HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Martin Schulte

ロシア在住のDJ/プロデューサー Martin Schulte こと本名 Marat Shibaev。弱冠21最の彼は、12歳でエレクトロニック・ミュージックに目覚め、14歳には楽曲制作と同時にDJ活動を開始する。近年は主に Deep Minimal / Techno を表現しつつ、独自のテイストに Ambient / Dub を加味した様々なトラックを制作し、これまでにドイツの Stille Macht Taub や、Sinergy- Networks といった名門ネットレーベルを皮切りに、欧州で12inchをリリース。そして昨年には、東京の新鋭レーベル・Lantern より1stアルバムをリリースし、ミニマル・テックハウス/ダブサウンドを展開した。バックグラウンドに大自然を感じさせ、ジャンルの壁を超えた独自の音楽を追求している。

今回待望の2nd アルバムをリリースした彼に、Lantern / Nature Bliss 協力のもとインタビューを決行。それぞれのタイトルイメージの詳細説明やリリースに至った経緯など、彼の純粋な人柄が感じ取れる内容となっている。

Interview & Translation : Yugo Fujii (Nature Bliss)
Introduction : Midori Hayakawa (HigherFrequency)

triangle

-- 大ヒットした前作 "Depth of Soul" と比べ、最新作はよりストイックでディープになった印象ですが、ご自分では何か違いを意識されて制作しましたか?

M.S (Martin Schulte) : "Odysseia" がよりディープに聞こえるのは、主なトラックを、日が短くて夜が長い寒い秋から冬に、夕方から夜にかけて制作したからだと思う。"Depth of Soul" を制作した時は全く逆で、暖かい春から夏にかけて制作したからね。"Depth of Soul" と "Odysseia" は、全く異なるタイプのアルバムと言えるけど、どちらのアルバムにも、僕自身の魂の深み("Depth of Soul")から作られているという共通点があるんだ。

-- アルバムタイトルを "Odysseia" と名付けた理由を教えてください。

M.S : ホメロスの 「オデッセイア」 のように、リスナーが不思議な旅に浸れるように、音で物語を語らせたかったからこのタイトルにしたんだ。"Odysseia" は、僕の想像の中で創られた冒険の、音楽的な叙事詩だね。

-- 本作は宇宙や自然をタイトルに付けたトラックが並んでおり、それぞれのタイトルの由来/イメージがあると聞いたのですが簡単に教えてください。

M.S : 'Abyss' は、海の下の音楽で、僕達をマリアナ海峡の底に誘うんだ。

'Polaris' は、暗い夜空。北極探検隊が北に進み、北極星が道しるべ。

'Gravitation' (重力) は地球に存在し、誰もがそれに引っぱられているわけだけど、僕は地球が僕達を催眠にかけているんじゃないかと思うんだ。この曲は、地球という惑星のユニークな側面についての催眠的なサウンドトラックだね。

'Immersing' と 'Researches of Depths' は、Jacques-Yves Cousteau の深海をテーマにした映画からインスパイアされた作品。子どもの頃、Cousteau の旅について調べるのが好きだったんだけど、彼の作品は海、海の底の風景などの深さを教えてくれて、新しい世界を開かせてくれた。その雰囲気をこれらの楽曲へと変換させようと思ったんだ。

'Solar System' は、太陽に従う8つの惑星。まるで太陽が道すじを開くように、コードやリズムなどの音が光り、走る。

'Polar Night' は、2009年1月3日の深夜に、この曲のデモバージョンがヘッドフォンの中で鳴ったんだ。音は冷たく、魔法のようで、まるで冬の吹雪みたいだった。'Polar Night' は冬の寒い夜のサウンドトラックだね。

'Mermaid'。北極海へ送られた北極探検隊。生き残った4人の北極探検家は天使 (冷たい海の 'Mermaid') を助けるんだ。

'Nautical'。小型望遠鏡で、船長はデッキの上から辺りを見回す。太陽は光り、波が優しく船に触れ、海風が涼しさをもたらす。

'Spirits' は、森、鳥のさえずり。葉っぱのカサカサいう音。森の魂を操るのは、地球。

'Reverberation' は、水の反射のようなサウンド。各サウンドは他の音とまるで水のように反響しあう。目をつむって楽しんでほしいな。これは、魂の深み ('Depth of Soul') から来るディープ・ミュージックなんだ。

Martin Schulte

-- 本サイトにはクリエイターの読者も多いのですが、制作機材のセットアップを教えてください。

M.S : 制作にはソフトウェアを使っていて、Ableton Live と FL Studio と NI Reactor を併用しているよ。自分用に作り溜めているサンプルライブラリーもあって、その時制作している楽曲にフィットしない時には、エディットして、次の曲に使ったりもするね。

-- 多彩なベースとリズムが特徴的なのですが、曲を制作するにあたってのプロセスを教えてください。まずはリズム隊から制作していくのでしょうか?

