HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Roman Flugel Interview


テクノ・シーンを飛び出し、クロスオーバー的大ヒットとなった名トラック "Rocker" と共に、一躍脚光を浴びることとなったドイツ、フランクフルト出身のデュオ Alter Ego。'90年代中盤からドイツの名門テクノ・レーベル Harthouse や、自身のレーベル Klang Elektronik 等を中心に、良質なトラックをリリースしてきたこのユニットの中心的人物である Roman Flügel が HigherFrequency × 代官山 UNIT のコラボレーション・パーティーの第一弾目スペシャル・ゲストとして出演を果たした。

11月には Jazz ヴィブラフォン奏者である Cristopher Dell とのコラボレーション作品、"Superstructure" を、Dell & Flügel 名義でリリースしたばかりの彼、同作品のリリース・パーティーという題目も兼ねた今回のギグを目前にして、HigherFrequency とのインタビューに応じてくれた。

> Interview : Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation & Introduction : Kei Tajima (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 今回のツアーの調子はいかがですか?

Roman Flügel : すごくいいよ。'03年から日本にはツアーで何回か来ているけど、始めて来たその日から、毎回素晴らしい時間を過ごしてる。日本の食べ物が大好きだから、日本にはいつでも戻って来たいと思うんだ。それに人も好きだし、初めて来た時から日本に夢中になってしまってね。それが僕がしょっちゅう来日してる理由かな。去年は2回来たし、今年は1回。日本に呼んでくれるイベンターの人たちも、繰り返し呼んでくれるんだ。

HRFQ : 大阪のクラウドはどうでしたか?

Roman : クレイジーだったね。大阪の人々ってすごく感情的なんだよね。僕にはすごく居心地がいいんだ。

HRFQ : 今回はニュー・アルバム "Superstructure" のリリースを記念してのツアーということですが…。

Roman : そうだね。Dell & Flügel 名義で Laboratory Instinct からリリースされるアルバムなんだ。

HRFQ : 今回、日本以外でもツアーを行われているんですか?

Roman : いいや、全然。今回ツアーをするのは日本だけだよ。ただアルバムのリリースとタイミングが重なったってだけのことなんだ。アルバムのリリースがなくてもプレイしに来てたと思うよ。

HRFQ : "Superstructure" は Alter Ego としての作品とは異なり、ジャジーでオーガニックな要素が多く含まれたアルバムであるということですが、このプロジェクトはどのようにしてスタートしたのでしょうか?

Roman : このプロジェクトは、Christopher (Dell) と僕を知っているある第三者のアイデアから始まったことなんだ。彼は、僕たちが一度も会ったことがないのにも関わらず、僕と Christopher の2人で一緒に音をつくれば、何か面白い作品が出来上がると思ったみたいでね。そうして僕たちは彼を通して電話番号を交換したというわけなんだ。それはすごくエキサイティングだったさ。Christopher は Jazz のバック・グラウンドを持っているアーティストだし、僕はしばらくエレクトロニック・ミュージックばかりつくっていたからね。スタジオで彼と会って、2日間かけて2回セッションして、今回のアルバムが出来上がったのさ。

HRFQ : では、わざと違った路線で音をつくろうとしたわけではないんですね?

Roman : いいや、言うならばジャム・セッションみたいな感じだったよ。さっき君が言ったように、オーガニックな感じのね。エレクトロニック・ミュージックと即興音楽をミックスすることは、チャレンジとも言えることだけど、Christopher みたいな素晴らしいジャズ・ミュージシャンと一緒だったから、随分とスムーズに出来たよ。

Roman Flugel Interview

HRFQ : アルバムについての周囲の反応はいかがですか?

Roman : すごくいいよ。僕も Christopher も、普段とは全く違ったタイプのリスナーとコネクションを持つことが出来たからね。違ったシーンを融合させるというのが今回のアルバムのメインの目的なんだ。

HRFQ : このアルバムは、二つのシーンの融合させるほどの強さを持っていると思いますか?

Roman : そうだね…"そこ" までの強さはないかもしれないけど、何人かの人々に働きかける強さは持ってると思うよ。それが一番大事なことだと思うんだ。

HRFQ : 'Rocker' のようなトラックをリリースして起こった、ポジティヴな出来事については今までに何度も訊かれたと思うのですが、逆に、あのような大ヒット・トラックを制作したことについてのネガティヴな面はありましたか?

Roman : 分からないな…。あるとすれば多分、ある一定の人にとって 「Alter Ego = Rocker のみ」ってイメージがついてしまうことかな。また、ある人には 一発屋って思われるかもしれない。でも、あのトラックは今でもたくさんプレイされているし、僕らにとってはすごく大事なトラックなんだ。だからネガティヴな面はあまりないね。

HRFQ : 'Rocker' のヒットは、Alter Ego だけではなく、ダンス・ミュージック・シーン全般にとってもポジティヴなことだったと思われますか?

