HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

今年2月にソウルにオープンして以来、 Tiesto や Junior Vasquez といったビッグDJを招致し早くも韓国最大のクラブとして君臨している Club Volume。ソウルの中でも外国人が多く住むエリア、イテウォンに位置するスーパー・クラブ Volume。約2000人を収容できる巨大なキャパシティに加え、セレブ感漂う内装、そして大音量ながらに耳が全く疲れないサウンド・システムのクオリティはアジア全体でもトップ・クラスといってよいだろう。

その Club Volume の Executive Producer であり 02productions Ltd. CEO プロモーター、またDJとしても活躍している Min Sup Lee 氏に韓国取材中の HigherFrequency がインタビューを行うことができた。自身のプロモーターとしてのキャリアや Club Volume のスタンス、そして韓国クラブ・シーンの現状や歴史的背景もからめた日本に対しての思いなど、これまで知ってるようで知らなかった貴重な情報も交えて和やかに語ってくれた。

Interview : Masanori Matsuo (HigherFrequency)
Translation : Kou

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HRFQ : どのようにしてプロモーターとしてのキャリアをスタートさせたのかお教えください。

MIN : 最初は音楽が好きでクラブが好きでDJからスタートしたんだけど、一番最初はネームバリューがないとクラブから呼ばれないし、それだったらDJもできるし企画もできるから、自分でプロモーターとしての役割もやりつつ活動し始めて、それでここまでたどり着きました。

HRFQ : どのような目標を持って活動されていらっしゃいますか?

MIN : 今の目標は、韓国にはまだ本当に多くの人が集まって楽しめるような野外イベントとかそういった大きなイベントがないので、やはり昔のように何も考えずに、お金のことも気にせずに入場料を取らずに沢山の人を動員して遊べるようなそういった大きな野外フェスなどを企画したいと思っています。この業界に入ったのもただ単に純粋に音楽が好きで、音楽を聴かせたいし、自分も聴きたいという思いで音楽を始めて、ここまでたどり着いたので、やっぱりそういう原点に戻るには人と人が楽しむ場においてお金を取ることはあまりしたくなくて、もっと自然にそういうお金のことを考えずに楽しく遊びたいなと思っていて、なるべくその原点にたどり着く形で頑張っていきたいと思っています。

HRFQ : これまでも輝かしい実績を残されてきてらっしゃいますが、特に印象に残っているイベントはありますか?

MIN : イベントを一杯やってきて、また沢山見てきて、その中で一つピックアップするのは難しいですが、その中でも一番印象に残っているというか、思い出となっているイベントは初めてイベントしたときのことですね。ストリートのプロモーションにしてもなんにしても全部自分からフライヤー作って、ポスター作って、自分で配って、自分で貼って、当日は自分でDJもやって、そういった中でイベント当日まで何もかもが初めてで、心配にもなりますし、一人で人が来るのかなーなんて夜も眠れずに心配したこともあって、そのときの気持ちが今考えると一番印象に残っているかも知れないですね…。今考えるとあの時は楽しかったですよ。

HRFQ : クラブ Volume の経営もされていらっしゃいますが、どのようなクラブを目指されてますか?

MIN : 最初にクラブをオープンしたときは実は何も考えてなかったんですが、実際にオープンしてみて、最初はどんなお客さんが来るかわからなかったんですが、思ったより20代中盤から30代前半ぐらいの色々な人達が足を運んでくれて、中にはお金を持っている方もいらっしゃったりして、今はクラブをどうして行くかというよりもそういう色々なお客様に対してどういったサービスを提供して、お客様が求める音楽をどうやって提供していけるかを考えています。それとこうやって事務所も構えてクラブを運営する中で、働いているスタッフもそれぞれ好きな音楽があって、もちろん私個人も好きな音楽があるので、そういった音楽も今来てくれているお客様にも聴いて欲しいし、そういった色々な音楽を伝えて、そういった部分でもっと音楽を広めていきたいです。

HRFQ : ちなみに今後取り入れて行きたい音楽や今後招聘したいアーティストのイメージは何かありますか?

MIN : 個人的にはテクノがすごく好きなので、自分勝手な意見かも知れないけれども、個人的にはテクノばっかり流れているクラブになればいいななんて思っていまして、アーティストに関してはたくさんいすぎて難しいですが、Dave Clark、Carl Cox、Umek、Marco Bailey、石野卓球、Q'hey なんかを呼びたいです。

HRFQ : 韓国のダンスミュージックシーンの現状をどのようにとらえてらっしゃいますか?