M.S : 音楽を制作するときは、これを最初にするというような明確な方程式は持ってないよ。音楽制作は数学的な仕事じゃないからね。時には、パッド/アトモスフィアを先に作ったり、コードやリズムをベースと一緒に作ったり、ひとつの音を作っておいて、次につくる曲へのスタートにしたりするんだ。

曲を作っているときは、自分でもどうやってこのようなサウンドを作ったか分からないような、トランス状態の中にいるよ。僕が思うに、そこにインスピレーションがあると思う。これは自信を持って言えるんだけど、曲が僕自身の想像力と何ら関係なく生まれるときは、その曲は完成させないんだ。音楽は人が魂を持っているようにあるべきだからね。

-- まだかなりお若いと聞いているのですが、現在はおいくつで、いくつくらいの時からどのような音楽に影響されて現在に至るのか教えてください。

M.S : うん、僕は確かに若いね…21歳だよ。僕の両親とも音楽を愛していて、子どものころから親の持っていたジャズ、ロック、ポップのレコードに興味があったんだ。その点は両親に感謝しなければいけないな。それで、12歳の頃に、エレクトロニック・ミュージックを 『発見』 した。だけど、音楽を作り始めるようになったのは、16歳から17歳になってからだね。12歳の頃は、音楽を作るなんて夢の話のようだったしね。だけど、僕がそうだったように、時に夢は現実になるんだ。これまでの人生の中で、とても多種多様の音楽を聴いてきたから、どのレーベルやアーティストが僕に最初に影響を与えたかは何とも言えないんだけど…。僕がDJを始めたときや、音楽制作を始めたときでは、今とそれほど変わりないかもしれないね。人々、生活、自然、天候、旅行、友達、勉強、仕事、恋愛、真実といった、自分の周りにあることに影響されているんだ。

Martin Schulte

-- 今回も前作同様、日本のレーベルからの全世界オリジナルですが、どのような経緯でそうなったのか教えてください。

M.S : また Lantern と仕事ができてハッピーだよ。"Depth of Soul" の後、彼らと仕事をしたことですごく感銘を受けたから、新しいデモをまた Lantern に送ることに決めて、レーベル・オーナーの Nao Sugimoto aka Mondii とNaoki Shinohara からポジティヴな返事をもらうことができたんだ。最初、Nao とは Qwartz 4 (訳注:フランスで開催されているインディペンデント系の音楽見本市兼アワード) で出会ったよ。そのとき僕は、曲が1曲ノミネートされてたので Sinergy Networks のショーケースに参加していたんだ。それが2008年4月のことだね。Nao とレーベル・エキシビジョンの会場で会って、音楽について話し、デモの連絡先を貰った。その後、彼らが僕の音楽に興味をもってくれたので、アルバムの制作を始めた。それが、前作の "Depth of Soul" なんだ。

-- 私たちは、あまりロシアの情報を知らないのですが、ロシアのテクノシーンはどのような状況でしょうか? 逆にあなたが持つ日本と、日本の音楽の印象を教えてください。

M.S : ロシアのテクノ・シーンは、モスクワやサンクトペテルブルグのような大都市で成長していて、多くのミュージシャンが世界中の色んなレーベルからリリースしているよ。だけど、僕の趣向やヴィジョンに合うミュージシャンをあまり見かけないから、僕のようなスタイルのミュージシャンがどれほどいるかはちょっとわからないな。 日本のアーティストだと、Kaito (Kompakt) や Dublee (Mule Musiq) が好きだね。何故かというと、美しく、とてもエモーショナルだから。あと、テクノ・シーンではないけど、もう2人、言及したい日本人アーティストがいるんだ。何ヶ月か前に、Quietus Records の Arc of Doves (Tetsuya Nakamura) のアルバムを買ったよ。それに、DJ Krush の音楽、そして彼のアルバム "深層 - The Message At The Depth - " はこれまで聞いた中でも僕の大好きな作品のひとつなんだ。日本人の音楽がとても好きだよ。

-- 最近、観たあなたの面白い夢を教えてください。

MS : あまり面白い夢ではないかもしれないけど、ミュージシャンの僕にはとても面白い夢を観たよ。何日か前に観た夢で、僕は音楽を聴いていたんだ。今まで聴いたことのないような音楽をね。その曲を全部聴いたんだけど、それは僕の曲のスタイルには聴こえなかったんだ。でも、もしかしたらそれは僕が将来作る曲かもしれないよね?

-- 今後の活動予定を教えてください。

MS : 僕のプランはシンプルだよ。新しい音楽を作り、そして、ライヴでプレイするんだ。

End of the interview

Martin Schulte

Martin Schulte "Odysseia" は Lantern より好評発売中。





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