金を稼いでいるのさ」

20年前に初めて最も信頼のおけるニューヨークのハウス・プロデューサーとしての地位を確立してからというもの、Todd Terry は現在もなおシーン随一のビッグネーム、そしてシーンで最もリスペクトされているプロデューサー/ DJ として君臨し続けている。現在までに手がけたプロダクションには、'Somethin Going On' や Everything But The Girl の 'Missing' といったクロスオーバー・ヒット があり、Annie Lennox から George Michael、Bjork といったアーティストにも楽曲を提供するなど、非常に輝かしい経歴を持ち、その発言力は絶大だ。

「最近ではレコードを売るだけで金は稼げないよ。レコードが発売になる頃には、みんな興味を失ってしまうんだ。以前はリリースから4〜5日で1〜2万枚は売れたのに、最近じゃ3枚売れればラッキーってとこさ」

ブルックリンでも最も治安の悪いエリアで幼少時代を過ごし、ヒップホップを大量に輩出したことでも知られる地域の縄張り争いで名を上げた Todd は、ギャングとしての短い経験を経ながらも、最終的には音楽の道を選んだ。

「小さい頃の夢は、自分の縄張りを支配することだった。そういう風に育てられたのさ。その縄張りのリーダーになって、みんな自分に従うか、自分より強い奴が出てきたら殺すっていう考えだったね」

「俺たちはそういう精神を持って育てられたんだ。縄張りの中で何でもやりたい放題やるのが夢だった。そういう考えだったよ。今となっては馬鹿みたいな話だけどね」

一方、現在の彼を取り巻く環境は華やかなイビザ。この島で彼はプロモーション会社 MN2 の El Divino におけるパーティーをスタートさせるところである。しかし、特に Todd 自身がこの島のグラマラスなイメージに揺さぶられたというわけではなさそうだ。

「イビザは最近少し変わったような気がするな。以前まではコマーシャルなクラウドがアンダーグラウンドなものを求めてやって来るような場所だったのに、最近ではアンダーグラウンドなクラウドがコマーシャルなものを求めに来ているように感じられるね。つまり真逆になってしまったのさ」

「イビザは好きになったり嫌いになったりって感じだね。あの島は本当にコマーシャルなんだ。だから DJ にとってイビザでプレイするのは難しいことじゃない。でも、ギグの数日前からいろいろ見たり聴いたりしてリサーチしておくべきだと思うよ。そうすれば島で何が起こっているのかが理解しやすくなるからね」

以下は対談形式でのインタビューの模様をお伝えする
(Translation by Kei Tajima)

Skrufff (Jonty Skrufff): El Divino で Milk N 2 Sugar のパーティーをスタートされますが、セットでは常に新しい楽曲をプレイするように意識されているのですか?

Todd Terry : 新しい楽曲から自分の曲まで何でもプレイするよ。最近ではよくシカゴ・ハウスをプレイして、セットの終盤にはオールド・スクール系の楽曲をかけてる。出来る限りクラウドを自分の世界に引き込んでいって、終盤にかけてデトロイト / シカゴ系のスタイルにシフトしていくんだ。最近はずっとそういうスタイルでプレイしてるよ。

Skrufff : キャリアを重ねるごとに DJ は簡単になっていくものですか?それとも難しくなってきますか?

Todd Terry : 最近では誰でも DJ するようになったから、特にスペシャルなものじゃなくなってしまったよね。DJ するのに、ずば抜けた才能は必要ない。誰でもすぐ DJ を始められて、あっという間に有名になれるんだ。俺には何の不満もないけどね。

Skrufff : 誰でも DJ が出来てしまうという事実によって、あなたはどんな影響を受けましたか?

Todd Terry : 幸運なことに、俺が唯一持っているものと言えばレコードでね。それが自分にはあって他の DJ にはない部分さ。それに、この20年間レコードをリリースしてきたから、ブッキングが絶えることはないしね。クラバーは1年を通して多くの DJ がプレイする最新の楽曲を耳にしてると思うんだ。だから彼らにとって僕の音楽性 - 多くの古いレコードや、5年前によく耳にした楽曲を聴くこと - はかえって新鮮なのかもしれないね。5年前に聴き逃されてしまったような楽曲を見つけ出して、ビッグ・チューンに仕立て上げてしまう。俺が目指してるのはそういう方向性なんだ。

Skrufff : 最近のハウス・シーンについてはどう思われますか?

