HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

M.A.N.D.Y. Interview


昨年、盟友 Booka Shade とのコラボレーションでリリースしたトラック 'Body Language' が世界中のクラブでヘヴィ・プレイの大ヒットとなり、The Ibiza DJ Award 2005 では同曲が Track of the season にも選ばれるなど、エレクトロ・ハウス・シーンの枠を超えたクロス・オーヴァー的な人気を博しているドイツ出身のデュオ M.A.N.D.Y.。先日開催された Mule Musiq 主催の人気イベント Endless Flight では遂に待望の初来日を果たし、柔軟かつエッジの立ったエレクトロ・セットでクラウドを大いに湧かせてくれたのも記憶に新しい。

そんな見事なプレイを披露してくれる直前に、Unit の控え室で行われた今回のインタビュー。その音楽性からも予想されたとおり陽気なキャラクターであった2人が、デビュー前の活動から自身のレーベル Get Physical のことまで、ユーモア溢れる語り口で HigherFrequency に語ってくれた。

> Interview : Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation & Introduction : Yoshiharu Kobayashi (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 日本に来るのは今回が初めてですか?

Phillip Jung : そうなんだ。昨日はフクオカに行ってきたよ。

HRFQ : 素晴らしい発音ですね!

Phillip : 実は一晩中練習していたのさ。

HRFQ : さて、インタビューを始めさせて頂こうと思います。M.A.N.D.Y. のレコード・デビューは '01年ですが、2人での活動は '90年代から続けていますよね。M.A.N.D.Y. としてのデビュー前にどういった活動をしていたか少し教えてもらえますか?

Patrick Bodmer : 僕は大学で Booka shade の Arno と Walter の2人と仲良くなったんだ。僕たちは法律を一緒に学んでいたんだけど、授業が2つも終わると Walter が法律より音楽を作る方が好きだと言ってきてね。あれは '90年のことだったな。Phillip には、ホーム・スタジオを持っている面白そうな奴に会ったと教えておいたんだ。当時の僕たちは2人ともレイヴァーだったから、何か一緒に音楽を作ろうと考えていたんだよね。それで、ある日 Walter を呼んで彼のスタジオでプレイしてみたら、すぐに幾つかのトラックが出来上がったというわけさ。

Phillip : そのときのトラックがいい出来だったかどうかは分からないけど、とりあえず幾つかのトラックが出来上がったのは確かだね。

Patrick : 実は、僕たちは '92年から '95年の間に色々なレーベルから3つか4つのシングルをリリースしているんだ。

HRFQ : 確かあなたたちは Arcus の 'Happy Rose' というトランス・レコードも手掛けていますよね?

Patrick : えっ!

Phillip : どうしてそんなことを知っているんだい?あれは最低でも 165bpm はあったトラックだったね。最近自分の作品を振り返っていたんで、ブッキング・エージェンシーのスタッフのためにそのレコードをプレイしてみたんだけど、彼女ったら「その酷いレコードを止めてもらえる?」と言ってきたんだ。「ごめんよ、これは僕たちの昔のレコードなんだ」と言い返したけどね。昔はどのレコードも bpm が速かったんだよ。どれもみんな 140bpm から 150bpm はあったはずさ。そう、だから…。いや、でも僕たちはいつでも 'Happy Rose' のようにメロディがあるトラックを作っていると思うよ。僕たちはいつもメロディ重視だったんだ。それに、当時の僕たちはただレコードをリリース出来るというだけで幸せだったのさ。

Patrick : Walter と Arno はボーカルがいてステージで演奏するようなシンセ・ポップのバンドをやっていたから、テクノについては何一つ知らなかったんだ。僕たちはそんなポップ・バンドが持っているスタジオで、シンセ・ポップをテクノにしようとしたのさ。そしたら結果として、あのトランス・レコードが生まれたというわけなんだ。

Phillip : でも、あのレコードはいい出来だったと思うよ!今後、誰一人として聴くことが無いように祈ってはいるけどね。

HRFQ : このインタビューが掲載されれば、みんなその存在を知って買いに行ってしまうかもしれませんよ。さて、あなたたちは Booka Shade と大学時代からの友人だったというお話でしたが、先週インタビューをした Steve Bug は、才能ある友人の存在が自身のレーベル Dessous や Poker Flat を運営していく上で大きな助けになったと言っていました。あなたたちのレーベル Get Physical にとっても友人の存在が助けになっていると思いますか?

