HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Plump DJs Interview

Adam Freeland、Hybrid、そしてRennie Pilgrimなどと並んで、現在のブレイクス・シーンの世界的盛り上がりに大きな貢献を果たしてきたPlump DJs。99年の衝撃的なデビュー作品"Electric Disco"以来、ブレイクス最重要レーベルの一つであるFinger Lickin Recordsと活動を共にしてきた彼らは、シーンの成長に呼応するというよりはむしろ、シーンの成長を自ら促す事で、この数年で一気にスターダムの中心へと躍り出てきた存在だと言えるだろう。

先日イギリスで行われたOrbitalのラストライブでは、Orbitalの方から依頼を受ける形でその栄えあるステージに立ち、21世紀のダンスシーンを担うべき存在としてバトンタッチを受ける事たばかりの彼らが、大爆笑のジョークを交えながら、とてもフレンドリーにHigherFrequencyのインタビューに応えてくれた。

> Interview : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Photo : Ollie Beeston _ Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

triangle

HigherFrequency (HRFQ) : 前回の来日から随分と経ちますが、お元気でしたか?

Lee Rous : ホントに月日の流れが速くて、色んな事があったね。でも、あれはすごく良いフェスティバルだったな。Fuji Rockだったっけ。本当に楽しかったよ。

HRFQ : 前回のプレイ(Fuji Rock)では随分お疲れだったと思いますが・・・

Andy Gardner : あの時は、飛行機に乗ってから二日目の日で、前の日からのハングオーバーもあったしね。それに時差ぼけの中、日本のフェスティバルに参加する・・・全てがちょっと浮世離れしていたかもしれないね(笑)。

HRFQ : 日本のクラブでプレイされるのは、今回が実質的に初めてですよね?

Lee Rous : うん、昨日の夜が初めてだったんだ。大阪のクラブでプレイしてきたんだけど、本当に素晴らしかったね。おそらく7〜800人くらいの人が集まっていて、聞くところによると過去最高の集客だったみたいで、とても名誉な気分だったよ。あと、お客さんの反応もすごく良かったしね。

Andy : Triangleって名前のキャパが500人くらいの小さなクラブで、超満員状態だったけど、とても良いヴァイブが生まれていたよ。でも、今日のWOMBはスゴク楽しみにしていたんだ。本当に色んな人から評判を聞いていたからね。

HRFQ : どんな噂ですか?

Lee : Soul Of ManやStereo 8と言ったFingerlickin'の仲間達がここへ来た事があるんだけど、とても楽しかったみたいで、本当に悪い噂は一つも聞かなかったんだ。

Plump DJs Interview

HRFQ : 実は、Radio 1のショウでお二人のHomelandsフェスティバルでのプレイを聞く機会があったんですが、あのフェスティバルでのパフォーマンスはどんな感じでしたか?

Andy : このフェスティバルはイギリスで行われているものなんだけど、サマーシーズンの先頭を切るフェスティバルと言う事もあって、全体的に「太陽が来たぞ〜」って雰囲気に包まれているものなんだ。でも、プレイをしたのが2時間だったのに、実際にオンエアーされたのが1時間だけというのには、ちょっとムッとしているんだよね。放送で使われたのは、最後の1時間だけで、その前の1時間半ほどにプレイした内容はオンエアーされなかったんだ。だから、リスナーには途中からいきなり始まった感じもしただろうし、全部聞きたいと思っている人にとっては、ちょっと面白くない内容だったんじゃないかなと思う。まぁ、悪くはなかったけどね。

Lee : プログラム自体もちょっと変だったんだよね。僕らの前には、Terry FrancisとLee Burridgeがプレイしていて、どちらかと言うとディープなテックハウスを中心にした、ドリーミーな感じのセットを回していたんだ。で、そこへ持ってきて、いきなりブレイクビーツが始まっちゃって、おまけにPete Tongが出てきて"You're live on Radio One with the Plump DJs!!"なんて絶叫するものだから、音楽的な流れとしてはうまく行ってなかったかもしれないね。

HRFQ : イギリスのお客さんの雰囲気はどうですか?

Lee : 場所によりけりかな。僕らのスタイルが流行に乗っている事もあって、最近では大きなハウス系のクラブでプレイする事も多くなっているんだけど、そういうところでは、時々お客さんがブレイクビーツに慣れていない事もあったりして、ちょっと無難な選曲をしないといけなかったりするんだよね。本当のブレイクス系のヘッズが集まっているようなクラブでは、アンダーグラウンドなブレイクスをプレイしているから、ちょっと変な感じがする事もあるかな。

Andy : まぁ、日に日にシーンは成長しているようには見えるけどね。最近では、多くの人気ハウスDJもブレイクビーツをプレイするようになったし、お客さんの数も日増しに増えていっているし。最近、友達がSashaを見に行ったんだけど、彼のセットも80%くらいがブレイクビーツだったらしいしね。

Plump DJs Interview

HRFQ : このスタイルのパイオニアとして、こんな風にビッグなハウスDJ達がブレイクスをプレイするようになった事についてはどう感じていますか?

