HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Misstress Barbara Interview

イタリア生まれのDJ/プロデューサーであるMisstress Barbara。8歳の時に移住したカナダに現在も住み、自らのレーベル"Iturnem" (元々Relentlessという名前であったが、2003年に変更)のオーナーとしても活躍する彼女が、今回嬉しい東京・大阪・名古屋を巡る始めてのジャパンツアーを実現してくれる事になった。

カナダのみならず世界各地でその才能を高く評価され、世界を飛び回るこのスーパーDJに、Higher Frequencyがインタビューを行い、今までなかなか伝わる事のなかった彼女の生の声に迫ってみた。

> Interview : Laura Brown (Arctokyo) / Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

triangle

HigherFrequency (HRFQ) : 今回が初来日になりますが、日本の文化や音楽シーンについてはどのような印象を持っていますか?

Misstress Barbara : そう、日本に行くのは今回が初めてだから、今からとても楽しみにしているわ。今まで私が聞いてきた話から感じている日本のクラバー達の印象は、みんなとてもハッピーで、目をこらしてDJを見つめながら、楽しそうに騒いだり体を動かしたりしているってもの。本当に良い話ばかり聞かされているから、すごく期待もしているわ。勿論、今まで日本に行った事がないから、実際にどんな感じのシーンで、みんなどんな音楽が好きなのか、詳しい事はわからないけど、かつては世界の中でも最もテクノの人気が高い国の一つだったと聞いたことがあるわ。今は、トランスが流行っているらしいけど・・・。まぁ、私のサウンドはトランスの好きな人向けではないかもしれないけど、私の最高のテクノビートでチャレンジしようと思っているわ。

HRFQ : 元々ドラマーでしたよね。DJはいつ頃から、どういったきっかけで始めるようになったのですか?

Barbara : ドラマーをやめてDJを始めたのは1996年よ。94〜5年頃に色んなパーティーやクラブで遊んでいたのだけど、そうしている内にDJというものの虜になって。で、その気持ちが他の何よりも強くなってしまったので、DJになる事を決めたの。今では、本当にそうして良かったと思っているわ。

HRFQ : 一番大きな影響を受けた人は?

Barbara :エレクトロミュージック系のアーティストではないんだけど、マドンナやジョージ・マイケル、スティービー・ワンダー、ビートルズ、シャーデー。あと、Masters At WorkやMood II SwingやIan Pooleyなんかからも影響を受けたわ。

HRFQ : あなたの仲間のJohn AcquavivaやRichie Hawtinと言った人達は、最近ではFinal Scratchのスポークスマンとして活躍していますが、あなた自身こういったDJ用の新しいテクノロジーを使ったりしていますか?

Barbara : 2001年の12月に、最初のFinal Scratch Proバージョンが出た時に1台買ったけど、Final ScratchがテクノDJにとってベストなツールだとは思えなかったから、今まで実際に使ったことはないの。だって、あのソフトを使うとパソコンの画面を見ている時間がどうしても長くなって、その分、プレイが単調でエネルギーに乏しいものになってしまいがちでしょ。それにお客さんの側から見ても、DJがずっと同じところを見ていて、レコードを一切変えないっていうのも、動きが少なくて結果的にDJのプレイから余りエネルギーを感じられなくなってしまうと思うの。私はもっと動きたいし、汗をかきたいし・・・だからFinal Scratchはプロパーなテクノセットにはあまり向いているとは思わないわ。それに、Jeff Millsがファイナルスクラッチでプレイしているのを見たことある?でも、ハウスやトランスだと話は別ね。どっちにしても1曲7〜8分ペースでミックスしていくわけだし。勿論、Final Scratch自体が巣晴らしい技術である事は認めるし、ここでバッシングするつもりはないの。私自身1台持っているし、ハウスのセットをやる時にはいつか使うときがくるかもしれないしね。でも、テクノって言う点では、絶対に使うことはないわ。

HRFQ : 今はモントリオールに住んでいますよね。シーンはどんな感じですか?

