HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Someone Else

アメリカはフィラデルフィア出身で、現在はベルリンを拠点に活躍しているアーティスト Someone Else こと Sean O’Neal。デビュー当初は Darla, Morr Music, Endorphin といったレーベルからエレクトロ・ポップな楽曲をリリースしていたが、90年代終盤頃からテクノ/ハウス/ミニマル・テクノへと傾倒。'98年には Jay Haze, Bjoem Hartmann と共にレーベル Tuning Spork を設立し、フィールドレコーディングを基調としたダンスミュージックを追求するようになる。その後 Miskate (Kate Iwanowicz), Sylvain Takerkart と共に Foundsound/Unfoundsound を設立。現在シーンの第一線を担う優れた才能を多く輩出している。プロデューサーとしての活動と並行し、自身のレーベルは勿論、Mo’s Ferry, Kixkboxer, Sender, Alphahouse, Mule Musiq といった数々の名だたるレーベルからリリースを重ね、世界各地でのライブ活動も精力的に行っている。さらに、パーティーのプロデュースや音楽ジャーナリストとしても活躍しており、表裏を問わずシーンを牽引し続けている。

今回、2度目となる待望の再来日が決定し、来日直前の彼にインタビューを決行した。前回プレイを果たした Yellow のクローズに伴う話から世界シーンの移り変わりについて。貴重となるアメリカ/フィラデルフィアの現状や気になる今後の予定など、深く鋭い、大変読み応えあるものとなっている。

Interview & Translation : Hidehiko Takano
Introduction : Midori Hayakawa (HigherFrequency)

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-- 今回は久々の来日となりますが、前回の来日で、日本、東京に対してどのようなイメージを抱かれましたか?

S.E (Someone Else) : 前回日本に滞在した時はとても居心地が良かったんだ。みんなとてもフレンドリーで親切だったんだ。それに、世界的に見ても、日本のお客さんのプレイした時の反応は最高なんだ。演奏中に自分の出している音が聞き取れなくなるくらいに大声を出したり叫んだりしてくれるんだ。日本の人たちはとてもオープンマインドで、モダンで未来的なものに慣れ親しんでいるんだと思う。あらゆるモノがどこかアニメ的であったり、日本食がとても好きなこともあって、とにかく日本については良い印象しかないね。素晴らしいところだよ!

-- 今回の公演でお客さんにここを見せたい!とか、滞在中にこれを見たい・体験したいといったことはありますか?

S.E : 特別これといった予定は無いけど、流れるままに行きたいね。日本はほんの短い時間で大きく変化するってみんな言うから、前回の公演から数年経っている中で、どんな違いを感じるか気になるね。お客さんと一緒に楽しみたいし、今回声をかけてもらえたということにとても興奮しているよ。

-- 今回の公演に Benjamin Fehr も出演しますが、Benjamin Fehr に対してどんな印象をもっていますか?また、どのような間柄ですか?

S.E : Benjamin とはお互いに良く知っている間柄で、時々一緒に飲んだり、食事をしたりしているよ。お互いベルリンに住んでいて、頻繁に顔を合わせるんだ。彼はとても落ち着いていて、話し易くて、知的なんだ。ディープでアブストラクトで、サイケデリックな音楽を創るのが得意で、素晴らしいDJでもあるよ。彼はとても背が高いから、日本で街中の人ごみの中に塔のように飛び出す Benjamin の姿を見るのは面白いんじゃないかな

-- 以前ライブを披露した Yellow がクローズし、日本のシーンは変化していますが、世界各地をツアーするアーティストとしてグローバルなシーンでどのような変化を実感されていますか?

S.E : Yellow がクローズしてしまったことはとても悲しいよ。自分がこれまでに出演してきた世界中のクラブの中でも最高の場所の一つだったと思う。 グローバルなシーンという意味では周知の通り、以前と比べて各地でテックハウスが流行っているね。でも、このトレンドは90年代にディープハウスのDJとして活動していた自分にとっては良いことだね。 でも、一方で、経済危機の影響もあって、いくつかの都市ではシーンが縮小してしまっているのも実感しているよ。多くのプロモーターがお金を失っていて、大勢のDJが以前よりも少ないギャラでプレイするようになっているんだ。いずれにせよ、シーンは今まさしく巨大な変動期に直面していて、これから数年後にどのようになっているか見通しがつきにくい状態だと思う。予測は難しいね。

Someone Else

-- 音楽的バックグランドについてプロフィールで親の影響について触れているアーティストが大勢いる中で、あなたのように祖父にまでさかのぼって記載しているアーティストは珍しいと思うのですが、その祖父からどのように影響を教えてください。何か思い出深いエピソードはありますか?