And and Lee : クールって感じだね(笑)

Lee : ハウスシーンに関して言うと、枝分かれがどんどん進んでいて、単にブレイクスへと伸びているだけじゃなく、他の色んなタイプのハウスミュージックにもその枝先は向いていると思う。みんな様々なスタイルのハウスミュージックを自分のプレイに取り込もうとしているし、まぁ、最近ではあまりに細分化が進みすぎて、多少は停滞気味かもしれないけど、それでも2 Many DJsみたいな奴らが現れたりしているからね。彼らはホントにたくさんのスタイルの音楽をプレイする事で高い評価を獲得していて、そのプレイを耳にした人は、自分のプレイセットもちょっと変えたくなってしまうと言うくらいなんだ。

HRFQ : 最近、イギリスでのOrbitalのラスト・ライブをサポートしましたよね。実際、如何でしたか?また、彼らの解散についてはどう思われましたか?

Andy : 本当に残念だったよ。だってOrbitalって伝説的な存在でしょ?でも、彼らのライブの後、午前3時くらいまで僕らがプレイをしたんだけど、最後にはPaul (Hartnoll) が僕らのところに来てハグしてくれてね。だから、あれは本当に素晴らしい経験だったと思うよ。最後に僕らがOrbitalの曲をかけた時には、フロアにいる全員が狂喜乱舞していたしね。

Lee : とても名誉な事だったよ。彼らもとても良い人達だったし。それに彼らの方から「一緒にプレイをしてくれないか」と頼まれたんだからね。これは、僕らにとって大きな意味を持つことだったよ。

Andy : 僕は彼らが戻ってくると思うね。

Lee : そうだね。何らかの形で戻ってくるかもね。ボクサーが引退する時もそんな感じでしょ(笑)。

HRFQ : 二人のDJブースのセットアップについて教えてもらっても良いですか?バック・トゥ・バックでプレイされているんですか?

Andy : まぁ、平均すると3枚ずつプレイしている事になるかな。でも、バック・トゥ・バックって訳じゃないし、今までそのスタイルでやった事もないんだ。どちらかの調子が良くて、「プレイしたいレコードが一杯ある」と思っている時は、もう一人はしばらく後でおとなしくしているって感じで、極めて民主的にやっているよ。

Lee : そうだね、3枚ずつって感じだね。一人がプレイしている時は、もう一人が腕を振り回しているって感じで・・・(笑)。でも、これが選曲と言う面で、意外とうまくいっているんだよね。ブレイクビーツのシーンにはたくさんのスターアーティストがいるし、2、3曲ごとに曲の方向性を自然に変えていけるこのスタイルは、その中で僕らをある種ユニークな存在として際立たしている部分でもあると思うんだ。

Plump DJs Interview

HRFQ : その方向性を変える時に、お互いが交わすようなサインみたいなものってあったりするんですか?

Andy : 二人でDJをやるようになって、もう随分と経つでしょ。だから、お互いが何をやりたいのか、といったことが何となく共通の認識として理解できているところがあるんだ。もちろん、時にはそれぞれが良いと思っているものに関して意見が合わない事もあるんだけど、全体的にはうまくいっていると言えるだろうね。

HRFQ : 音楽制作の方は如何ですか?作業する時は、半々の役割で進めているんですか?

Lee : Andyがソーホーにスタジオを持っていて、そこで全部の作業をやっているんだ。

Andy : そうだね。曲は常に二人で制作しているし、一緒にスタジオに入って、全て一緒にプロデュースしている感じかな。技術的なことは僕の方が担当なんだけど、何を残して何を捨てるか、アレンジやトラックの聞こえ方などと言ったことについてはいつも二人で決めているんだ。

HRFQ : たくさんのリミックスのオファーを受けられていますが、仕事を受ける時には、どのような事が条件になりますか?

Andy : もちろん、僕らがとても気に入ったものじゃないとダメだよね。まずはそれが一番だと思う。あと、僕らのスタイルとは違っていることかな。そう言った曲では、いつもと違ったことが出来るし、あんまり自分のスタイルと似かよっていると、殆ど何もする事がなくなってしまうからね。実は、Future Sound Of Londonの"Papua New Guinea"を断ったのも、まさにそれが理由だったんだ。だって、あの曲は完全なるクラッシック・チューンでしょ。あまりに神聖で、触れてはいけないものも幾つかあるからね。

Lee : 逆に、同じ古い曲のリミックスでも、Stakker Humanoidの"Humanoid"みたいな場合もあるんだ。この曲は、僕らがもっと若かった頃によく聞いていた曲なんだけど、リミックスを依頼される事になってね。で、その時に思ったのが「オリジナル・トラックにもエネルギーは充分に感じられるんだけど、ドラムの音を上げたり、幾つかの変更を加える必要があるな」って事だったんだ。だからこの仕事は引き受けた。あと、Electronautsの"Bumper"のリミックスは面白い仕事だったね。あの曲は、僕らにとってリミックスを依頼された最初の曲のひとつだったし、ほんの僅かな部分ではあったんだけど、すごくキャッチーなボーカル・パートを見つけることが出来たから、すごくやる気になったのを覚えているよ。

HRFQ : 最近、何か面白いリミックスとかを手がけられましたか??

