HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Robert Travis


スペインやポルトガルで盛り上がりを見せるトライバル・ハウスとプログレッシブ・ハウスとの融合をいち早く表現し、妥協を許さないサウンド・セレクションと渋いアーティスト・チョイスで、東京のクラブ・シーンの中でも特に硬派な存在として異彩を放ってきた WOMB のレジデント・パーティー Session。そのレジデントDJ として活躍する Tommy Wada 氏をインタビュアーに迎え、ウエブ業界の"硬派"を自認する(?) HigherFrequency と"Session"がコラボレートしていく"硬派"なインタビュー・シリーズ、それが"Talk SESSION Series"である。

その第一回目のゲストとして登場するのは、スイスの大型クラブ CLUB Q でレジデントを務める新鋭 Robert Travis。3月19日の Session で初来日を果たし、本場仕込みのトライバル/プログレッシブ・サウンドを聞かせてくれた彼が、我々日本人にはあまり馴染みのないスイスのクラブ・シーンや、ラブ・パレードなき今、ヨーロッパ最大規模となったチューリッヒのストリート・パレードなどについて話を聞かせてくれた。

> Interview : Tommy Wada (Session) _ Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency) _ Photo : Mark Oxley (HigherFrequency)

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Tommy Wada (以下TW) : Club Q、それからスイスのクラブ・シーンってどんな感じなの?

Robert Travis (以下RT) : Club Q は昨年の11月に4周年を迎えたばかりの、スイスでも有名なクラブの一つなんだ。コマーシャルでアンダーグラウンドな、スイス初のプログレッシブなクラブさ。

TW : コマーシャルでアンダーグラウンドってどんな意味?

RT : Club Q が出来る以前にあったアンダーグラウンドなクラブは、ごく限られた人達だけのためのものだったんだ。でも、Club Q は、そういった音楽を普段聴いていない人たちにとっても門を開いたってことがまず言えるかな。あと、たくさんの有名なDJたちもプレイしてるしね。スイスの殆どの有名なプロデューサー達がClub Q でレジデントをやっているんだ。

TW : 例えば?

RT : Nukem とか Steven。あと、僕もね。

TW : スイスのシーン全体はどんな感じ?

RT : いい感じだよ。スイスのシーンは90年代の始め頃に、テクノとかハウスのシーンを中心にスタートして、92年には初のストリート・パレードも開催されたりしたんだけど、その辺りをきっかけにエレクトロニック・ミュージックのシーンが年々広がっていったって感じだね。あと、スイスのクラウドたちはとてもオープン・マインドで、ドラムン・ベースからテクノ、ミニマル、ハウスと、とにかくいろんなタイプの音楽が溢れているんだ。

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TW : 昔スイスに行ったときに、みんな木曜の夜からパーティーしてるのを目にしたんだけど…。

RT : そう、そう。チューリッヒでは月曜から日曜まで毎日パーティーすることだって出来るんだ。例えば、いいダンス・ミュージック系のパーティーが水曜にあったりするし、その気になれば、月曜だって火曜だってパーティーをすることだって出来る。だからチューリッヒでは、週7日24時間、いつでも遊びに行くことが可能で、アフターアワーズ系のパーティーにもいいのが揃ってたりするんだ。例えば人気のあるアフター系のパーティーの一つに"Spiral Galaxy"っていうのがあるんだけど、ここは日曜の朝4時からスタートして、月曜日のお昼に終わるって感じ。すごいだろ。

TW : 特にドイツのラブ・パレードやノルウエイのサマー・パレードとかがなくなってしまった今、ヨーロッパのシーンにおいて、スイスのストリート・パレードの役目が重要になってきたって聞いたんだけど…。ストリート・パレードってどんな感じなの?

RT : 主にはパレード自体が中心になるんだけど、それが大体お昼の3時くらいからスタートするんだ。僕が初めてストリート・パレードに行った時は、まだたった3台しか山車(だし = フロートとも言われるステージ)が出ていなかったんだけど、最近だと20台くらいが出るようになってね。去年は100万人の人手があったらしいよ。まぁ、とにかく1週間全てが一つのビッグ・パーティーみたいなもので、チューリッヒの街全体がパーティー一色になるって感じかな。

TW : あの山車って、それぞれのクラブごとが出してるって感じなの?

RT : 基本的にはクラブだけが山車を出すことが許されているんだけど、あと雑誌なんかの連中も出したりしてるよ。

TW : チューリッヒ全体がパーティーになっちゃうの?

RT : うん、街全体がね。パレードは湖の片方の端から始まって、そこから湖をぐるっと回って反対側の端まで辿り着く感じで、3時から8時まで5時間かけて練り歩くんだ。あと、チューリッヒの街中にあるほとんどのバーも毎日音楽を流しているよ。

TW : セントラル・ステーションの界隈が大きなパーティーがあって、その周りが全てダンス・フロアみたいになってるって聞いたことがあるんだけど…。

RT : そう、そう。大きなパーティーは4つあって、一つがその駅の周りでやっているやつ。あと、もう一つがメイン・スタジアムで行われている"The Energy"で、残りの二つが Club QとOxaというクラブで行われているやつなんだ。とにかくこの4つは大きくて例えば"The Energy"なんて5万人くらいのお客さんが来るし、駅でやっているパーティーには5千から1万の人が参加している。ほんとスゴイから一度見たほうがいいと思うよ。

TW :ラブ・パレードは、あまりにコマーシャルになりすぎたので壁にぶち当たったと言われてるけど、スイスのストリート・パレードにもそういった要素は見られるのかな?