S.E : 祖父は高校の音楽の先生で、色んな楽器を演奏していたんだ。幼少の頃、祖父がトランペットやアップライトベース、オルガン、クラリネットなど、色んな楽器を演奏するのを座って聴いていたよ。祖父が凄く偉大な人に見えて、彼のように演奏できるように楽器を習いたいって思ったんだ。自分が11歳の時に祖父が無くなるまで、オルガンの演奏を少しだけ教えてくれたよ。あと、ジャズ、ビッグバンド、ディキシーランドとか、とにかくたくさんのレコードを聴かせてくれたりもしたよ。50年代、彼は Bill Hailey & The Comets でベースを演奏していたんだけど、ロックが嫌いだったから、このバンドのことも嫌いだったんだ。ただ、家族のためのお金を稼ぐために演奏していたんだ。僕の父も同様にロックのバンドで演奏していて、50年代、60年代に活躍しているよ。そういった意味で、ミュージシャンの家族に囲まれて育ったんだ。

-- フィラデルフィア出身のテクノ・ハウスアーティストではあなた以外に Josh Wink や Chiris Udoh が思い浮かびますが、シカゴ、デトロイト、ニューヨークや西海岸の都市など、アメリカの他都市と比較すると少ない印象があります。シーンの現状についてお教えください。

S.E : フィラデルフィア出身のアーティストは他にもいて、例えば Sylk 130 で知られる King Britt とか、Pete Moss、Nigel Richards、Miskate、Rob Paine、Deep C とかね。あとはヒップホップやファンクのアーティストであれば The Roots、Rich Medina、DJ Jazzy Jeff とかもいるよ。フィラデルフィアは ヒップホップ、ファンク、そしてソウルが中心の街で、ハウス、テクノはあんまり知られていないんだ。良いパーティはあるけど大抵の場合、せいぜい200人くらいの小規模なもので、多くの場合は違法の会場なんだ。フィラデルフィアに限らずアメリカの大半の街ではバーやクラブは午前2時に閉まってしまうんだ。アルコールの規制法のためにね。だから、パーティがそれだけ早くに終わってしまうと、一晩の中でピークタイムを迎えることが出来ないから、ほとんどのクラブではヒップホップ、R&B、80年代ポップスといったメジャーな音楽が求められるんだ。そんな中で、僕らがフィラデルフィアで Foundsound のレーベルのイベントを行う時は違法な場所で朝までパーティを続けているからとっても楽しいんだ。

-- 今のあなたのスタイルの音楽を追究する上でアメリカを拠点とすることは不便ではありませんでしたか?

S.E : そうだね。アメリカに住んでいたころは音楽で生活して行くのはとても難しかったよ。アメリカには良いイベントがそんなに無かったんだ。だから3年ほど前にベルリンに移住したんだ。それからは音楽で生活していきやすくなったよ。これからどのくらいベルリンに居続けるかは分からないけど、音楽という意味においては素晴らしい環境だよ。

-- 北米出身の多くのアーティストがベルリンに移住しているここ数年の流れについてどのようにお考えですか?

S.E : 自然な流れだと思う。ベルリンは生活費が安くてすむし、みんなが友達なんだ。先ほども応えたように、音楽で生活していいやすいんだ。そういった意味で、アメリカからベルリンへの移住は、一時の流行といったものではなく、キャリア形成のための移住なんだ。

-- Ableton live をはじめとするソフトウェアの進化により、最近では多くの人がライブ活動を 展開していますが、あなたがライブを行う上での機材やスタイルにはどのようなこだわりがありますか?

S.E : ライブでは Ableton を使うけど、制作にあたっては別のソフトを使っているよ。僕の作品は基本的にサンプル素材をベースにしているので、アレンジメントやサウンドデザイン、エフェクトが重要なんだ。でもライブにおいてはラップトップと簡単なコントローラーしか使わないね。その方がたくさんの機材を持ち運ぶよりも楽だからね。

-- 今注目している機材やテクノロジー、今後追究していきたいと考えている方法論、スタイルなどはありますか?

S.E : 僕自身、未だに自分のスタイルを模索しているんだ。だから正直なところ1年後に自分がどのようなスタイルになっているか分からないんだ。どうなっているんだろうか。機材やテクノロジーという意味では夢中になっている新しいものは無いのだけれども、Waves、Cycling ‘74、Mark Of The Unicorn といったプラグインは未だに愛用しているし、Digital Performer は素晴らしいソフトだと思うよ。

-- アーティストとして、またレーベルオーナーとして今後の活動予定を教えてください。

S.E : 6年以上も前から Tuning Spork の活動をしていなくて、Foundsound と Unfoundsound の方に注力しているんだ。あとは Butane と一緒に Little Helpers というレーベルを立ち上げるよ。デジタルリリースのみのレーベルでとてもシンプルな構成のトラックをリリースするんだ。最近増えてきているデジタルツールを使用するDJ達にとってのツール的なトラックなんだ。既に自分は勿論、Butane、Ryan Crosson、Beaner といったアーティストによるEPの準備が出来ているんだ。Little Helpers からはたくさんリリースしようと思っていて、年内にはレーベルを立ち上げたいと考えているよ。自分の作品という意味では Foundsound、Musik Krause をはじめとしていくつかのレーベルのために作品を準備しているよ。勿論、いつも通りたくさんのリミックスも進行中だよ。数え切れないくらいにたくさんのリミックスを行っているよ。

-- 最後に、サイト読者に向けて何かメッセージをお願いします。

S.E : 再び日本に戻ってくる機会を設けてくれてどうもありがとう。世界中でも最高の場所の一つだし、とても楽しみにしているよ!

End of the interview





NOVEN presents blue source 03
2009年10月16日 (Fri) @ club axxcis
Door : Y4,500(1D) _ W/F : Y3,500(1D)

LINE UP :
【Guest Live】
Someone Else (Foundsound Records, Philadelphia US)

【Guest DJ】
Benjamin Fehr (Catenaccio Records)

【Resident DJ】
Kiyoshi Inoue (NOVEN)

【DJ】
Ryuji Suganuma (freebase)





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