Todd Terry : 最近取り組んでるものとして、All Star Project というプロジェクトがあるんだけど、俺と Kenny (Dope)、Louis (Vegas)、Roger (Sanchez)、 Terry Hunter、DJ Sneak、Jazzy Jeff、Armand Van Helden、Junior Sanchez といった合計30人くらいのアーティストと一緒にスタジオに入って、アルバムを制作しているんだ。今も進行中なんだけど、すでにたくさんの曲が出来上がっていて、ちょうどレーベルを探しているところでね。レーベルが決まったらどういう風に作品をリリースしていくか考えようと思ってるんだ。

奴らと一緒にスタジオに入るのはすごく楽しかったよ。ふざけあったりしてね。スタジオの様子は全部フィルムに収めたんだ。カメラを回したり、一緒に飯を食ったり、本当に楽しかったよ。みんなで一緒の部屋にいて、目と目を見て話し合える機会なんてめったにないし、そういったことが今の活気のない音楽ビジネスの世界には必要だと思ったんだ。シーンがこんな風になってしまったのは、企業のせいなのさ。人じゃない。シーンの人々は素晴らしいんだ。でも企業が彼らに害を与えてるのさ。彼らは僕らの音楽シーンを活性化してるつもりなんだろうけど、彼らのやってることは"洗い流し"さ。それに気付いてないんだよね。

Skrufff : その"洗い流し"とはどういう意味ですか?

Todd Terry : 企業が一発屋のアーティストを賛美することさ。一発ヒットを出しただけのアーティストに多額のアルバム契約を結んで、今まで15〜20曲もヒットを出してきたアーティストに同じような契約をオファーすることはない。彼らは彼ら自身の手でビジネスをダメにしていることに気付いてないんだろうね。シーンのパイオニアは大事にするべきだよ。シーンの中で名前が通っているアーティストをね。そうすることでシーンを正当なものに保つことが出来るんだ。俺自身が何枚もアルバムのオファーを受けなきゃならないって言ってるわけじゃないよ。ただ、洗い流すならそれなりの責任を持てよってことさ。シーンを作ったアーティストを無視すれば、大変なことになるからね。

Skrufff : 5年前より音楽でお金を稼ぐのは難しくなりましたか?

Todd Terry : 時代は変わったのさ。レコードは売らなたっていい。その代わりにギグをしなきゃならないんだ。以前はギグをしなくてもいいようにレコードを売っていたのにね。最近ではフリーでレコードを配ってるよ。その方がいいプロモーションになるし、ギグの誘いも来るからね。そうやってギグをすることで金を稼いでいるのさ。最近ではレコードを売るだけで金は稼げないよ。レコードが発売になる頃には、みんな興味を失ってしまうんだ。以前はリリースから4〜5日で1〜2万枚は売れたのに、最近じゃ3枚売れればラッキーってとこさ。

Skrufff : 最近のニューヨークのクラブ・シーンについてどう思われますか?

Todd Terry : もう10年近く見てないからなぁ。アメリカのクラブ・シーンはもともとラップや R&B が中心なんだ。果たしてニューヨークのクラブ・シーンが面白いかどうかは分からないよ。以前はクールだったけど、そんなイメージも13〜14年前には完全に消えてしまったしね。今は面白いことなんて起こってないんじゃないかな。以前までハウス系のクラブに行くことはクールだったけど、今はそうじゃないと思うよ。

Todd Terry Interview

Skrufff : あなたはギャング・カルチャーが流行していた'80年代のブルックリンで成長されましたね…

Skrufff : DJ を始める前はギャングの世界にいたんだ。音楽業界に入る前は、そういった類の人々とつるんでたよ。そのことについてはあまり話したくないけど、一応ブルックリンでは名前を知られてるんだ。でも、ギャングから離れたことで問題に巻き込まれたことはないし、むしろリスペクトされてるくらいさ。自分たちの仲間のうちの一人がギャング以外のビジネスで成功したことが嬉しいんだろうね。今までベイリッジやコニー・アイランドを通って、失礼をされたことは一度もないよ。むしろ尊敬の眼差しを感じるほどさ。彼らは俺が今までどんな経験をしてきたかを知っているからね。

Skrufff : ギャングから一転、音楽の道に入ったのには何か大きなきっかけがあったのでしょうか?