RT : 少しはあるかもね。だって、大きなことっていうのは、お金が動くってことでしょ。大きなものには金儲けのチャンスがある…それはスイスだって一緒さ。

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TW : 人がたくさん来れば、スポンサーも来るって感じで…

RT : 実は、ストリート・パレードでは、クラブの宣伝は禁止されてるんだ。だからフライヤーも渡せない。ただ山車が出せるってだけなんだ。

TW : じゃあ、まだストリート・パレードは健全なのかな?それほどコマーシャルじゃなくて…

RT : いや、僕にとってはそうでもないかな。正直に言うと、去年のパレードには僕は行かなかったんだ。1回目から欠かさず参加していたんだけど、人も余りに多いし、特に真新しいものもなかったし…。いずれにしても、ここ数年のうちには、このブームも過ぎ去ってしまうと思うよ。

TW : DJブース周りのニュー・テクノロジーについてだけど、Final Scratch や Tracktor、CDJ とかが今の流れになってるよね。どんな機材を使ってるの?

RT : ターンテーブルはテクニクスで、CDJ はパイオニアだよ。でも、エフェクトをかけたりするために、他の機材を使ったりはしないんだ。余り興味がないからね。

TW : じゃ、今出てきているような新しいものは余り…?

RT : 将来的には使うかもしれないけど、今のところは CDJ とターンテーブルで充分って感じさ。

TW : 昨年、12インチをリリースしてたけど、今後は制作の方にもっと力を入れていくの?

RT : もちろんさ。いつでも新しいものを出していくのはチャレンジだし、これからもトライしていくつもりだよ。今のところ2枚のリリースが予定されていて、New Camel Music からもうすぐ"Surely"という作品が出ることになっている。あと今、Yoshitoshi とのディールも進めているよ。

TW : 最近、トライバル系の新作がたくさん出ていて、スペインとかポルトガルといった国から大勢のアーティストも出てきてるよね。次はどの辺りが来ると思う?

RT : DJとしてシーンを見ると、いい作品が出ているといえば出ているし、この(トライバルという)大きなムーブメントは、僕自身の一部分でもあったりする。でも、正直に言ってしまうと、多かれ少なかれどの曲も同じに聴こえてしまうし、最近ではちょっと退屈な音楽に思えてきたんだ。だから、今は何かほかの大きなことにチャレンジしてみようかなって感じかな。確かにトライバル・ムーブメントは相変らず僕のスタイルなんだけど、ちょっとトゥー・マッチになってしまったんだよね。最初はすごく新しく感じたし、今でもクオリティの高い作品はあるんだけど…。

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TW : 俺たちのやっている音楽のスタイルは、しっかりとしたルーツを持ちながらも、常に変化しているよね。だから、特に大きなブームも起きなかったし…。

RT : でもスイスでは大きなブームになったことがあるよ。

TW : ほんと?

RT : うん、スイスではブームだったんだ。2年前くらいに始まったんだけど、いろんなDJたちがこのサウンドを取り入れ始めて…。中には僕みたいにそれを変化させていった人間もいたけど、結局はあれはいわゆるブームだったんだと思うよ。

TW : 俺たちのやってるパーティー"Session"のコンセプトは、東京にプログレッシブ・ハウスとトライバル・ハウスのサウンドを確立するってものなんだけど、Robert にとってプログレッシブやトライバルってどんなものなのかな?例えば、東京にはたくさんのプログレ系のパーティーがあるよね。でも、俺たちは自分たちのパーティーをプログレ系とは呼びたくないんだ。だって、プログレの意味はあまりに広いし、みんな同じようなレコードをプレイするけど、全く同じレコードを買っているわけじゃないでしょ。俺は、どちらかというとアメリカ寄りのトライバルだし、Ohnishi は Nukem っぽい曲をプレイするし、Yoshi のはダークなトライバルで、プログレ系もプレイする。要は自分たちが好きなものが「プログレ」って感じなんだけど…。

RT : その通りだと思うよ。ハウスでもなくてテクノでもなくてディープハウスでもない…それらの長所が全て混ざった形がプログレッシブなんだと思う。ハウスであってハウスでない。むしろ、より強力なハウスとでも言うべきかな。しかも、トライバルの要素も混ざっているし…。まぁ、いずれにしても上手く説明するのは難しいな。「これこれの要素があったらプログレッシブ」なんてことは言えないしね。

TW : だから面白いんだよね、このサウンドは。例えば BPM140 のテクノ系レコードでも、ピッチを130とか128に落としてしまえば俺だってプレイできるわけだし…。

RT : そうだね。確かにプログレって表現できる音楽でも、テッキーだったりハウシーだったりトライバルだったり…。いろいろあるけど、プログレという大きなカテゴリーにくくることが出来るし。まぁ、ちょっと特別なのかもね、この音楽は。

End of the interview

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