Patrick : 間違いなくそうだね。特に Walter は大切な存在さ。彼はスタジオを持っていたし、プロダクションのテクニックも教えてくれたからね。

Phillip : 彼のスタジオは本当にプロ使用のものだったんだ。シンセサイザーとコンピューターが1つずつあるだけといった感じではなくてさ。スタジオの機材がフルに揃っていて、最初から本当にいい音を出すことが出来たんだ。

Patrick : それに彼は僕たちにその機材の使い方も教えてくれたしね。

Phillip : でも、互いに与え合うものがあったんだと思うよ。僕たちは彼に長年レイヴァーをしてきた経験から得た知識を全部教えたし、彼をクラブにも連れて行ったしね。だから、あれは仲のいい友人同士のギブ・アンド・テイクのようなものだったのさ。

M.A.N.D.Y. Interview

HRFQ : 少し話題を変えさせてください。あなたたちのレーベルの名前である Get Physical とは、Olivia Newton John から取ったものではないですか?

Patrick : 実はもう2つ理由があるんだ。

Phillip : 元々は Olivia Newton John から取ったわけではないんだよね。

Patrick : そう。レーベルを始めた当時は mp3 や新しいインターネット・ビジネスが出てきた時でもあったんだけど、僕たちはそういったヴァーチャルな世界に反対していたというのが主な理由なんだ。僕たちはスポーツに夢中で体を動かすことが大好きだったし、コンピューターのオタクでは全く無かったしね。僕たちはみんなヴァーチャルなことより、フィジカルなことをしたいと思っていたんだよ。

もう1つの理由は、ボディ・ミュージックとダンスをすることから来ているんだ。つまり、コンセプト重視の頭で考えて聴くようなトラックではなくて、もっと体を動かしたくなるような音楽のことさ。それと、ディスコも根底にはあるんだ。中でも '70年代のディスコは間違いなく重要なものだと言えるね。このレーベル名は、オーガニックで人間味溢れるディスコ・ミュージックのことを指してもいるのさ。

Phillip : そんな風に考えていたら、ロゴに使っている女性の絵が自然と浮かんできたんだけど、それを見て僕たちは Olivia Newton John に似てるなと思ったんだよね。

Patrick : 元々は違ったんだけど、僕たちはそのロゴの女性の顔を置き換えて…。

Phillip : あの顔は Olivia Newton John のものでさえ無いと思うよ。

Patrick : そうだっけ?いや、そんなことはないよ!あれは Olivia Newton John に顔を置き換えたもののはずさ。ロゴを作ったのは僕だよ!最初はケーブルを体に巻いた昔っぽいディスコ・ガールだったんだけど、その顔を Olivia Newton John に置き換えたんだ。

Phillip : そうだ、確かにそうしたね。

HRFQ : 今のお話にも関連したことで1つ伺わせてください。あなたたちは他のプロデューサーたちが持っていないようなユーモアのセンスを持ち合わせていますよね。あなたたちの音楽はコンセプト重視の頭で考えて聴くような音楽ではありません。他のプロデューサーもあなたたちを見習うべきだと思いますか?

