HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Mondo Grosso 名義でのアーティスト活動や、DJ / プロデュース、リミックス・ワーク等、様々な分野で活動を行っている Shinichi Osawa。日本では誰もが知るトップ・ミュージシャンであるが、特に昨年はアルバム "The One" をリリースし、現在日本でも熱くなっているエレクトロ・カルチャーの火付け役として大きな影響を与えたことでも知られている。また、 Digitalism の 'Pogo'、 Christopher Just & Raphael Just の 'Popper' といったヒット・チューンのリミックス・ワークや、フランスのトップ・レーベル Kitsune からのミックス・コンピ・リリースなど海外での活動も盛んで、日本以外のシーンから大きな評価を受けていることも事実だ。そんな彼が来る WOMBADVENTURE へ出演するとのことで HigherFrequency が遂に初のインタビューを決行。同イベントへの意気込みはもちろん、他のインタビュー記事ではなかなか見ることが出来なかったプライベートな一面など和やかな雰囲気で語ってくれた。

Interview : Masanori Matsuo (HigherFrequency) & Midori Hayakawa (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : これまでアルバムの紹介やイベントのレポートなど様々な角度から Shinichi Osawa を取り上げてきた HigherFrequency ですが、インタビューを行うのは意外にも初となります。当サイトのことはご存知でしたか?

Shinichi Osawa : 知ってますよ(笑) いつも観させてもらってます。クラブ系イベントのインフォメーションとかレビューとかを書いてる人がちゃんとしてるなと思っていますね。

HRFQ : 大沢さんの活躍もあって、日本でもストリート・カルチャーを中心にエレクトロ系のサウンドが定着したところですが、大沢さんなりのエレクトロ系サウンドの魅力をお伝えできますでしょうか。

Shinichi Osawa : エレクトロと呼ばれているものの範囲があまりにも広すぎて、そこで自分の好きなものを見つけるのがみんな時間がかかってたような気がするんですけど、逆に言うと定着してしまえばなんでもエレクトロって言っちゃえるっていう便利さはありますよね。だから、僕もあえて自分の音楽がエレクトロとは思ってない部分がありつつも、開き直りとは違った「別にもういいや」って感覚で使ってた部分もあるので、その名前から想像する音楽の魅力自体っていうのはちょっと僕が語れるようなものじゃないですね。

やっぱりシーンなんじゃないですか。だから音楽のジャンルでもないし、例えばエレクトロって呼ばれてるものの中でもほんとにロックしか興味がない人もいるし、かたや今風のハウスのようなものまでエレクトロと呼ばれたりするじゃないですか。だからフォローしてる範疇が広すぎるっていうのはありますね。ただ、「’07〜’08年の音ってこれだよね」っていうのが認識しあえるキャッチーな言葉としてはエレクトロというのは良かったと思います。

HRFQ : アルバム "The One" にも収録されたケミカル・ブラザーズのカバー曲 "Star Guitar" が沢山のリミックスを引っさげ、UKの Ministry of Sound 傘下のレーベルから・ライセンス・リリースされたばかりですね。すでにアナログのマーケットでは爆発的なセールスを記録しているようですが、ご自身は特に気に入っているリミックスはありますか?

Shinichi Osawa : もちろん全部好きなんですけど、強いて言うなら Popular Computer のミックスが好きですね。もともとスワップで僕が彼の作品をリミックスしたこともあるんですけど。あとはダブリンの The Japanese Popsters のミックスも良かったですね。

HRFQ : それらはDJでもよく使われますか?

Shinichi Osawa : かけます。最近は自分のバージョンをかけなくなっちゃいました (笑)

HRFQ : 前途の 'Star Guitar' のように、他にも Shinichi Osawa 色に染め上げてみたい楽曲はありますでしょうか?