Barbara : もちろんヨーロッパみたいには進んでいないわ。もう何年もシーンがあるのに、いまだに日常の文化として成立していないって事は、残念ながら恐らくこれからもその状況は変わることはないって事でしょうね。それに、北米の一般的な人達にとっては、エレクトロニック・ミュージックは単に騒いでパーティーをする為のもので、ヨーロッパみたいに生活の一部として溶け込んでいるって感じじゃないの。例えばヨーロッパだと、良いエレクトロニック・ミュージックが火曜日の夜に聞けるような小さな場所があったりするでしょ。でも、ここでは音楽を楽しむって言うよりは、パーティーをするのが全てって感じ。こんなダメな状況がもう何年も続いていて、一向に変わる気配がしないのよね。もちろん、楽しい時もあれば、良いパーティーがある時もあるけど、それでも全てはヨーロッパの半分以下だと思うわ。ヨーロッパでは、みんなエレクトロニック・ミュージックに対しての知識をたくさん持っているし、日々の生活に溶け込んでいる感じでしょ。でも、ここではそうじゃないの。

HRFQ : 今、カナダで一番調子の良い新人は誰だと思いますか?

Barbara : Tigaが最近ホットだって聞いたわ。あと、Preachはとても良いプロデューサーね。彼は私のレーベル"ITURNEM"からも何枚か作品をリリースしているし、これからも彼の作品の出し続けていくつもりよ。

HRFQ : 今どこかでレジデントを持っていますか?

Barbara : 今までどこのレジデントも受けた事がないの。私にとってレジデントDJの仕事って言うのはちょっと息が詰まる感じがして・・・。一年のうちに何回も同じところへ戻らなければならないって言うのに、どうも上手く対処する事が出来ないのよね。どちらかと言うと、人に言われて同じ場所で何度もプレイするよりは、自分の意思でそうしたいって感じかしら。世界は広いし、私自身も忙しいでしょ。それに、1年に土曜日は52回しかないけど、世界に行くべき場所は52以上絶対にあるはずだし。だから、レジデントの仕事を引き受けているような時間があまりないのよね。ただ、「定期的」って意味では、スペインのトップ・クラブFlorida 135や、オランダのAwakeningsパーティーや、あと、イギリスのGodskitchenなどでプレイしているわ。

HRFQ : 最近の制作活動はどんな感じですか?

Barbara : いつもツアーに出ていると、なかなか制作の時間が取れないのが実情ね。でも、丁度ITURNEMから私自身の新しいEPをリリースしたところなの。"In Da Mooda Da Nite"と"Glorida Grande"という作品で、今のところプレスの反応もセールスも好調よ。それ以外は、他のアーティストのリリースはあっても、私自身の作品についての予定は特にないわ。でも、9月には1ヶ月の休みをとって、スタジオに篭ろうと思っているから、今年の年末にかけてはもっとたくさんの作品が出てくる事になるでしょうね。あと、リミックスで言うと、イギリスのアーティスト Ignition Technicianの作品を手がけたわ。

HRFQ : あなたのレーベルは元々Relentlessという名前でしたけど、最近Iturnemという名前に変えましたよね。何があったのですか?あと、レーベル名を変えて、サウンドに何か変化がありましたか?

Barbara : Ministry Of Soundが"Relentless"という名前のハウスレーベルを持っていることに気付いたのが2年ほど前のこと。当時、このレーベルの事は殆ど誰にも知られていなくて、"Relentless"と言えば私のレーベルと言うことでみんなの間では通っていたんだけど、元々最初にあったのはあっちの方だったから、こちらが変更せざるを得なくなってしまったの。で、名前をITURNEMに変えることにしたんだけど、実はこれは"I Turn Them"の言葉遊びになっていて、その面では充分に楽しませてもらったわ。あと、私のアーティスト名も、普通の"S"が3つのMistressではなくて"Misstress"にしているんだけど、これもMissとStressを掛けた言葉遊びなのよ。レーベル名は変わったけど、サウンド面に関しては何も変わっていなくて、デザインすら前のままよ。

HRFQ : レーベルではどんな感じのサウンドやアーティストにフォーカスしているんですか?最近誰か新人と契約しましたか?

