HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

どうやらベース・ミュージックが変わってきたようだ、という感覚が、いよいよ確信へと変わってきた。その代表格として名前を挙げるべき一人が SCUBA であろう。現在形のテクノの聖地・Berghain にて自身がスタートしたパーティー SUB:STANCE によって、もともとベース・ミュージックの色の薄かったベルリンにこの新しいサウンドを提案することに成功。このたび、Ostgut Ton からそのパーティー名を冠したMIX CDが発売されることで、誰もが注目せざるを得ない存在となりつつある。

SCUBA や、彼のレーベル・Hotflush のクルーが繰り出す 「テクノっぽいダブステップ」 と形容されるサウンドは、彼がロンドンからベルリンへと拠点を変えたことで生まれたという印象を持たれがちではあるが、実のところ、テクノからガラージ、そしてドラムンベースへと、その好奇心を発揮してきた SCUBA 本人の歩んできた道から自然に生まれ出た音に他ならない。プロデューサーでありながらサウンドだけでなく、パーティーやシーンのあり方についての強い理想を、ちょっと早口で熱っぽく語ってくれた。

Interview & Introduction : Yuki Murai (HigherFrequency)

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HRFQ : 年末年始はどのように過ごされましたか?

SCUBA : 色々とやることがあって残念ながらあまり沢山は休めなかったんだけどね。とりあえず地元ロンドンに戻って、パーティー行きまくり、飲みまくりで過ごしたな。(笑)

HRFQ : いいですね!それでは本題に移りましょう。まず、あなたはクラシック音楽好きのご家庭で育ったと伺っていますが…

SCUBA : そうだね。親も僕に音楽をやらせたがっていて、僕もピアノを弾いたり、ギターを弾いたり、あと、トランペットもやっていたね。そういう環境だったから、クラシックはたくさん聴いてたんだけど…

HRFQ : ただ、当時はご自身ではあまり好きではなかったとも伺っています(笑)。

SCUBA : そう、子供の頃はね。ああいう音楽は子供にはやっぱり退屈だよ。実際、最近になってもっと聴くようになったんだ。

HRFQ : では、当時や、十代位の頃に好きだったアーティストは誰ですか?

SCUBA : まず、ロックにすごくハマってたな。Guns 'n Roses と Metallica だね!(笑) テクノを聴き始めたのは16〜17歳くらいで、特にベルギーの R&S Records の音源が本当に大好きだった。もちろんUK発のテクノも聴いてたね。つまり、僕は最初はテクノからスタートして、その後でジャングルとか、ガラージのほうに移っていったんだよ。

HRFQ : トラックメイキングを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

SCUBA : 子供の頃から音楽をやってたのが大きいけど、とにかく演奏するよりも曲を書くほうが好きだったんだ。それでクラブ・キッズになって、クラブの音が好きになって、そういう曲を作り始めたってことさ。

HRFQ : 現在は、曲作りにどのような機材を使っているんですか?

SCUBA : うーん、主にマイクをつかって直接録音した音を使ってるね。シンセを使うことも少ないな。ただ、Cubase はよく使ってるよ。もう古いソフトだけど、シンプルで使いやすいと思うんだ。僕は難しいことをするプロデューサーじゃないからさ。(笑)

HRFQ : では、あなたのレーベル・Hotflush についてお聞きします。どのようにレーベルをスタートしたのでしょうか?

SCUBA : 大学生の時・・・ブリストルの大学に3年間在籍してた時だね。地元はロンドンだけど、ブリストルの大学に行ってたんだ。僕はその頃DJを始めて、ギグもたくさんやってた。曲を作ってるDJ友達も何人かいたから、それでレーベルを始めることにした。当時、僕も含めて皆、曲はたくさん作っていたけど、それをちゃんとリリースできる環境がなかったから、そのための基盤が必要だったんだ。

とはいえ、レコードレーベルを運営するためのビジネス的な知識なんて何もなくて、全部経験から学んでいったんだ。まさにDIYさ。とりあえずレコードをリリースして、ディストリビューションを探して、レコード屋においてもらって…。コスト感覚なんかもよくわからなかったし、レーベルとしての歩みは本当にゆっくりしてたよ。クラブ・キッズが集まって作った、本当 「寄せ集め」 みたいなレーベルだったね。(笑)

HRFQ : 現在はベルリンに住んでいらっしゃいますよね。ロンドンとベルリンのオーディエンスを比べて、違いはありますか?

SCUBA : ああ、もうベルリンに引っ越して2年になるよ。そうだね…実際に違いはあると思う。まず、UKのシーンは結構人種によって分かれているよ。それに、オーディエンスはみんな飛び回ってわいわい騒いでるような感じさ。ベルリンはもっと…そうだな、「クラブ」 らしいシーンで、いろんな人種の人がいるんだ。クラブにいる時間も長いし、オーディエンスはより音楽そのものを楽しんでいる感じがするな。音楽を真剣にとらえようとする、クリエイティブな感覚があるね。

HRFQ : それでは、日本についてはどうでしょう?昨年の来日ギグの時にはどう思われましたか?

SCUBA : 東京、大阪、名古屋…どこも素晴らしくいい感じで、すごく楽しかったよ!オーディエンスは皆すごく熱心で、僕がいままで見てきた中でもかなりのものだと思ったね。だから今回の UNIT のギグも本当楽しみなんだ。

HRFQ : 話をまたベルリンに戻しますが、ベルリンに移住したことで作風や選曲の傾向に変化はありましたか?

