HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Tiga

「僕は自分のイメージを気にしていないエンターテイナーなんていないと思うんだ。もしそう言い張る人がいても僕は信じない。彼らは自分のルックスに自信がなかったり、ルックスのことを考えたくないあまりに少しずつ諦めてしまって、自分自身に気にしないように言い聞かせているだけなんじゃないかな?でも絶対みんな何かしらの形でルックスを気にしてるんだ。ルックスに対して取る行動はそれぞれ違うかも知れないけど、みんな気にしてはいるはずだよ。」

最近 Mixmag に「エレクトロ界のピンナップ」と呼ばれた Tiga。彼の最も好きなものは「靴、ヘアスタイル、そして、手袋」だと言うことからも彼が自分自身のルックスに相当な自信を持っていることが伺えるだろう。実際にこのカナダ人のエレクトロ・テクノのスターは自分のイメージをとても気にしていることを認めてた最初の人物である。

「僕のイメージは僕が成功する上で非常に重要な要素の一つだったと思うんだ。僕の作品は僕のイメージがあったからこそ、さらに成功した部分もあると思う。僕はいつもミステリアスな印象を与えるのが好きで、現にそういうイメージを持たれるようにしてきたんだ。僕は流行から少し外れることも好きだし、「リアル」な人間として見られることも好きなんだ。そんな風に見られる人は稀だと思うけどね。イメージっていうのはすごく大切で、自分自身が楽しめるチャンスでもあると思うよ。」

’02年の決定的なエレクトロの代表曲、'Sunglasses At Night' をきっかけに世界規模の舞台に登った Tiga はすぐに当時の影響力を持ったアーティスト達を越えてしまった。しかし、Tiga は当時の彼のアーティスト仲間達にダメージを与えたような反発も上手く回避。彼のテクノに関する実績と優れたDJスキルを前面に出し、すぐにスーパースターDJのレベルへと到達した。そして、彼はそのステータスを今に至るまで安定して保ち続けた。同時に彼は批評的な評価を得ている自身のレーベル Turbo を設立、3枚のアルバムや数々のリミックス作品をリリースした。目ぼしい業績を上げられない中、それでも彼は平常心を保ち続けた。

「僕の今の生活がどうやって成り立っているかを教えるよ。みんなが僕のDJプレイに対して、あまりに多くのお金を払っているから僕はそのお金を自分の好きなレコードを作るためだけに使っているんだ。それが現実だよ。」そう言って、彼は微笑む。
「レコードは過小評価されすぎていると思う。だって、みんな莫大な時間やお金、そしてエネルギーをレコード制作に費やして、結果それが売れないんだ。でも僕はすごく恵まれているんじゃないかな。だって僕はレコードは過小評価されたとしても、DJとしては過大評価されすぎているからね。だからそういう意味ではいいバランスが取れてるんじゃないかな?」

現在彼がプロモーションしている作品は典型的なエレクトロ・ポップのレコード 'Ciao!' である。この作品は彼の昔からの友人である Soulwax や Jori Hulkkonen、そして新しい友人の Gonzalez の協力を得て作られた。Tiga の作品には珍しく、カバー曲は一曲も収録されていない。

「最初はカバーしたい曲がたくさんあったんだ。だけど、制作当初に前回の作品でたくさんのカバーをやりすぎたから、今回はあんまりカバーしないで一曲ぐらいに押さえようと思ってたんだ。でも制作が進むに連れて、その考えもだんだんなくなっていって、今回のアルバムではもう少し自分自身の足で立っているような作品にしたいと思い始めたんだよ。」

「僕は好きな音楽を見つけた時にそれを真似したいとは思わない。だけど、そのアイデアを取り入れたいとは思うんだ。僕は未だに大好きなレコードはたくさんあるけど、それをカバーすることじゃなく、作品を小さな部分、部分で盗んでもう少し密かに取り入れることを学んだんだ。」

Interview & Introduction : Benedetta Ferraro (Skrufff.com)
Translation : Shogo Yuzen

triangle

Skrufff (Benedetta Ferraro) : Podcast での "Ciao!" のプロモーション・インタビューではクラブ・ミュージックとリアル・ミュージックの間には緊張があるって言ってたけど、今回の作品ではどんな風にその二つのバランスを決めたのかな?