Roman : そうだね、そう思うよ。いろいろなジャンルに通じるトラックを持つことは、シーンにとって常にポジティヴなことだし、しばらくの間、ああいうクロスオーバーなヒットは生まれてなかったからね。それまでテクノやハウス、トランスといった決まったジャンルだけをプレイする人が多かったのに、突然、どんなジャンルのDJもプレイできるトラックが出てきて、多くの人がそれを聴いてハッピーになって…。だからすごくいいことだと思うよ。

HRFQ : 次の Alter Ego のアルバムには、再びクロスオーバーなトラックが含まれることになるのでしょうか?

Roman : だといいね。ただ、そういったトラックをつくることだけを狙っているわけじゃないんだ。'Rocker' の前にも曲作りをしていたわけだし、その後も続けていくというだけさ。

HRFQ : Alter Ego のショーは非常にパワフルですが、今後 Dell & Flügelとしてのライブは行われる予定ですか?

Roman : 出来るといいね。話はしているんだけど、実際にライブをするとなると難しいんだ。まず初めに、彼も僕も常にツアーをして回っているからね。でも来年には何かしたいと思っているよ。

HRFQ : どんなライブ・パフォーマンスが期待できるのでしょうか?

Roman : Alter Ego とは全く違ったセット・アップになると思うよ。普段ステージではコンピューターを使わないけど、Dell & Flügel に関しては、ラップトップを使わないといけなくなるだろうね。Dell は絶対にマイクを持ってステージに来るだろうし。ステージ上で即興演奏なんかをしても面白いかもね。アルバムのトラックをベースにしながらその場で新しいことを出来るといいね。

HRFQ : Alter Ego のライブ・セットでは実際にステージ上でどんな作業をされているんですか?

Roman : さっきも言ったように、ラップトップは使っていないんだ。古いシーケンサーとサンプラー、また違ったタイプのシーケンサー、それにドラム・マシーンと'70年代モノのかなり古いエフェクト・マシーンを使ってるよ。そういった機材を使って、ベースのトラックをその場でアレンジしたり、ループをセット・アップしたりしているんだ。大半は、トラックをミクシングしたり、サウンドをアレンジしたり、エフェクトをかけたりしてる。基本的にはそんな感じだね。

Roman Flugel Interview

HRFQ : DJセットはいかがですか?エフェクトは使われますか?

Roman : いいや、全然。使うのはレコードだけだよ。オールド・スクールなタイプだからね。レコードが大好きなんだ。

HRFQ : スタジオではどんな機材を使われていますか?

Roman : スタジオではマックを中心にいろいろなタイプの機材を使っているよ。でも、制作の最終段階では、古いアナログのミキサーを通してDATやCDに音を落とすんだ。だから 必ずしも100 % デジタルという感じではなくて、アナログな要素もあるのさ。

HRFQ : Ableton Live は使われていますか?

Roman : いいや、Logic を使ってるよ。たまに極端に音を変えたいときは Ableton を使うけど、そうやってつくった音も、結局サンプラーや Logic に通してしまうからね。だから僕たちの音の中心にあるのはソフトウェアではないんだ。

HRFQ : なぜ最終段階でそのようにアナログなミクシング方法をとられているのですか?そうすることで、より良い音が得られるのでしょうか?

Roman : 一番の理由は、そういった方法に慣れているから。何故だか、ああいう古い大きい機材をいじるのが好きなんだよね。それに、アナログ機材を通すことで、音が鋭くなるから好きなんだ。デジタル機器でゆがんだ音より、アナログ機器を使った音のゆがみの方がいいでしょ。

HRFQ : プロデュース業と共に、リミックス・ワークもたくさん行われていますが、トラックの選出はどのような基準で行っているのでしょうか?

Roman : もともとのトラックが基準だけど、時々、トラックがあまり好きじゃなくても、ヴォーカルだけを使ってリミックスすることもあるよ。Human League のトラックのリミックスなんかは、オリジナルのトラックが嫌いでも、ヴォーカルが好きだったから喜んでリミックスしたしね。逆に Chicks on Speed のトラックでは、フレーズを少しピックアップしてだけで、他のヴォーカル部分は全く使わなかった。リミックスするときは、だいたい自分たちの音を大量に入れてしまうか、オリジナルが分からないくらいにアレンジしてしまうんだ。

HRFQ : リミックス・オファーを断ることもありますか?