SCUBA : 少しだけど、影響はあるね。ベルリンはもちろんテクノが強い環境で、僕がいわゆるテクノをプレイすることはないにしても、やっぱりあちこちで聴いているからね。ロンドンに比べればシーンの規模も小さくて、皆お互い知り合い同士だし、クラブに行けばそういう曲を作ってる人達に沢山会う。ロンドンのシーンは大きくて、顔も分からないもの同士が集まっていて、一体感みたいなものは少ないよ。多少関わってるかな、という感覚だね。

あと、ベルリンには 『真っ当な種類の』 ハウスのシーンもあるよね(笑)。SCB 名義でやっている作風では、そこからより影響を受けてると思う。SCUBA 名義は…もともとテクノやエレクトロニックの要素もあったからな…うん、でも影響はあるよ。少しだけどね。

HRFQ : 今、注目のプロデューサーの名前を挙げていただいてもいいですか?

SCUBA : レーベルのアーティストを紹介するよ。Sigha と Mount Kimbie は5月にリリースが決まってるんだ。あとは Joy Orbison のエクスクルーシヴなリリースも決まってるね。どれも僕自身もすごく期待してるよ。

HRFQ : Ostgut Ton からは、もうすぐあなたのパーティー SUB:STANCE の MIX CD がリリースされますね。

SCUBA : そうだね、あと2週間後ってとこだな。

HRFQ : Ostgut Ton は Panorama bar と Berghain、それぞれのMIXシリーズも既に好調ですね。

SCUBA : うん、彼らはコンピレーションとクラブをリンクさせて本当うまくやっているなと思う。パートナーとしていい相手だし、そこから僕にオファーがあったのは光栄だよ。それに彼らは音楽に対してすごく情熱があるからね。

HRFQ : あなたの周辺も、いろいろとお忙しくなってきているのではないでしょうか?

SCUBA : ああ、どんどん忙しくなってきてるよ!それに、Hotflush からは3月末にアルバム "Trianglation" を出す予定もあるんだ。UNIT でのギグではもちろん、そのアルバムの曲もプレイしようと思ってるよ。

HRFQ : 楽しみにしてます! ところで最近の SUB:STANCE の雰囲気はいかがでしょうか?

SCUBA : SUB:STANCE は嬉しいことに、初回からすごく盛況にやってるよ。第一回目の時は本当驚いたよ。みんな本当に、音を楽しむために来てるってのがはっきりと分かったんだ。これこそがパーティー、正しい意味でのパーティーだと思ったね!

HRFQ : あなたの昨年春の来日ギグの頃に比べ、ハウスやテクノなど4つ打ちが目立つ日本のクラブシーンでも、よりダブステップに注目する人が増えてきているように思います。そこにはやはり、あなたが提案する新しいベース・ミュージック、新しいダブステップのサウンドの影響もあるのではないかと思っていますが。

SCUBA : だったら嬉しいね。ただ、僕は 「テクノ」「ダブステップ」 みたいに、音をきっちり分けて捉えるのはあまり好きじゃないんだ。自分でも面白いなと思うんだけど、音がどんな感じになるのかは、パーティーをやる場所に一番左右されている気がする。みんなが盛り上がりたそうなときには、盛り上がれるような曲をかけるんだ。もちろん、日本のシーンになんらか影響があったんだとしたら、それは嬉しいよ。

HRFQ : あなたから見て、ベース・ミュージックの一番大きなシーンがあるのはどこでしょうか?

SCUBA : 間違いなくUKだね。エレクトロニック全体でも人が多くて、シーンは大きいね。ドイツに関しては - 特にベルリンだけど、実際大きいクラブはまだあまり沢山なくて、今まさに大きくなっていってる段階なんだと思う。ただ、今のUKのシーンが夢中になってる音は、テクノにしろ何にしろ、僕が夢中になってる音とは違うんだよね!(笑)UKで主に流行ってるのは、ただ騒がしいだけのドラムンベースとか、騒がしいだけのダブステップなんだ。

もちろん、このシーンに人気が出るのはいい部分があるよ。先週ロンドンの Fabric に行ったんだけど、Untold、D-Bridge、Todd Edwards とか…、とにかくああいう、新しいドラムンベースやダブステップ周辺のサウンドが全て集合してたんだ。こういう動きが突然UKで起こり始めたってことは素晴らしいと思うよ。

あと、アメリカはもちろん、こういった音の源流を全部持っている国だよ。だけど不思議なことに、なぜか今、前あったダブステップがドラムンベースにとって代わられてるんだ。他は大体、ドラムンベースが死にかけてダブステップに勢いがあるんだけど、アメリカだけは逆なんだよね。(笑)

HRFQ : また、シーンが拡大しているのはどこでしょうか?たとえば東欧などは?

SCUBA : もちろん!だけど、東欧は不況の影響で、これまで政府が援助してた芸術活動にお金がまわらなくなって、多くのDJたちがギャラが出なくて困ってるんだ。だけど、みんなすごく音楽に熱心だよ。ポーランドやエストニア、ラトビアとか…どこもそうだね。

HRFQ : 最後に、日本のファンに一言お願いいたします。

SCUBA : ギグが待ちきれないよ。みんな、来週のUNITで会おう!

End of the interview




UNIT and root & branch presents
UBIK VERSION meets JAH-LIGHT SOUND SYSTEM


2010年1月22日 (Fri) @ UNIT
DOOR : Y3,500 _ W/F : Y3,000 _ ADV : Y2,500

【UNIT】
DJ :
SCUBA (HOTFLUSH RECORDINGS)
UNIVERSAL INDIANN (FAMILY TREE / NRBKJ)
JAH-LIGHT SOUND SYSTEM

LIVE : MANTIS (Tiltloose)

VJ : BLIND ORCHESTRA

【SALOON】 supported SUPERSONIC
DJ :
GREG G (7even Recordings)
RILLA (ALMADELLA)
OSAM "GREEN GIANT" (Soi / REVOLT / Version)
DEMU (NATRAJA)
YUSAKU SHIGEYASU




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