Shinichi Osawa : 今のところ予定はないですね。 'Star Guitar' に関してこの1年ぐらい良くも悪くも「人の曲」って言われることのほうが多かったし。あの曲は、隠れたカバー曲っていうキャッチになるのがイヤだったんで、アルバム "The One" では「あ、こういうのも入ってるんだ」という単純なインパクトを期待し開き直って1曲目にもってきたというところがありました。なのであそこまで注目されると逆にへこんじゃうというのもありますよね。サンプリングして違うクリエイションにしたりとかはあるでしょうけど、今はあまりカバーという感じでは考えていないです。

HRFQ : Shiichi Osawa としてのDJ / プロデュース活動以外にも、☆Taku Takahash & FPMの田中知之とのユニット ravex、 Masatoshi Uemura との Off The Rocker、映画「40歳問題」への出演、日本アフガニスタン合作劇映画「The Roots」の音楽担当など、多岐に渡る活動をしてらっしゃいますが、それぞれどのようなセンスの使い分けで活動をこなしていっているのでしょうか?

Shinichi Osawa : 最近セラピストを通して分かったことなんですけど、僕は小さいときにアスペルガー症候群だったらしくて、要は子供がかかる軽い自閉症だったんですよ。その流れかも知れないですが昔はもっと集中力があったし、ひとつのことをやりだしたらずーっと同じことやってるし、物事だけじゃなく、感覚とかでもそうなんですよ。一個悲しいことを見つけるとそれしか頭をよぎらないし、悪い意味での集中力というか、ひとつの穴に入ってしまったら抜け出せないみたいな。そういう感覚だったのが、ここ何年かは飽きちゃうようになって。これをやってても、やっぱこっちの方が面白いなと思ったりだとか、そういうのが身に付くようになって時間の配分とかもある程度できるようにはなったんですけど。前は1つのセッションがあって、アルバム制作中だったらアルバムに集中するのが当たり前だと思っていたし、そうしないと完成しないとも思っていたんですよ。ところが、4年ぐらい前からむしろそうすることのほうが時間がかかっちゃうようになりました。だからむしろ平行して違うことをやったりだとか、極端な話毎日違うことをやるほうが楽しい。

で、その反面幼少の病気の遍歴が残っているのは、やることは変わっても、1個ハマると毎日同じプロセスを踏むとかね、そういうのはよくありますね。毎日同じもの食べるとか、同じ服着るとか、そういうところは残っていて、刺激事態は毎日新しい方がいいなっていう、なんだかミックスした感じになってきてるんでしょうかね。だからむしろ楽しめるようになってきたんです。毎日違うセッションを取ったりとか、むしろ宿題にするとかのほうがしんどい。

HRFQ : DJ/プロデューサー・サイドからみても特にファッションやアートに精通しているように感じますが、今後絡んでいきたいアーティストなどがいれば教えていただけますか?

Shinichi Osawa : 僕はすごい天邪鬼なんで、タイムリーに「こうやってほしい」っていうリスナーからの要求にはことごとく応えられないぐらいタイミングがずれてるんです。今のDJスタイルや制作のモードになったのは4年前とかで、最終的に "The One" というアルバムの形にできたのがようやく昨年。なので結構時間がかかってるわけなんですね。それをやった時点で飽きてるわけじゃないんですけど、なんとなく世の中的にもあのスタイルが普通のこととなり、今僕が欲してる音楽の方向性自体が多分そういったハードなものじゃないんですよ。

シーンが大きくなっちゃって、これが末期かどうかわかんないけど模造品、模倣品があまりにも多いと思うんです。そこにはそのシーンが生まれたときのパッションとか初期衝動とかがなくて、やはり小手先のプリセットとかテンプレートで作られたような音楽っていう、ちょと恥ずかしい言い方すると魂の入っていないものが目に付いてきてるんです。そういったこともあり、やはりここにはずっといられないなっていう感じは持っています。

今気持ち的に向かっているのは、反骨精神という意味で「パンク」です。フロアでも暖かく受け入れてもらってるのはすごい幸せなことではあるんですが、次の居場所を探さないといけないと常に思いながらやってるんですよね。でないとこれからもリスナーに刺激を与えてはいけないと思うし。で、今僕が1番「パンク」な精神を感じるのはフォーク・ソングだったりとかしますから。今のエレクトロな時代にギター1本でフォークを歌ってる人の方がパンクを感じますね。フォークをやるかどうかは別として、そういう人たちと絡んでみたいなとは思っていますね。

HRFQ : 具体的なアーティスト名とかありますか?