MIN : 今の韓国のクラブシーンではアンダーグラウンドにあったものがどんどん人気を獲得してきていて、昔の日本みたいな形かな?日本のクラブシーンに近づいていっているような感じですね。大きいクラブもできていって、それぞれのクラブが競い合っているような感じで、それぞれに週末には人も入っていて、クラブシーンが盛り上がってきているという感じなんですけども、少し前、’02年代入って間もない頃はやっている側もクラブが好きでクラブを作っていこうとしている人が大半だったんですが、最近は本当にお金目的でクラブシーンを作っていこうとしている人が多くてそれは残念だと思います。それでも昔は女の人が男に出会いに行って、男の人が女に出会いに行ってという場所だったのが、今は音楽を聴いて遊ぶようなクラブになっていっていて、そういうクラブが増えていっているのは自分にとってはかなり嬉しいことですね。逆にビジネス中心に考えてクラブが増えていくのは自分にとっては少しさびしいことですけどね。

HRFQ : 日本のダンスミュージックシーンに関しては何か印象はお持ちですか?

MIN : 昔は日本の音楽をすごく良く聴いていたんですが、個人的に自分はすごく激しくて過激な音楽が好きなので、日本の音楽は繊細すぎる部分があって、ゆったり聴くにはいいんですが、僕にとってはきれいに作りすぎている部分があって自分はあまり好きではないかもしれません。日本の音楽の繊細な部分が聴きやすくていいと思うんですが、個人的には過激なのが好きなので最近はあまり聴いていません。ボーカルが多すぎるイメージというか、少しかわいく作りすぎというようなイメージがあります。

HRFQ : 日本のダンスミュージックがセルアウトしているというイメージはお持ちですか?

MIN : 音楽的に楽器にしても、ボーカルにしてもきれいさを追及している感じがします。自分の理想としては自分の好きな音楽がかかっているのが理想なんですけれども、そういう意味では日本の音楽はきれい過ぎると感じる部分があります。

HRFQ : 今一番楽しいと感じるのはどのようなときですか?

MIN : 今はほとんどクラブで過ごしている様な生活なので、あえていうならおいしいものを食べにいくことでしょうか?

HRFQ : 今後韓国のアーティストが海外へ出て行く場合に、海外へ行っても韓国が持っている音楽的要素としてここは売りになると思うようなものは何かありますか?

MIN : 基本的には韓国人の文化というのは遊ぶことにすごく集中して思いっきり遊ぶという部分があるんですが、遊ぶことの中心に打楽器があって、そういう原始的な感情から生まれるリズムがあると思います。また韓国という国は侵略されてきた国でもあって、そういった外部から受けるストレスを音楽で表現してしまうとある意味「叫び」になってしまう部分もあると思います。そういった部分が良くも悪くもソウルフルに聴こえてしまうところがあって、個人的にはそういった歴史もあって韓国の音楽的文化をそういう風に作ってしまった部分はあるのかなと感じます。
僕の考えとしては’90年代〜’02年代にインターネットが爆発的に普及したことで海外のサイトへも簡単にアクセスできるようになって海外の文化も身近に感じれるようになったことが韓国の音楽の発展に大きな影響を与えていると思います。

HRFQ : これまで日本はアジアで最初にダンスミュージックに火をつけた国としてアジアを引っ張ってきたような意識もありましたが、最近では韓国を始めそれぞれの国でもダンスミュージックシーンが盛り上がり、ヨーロッパやアメリカから来ているアーティストも日本に来ずに韓国、中国で Gig をおこなって帰るというような状況も生まれていたりと、だいぶ状況は変わってきていますね。そういった現状を韓国にいらっしゃってどのようにとらえていらっしゃいますか?

MIN : 僕の考えでは日本が常に新しいことに挑戦して新しい文化を作っていっていることは確かだと思いますが、韓国人、中国人が日本の方を見ないということには歴史的な背景や教育の影響もあって日本に対する抵抗とか敵対意識は若干あると思います。そういった部分で、わかってはいるけれど日本の文化を素直に取り入れず、結果的にこっそりまねをしているように見えるかもしれませんが、そういった形で発展してきました。ただヨーロッパや西洋人に対してはやはりダンスミュージックという文化が始まったところで、そこから韓国のダンスミュージックの文化も生まれていて、それに対する大きな憧れはあります。それに対して日本に対しては複雑な感情があることから受け入れようとしない、また悪い形で取り入れてしまう部分があると思います。

HRFQ : それでは最後に今後の活動の予定を少し教えてください。

MIN : お店が木曜日から土曜日までの営業なんですが、新しいことを企画しながら常に新しいイベントをどんどん企画していきたいと思っています。いい人に出会って、いい音楽に出会って、自然な形で遊びたい人には是非Club Volume へ遊びに来て欲しいと思います。

End of the interview

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