Tiga : 僕は現在もDJプレイで十分に活動できるキャリアを持ってるから、アルバムのコンセプトはすごく純粋なものになっていると思う。まるで僕がこれといった方向性を持っていないみたいにね?僕はただ音楽を作ることが好きなんだ。'Love Don’t Dance Here Anymore' で僕は子供の頃からの音楽の夢を叶えることができたしね。僕は昔から Bronski Beat みたいなバンドが好きだったんだ。だから素晴らしいピアノ・プレイヤーの Gonzalez と曲を制作するってなった時に『せっかくだしバラード曲を作ろうか?』っていう話になって、この曲を作ったんだ。そして、僕の大好きな曲でもある 'Gentle Giant' は LCD Soundsystem の James Murphy と作ったんだけど、あの曲もアクシデントで生まれたものなんだよ。僕達は二人ともバラード曲を作るつもりなんて全くなかったんだけど、気がついたらああいう曲に仕上がってたんだ。

大事なのは音楽において未開拓の領域に足を踏み入れるのを恐れないこと。僕は別に人の反応や自分の過去の実績には怯えてないんだ。よくも悪くも「自由」なんだよ。だけど、たまに 'You’re Gonna Want Me' みたいなスタイルのクラブ向けのヒット曲を12曲作ってしまった方がよっぽど楽だったんだじゃないかと思う。だけど、僕は昔からのアルバムの作り方を捨てられないんだ。もしかしたら、こんなやり方はもう時代には合ってないのかも知れないけど、このやり方が僕は好きなんだ。

Skrufff : Twitter で君は『革新者』でいることは大変だって言ってたけど、君が生み出した一番大きな革新はなんだったと思う?

Tiga : 僕にとって Twitter はとても危険なものなんだ。僕はとても皮肉っぽいし、色んなことを言っちゃうからね。僕は色んなことを書いて、それをまた消したりするから Twitter では非難の対象になってるよ。言葉の壁もあるから、もっと気をつけなくちゃいけないと思ってる。今じゃロシアに住んでいる、ある人が僕のことをどうしようもない馬鹿野郎だと思ってるからね。僕が何を革新したかって?わからないな。たぶん僕が革新者だったのは僕の若いときに Montreal に住んでた時ぐらいじゃないかな?Montreal のレコード屋や、ラジオ番組、パーティーに初めてテクノを持ち込んだって意味でね。それを革新だと呼べるかはわからないけど、僕が最初にテクノを Montreal に持ち込んだ人物であることはたしかだよ。最近は何をやったかな?難しいけど、もしかしたら自分のレーベルからリリースする売れもしない作品のために莫大な時間を費やして、プレスリリースを書くっていうことを生み出したかもね?

Skrufff : 君はあんまりメディアが好きじゃないみたいだね。Twitterでも『現代の音楽ジャーナリズム。もし必要なら、僕に攻撃を加える人たちみんなの住所や電話番号を明かしてやりたいぐらいだ』と言っていたけど、誤解されてるって感じてるのかな?

Tiga : いや、僕はメディアは好きだよ。メディアとの関係にも満足してるし、今までもずっとそうだった。誤解されているっていう風に感じたことも、彼らに過大評価されすぎてるとも過小評価されすぎているとも感じたことはないよ。真実に近ければ、近いほどいい、それ以上のことはメディアには求めてはいけないと思うしね?レビュー以外では今回のアルバムでメディアと僕の間にいいつながりがあるのを実感できたよ。

Skrufff : アルバムや音楽のセールスはダウンロードなどの影響もあってチャートからどんどん落ちて行ってるけど、君はこの状況をどう思ってる?

Tiga : 僕は音楽セールスの将来は全くわからないよ。昔からそうなんだけど唯一わかってるのはあんまり期待をしないっていうこと。僕は大きな話題となったようなバンドでもないからね。僕はいいアルバムを作って、4000枚売れたら、次のアルバムを作るっていうようなテクノ界から来てる。僕はダウンロード配信とかが始まる直前に音楽業界に入ったから、たくさん売れたんだ。12インチレコードを50,000枚も売った。上出来だよね。でも今の音楽も大してかわらないと思うけど、今じゃ 'Mind Dimension' みたいなレコードを出してもきっとレコードでは10,000分の1ぐらいしか売れないだろうね。じゃあ、どうするかって?僕が作品にかける労力や姿勢は変わらないよ。音楽のセールスも世界経済みたいに変動するものだからね。

Skrufff : 今の世界経済の状況から君のDJによる収入に影響は出ているのかな?

