HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Technasia Interview

Technasia DJ Mix

オリエンタルなメロディーと西洋が生み出したテクノ・サウンドを見事に融合させ、シーンの中でも一際異彩を放つアーティストとしてリスペクトされてきた、香港出身の Amil Khan とパリ在住の DJ Charles Siegling によるテクノ・ユニット Technasia。

'01年に発表されたデビュー・アルバム "Future Mix" を起点に、その後もミックスCDシリーズ "PLUS" の展開、そして自らの名前を冠したレーベル運営など、多岐に渡って活躍してきた彼らだが、実に5年ぶりとなるオリジナル・アルバム "Popsoda" を間もなくリリース、WOMB の人気テクノ・レギュラー・パーティー Vade での来日も目前に控えている。今回 HigherFrequency では、現在ワールド・ツアーでオーストラリアに滞在中の二人にメール・インタビューを行った。

> Interview : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Translation & Introduction : Yoshiharu Kobayashi (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 待望のセカンド・アルバム "Popsoda"の発売が近付いていますが、ファースト・アルバムから実に5年振りとなりますよね。なぜこんなにも長い時間がかかったのでしょうか?

Charles : この5年間、僕はDJとしてのキャリアを築くことにかなりの時間を費やして来たんだ。WOMB の人気テクノ・レギュラー・パーティー Vade もちろんそれ以外に、ミックスCDの "Fuse Presents Technasia" やリミックス・アルバムの "Recreations" も作ったし、シングルの "Final Quadrant" も作ったけどね。リミックスの仕事もいくつかしたよ。それに、'03年には世界中のクラブやフェスティバルを5ヶ月で60箇所も回るというハード・スケジュールもこなしていたんだ。僕がやっている Sino というレーベルのプロモーションをしたり、そこから出している John Thomas, Renato Cohen, Joris Voorn といったアーティストのマネージメントでも忙しかったな。でも、ニュー・アルバムに5年もかかった一番の理由というのは、僕らが他のアーティストとは違った時間の感覚で動いているからだと思うよ。今、人々は次から次へと新しいものを求めていて、成長したり、自分の才能を理解したり、それを表現する方法を考えたりする時間をアーティストに与えないんだ。音楽を消費するものとしてとらえているように感じるね。でも、音楽っていうのはアートなんだから、みんなもっと尊敬の念を持って接するべきだと思うよ。僕と Amil は自分たちの才能に確信を持っているんだ。だから、僕らが4年前にアルバムを出したとしても、今出したとしても、10年後に出したとしても、それはそのときどきに相応のクオリティを持った作品が出来るんだよ。

Amil : 素晴らしいものを作るには苦労が付きものだと僕は思っているんだ。だから、僕は焦らずじっくりと物事を進めていくんだよね。今回はかなりみんなを待たせてしまったと思うけど、このアルバムにはそれだけの価値があると信じているよ。みんながこのアルバムを聴いて気に入ってもらえれば、これを作る過程でどんな苦労があったかなんて、もうどうでもよくなってしまうんだよね。

HRFQ : アルバムのタイトルである "Popsoda" という言葉は、ポップなイメージが強いですよね。また、Popsoda はあなた方の別プロジェクト名でもあります。タイトルの由来やアルバムのコンセプトについて教えてもらえますか?

Charles : "Popsoda"というタイトルは "Sodapop" という僕らが6年前に始めたプロジェクトから取ったものなんだ。元々これは日本だけでリリースされる予定だったものなんだよ。 "Pop" という言葉を使ってるのは、ヴォーカルやメロディが大々的にフィーチャーされているからさ。とは言っても、これがダンス・ミュージックであることに変わりはないよ。実は、Popsoda として'99年に "Luv Luv Robot" でデビューしたとき、アルバム用にデモを作っていたんだ。でも、ちゃんと仕上げる時間が無くてね。それで '03年の終わりごろ Technasia のニュー・アルバムに取り掛かったとき、Popsoda と Technasia のサウンドを組み合わせて、もっとダークで力強いものにしてみようとしたというわけさ。