Todd Terry : 誰の人生においても、危険信号を感じるときが一度はあると思っていてね。俺もおそらく22年前にそういう信号を受け取ったんだ。「お前は生きたいのか?それとも死にたいのか?」って考えされられるような出来事が起きてね。その危険信号にどうやって応えるかによって、その後の人生が決まっていくと思うんだ。

Skrufff : それからは音楽の道一本ということですよね?

Todd Terry : 俺が選んだのは、そういった類の人々と関わらない道だった。彼らと絡んでいても、何も残らないんだ。いくら悪さしてお金を稼いだとしても、そのすべてを使い果たすことは出来ない。警察に捕まったり、トラブルに巻き込まれることなく人生を謳歌した人物なんて見たことがないよ。やくざでも売春でも、なんでもさ。そういったビジネスで成功した人を見たことがないんだ。その一方で、音楽ビジネスで成功した人の例は知っているから、そっちを選んだというわけさ。

Skrufff : 子供の頃よくマンハッタンに行きましたか?

Todd Terry : いいや。子供の頃の夢は、自分の縄張りを支配することだったよ。俺たちはそういう風に育てられたのさ。その縄張りのリーダーになって、みんなが自分に従うか、自分より強い奴が出てきたら殺すっていう考えだった。俺たちはそういう精神を持って育てられたんだ。縄張りの中で何でもやりたい放題やるのが夢だった。そういう考え方をしてたよ。今となっては馬鹿みたいな話だけどね。単なる力への執着さ。自分たちのしたいように道路をコントロールしたって、自分たちが何者なのかを知って行動していたから警察は何も言わない。そういう考え方だった。でも、もちろんそんなに物事は上手く行かないんだ。危険信号を受け取るまでは分からないことだけどね。そんな考え方は正しくないし、筋が通ってないんだ。

Skrufff : いまだに 「Todd Is God(Todd は神)」というフレーズを耳にされることはありますか?

Todd Terry : そうやって尊敬をされるのは素晴らしいことだよね。ただ、その言葉に応えるように常に努力しなきゃならないと思うんだ。「Todd is dead(Todd は死んだ)」って言われるようになるまではね。でも良いことだよ。その言葉があるから努力できる。常に良いレコードを出して、素晴らしいセットをしなきゃならないって思えるんだ。それから顔を背けることも、拒絶することも出来ない。いつまでも消えることのないイメージだと思うから、そのイメージを満たし続けなきゃならないんだ。いつまで神を演じられるかは分からないけど、出来るだけやってみるつもりだよ。

Skrufff : あと数ヶ月で40歳になりますが、年齢は気になりますか?

Todd Terry : 40になるのは来年の4月だよ。

Skrufff : それを期に何かが変わるということはあるんでしょうか?

Todd Terry : 変わることなんてないさ。信じないだろうけど、仲間の中じゃ俺は一番若い方で、唯一俺より若いのは Kenny (Kenny Dope Gonzalez) だけなんだ。誰も知らないだろうけど、ほかの奴らは俺より4〜5歳年上だしね。俺より10歳以上年上のアーティストだってたくさんいるし、あと2〜3年続けたって問題ないよ。

Skrufff : Tiesto をはじめとするダンス系雑誌の言うところの"スーパースター DJ" についてどう思いますか?

Todd Terry : いいんじゃない?俺はここで彼らのやっていることをあれこれ批判するつもりはないけど、俺にはああいう音楽は、ほかの DJ たちが世に送り出そうとしているものに対してマイナスのイメージを与えていると思うよ。Tiesto や他の多くの DJ がプレイするものは、必ずしも俺たちが表現したいものじゃない。俺にしてみれば、ああいう音楽のせいでクラブに行くことがダサくなってしまったんだと思うよ。俺の仲間の中にも、ああいう音にあわせて踊ることがクールだと思う奴は一人もいないんじゃないかな。シリアスなタイプの音楽じゃないのさ。だから偽物の音楽としてしか見られないし、今後も偽物の音楽であり続ける。俺たちは今そういった偽物がもてはやされる時代にいるから、どうしようもないってわけさ。

End of the interview

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