HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Louie vega Interview

NYのブロンクスで生まれたLittle Louie Vega。父親はサックス・プレイヤー、母親はシンガー、叔父はウィリー・コローンやファニア・オールスターズでの活躍で知られるNYサルサの顔役 故エクトル・ラヴォーという音楽的に恵まれた環境で育った彼が音楽の道を進んだのは当然の経緯であろう。90年に結成されたKenny Dopeとのユニット「Masters at Work」での華々しいキャリアの数々はもちろん、97年にはルーツミュージックへの回帰を試み、「NUYORICAN SOUL」としてROY AYERS、GEORGE BENSON、TITO PUENTE、EDDY PALMIERI、VINCE MONTANA、JOCELYN BROWN等の超豪華ゲストを迎え、一流プレイヤーによる生演奏とダンス・ミュージックを融合し多大な評価を得た。

昨年リリースした初のソロ・アルバム「Elements Of Life」が大ヒットを記録。続編的アルバム「Elements Of Life Extension」のリリースが待ち望まれる中、代官山air3周年パーティーの為に来日し、9月23日、25日と2Daysの公演を行い貫禄のプレイを披露。25日の公演直前の慌ただしい中に行われたインタビューだったがとても熱心にそして丁寧に質問に答えてくれた。

> Interview & Translation : Eri Nishikami _ Photo : Mark Oxley (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 大阪はいかがでしたか?

Louie Vega : グランカフェでやったんだけどよかったよ!7時間くらいプレイしたんだけど、誰も帰ろうとしないし…いつやめようかずっと迷ってたんだけど、結局無理やり終わりにしたって感じだったよ。

HRFQ : Airはどうでしか? Airでプレイしたのは初めてですよね?

Louie : 今回は上のブースでプレイしたから、フロアの人と離れてたのがちょっと残念だったかな。最初の3時間くらいはヴァイブをつかむのに苦労したんだけど、時間がたつにつれてすごいエネルギーを感じたね。でもやっぱり下でお客さんの前でプレイしたいから、今日はDJブースを下に移すんだ。やっぱりフロアのお客さんからもらうパワーっていうのはすごいからね。まあ、DJならだれでもそうだと思うんだけど、僕は特にお客さんの近くでプレイするのに慣れているから、あんな上からじゃあ誰も見えないし、ちょっとやりにくかったかな。

HRFQ : Airのサウンドシステムはいかがでしたか?

Louie : 今日は下でプレイするからもっとわかると思うけど、昨日最後のほうにフロアに踊りに行ったときはすごくいい感じだったよ。

HRFQ : 日本は何度目ですか?

Louie : 1989年から年3,4回来てるよ!

HRFQ : 日本のクラブシーンについてどう思いますか?

Louie : 日本は最高だね! まず、ファンがすごく忠実っていうか、何年たっても同じ顔ぶれを見れるのがいい。僕のレコードを買い続けているファンもいれば、DJとしていつもパーティーに顔を出してくれるファンもいるし…。シーンとしては小さいのに、なぜかいつもすごく大勢の人を呼べるっていうのはすごいことだと思うよ。ageHaのDimension K でプレイしたときなんて2300人だよ!Airも結構大きさのあるクラブだし、フロアをいっぱいにしようと思ったらかなりの人数が必要だと思うけど、アニバーサリーパーティーは多分凄いことになるんじゃないかな。だって、もうすでに何人も今日のパーティーのことで電話があったからね〜。

Louie Vega Interview

HRFQ : Elements of Lifeについて聞かせてください。

Louie : 実は、Elements of Lifeは僕にとって最初のソロアルバムなんだ。Kenny Dopeとはもう14年間も一緒で、MAWレコードでNuyorican Soulなんかのレコードをリリースし続けてきたけど、どうしても自分の中にあったもっとパーソナルな部分をソロで表現したいと思ってね。世の中で起こってる事とか、あと、息子が出来たことで生き方とか考え方が変わって、それを表現する場がこのアルバムになったって感じなんだ。Kennyも僕のやりたかったことをよく理解してくれてたし、それに僕もVega Recordsを持っているし、彼も自分のDope Waxを持っているでしょ。だから、お互いに自分の作品は自分のレーベルから出していこうって感じだった。で、一年半くらい前に制作を開始して、日本では去年リリースされ、ツアーもやったりすることになったというわけ。実は、今回みたいに完全に自分のバンドって言うのは初めての経験で、確かにNuyorican soulの時と、90年代初めにMark Anthonyの時もバンド活動みたいなものをやったことはあるんだけど、曲を書くことからプロデュース、そしてDJとして曲をプレイして更に10人のバンドで演奏するっていうような、最初から最後までプロジェクトを組み立てていくっていうのは始めてのことだったんだ。 でも東京と大阪、それから福岡と名古屋のブルーノート公演はほんとに最高だったな!バンドのディレクションなんてまさか出来ると思ってなかったけど、試しにやってみたらすっかり病み付きになってしまったよ。たぶんDJしながらもプロデュース的なことは自然とやってたんだろうけど、本物のバンドでやったわけだからね!ほんとに素晴らしいショーだったから、またやってほしいって言う依頼も受けていて、1月に戻ってこようかって話してるところだよ。

HRFQ : ヨーロッパのジャズフェスティバルでもプレイしたと聞きましたが?