Roman : 時々ね。でもあまりないかな。ラッキーなことに、面白いと思うトラックのリミックス・オファーを受けることが多いんだ。

HRFQ : 最近、大勢のドイツ人アーティストがシーンの前線で活躍していますが、これについてどのような意見を持っていらっしゃいますか?

Roman : いいと思うよ。すごくいいと思う。ただ一つ言いたいのは、ドイツ人のアーティストは、長い間努力して来たってこと。ドイツのミュージック・シーンに関して、素晴らしいことの一つは、アーティストが個人のサウンドを育て続けられることだと思うんだ。つまり、ドイツのエレクトロニック・ミュージック・シーンには、流行り廃りがないのさ。イギリスとは違ってね。確かに、今のイギリスでもドイツの音楽はものすごく流行ってるけど、来年になればきっとブームは去ってしまって、また新しいジャンルが注目を集めるようになるんだ。ここ数年の間、ミュージシャンにとってイギリスで音楽をリリースすることは簡単なことじゃなかった。なんせ2ヶ月でトレンドが変わってしまうんだからね。例えば、Baby Ford みたいなアーティストは、5〜6年もミニマル音楽をつくり続けていて、その間誰にも相手にされなかったのに、ミニマル音楽が流行った途端、みんな急に彼らの音楽に興味を持つようになったんだ。ドイツでは、売れる売れないに関わらず、そのアーティストが個人の音を発展させていくことが出来るのさ。

HRFQ : では、今ドイツの音楽が人気なのは、ドイツ人アーティストの努力あってこそということでしょうか?

Roman : そうだね。でも、同時にドイツのシーンがすごく強いシーンで、アーティスト同士が対立していないからとも言えるだろうね。もちろんその都市ごとに違ったシーンはあるけど…。とにかく、誰もが好きなことを出来て、それを発展させるチャンスがドイツにはあるんだ。それに、一緒に仕事をしていないアーティスト同士だって、一緒にパーティーをオーガナイズすることだって出来る。パーティーはパーティーだからね。

Roman Flugel Interview

HRFQ : 多くの人がベルリンに夢中になっていますが、あなたはフランクフルトを拠点に活躍なさっていますね。この二つの都市の違いを教えてください。

Roman : まず、ベルリンのシーンはドイツ以外の国から集まった人々によって形成されている。若くて、冒険がしてみたいならベルリンへ行くべきさ。

HRFQ : Richie Hawtinもそうですね…。

Roman : そうだね…。遥々カナダからやって来る人もいるね!ベルリンには違った都市から集まった人々が多いんだ。フランクフルトのシーンには、生まれも育ちもフランクフルトっていうアーティストが多い。例えば、最近、Ricardo Villalobos と一緒に Zip もレーベルの Perlon もベルリンに移動して、彼らがベルリン出身だと思っている人も多いみたいだけど、実際は違うんだ。もう一つの違いは、ベルリンが24時間どこかでパーティーが行われてるシーンだってこと。たくさんの人々が、楽しむだけに行く場所なんだ。大学に行くつもりが辞めてしまったりっていう人が多いのさ。だからパーティー目当ての観光客も多いよ。フランクフルトはベルリンより相当物価が高いから、生活するためには働かなくちゃいけないんだ。銀行で働いている人とか、そういう人がたくさん住んでる。だからパーティー・シーンに関しては、ベルリンの方が盛り上がっているかもしれないね。それが基本的な違いだと思うな。

一方、フランクフルトにはものすごく強いエレクトロニック・ミュージックのバック・グラウンドがあって、エレクトロニック・ミュージック・シーンの中でも重要なクラブのいくつかはすべてフランクフルトにあったんだ。'70年代には、Dorian Grey という大きなディスコが空港の中にあったし、Sven Vath がプレイしていた頃の Omen も凄かった。それに今は Robert Johnson や Cocoon Club といった良いクラブがあるしね。

HRFQ : ベルリンに移住することを考えられたことはありますか?

Roman : ないね!まぁ、絶対ないとは言えないけど…。確かに移住を考えていた時期はあったよ。でも結局、レーベルの面なんかでも、フランクフルトで過ごす時間が圧倒的に多いんだ。僕たちのレーベルはフランクフルトにあって、スタッフの中にはベルリンに移動したくない人もいるし。結局、仲間の方が場所より大事だからね。

HRFQ : 分かりました。最後に日本のファンにメッセージをいただけますか?

Roman : まず初めに、みんなに感謝したいよ。それから、'07年には Alter Ego の新しいアルバムをリリースを予定していることを伝えたいと思う。来年早々スタジオに入って、'07年にはリリースしたいと思ってるんだ。だから、また来年には日本に戻って来たいな。出来れば2〜3回は日本でプレイしたいね。まだ分からないけど。日本に来ることは、いつだってすごく楽しみなんだ。

End of the interview

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