HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

ハウス・ミュージック・シーンのトップ・プロデュサーにして、数々のヒットチューンを産み出した敏腕リミキサー、そしてDJとしても世界中にレジデンシーを持ち、ヨーロッパとアメリカでラジオ番組を担当するという素晴らしいキャリアを持つ Stonebridge こと Sten Hallstrom が WOMB の人気パーティー HOUSE NATION -Tea Dance- で来日公演を果たした。自身も所属する Ministry Of Sound のサブ・レーベル Hed Kandi Records のトラックをはじめとしたヨーロッパのリアルなファンキー&ソウルフル・ハウス・サウンドによって日本のクラウドも大いに沸かせることに成功していた彼に HigherFrequency がインタビューを決行。自身のバック・グラウンドから今年リリースのニュー・アルバム "Music Takes Me" についてのエピソードなどを和やかなムードで語ってくれた。

Interview : Ryo Tsutsui (HigherFrequency) _ Len Iima (HigherFrequency) _ Introduction : Masanori Matsuo (HigherFrequency)

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HRFQ : まずあなたの音楽的なバックグラウンドをお聞かせください。

Stonebridge : 僕はまずギタリストとしてスタートしたんだ。ストックホルムの郊外でしょぼいバンドをやっていたんだ。ぼくらのバンドはシンガーもいなくてね。ジャムっているだけな感じだった。その中で僕は常にコードに興味を持っていたから、もう一人ギターがいて、彼がソロを担当して、僕がコードを担当していたんだ。僕は常にジャズっぽい方に興味があって、彼らは常にロックの方向へ行きたがったから、僕らは結局どこにも行くことはできなかったね。それでその後音楽演奏からは少し離れたんだけど、レコードを集めだしたんだ。そんなときに丁度姉が卒業してね。スウェーデンでは5月に卒業パーティが開かれるんだけど、父親がそのパーティの出費を抑えたかったということもあって、僕がDJを担当したんだけどそれが見事にはまってね。僕にはDJがとても楽しくて、ラッキーなことに名刺を刷ってあったから姉の友達もみんな僕をブッキングしてくれて、一ヶ月まるまるプレイし続けたんだ。でその一ヶ月が過ぎた後、クラブを作ろうと決心したんだ。その後僕はそのクラブにコルグのモノシンセを持ち込んではちょっとエフェクトをつけたりしていたんだ。それが80年代初頭だね。その後僕はある別のDJに出会って二人でスタジオを作って、そのスタジオを Swemix と名づけてリミックスを開始したんだ。最初はシンプルなテープエディットって感じだったけどね。それからどんどん機材が増えていくにつれてどんどんやることも複雑になっていったんだ。

HRFQ : たった一ヶ月プレイしただけでご自分でクラブをスタートさせたんですか?

Stonebridge : そう!僕と友達でレストランを回っていったんだけど、2件目でシェフが出てきて、「そりゃいい、丁度クラブをオープンしようと思ってたんだ」なんていってて、僕らはチャンスだとおもってクラブのことなら何でも知ってるなんてうそをついたんだ。実際は何にも知らなかったのにね。でもラッキーなことにその彼もクラブのことはよく知らなくて、僕らにすべてを任せてくれて、さらに幸運なことに人もちゃんと来てくれたんだ。そのクラブは Fellini, っていう名前で僕らは映画監督のフェリーニ本人に手紙を書いて、名前を使わせてもらう許可までとったんだよ。

HRFQ : あなたは音楽をプロデュースするときにどのような機材を使用されていますか?

Stonebridge : 僕のスタジオは最初はとにかくシンプルだったんだけど、93年ごろにピークを迎えて、アウトボードがぎっしり詰まったラックを4つに巨大なミキシングコンソール、スピーカー、エフェクター、もうすべてがそろっていたね。その後 Atari のマシーンから Mac と Logic に切り替えて、当時はオーディオはまだ2チャンネルしか使えなくて、その後 session 8 っていう8トラック同時に録音できるものが現れて、16チャンネルの Pro Tools が登場したんだ。それが98年ごろで、そのころにスタジオの機材を全然使ってなくて、パソコンの中でミックスも完結しちゃってるってことと、使ってないマシンがただ単に熱を発しているだけだなって気づいたんだ。それからミキシングボードを売って、毎年少しずつ売っていったりして、いまはラック二台分だけになっている。基本的に今のシステムはマックではしらせている Logic と Pro Tool だね。ただ Juno 106 なんかは今でもとってあるよ。

HRFQ : あなたのDJスケジュールを見るとあなたは毎月ストックホルムでレジデンシーパーティをされてますが、クレジットが Stonebridge and friends となってますね。これはどのようなパーティなんですか?またどんな人がプレイしているのでしょう?