Shinichi Osawa : 彼はストレートにフォークかどうかわかんないですけど、ここ数年1番プライベートで聞いているのは Jose Gonzalez (ホセ・ゴンザレス) っていう北欧のアーティストで、こんな感じの声だったら僕も絶対ギター1本で歌うたうよなっていう。そういう人とやりたいとか考えてますね。ただ、DJっていう側面で考えるとまだまだカッティングエッジな音楽が好きなので、その側面では新しいものも作っていきたいです。ちなみに、ようやく昨年の7月にリリースしたものが海外で流通し始めているので、そこで出て行くインパクトが多少あるのであれば、海外の活動が増えていくかもしれません。即アルバムってことはないと思うんですけど、今契約している Southern Fried Records からデジタル配信などをやっていきたいですね。

HRFQ : 海外のお話がでましたが、海外のお気に入りのクラブとかエピソードなどはありますか?

Shinichi Osawa : 今年行ったのはロスとメキシコ、ロンドンにダブリン、ノッティンガムぐらいかな?韓国にもよく行きました。特にロスのEDCフェスティバルはオリンピック・スタジアムで開催してて、7万人ぐらい集まるんですよ。その人の多さにはリアルにびっくりしますよ。僕はサブでプレイしたんですけど、それでも凄い人数で楽しかったですね。 EDC は来年の開催でもオファーがきたので喜びを感じてますね。あとロンドンの Fabric からもまたオファーをいただいてます。

HRFQ : 特にDJ活動は生活に大きな負担がかかると思いますが、大沢さんが持つ独自の健康法などありますか?

Shinichi Osawa : 怪我もしますけどね (怪我した指を見せて)。特に気を使っているというわけでもないんですが、3年ぐらい前にジムが自分の中でブームになっててしばらく行ってましたけど、つい飽きて行かなくなりましたし、特別やってることはないんですよ。でも意外とクラブでDJやってると健康になりますよ。汗もかくし(笑)。1時間半のプレイが終わると、Tシャツじゃなくて普通の生地もののシャツとかが絞れるんですよ(笑)。それぐらい熱いですよ。 WOMB とか特に。

HRFQ : ご自身も出演される12月20日(土)の WOMBADVENTURE は幕張メッセという巨大スペースで行われますが、大きなフロアーに合わせた特別なセットなど予定されてますか?

Shinichi Osawa : 特にやらないんですよ。似たようなスタイルの 2 many DJs とかもそうなんですけど、それやりだすときりがないっていうか、どれが自分か分かんなくなるし。どこいっても同じテイストで楽しめるっていうのが僕の心情なので。誰の後だから前だからとか、どういうシチュエーションだからといって基本的にメイン・フロアと言われるところでは変えないですね。それで評価がさ下がってもしゃあないし、逆にアジャストしにいって、「あ〜こういう感じなんだ…」と思われる方がむしろ危険だと思う。

HRFQ : 大沢さんは WOMB のレギュラー・イベント The Yes のレジデントを務めていますね。 WOMBADVENTURE へ、 WOMB レジデントDJならではの意気込みをお聞かせください。

Shinichi Osawa : 他でも公言してますけども、 WOMB は基本的にホームだと思っているので、今回のように声を掛けていただけるだけでも嬉しいです。逆にはずされてるときとかは何気に傷ついてたりとかはしてましたね(笑)。でもやっぱり WOMB はクオリティが高いんですよ。僕等がやるパーティーのなかでも東京で唯一レジデントとしてレギュラーでやらせてもらってるし、なによりお店とお客さんのクオリティがすごい高いんですよね。

HRFQ : 最後にメッセージをお願いします!

Shinichi Osawa : 10何年音楽やってますけど、ラジオでもテレビでもなんでも、メッセージというものを言ったことがないんです。なぜかというと、やってること自体がメッセージなので。照れ隠しになっちゃいますけど、そんな感じですね(笑)

End of the interview


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