Phillip : 他のプロデューサーについては言及しないようにしているんだ。

Patrick : ただ、他の人たちの仕事にはいつも敬意を払うようにはしているよ。

Phillip : もし一人だけでスタジオに篭もって作業をしたりレーベルを運営したりしていたら、明らかに面白みが少ないよね。でも僕たちは6人でやっているから、いつも互いにからかい合ったりしているのさ。

Patrick : 僕たちがシリアスではないって?僕だってやろうと思えば出来るさ。ほらーーー!(と言っておどけて見せる)

Phillip : いや、でも本当にそれは僕たちがいつも一緒にいるからでしかないと思うよ。友達と一緒に遊んでいるときにシリアスになったりしないよね。でも、もしたった一人でやっていたら、スタジオではもっとシリアスになるだろうし、コンセプト重視の頭で考えて聴くような音楽をつくってしまうことになるんじゃないかな。

HRFQ : 何だか面白そうな仕事に思えますね。友達と遊んでいるなんて。

Patrick : ああ。今は本当にいいスタジオがあって、そこの2階にはマンションも持っているから、特にいい状況だと言えるね。それにレーベルのスタッフとも家族的な親密さがあるしさ。ちょっとおかしなことだとも思うよ。だって、'90年代に Walter とスタジオで夢見ていたようなことが現実になっているのだからね。いつの日か、働いたりせずにただ楽しい時間を過ごせるようになりたいと思っていたんだけど、それが現実に起き始めているんだ。

M.A.N.D.Y. Interview

HRFQ : M.A.N.D.Y. とは、何の略なのですか?

Phillip : 当ててごらんよ。実は、僕たちは色々な名前を考えていたんだけど、Y で終わる名前を思いつくのが難しかっただけなんだ。たくさんの人が僕たちの名前の由来について聞いてきたけど、正解に近いことを言ったのはあるイギリス人の女の子だけだったね。でも、本当にいい答えだと思うものはまだ出て来てないよ。

Patrick : Mandy という名前の裏にはとても個人的なエピソードが隠されているんだ。それはもちろん若者の恋の話だよ。でも、これは本当に個人的な話だから、聞いたって退屈するだけだと思うな。一文字ずつに点を打っているのは、デザイン的な問題からさ。

Phillip : オーストラリアでそうだったように、未だに多くの人が M.A.N.D.Y. という名前を聞くと女性が出てきて DJ をすると勘違いしてしまうみたいだね。

Patrick : 最初は面白いと思ったんだ。と言うのも、こんなエピソードがあるからでね。僕たちはソニー・ミュージックで働いている友達のためにあるリミックスを手掛けたんだ。それはエレクトロニック・ロック・バンドの Galleon のために一日でやったものだったんだけど、ソニーが電話をかけてきてそのリミックスのラジオ・エディットをつくっていいかと聞いてきたんだよね。それで暫くしたら、そのラジオ・エディットが MTV でヘヴィー・ローテーションになったものだから、彼らは僕たちの名前をレコードに載せたがってさ。結局その曲はドイツで一番売れたハウス・レコードの一つになったんで、ブッキング・エージェントからは毎日電話が掛かってきたんだよ。でも、彼らは女性 DJ を期待していたみたいで、みんな僕たちのことを見るなり、「なんだ、男2人じゃないか!それだったら君たちをブッキングする必要はないよ」と言ってきたんだ。彼らがそんな勘違いをしたのは、間違いなくプロモーション・ビデオにドレスを着たスーパー・モデルが出ていたからだね。

Phillip : しかも、そのモデルはビデオの中で DJ をしていたんだよ。

Patrick : そうそう、DJ をしていたんだ。だから、ブッキング・エージェントはみんなこのスーパー・モデルを巨大なハウス・クラブでプレイさせようとしたわけさ。僕たちはその手のクラブでも何度か DJ をしたけど、あまり興味が持てなくてね。それ以来、僕たちは巨大クラブでプレイして大金を得るというオファーは完全に断るようにしたんだ。僕たちはその活動に2年も費やしたし、リミックスは本当にいい出来だったから、そういった状況になってしまったのは辛かったよ。最初からあまりに成功し過ぎてしまったんだね。でも、僕たちはこの商業的なイメージから逃げ出さなくてはならないと思ったんだ。

HRFQ : さて、そろそろ終わりにしましょうか。これから出番だというのに長い時間を頂きまして、ありがとうございました。

Phillip : とんでもない。

Patrick : こちらこそありがとう。

End of the interview

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