Amil : "Pop" っていう言葉を聞くと Britany Spears みたいな音楽を連想するかもしれないけど、"Pop a soda" とか "Pop a question" みたいな言葉を考えてみれば、"Pop" という言葉もどこか新鮮で、エネルギーに溢れているような感じさえする言葉なんだ。アルバムのコンセプトは至ってシンプルだよ。テクノ・シーンにおいて、長い間新鮮なものとして聴いてもらえる作品にすること。そして、エネルギーに満ちて、聴いた人が何か思いを馳せたり、一緒に踊ったり出来るような作品にすることなんだ。

Technasia Interview

HRFQ : Amil は香港、Charles はフランス出身ということで、二人とも全く違ったバックグラウンドを持っていると思いますが、それが二人のパートナーシップにどのような影響を与えていますか?また、それのどんなところが面白いと思いますか?

Charles : 僕ら二人でコンビを組んでからというもの、ずっと互いに足りないものを補いながらやってきたんだ。この二人でなかったら Technasia はこんなに大きくはならなかっただろうね。Amil は抜群のビジネス・センスを持っていて、どうすればアーティストやレーベルにプラスになるかを知っているんだ。それに彼は世間の人が僕らに持つイメージを上手いことコントロールするのにも長けている。僕は僕で、音楽にありったけのオリジナリティとアート・センスを注ぐようにしているんだ。ライブをやるときでも、同じような役割分担になっているんだよ。Amil がクラウドとコミュニケーションをとって、僕は音楽に専念するっていう感じでね。ライブでも、スタジオでも、レーベルの仕事でも、僕らは互いに支えあってるんだ。でも、これは僕らの国籍とはあまり関係ない気がするな。それよりも、これまで僕らがどんな環境で育ってきて、どのようにこの音楽業界で互いの関係を築いてきたかということの方が重要だと思うんだ。

Amil : 本当に何かを一緒に成し遂げたいと思ったら、一人がそのために努力をして、もう一人がそれを支えるべきだと思うんだ。Technorient や Technasia は、これまでそういう風に努力してきたんだよ。もし僕が「3つのC」を実践していなかったら、僕らは今ここでこうしてインタビューを受けていなかっただろうね。その3つのCというのは、みんなの協力(collaboration of people)、コミュニケーション(communication through voice or text)、アイデアの交換(conglomeration of thoughts and ideas)のCのことさ。僕が Charles とのパートナーシップを本当に誇りに思っているのは、カルチャー面でレベルの高いことができていて、かつ文化交流的なことまでできているからなんだ。

HRFQ : あなたたちが Technasia をスタートさせたとき、ダンス・ミュージック・シーンにおける東南アジアの重要性を世間にアピールすることが目的にあったと思います。あなたはこの目的を成し遂げたと思いますか?それともまだ世間一般の注目は他の地域に向いていると思いますか?

Amil : まず最初に言っておきたいのは、僕はアジアから他の地域に向けて音楽を発信するという意識ではやっていないということなんだ。Technasia は、アジアとヨーロッパの架け橋になって修学旅行の引率みたいにみんなを引き連れているというイメージを持たれているようだけどね。でも、僕らもマジシャンなんかじゃなくて、ただの人間なんだからさ。レーベルを作ったりユニットを組んだりして、一般的には音楽の発信地と思われていない地域に世界の目を向けさせるってことを、自分たちなりにやっているだけなんだ。東南アジアの重要性を知らしめるという意味で、僕らがしたことはこれくらいかな。でも、今や Technasia は、セルビアでもブラジルでもオーストリアでも知られているから、僕ら自身を世界に知らしめるということはできたかもしれないね。でも、今は地域性というものを考える機会は減ってきていると思うよ。インターネットが出てきて、世界規模でのコミュニケーションが物凄い勢いで進んだおかげで、世界の壁は崩れつつあるからね。

HRFQ : ダンス・ミュージックに国籍は関係あるのでしょうか?