Tiga : 僕が気づいたことを話そう。僕はすごく経済には興味があって、世界経済の動きをずっと追ってるんだ。だからこそ、今世界で何が起こってるかを知った上で、いろんな人が僕のDJプレイにこれだけのお金を払ってくれてることはすごいことだと思う。僕は自分自身がきちんと経済的に確立されていることを幸せに思うよ。でも僕にギャランティーを払ってくれてる人たちは、それ以上のお金はクラブのエントランスでチャージして稼いでるってことだから、それはすごくシンプルなことだと思う。僕がマーケットで通用する商品である以上はちゃんとこのサイクルでお金が動くからね。だけど、夏、特にフェスティバルでは景気の後退を感じるんじゃないかって予想してる。過去5年には大きな企業スポンサーがついたおかげで、たくさんのフェスティバルの成長があったけど、それもなくなるって考えたらDJのギャランティーも自然と下がることになるだろうね。

Tiga

Skrufff : ブログやフリーダウンロードに関してはどう思ってる?君自身無料ダウンロードとかを使ったりはするのかな?

Tiga : うん、そうだね。けど、僕は時分の兄弟にやってもらってるよ。僕は誰も殺したことがないマフィアのボスみたいなもんなんだ。もし僕が魔法の杖を持っていたとしたら、もっと安く音楽を手に入れられてそのお金がクリエーターに直接入るようにするだろうね。でもそれは非現実的で、正直なところ僕は今の現状には満足してる。僕はDJプレイっていう他でも収入を得られる手段を持っているから、それはラッキーだと思うよ。だけど、この音楽業界が変化して行ってるのはすごく楽しいことだと思う。その流れについていけない頭の固い人たち、もしくはただ頭が切れない人っていうのは戦略を編み出せずに消えていくだろうし、僕にとっては世代交代の時期だと思ってるよ。

現代をアーティストとして生きるっていうのはすばらしいことだよ。いろんなところに旅をすることができるし、インタビューも Blackberry の携帯を使ってできる、また楽曲の発表は Myspace でできるからね。すごくオタクっぽいのはわかるけど、でも同時にそれはクールなことだと思う。これが自由なんだ。でも古いレコードを買うことや、郵便で受け取ること、レコードを触ったり、スリーヴに書いてあることを読んだりするのが大好きな少し考え方の古い僕もいるんだ。だから、現状は一番の理想ではないかも知れないけど、現代のテクノロジーには良いところがあるよね。

ネガティブな視点からの話をすれば、音楽が無料でダウンロードできることや簡単に手に入れられる状況は僕のレーベルにとっては頭を抱える問題だね。昔、僕たちが音楽を好きになったような感覚で今の人が音楽を好きになるのかな?って考えることもある。僕が子供の頃に Roxy Music のレコードが欲しければ、そのレコードを探しまわってお小遣いを全部はたかなきゃいけなかった。大嫌いなレコードを買っちゃった時のことも覚えてるけど、返品なんてできなかったからそれを好きになるしかなかったんだ。でも今の時代だったら Roxy Music?って言って次の日には彼らの全曲のカタログが手に入るよね。多分今の時代の子供たちは違う考え方をしてて、僕たちの時代とは音楽を違う消化たちの仕方をするんだろうね。それについては考えさせられるけど、もしかしたら僕は年を取ってしまっただけなのかも知れないね。

Skrufff : 君のお父さんは昔 Goa のDJで、君もそこに住んでいたって聞いたけど…

Tiga : 多分大人になってからあそこにいたら、変わったって感じるのかも知れない。父親はいつも変わったって言ってるけど、僕にとっては同じだよ。僕は他の子供たちと友達だったんだけど、パーティーとかドラッグには興味がなかったね。僕はセックスもしてなかったし、恋愛とかもしてなかった。ただの子供だったんだ。トカゲを追いかけたり、ココナッツを取りに行ったりね。人生最高のひとときだったね。他とは比べられないよ。別にノスタルジックになってるわけじゃないんだ。でもラッキーな人は人生の中で何度か良い時代や良い場所に生きている瞬間があると思うんだ。僕自身、今までの人生ですでにそういう瞬間が何度かあったと思う。たとえば、70年代の Goa や80年代前半のメンタルだった時期、そして、80年代後半から90年代前半のテクノ・カルチャーの始まりや2000年か2001年にかけてのエレクトロの始まりもすごく楽しかったよ。

Skrufff : 君の現在の成功はエレクトロによるものが大きいと思う?