Stonebridge : 以前はストックホルムではまったくプレイしていなかったんだ。だって自分がローカルDJだと自分のプレイはいつでも聴けるなんて思われてしまうでしょ。ローカルでやることの問題はそこだよね。だから僕はストックホルムのある美しいクラブからオファーを受けたときに自分のプロデューサー仲間を呼んでパーティをやろうと決めたんだ。早めに来てもらって一緒に曲を作って、金曜日のイベントでその曲をプレイするんだ。だから Stonebridge and friends という名前にしてるんだよ。今までにドイツの Thomas Gold とかフランスの Chris Kaeser、 オランダの Mischa Daniels とかアメリカの Funky Junction、 この辺までが最初の半年に呼んだゲストで、これからはイギリスの ATFC なんかを呼んでいこうと思っているよ。最初にイギリス人の Lil Joey っていうDJにウォームアップをやってもらって、真ん中に海外ゲスト、最後2時間を僕っていう形でやってるんだ。上手くいってるよ。

HRFQ : ニューアルバム "Music Takes Me" に関してですが、制作にはどれぐらいかかりましたか?

Stonebridge : この間それを考えてみたらなぜか8ヶ月もかかってるんだよね。最初はアルバムを作るかどうかわからなかったから、数曲だけから取り掛かっていったんだけど、僕はまずインストルメンタルのトラックを作って、自分が好きなシンガーに曲を送るんだ。それで彼らが歌詞を作ってデモを作ってきてくれる。それを受け取ったら僕はその曲を作りこんでいって、準備ができたと思ったらそのシンガーを呼んでレコーディングするんだけど、いつも最初の4ヶ月はボーカルも入っていない曲が3曲とかだけある感じなんだけど、5ヶ月ぐらいたってくると自分自身、終わらせなきゃって思ってきて、リミックスだったり、ツアーを少し控えるようになってきて、最後の2,3ヶ月で急ピッチで進んでいって、気づいたら10曲出来上がっているって感じなんだ。

HRFQ : なぜタイトルを "Music Takes Me" としたんですか?

Stonebridge : 最初はどういうタイトルにしたらいいかわからなくて悪夢のようだったよ。いろんなタイトルを考えてみたんだけど、あまりすごいタイトルをつけるといったい何物?なんて思われてしまうでしょ。で、悩んでたんだけど Hed Kandi の人がどれか曲のタイトルをアルバムタイトルにしたらどうだい?ってアドバイスしてくれてね。それで “Music Takes Me” がいいと思ったんだ。いろんな意味に取れるし、あまり何も表現していないようにも、多くを表現しているようにも取れるからね。

HRFQ : このアルバムを通してどのような感覚を表現したいと考えていらっしゃいますか?

Stonebridge : うーん、いい感じ、もっというとロマンティックな雰囲気を感じてほしいかな。僕は歌詞をできるだけシンプルにして、説教的なものにしないように努力したんだ。僕は特にダンスミュージックで、政治的な歌詞でこれをするな、あれをやるな、なんていう歌詞は好きじゃないんだ。クラブはそういうのには向いていない気がするよ。

思っていたのはアイドルが作られるように人が好きなものを予測して作ろうなんていうスタンスはやめようっていうこと、人ってそんなに馬鹿じゃないと思うんだ。だからできるだけ自然体で作ろうと思った。僕は自分がいいと思うものを作っただけだし、他の人もそう感じてくれたらいいなって思ってる。そういうのって頭で考えたものじゃなくてハートで作ったものの方がそういう風に感じてもらいやすいって思うんだ。だから僕は考えすぎないようにするってことを意識したね。まあ僕はもともと実験的な方じゃないし、自分が凝りすぎているなって思ったら止まって、いいバランスを意識するようにしたんだ。

HRFQ : 作っているときにプレッシャーは感じましたか?

Stonebridge : いいや、感じなかった。ただスタートしたときにレーベルがなかったっていうのは少しプレッシャーだったかな。僕は Hed Kandi とサインして、 Hed Kandi は僕のアーティストアルバムをやりたいといってくれていたんだけど、親会社の Ministry of Sound がアーティストアルバムはやるつもりがなくて、ヒットシングルとヒットコンピレーションだけをやりたいと言ったんだ。そんな感じだったんだけど彼らは奇跡的なことに僕を解放してくれて、僕はとりあえずアルバムを作ることにしたんだ。結果的にそれを Armada. がサポートしてくれたから、その後はプレッシャーもなく進めることができたし、いい反応ももらえたよ。

HRFQ : プロデュースとDJ、どちらが好きですか?

Stonebridge : 自分にとってはリミックスとプロデュース、DJの3つのバランスが大切なんだ。もしDJだけしていたら全てを出してしまって空っぽに感じるだろうし、リミックスだけしていてもそれは自分の音楽を提供しているという感覚に近くて、クレジットは他のアーティストのものだしね。今はツアーの占めている割合が少し多いかなとは思うけど、世界は広いし時間がかかってしまうのはしょうがないかな。まあいいバランスは保てていると思うよ。それに最近新しく発見したというか、感じているんだけど、僕はリミックスの場合はより冒険的になれるんだよね。僕は自分の音楽を作るときはもう少し保守的なんだ。

HRFQ : ファンにメッセージをお願いします。

Stonebridge : Keep it Funky!!!

End of the interview


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