HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Miss Kittin Interview


Felix Da Housecat が生み出したエレクトロ・アンセム 'Silver Screen Shower Scene' へのヴォーカル参加や、フランスの奇才 The Hacker とのコラボレーションで生み出した名曲の数々でも知られる、エレクトロ・シーンの代表的なディーヴァ Miss Kittin。先日 WOMB で行われた来日公演では、マイクを片手に DJ をしながら歌声を聴かせるという独自のスタイルでオーディエンスを大いに湧かせたことも記憶に新しい。

そんな彼女が WOMB の控え室で出番を待ち構えていたところを、HigherFrequency がインタビュー。「いつの間にか DJ が仕事になっていた」と本人も語るとおり、誰もが羨むようなシンデレラ・ストーリーを歩んできたかのように見える彼女であるが、実際に話を聞いていみると、その成功の裏には DJ として身を立てようという彼女の強い信念が隠れていたのを感じ取ることができた。

> Interview by Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation by Satoshi Akiyama & Kei Tajima (HigherFrequency) _ Introduction by Yoshiharu Kobayashi (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : ようこそ、日本へ。今回はインタビューの時間を取っていただきありがとうございます。あなたが活動を始めたのはちょうど10年前でしたが…。

Miss Kittin : 実際はそれよりもうちょっと前ね。

HRFQ : DJ として活動するようになって、そして今では Sven Vath や Richie Hawtin のようなアーティストと共にプレイしています。そういった状況に対してどのように感じていますか?

Miss Kittin : いい質問ね。これまで誰もそんな質問聞いてこなかったわ。いつもくだらないことばっかり聞いてくるのよ。そうね、答えは簡単。彼らのことを考えたり、姿を見たりすると、いつも何マイルも運転して彼らのギグを見に行ってた頃のことを思い出すの。これってすごく光栄なことよね。私もそんな状況に自分を重ね合わせてみるべきだと思うの。彼らは私の人生を少し変えたわよね。だから私も他人に同じ様な影響を与えてるはずだと思う。そんなことを常に考えてるわけじゃないけど、彼らに会うたび、私もまだまだだなぁって思ってしまうのよね。もし彼らが同等に私に接してくれたら、嬉しいわ。今までやってきたことが報われた気がするわね。

HRFQ : ただ、あなたも言っていたとおり、今やあなたも彼らの仲間入りをしたわけですよね。きっと同じような影響を与えているはずですよ。

Miss Kittin : そうね。でも彼らはパイオニアだから次元が違うのよ。そう言ってくれてとっても嬉しいけどね。彼らのことを知るほど、なぜ彼らが重要な存在なのかが分かるの。彼らと知り合えて、本当に嬉しいわ。

HRFQ : あなたがそういった DJ を見に、遠くまで運転していた頃は、レイヴ・シーンの真っ只中でしたね。現在のシーンは以前と比べてどのように変化しましたか?

Miss Kittin : 今のシーンは前よりもっと断片的になったと思う。私は、最初にハウスがかかって、朝方にテクノやハードコア、トランスがプレイされるパーティーによく行ってたの。今は大きなレイヴ・パーティーに行っても、ひとつの部屋で夜通し同じ音楽がかかってる。他のブースではハードコア、もう片方はトランスという感じにね。それか、"ジャーマン・ミニマル・ナイト" みたいな感じで、同じ音楽をオールナイトでプレイするクラブに行ったりとか。音楽の多様性がないことには寂しく感じるけどど、その一方で自分のセットでエクレクティックなプレイをする人もいるからね。

ただ、私にとってはすべてが変わったと言えるかもしれないわ。というのも今、私はお客さんではなく、一人の演者になったんだもの。それが大きな変化ね。DJ を職業にするなんて以前は考えてもみなかったから。

HRFQ : どのようにセットに取り込む新しい音楽を探しているのですか?例えば Mute で働いていた時とか?

Miss Kittin : もう Mute では働いてないのよ。正式にきちんと辞めたわけじゃないんだけど、時間がないの。ただすごく近しい関係にはあるから、いい音楽を見つければ教えてあげてる。

HRFQ : じゃあ、彼らはタダでもらえるというわけですね。

Miss Kittin : そういうこと。でもいいのよ。彼らはあんまり私を必要としていないから。私が新しい音楽を探している時は、自分が知っていることを忘れて、出来るだけオープンマインドにするの。たくさん考えることはやめて、どうしてその音楽が自分を感動させているのかを考えてみる。音楽に対してヴァージンの心で接すれば、感動することも多いわよね。なんだか分からないけど、私には特別な音楽テイストがあるみたいなの。どんなスタイルかはっきりとは分からないけど。いろんなスタイルが好きだから。でも同時に、自分が好きな音楽や、興味を奪われるものは瞬時にして分かってしまうの。

HRFQ : 今夜のパーティーは新人アーティストの発掘に力を注いでいる Diesel-U-Music がスポンサーしています。こういった企画に対してはどのような意見をお持ちですか?