Barbara : Preachと契約した後は、誰とも契約していないわ。でも今、東欧出身のあるアーティストと契約しようと考えているの。名前はまだ言えないけど。あと、スエーデン出身の新人もいるかしら。サウンド面で言うと、グルービーでファンキーなテクノ・サウンドにいつもフォーカスを絞っていて、実際に自分がプレイするような音としか契約しないから、自然と私の好きなエネルギッシュな感じのサウンドが中心になっていると思うわ。

HRFQ : これから数年、テクノの未来はどうなっていくと思いますか?

Barbara : 上手く言い表すのはとても難しいわ。色んな人が、テクノはあまり人気のあるサウンドじゃないって言っているかもしれないけど、最近では多くのトランス系のDJがテクノを前よりプレイするようになっているし、幾分戻ってきている感じはあるんじゃないかしら。でも、一つだけハッキリしているのは、完全に無くなってしまうものは何もないって事。音楽には必ずサイクルがあって、全ていつかは戻ってくるものよ。

HRFQ : 日本では、女性DJの数が余り多くなくて、それは日本人DJの数と言う意味でも、海外から来日する女性DJの数という意味でもそうなんです。だから、本当にシリアスな女性DJがこうやって来日するってことは、日本のオーディエンスにとってもスゴク大切な事だと思うんですが、女性であるって事で何か表面的な部分で区別されたような事はありますか?

Barbara : 残念な事に、来日ツアーのオファーを受けて以来、今まで感じた事のなかったような違いを感じているのは事実だわ。実際これ程までに「女性である」って事を指摘された経験も始めてだし、これはチョッと残念な事かもしれない。だって、音楽に性別は関係ないはずだし、身体的な強さが求められるような建設現場での仕事ならともかく、音楽をプレイする話でしょ。大切なのはセンスであって、男女の違いがどうしていつも指摘されるのか、本当によくわからないの。男性の方が女性よりセンスが良いって事?そうじゃないでしょ。だから、性差をとやかく言う事には大反対なの。時々、女性だけのパーティーで回してくれって頼まれる事もあるんだけど、いつも答えはノーよ。性差の違いを意識したメンタリティーをサポートするつもりは全くないわ。

HRFQ : 頑張っている女性DJに何かアドバイスはありますか?

Barbara : 女性DJだろうと男性DJだろうと、自分の好きなものを信じて、フォーカスしたものに対して一生懸命働く事。あなたの信じる力が大きければ大きいほど、周りの人はあなたの言う事を信用するようになるわ。

HRFQ : あなたの来日ツアーを見た後、あなたにデモテープを渡したいと思う日本人プロデューサーがきっと居るはずだと思います。実際にはどうするのが一番良い方法ですか?

Barbara : 日本から出ている作品に好きなものが多いから、それはとても良いニュースね。一番良い方法は、私の私書箱に送ってもらうことなんだけど、ITURNEMのサイトに行ってレーベルマネージャーにメールを送れば、デモを送るための住所を教えてくれると思うわ。

HRFQ : 最後に日本のファンに何かメッセージを。

Barbara : マドンナが言ったみたいに、「音楽は人を結びつける」って事!これは真実ね。あと、日本でのプレイをとても楽しみにしているし、早く日本と言う国を知って、みんなの顔や目を見てみたいものだわ。日本で会いましょう!

End of the interview

triangle

Misstress Barbara Japan Tour

8/20 (Fri) Tokyo @ Womb (Hosted by Resonant Recordings)
8/21 (Sat) Osaka @ Underlounge
8/22 (Sun) Nagoya @ Mago


関連記事


関連リンク