Tiga : うん。キャリア的にはすごく大きいね。みんなブレイクのきっかけやクラブ・カルチャーに参加していくことが必要だからね。僕はカナダで活動を続けていても、いいキャリアを築けていた自信はあるよ。きっといい人生を歩めていたと思うんだ、今まで僕はどんなことをやってもある程度成功はしてきたからね。でも国際的なレベルで考えれば、認知を得ることや他の人達と一緒に仕事をするチャンスっていうのはエレクトロから得たと思ってる。'Sunglasses At Night' はすぐにいいリミックス作品やDJプレイにサポートされて、僕自身の認知度が上がることにつながっていったからね。あの頃の僕はクールだったと思う。でも同時に僕は不思議だったと思うよ。カナダから突然出てきたアーティストだったからね。

Skrufff : 初めて Fabric で君のプレイを見に行ったときは驚いたよ。君はピンク色の羽の襟巻きでも巻いていそうなイメージだったのに、ベースボールキャップを深くかぶっていたからね。今もそのスタイルは変わらないけど。

Tiga : そのアーティストとDJの二つは僕の中で別々のものなんだ。DJプレイをする時は僕はすごく古風なんだ。DJ達は技術的な仕事をしているわけで、スターではないからね。DJの仕事はその人のステータスが上がったからって別に良くなるものじゃないと思うからさ。

Tiga

Skrufff : たくさんのお金をもらっているから、みんなを楽しませなきゃいけないっていう責任感を感じることってあるの?

Tiga : うん、そうだね。ビッグなパーティーで30、000人もお客さんが入っている時は針がレコードに触れる瞬間に爆発みたいなパワーを感じるんだ。

Skrufff : 今でも緊張する?

Tiga : もうしないね。いや、時々はするかな。僕は16年から17年の間ずっとDJを週3ぐらいのペースでやってきたからね。場所の名前を言ってくれれば行ったことのないところはないんじゃないかな?DJプレイでもっとギャランティーをもらえるようになった時に、それはお金だけじゃなかったんだ。周りの人達の僕に対する扱いが変わって行ったこともすごく不思議な気分だった。「彼らは僕にたくさんのものをくれるけど、代わりに彼らは僕から欲しがってるんだろう?」っていう気分になったんだ。最終的に僕はDJをすることだけに集中して、ただみんなに楽しんでもらえるようにって考えるようになったんだ。僕はDJをしてる時は嫌なやつにはなりたくないんだ。

Skrufff : 今回の作品はなんで "Ciao" って名前にしたの?

Tiga : だって僕はイタリア人が大好きだからね。彼らはクレイジーで華やかで、スタイリッシュなんだ。彼らは人生の中にある素晴らしいものをちゃんと理解してる。たとえば、バーの外でおじいさん二人がおしゃべりしてるのを見れば、女性とフットボール、その2つの話題の内のどちらかについて話しているんだろうなって思うんだ。

End of the interview




Tiga のニュー・アルバム "Ciao!" は 4月27日 Wall of Sound より発売予定。
トラックリストは以下の通り

01. Beep Beep Beep (ft. Soulwax)
02. Mind Dimension (ft. Jori Hulkkonen) ■ Llamasoft によるビデオはこちら
03. Shoes (ft. Soulwax & Gonzales)
04. What You Need (ft. Soulwax, vocals: Jake Shears)
05. Luxury (ft. Gonzales)
06. Sex O’Clock (ft. James Murphy)
07. Overtime (ft. Soulwax)
08. Turn The Night On (ft. Gonzales)
09. Speak, Memory (with Jasper Dahlback & Phillipe Zdar of Cassius)
10. Gentle Giant (ft. James Murphy)
11. Love Don’t Dance Here Anymore (ft. Soulwax)



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