Charles : イエスとも言えるし、ノーとも言えるね。イエスの理由というのは、国ごとに音楽やバックグラウンド、音楽の作り方、ビジネスのやり方に違いがあるから。でも、それが音楽に多様性を与えてもいるんだよね。ノーの理由というのは、やっぱりダンス・ミュージックは国境を越えたグローバルな音楽だと思うから。ダンス・ミュージックにはアングロ・サクソン的なメディア戦略なんて必要ないんだ。英語を喋れなくたって、クラブで踊るのには何の問題もないし、ダンス・ミュージックには英語のヴォーカルが乗ってなくたっていい。だから、イスラエル人にもフランス人にもブラジル人にもチャンスはあるのさ。ある意味、コマーシャルなポップやロックとは違うんだよ。だから、ダンス・ミュージックはこれからもずっとグローバルな音楽であり続けると思うね。

Amil : 国籍というのは悪いものじゃないよ。今の僕らがあるためのルーツとなるものなんだから。僕らのアルバムにも、「僕たちはみんな地球の子供なんだから」ってあるだろ?

Technasia Interview

HRFQ : お二人は今どちらに拠点を置いているのですか?

Charles : 僕はパリなんだ。でも、1年のうち4、5ヶ月は家を離れて、色々旅して回っているよ。パリは大好きなんだけど、色々な社会問題があって街全体が沈んでいるから、たまには外に出てしまいたくなるんだよね。今、フランスに住むのはお勧めできないな。植民地主義時代の負の遺産が後を引いているんじゃないかって思うくらいさ。まあ、いずれにせよ、僕は仕事で頻繁にパリを離れることができるからラッキーだけどね。僕は凍えるようなフランスの冬が嫌いだから、その時期は香港かブラジルで過ごすのが好きなんだ。それに、パリの音楽シーンはあまり活発じゃなくなってきてるしさ。Rex, Triptyque, Batofar といった幾つかのいいクラブがあって、John Thomas, Cabanne, Ark, Blackstrobe といった何組かのいいアーティストがいるだけなんだよ。1200 万人もの人が住む街のシーンとしては寂しいよね。でも、過大評価で浮き足立った街にいるよりかはいいと思うよ。ベルリンみたいなところには住みたくないんだ。あそこは今まさにそんな街になってると思うからね。特に流行の髪形をしたエレクトロクラッシュのDJにとっては、特にさ。

Amil : 香港っていうのは、本当に騒々しくて混沌とした街でね。そんな刺激的な環境に身を置けることを嬉しく思ってるんだ。でも、正直言ってたまにはそういった喧騒から離れたくなることもあるんだよね。こういうふうにアルバム・ツアーでオーストラリアを訪れているときにインタビューを受けたりしてさ。

HRFQ : あなたたちのレーベル Technorient からリリースはありますか?

Charles : たくさんあるよ!サブ・レーベルの Green から Joris Voorn の新しいアルバムが出るんだ。Joris は今一番お気に入りのアーティストさ。パワフルでディープでグルーヴィーなサウンドが最高だね。Sino からは、Deetron や Petrae Foy、 Steve Rachmad の曲が近いうちにリリースされるよ。John Thomasも注目だね。彼は、南フランスから来た Olivier Micheli とやっている Static Drum とか、うちから次の曲が出る Ethique とか、うちとのジョイント・レーベルの The Steppin' Show とか、本当に色々なプロジェクトを手掛けてるんだ。

Amil : 今、Charles が触れたもの以外では、Minimaxima もいいよ。世界中のアーティストとコラボして最高のテクノを作っているんだ。今の Technorient があるのは、ダンス・ミュージックの力を信じてる人たちが世界中から集まっているからだと思うんだよね。Technorient は、世界中のクリエイティブな音楽が交わってできる何か面白いものを、みんなで楽しむためにあるんだよ。

HRFQ : 最後に日本のファンに向けて何かメッセージをお願いします。

Charles : 周りの言うことなんか気にせずに、自分の実力を信じるんだ。それと日本の機材を買うこと。なんと言っても日本の機材が一番だからね!

Amil : 日本のファンのみんな、待っててくれてありがとう。やっとみんなの元に新しいアルバムを届けることができたよ。気に入ってもらえたら嬉しいな!

End of the interview

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