Andy : Freestylersの"Push UP"は、原曲が良かったこともあって、とてもいいリミックスになったと思うよ。あの曲は、すごくポップな曲ではあるんだけど、ボーカルとアレンジがすごく良いんだ。あとは、Rennie Pilgrimの曲をリミックスしたばかりかな。でも、今はリミックスより、もっと自分達の作品に力を入れようと考えているんだ。今までのところ、6〜7曲のPlump DJsとしての曲が完成していて、今年の8月か9月には"The Soul Vibrates"って曲を、日本での経験にインスパイアされて作った"Bullet Train"という曲とカップリングでリリースする事になっている。あと、クリスマス前にも別のリリースが予定されていて、最近しょっちゅうプレイしてる"The Pressure"って曲や、"Space Base"という曲なんかもラインアップとして予定されているかな。やっぱり、自分たちの曲がたくさんあるって言うのは良いことで、その分、僕らのDJセットも個性的なものになるからね。

Plump DJs Interview

HRFQ : ミックスCDについての予定は何かありますか?

Andy : 来年の2月か3月の頭には、何らかの形のコンピレーションを出したいと思っている。で、その後の流れを見ながら、更に翌年には次のオリジナル・アルバムをリリースする事になるだろうね。まぁ、いろんな人から僕らのこれからの活動や、ブレイクビーツの将来について聞かれるのも悪くはないんだけど、やっぱり今起こっている事を楽しむことの方が僕らにとって大切な事だからね。

HRFQ : 以前、ブレイクビーツがメインストリームへと進出している、と発言されていた事がありますが、このシーンのこれからについてはどう思われますか?

Andy : ハウスのようには決して大きくはならないと思うよ。やっぱり、みんなが「ドン・ドン・ドン・ドン」が好きなのはごく自然な事だからね。でも、すごく良い感じで盛り上がってきているのは間違いないんじゃないかな。4〜5年前にも、僕らとしては一気にブレイクするんじゃないかと思っていたんだけど、その時は僕らが予想していたほどには盛り上がらなかったし、イギリスですらそんな感じだったんだ。でも今では、本当に熱心なファンが増えてきたし、オーストラリアやスペインでは特に熱狂的なハードコアなファンがたくさんいるからね。

Lee : あと、ブレイクビーツ・シーンの良いところは、ファッション先行型のシーンではないって事かな。みんなが音楽が好きだから関わっているシーンだし、それは僕たちみたいなDJやプロデューサーにとっては、ある種の天国みたいな環境だと言えるんだ。それに、僕らはそんなにファッショナブルでもないしね(笑)。

HRFQ : 5年前に、Finger Lickin' Recordsがこれ程までに大きくなると想像できましたか?

Andy : 僕はそれ以前に、Fresca NovaというFinger Lickin'のサブレーベルみたいなところで作品を作っていたから、実際に彼らと仕事をする事になった理由も、彼らが将来的に大きな会社になるだろうといった期待があったからではないんだ。ただ「僕らの音楽を気に入ってくれてラッキー」って感じで、レーベルがこれからどうなっていくのかなんて事は考えもしなかったね。

Lee : 僕らは単に音楽を作っていただけだし、それを世に出すための乗り物が欲しいと思っていただけなんだ。で、最初に僕らの音楽を取り上げてくれた人達と本当に良い関係を作る事が出来て、レーベルに所属しているStereo 8、Lee Coombs、Krafty Kuts、Soul Of Manと言った他のアーティストとも、とても良い友達になれたと言うわけさ。その意味で、僕らはとても素晴らしい状況に立っているんだろうね。

HRFQ : 日本のファンに何かメッセージはありますか?

Andy : もし、ブレイクスのシーンにはまってくれているんだったら、「ARIGATO」と言いたいな。地球の反対側に来て、そこで自分達の音楽を好きになってくれている人に出会うというのは、とても素晴らしくて特別な事だからね。

Lee : 色々と有難う!今までのところ、本当に素晴らしい経験をさせてもらっているよ。これは僕らにとって多くを意味する事で、文化が異なっていても、音楽でそのギャップを埋められるって事を意味しているわけだからね。

End of the interview

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