HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Steve Lawler Interview

「僕はいろんなジャンルの音が好きだし、ロックからドラムン・ベース、アンビエントにジャズまで、ほとんど全てのジャンルのレコードを集める熱心なコレクターだよ。ただ、大げさなギター・リフの入ったハウス・レコードは避けるようになったね。僕がロック&ロールを好きな理由は、その多くが実際にすごく深い意味を持ってつくられた曲だから。ロックには、経験にもとづいたり、意味を持ってつくられた曲がほとんどなんだ。ところが、ダンス・ミュージックには、ただセールスのことを考えてつくられたものが多い。ロックは好きだけど、いわゆるロック・ハウスにはあまり興味がないんだ」

イビザにある彼のヴィラで Skrufff とのインタビューに応える Steve は、その中で、今年大成功を収め、島全体の元気を回復させたとまで言われている パーティー Manumission の "Ibiza Rocks" に対する複雑な気持ちを語った。

「あのパーティーがイビザ島のクラブ・シーンの元気を回復させたかどうかは分からないね。だって、ここのクラブ・シーンはもともと元気なんだから。まぁ、そうは言っても、僕はいつも新しい音楽に対して前向きだけどね」

「実際、この2年間でシーンに起こった出来事はすごく興味深いと思うんだ。ハウス・ミュージック史の上でも、一番エキサイティングな時と言えるんじゃないかな。というのも、最近のハウス・ミュージックは、いろいろなジャンルの影響を受けてるだろう?ヒップ・ホップにロック、それに最近のドイツ系傾向にも見られるような、テクノとミニマル・ハウスの影響……。それに、最近のリスナーはいろんな音楽に対してすごくオープン・マインドになっていると思うんだ。それってすごく良いことなんだ。特に僕みたいに一つの音楽スタイルに定着しないアーティストにはね - 僕はいつでも自分の好きな音ならなんでもプレイするんだ。ハウス・ミュージックの中に様々なジャンルの要素が組み込まれてるってことは素晴らしいことだよ」

「いつもそうなんだ。レコードを聴いて、それが好きか嫌いかでプレイするかを判断する。時には、大勢のDJが気に入るトラックでも、僕が気に入らない場合もあるし、その反対だって有り得る。そういう個人のテイストとか好みこそが、DJのスタイルになると思うんだけどね」

そういった個人的なテイストは、彼の新しいコンピレーション・アルバム "Lights Out 3" においても重要なキー・ポイントとなっており、Steve はこのアルバムを完成させるのに、細部にわたって完璧主義過ぎるほどの注意を払い、非常に長い時間と労力をつぎ込んだと断言した。

「アルバムを制作する時は、いつでもすごい努力をしてしまうんだ。だからアルバムが出来上がったときに、"今度からアルバム一つにこんな労力を使うのはやめよう"って思うんだけど、また新しいアルバムをつくり始めると、どうしてもアイデアが次々と出てきてしまって、試してみないと気が済まなくなってしまう。こういったコンピレーションをつくる時は、出来るだけベストなものをつくりたいと思うしね。だから、一箇所でも気になるところが出てくると、そこへ戻ってやり直しをするんだ。だからいつでも長い時間がかかるのさ」

以下は対談形式でのインタビューの模様をお伝えする
(Translation by Kei Tajima)

Skrufff (Jonty Skrufff) : 今回のコンピレーションに収録するトラックを選出する作業はどのように進められていったのですか?

Steve Lawler : まず、考えられる限りのレコード・レーベルに、僕がアルバムを予定していることを伝えるメールを送ったんだ。「どんな音でもいいからとりあえず送ってくれ、気に入るかもしれないから」っていうメッセージを入れてね。それから 2 ヶ月かけて、送られてきた1,000以上のレコードを聴いていったんだ。

僕の場合、こうやって音を聴いていくとき、単にいいレコードを探すって訳ではなくて、アルバムのスタイルや、ヴァイブにフィットするトラックを探していくんだ。コンピレーション・アルバムにおいて一番大事な要素は、プログラミングさ。前後に挿入するトラック次第で、トラックの良さを倍増させることも出来る。これは絶対だよ。すべてのトラックが、その前のトラックと、後のトラックにフィットしていなければダメなんだ。 トラックの中には、すごく好きだったけど、どこにもフィットしなくて、結局アルバムには入れなかったトラックもあったよ。

Skrufff : 常に世界中を飛び回ってギグをされていると思うのですが、どうやって時間をつくるのですか?

Steve : そうだね。でも、たいてい週末にツアーを回って、月曜から木曜は一日に10時間スタジオに入るっていうスタイルなんだ。アルバムをつくる時は、毎日仕事をしてるよ。

Skrufff : 前回のインタビューでは、まだバーミンガムにお住まいだと話していらっしゃいましたが、今はロンドンに移住されたのですか?