Miss Kittin : そうね。Red Bull Academy がやっているようなことはとても素晴らしいことだと思うわ。Coca Cola のような企業が、フェスティバルのスポンサーをしたり、音楽を愛している人たちのために旅客機やホテルに出資することを想像してみて?私は素晴しいと思うわ。自分の音楽を世間に広める方法ってたくさんあると思うの。例えば、インターネットとか。それに、忘れられてしまった方法もたくさんわよね。本当にオーディションが役に立つかって? 私は、こういったことを通して、自分のすることに信念を持てるようになればいいと思う。オーディションがレコード会社との契約に直結するとは思えない。ただ、大事なのは、いろんな人に会って、レーベルにあってデモを渡してっていう作業をこなせるほどの信念を持つということ。自分のやりたいことのために戦っていくためにも、すごく大事な部分よ。

Miss Kittin Interview

HRFQ : あなたの場合、そういった戦いを始めるのはどのくらい難しかったですか?

Miss Kittin : それが不思議なの。私はこの仕事をしようとは思っていなかったから、まったく戦ったことがなかった。むしろ正反対だったのよ。私の場合ある人に「君は音楽をやりなよ」って言われたことがきっかけだったから、それまでそんなこと全く考えてなかったの。私の両親でさえもね。私はある意味、とても世間知らずだったし。何かを期待しているわけじゃないけど、すごく熱心だった。私は音楽が大好きだから、常にパーティーに行く機会があって、色んな人たちに会っていたわ。DJ を始めたばかりで、まだどこからもブッキングされることを期待していなかった頃は、ただおもしろ半分にレコード買ってたの。そうしたら友達が「DJ してみなよ」って言うから、始めたら上手くいって、そしてある日、いつの間にか 自分が DJ をして生活を立ててるって気付いたのよ。私は何も期待していなかった。有名になることも歌を歌うことも。ただ楽しいからやってきたの。その他のことは、すべてボーナスみたいに付いてきただけ。

HRFQ : まるで夢の世界ですね。

Miss Kittin : ただ、それが簡単だったって思われるから不思議よね。ここまでの道のりは少しも簡単なものじゃなかったわ。学生だったけど、働かなければいけなかったし、両親と喧嘩したり、色んなくだらないものにも対処しなければいけなかったしね。ただ単に座っていて、友達に「DJ しなよ」と言われてここまで来たんじゃない。私が最初にプレイした頃はお金なんてもらえなかったのよ。しかも、いいクラブでプレイするためには、男の子の DJ と常に争わなきゃいけなかった。だから、ちっとも簡単じゃなかった。とっても厳しかった。DJ が大好きだったから、上手くやりたかった。だから成功したのよ。私は甘やかされたガキじゃないの。この事に関しては真面目だったのよ。

HRFQ : そういった経験から得たものは、あなたの音楽にも表れていますね。

Miss Kittin : 自分が感じたことを行動に示さないのは気分が悪いわ。とてもシンプルなことよね。だから、もし私が自分に対して嘘をついたり、歌ったりしたら、気分は最悪。プレイしていて、機嫌が悪いって気付いたときはあんまりいい気がしないわよね。だって、機嫌が悪くなっている場合じゃないんだもの。私はパーティーに音楽を提供するべき女の子なのよ。自分には常に正直でいなきゃね。ある人は私のことを反抗的で、アグレッシヴなディーヴァだって言うわ。でも、私はただ自分自身に正直なだけなの。実際多くの人が気分を害されてるかもしれないけど、それはその人たちのためなのよ。

HRFQ : あなたは Felix Da Housecat の 'Silver Screen Shower Scene' でヴォーカルを務めました。最近ではプレイの際にも歌っていますよね。ヴォーカルはダンス・ミュージックにおいて重要だと思われますか?

Miss Kittin : ヴォーカルを入れると決めた当時は、そう思ってたわ。だって、ハウス・ミュージック以外に何もなかったんだもの。歌詞を書くのは楽しいし、大好きだけど、歌詞に関しては完璧主義ではないわ。時には何も歌詞をつけないほうがいい曲もあるしね。見たところ、みんな私の歌詞が好きだからそれは重要みたい。素敵なことよね。ポップ・ミュージックを聴いてても、誰も歌詞なんて思い出せないのにメロディーは憶えてる。だから、みんなが私の歌詞が好きって言ってくれることは、すごく素敵なこと。だって、「みんなが歌詞を憶えている」ってことは、歌詞が良いってことでしょ。歌詞を書くことはただ楽しいし、政治的な意味合いではやらないわ。

HRFQ : ただ楽しむためだけに?その背後には何もないと?

Miss Kittin : もちろん、歌詞を書くときは何かしら背後関係が関わってくると思う。自分の書いていることなんて、どこからやってくるか分からないでしょ?ほら、フロイトみたいなものよ。例えば、ソファに座って、くだらない会話をしてたとするわよね。そして10年経ってから「あっ!私が3歳の頃、お母さんも同じ事をしてた!!」って気付くの。過去に自分が何を考えていたかなんて絶対にわからないけど、それを思い出すことってワクワクするでしょ。

HRFQ : なるほど、分かりました。今日は時間をとっていただきありがとうございました。

Miss Kittin : ありがとう。

End of the interview

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