Steve : いいや、今でもバーミンガムに住んでるよ。まぁ、今はイビザにいることの方が多いけど。
今回のアルバムは6月のツアー中に終わらせたんだ。というのも、アルバムの最終段階では、全てがコンピューターの中に取り込まれていたからね。何をしたかって言うと、まず、トラックのセレクションと順番をしっかり決めて、トラック一つ一つのミックス・ポイント…いつそのトラックをドロップして、ストップするのかを自分でしっかり把握したんだ。それが出来れば、あとはきちんとミックス出来ているか、全体がいい感じかを確認しながら、ミックスを20〜30回繰り返す作業をしていく。そうして、そのミックスを録音して、Ableton Live というソフトウェアに、2チャンネルに分けて取り込む。そうすればソフトウェアを使っていても、自分でミックス出来て、人間らしいタッチが加わるんだ。気持ちを込めて、自分の好きなように、いつもクラブでやっているように、好きなときにベースを入れたりできるだろ?僕にとってそういった作業はすごく大事なんだ。ただ Ableton Live に任せるだけでは、そういう感じは味わえないよ。

Skrufff : 常に世界中を旅しながら、健康を維持していくのは難しくないですか?

Steve : 簡単ではないさ。正直言って、この 20年間の生活は不健康そのものだよ。

Skrufff : 昨年、Carl Cox が心臓発作を起こしかけましたが、長年にわたって健康を維持する難しくないですか?

Steve : 簡単じゃないし、実際、ここ7年間の生活なんてかなりヒドいよ。

Skrufff : 今までに健康を損なったことはあるのですか?

Steve : たくさんあるよ。特に若いときはね。何回か死にかけた経験だってあるんだ。もちろんDJは好きさ。ただ、僕の生活はみんなが想像するよりもっとハードだよ。毎日旅してるんだから。人は自分が実際にやってみないと気付かないものなんだ。信じられない程辛いけど、それによって得るものも多いから続けているのさ。

Skrufff : その、死にかけた経験というのはどんなものだったんですか?

Steve : 18才か19才くらいの時、あるバーでものすごい暴力を受けて、集中治療室に入れられたんだ。知ってる奴に殴られたんだけど、彼について話すことは出来ないんだ。近い将来、本としてリリースするかもしれないし、特にインタビューではこのことについて話さないように言われているんだよね。

Skrufff : 昨年のインタビューで、メキシコのクラブでギャングに脅されて、危険な目にあった事件について話されていましたが、あれからメキシコには戻られたのですか?

Steve : うん。あれからメキシコ・シティーと、その他の都市でもギグをしたよ。メキシコは、僕にとってすごく重要な場所なんだ。世界中でもベストと言えるくらいの国さ。メキシコのギグでは、4〜5,000人のハコくらい簡単にいっぱいに出来るからね。

あの事件に関しては、ただ単に、僕がアンラッキーだったってだけさ。僕があのクラブで一番最初にプレイしたDJだったんだ。だから、僕だけじゃなくて、誰にでも起こりえたことなんだよね。僕がプレイしたのはクラブのオープニング・パーティーだったんだ。僕が思うに、クラブの所持者は、オーナーとしての仕事をするべきじゃないと思うんだ。彼らは仕事が出来ないからね。生きてる次元が違うんだ。だから、彼らの頭の中では、僕を身体的に脅せばクラブに戻って、プレイするはずだと思ったんだろうね。あれはかなり怖いシチュエーションだったよ。ただ僕にとってというわけじゃなくて…もちろん僕だって自分の安全を心配したけど、何よりもそこに一緒にいた彼女の安全を心配したよ。彼女をあんなヒドイ目には絶対に合わせたくなかったんだ。絶対にね。それなのに、奴らは彼女を逃がしてくれようとはしなかった。かなりぎょっとするようなシチュエーションだったよ。

あの後僕のエージェントと話して、その結果、彼はこの出来事を公にする必要性があると強く感じたみたい。というのも、僕のほかにもそのクラブにブッキングされたDJはいるわけで、あのクラブは明らかに安全とは言えなかったからね。なかなか信じがたい話で、いろんな人から「本当なの?」質問をされたけど、これは実際に起きた話なんだ。この話について語られたことは全て真実だよ。そのくらい恐ろしい出来事だったんだ。当事者の僕たちだって何が起きたのか信じられなかったくらいなんだから。こんなことが実際に起きてしまうなんて、すごくショックを受けたし、すごく信じがたかったよ。

End of the interview

Steve Lawler による "Lights Out 3" は、Global Underground から発売中


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