Louie : 7月に12都市回るツアーをやったんだ。Montreaux Jazz FestivalやNorth Sea Jazz Festival、イタリーとか、あとギリシャではビーチでね!僕らのシーンからジャズ・フェスティバルに参加して、Herbie HancockやDavid Bowieなんかと同じステージに立つっていうのは本当に画期的なことだったと思う。シーン全体を代表して参加する気持ちだったよ。

HRFQ : あなた自身はバンドでは指揮者ってことですよね?

Louie : そうなんだけどたまにDJやってほしいっていわれることもあってね。でも、ライブバンドで演奏したあとにDJするって言うのは結構難しいんだよ。何しろライブっていうのは、ものすごいエネルギーが出まくってるでしょ。だから、お客さんが誰も帰ろうとしないで「どうしても」って言われた時以外はやらないんだ。東京のブルーノートでやった時がそうだったんだけど、ほんとに最高のライブで、演奏が終わってみんなステージに出て最後の挨拶をしてるんだけど誰も帰ろうとしなくてね。DJが聴きたいって言うもんだから、結局15分くらいたって僕が出て行って…まぁあの時は大騒ぎだったね。あと、ギリシャのビーチでやったときも同じで、1600人位はいたかな。ショーが終わってみんなでバックステージに戻って飲んだりしてたんだけど、だれも帰ろうとしない。で、プロモーターが来て「ルイ、どうやらみんなDJを待ってるみたいだよ」って言うから、こうなったら仕方ないって感じでアシスタントに大急ぎでステージをセットアップしてもらったんだ。その時も、僕が登場したときにはクラウドはすごいことになってたね!そこからパーティーはやり直し!みたいな感じだったよ。

HRFQ : 次にリリース予定のEOL:Extensionでは、トラックリストがウェブサイトで見たときと少し変わっていましたが、トラック選びには苦労されましたか?

Louie : いや、そうじゃなくて新しいトラックが完成したからそれも入れたいってことになっただけだよ。というか、Elements Of Lifeが出来上がってすぐ、DJ Spinna とKenny Dope、Joe Claussellなんかが「ルイ、このアルバムのリミックスやるときはこの曲はオレにやらせてくれ」とか「この曲はオレが」って言い始めたものだから、僕も「よし、じゃあそうしよう!みんな好きな曲をピックアップしてリミックスアルバムを作ろう」ってことになったんだ。気づけばJazzy Jeff にDJ Spinna、 Joe Claussell、それにFrankie FelicianoやJazz N Grooveといったメンツが大集合することになって…。まぁ、実際にアルバムに新しい風を吹き込んだって感じだったし、「これはただのリミックスアルバムじゃないよな」って僕が言ったら、Joeが「そうだ!Extensionって呼ぼう!」って言い出したんだ。じゃあ「ついでに新しいトラックも入れよう」ってことになって、更に5曲やることになって…。ストリート・パーカッショニストのHouse Of Rhumbaなんかに頼んで、スパニッシュ・ハーレムのストリート・パーカッション・シーンをクラブ・シーンとミックスさせたりしたんだ。あと、Joeに「一緒にトラックをプロデュースしよう」って持ちかけて出来たのが、Sunshineのリミックス。この曲では詞も新しく書き直した。あと、僕らのお気に入りのガラージ・クラシックでもあるCandidoの"Thousand Fingered Man"もEOLバンドでリミックスしたよ。

Louie Vega Interview

HRFQ : 今までやってきた作品の中でのこのアルバムの位置づけっていうのはどんな?

Louie : Elements Of Lifeプロジェクトには本当に満足していて、息の長いアルバムであることは確かだと思うよ。レコードを作るときはいつも10年後に聞いても新鮮な作品になるようにしてるんだけど、このElments Of Lifeはまさにそういうアルバムだと思う。しかもボーカリストたちがとても良い仕事をしてくれたしね。

HRFQ : リミックスもまだいろいろやっていますか?

Louie : 今までにKennyとやったリミックスって何曲くらいあるんだろうなあ。最近は一緒にやったり、別々にやったりだけどね。僕自身としては、もうすぐリリース予定のCurtis MayfieldのプロジェクトのSuperflyって曲をやったところで、あとTruby TrioのAlegreとか、Kyoto Jazz Massiveの10周年アルバムでもラテン・ジャズっぽいものを一曲やったりとか…。今ではもっと作曲と制作にに力を入れようとしているんだけど、すぐに色んなところから「これをリミックスしてくれ」とか「あれをやってくれ」ってオファーがくるからね〜。、まぁ、曲が気に入ったらやるようにしているよ。最近のお気に入りでいうと、Pushimの"Like A Sunshine, My Memory"。反響もすごく良いし、このレコードはすごくスペシャルなものになる可能性を秘めているっていうか、なにか今までと違うエネルギーを感じる曲なんだ。

HRFQ : 日本語の歌詞をリミックスするのは大変ではなかったですか?

Louie : そうだなあ、でもこれはメロディーに惹かれたって感じだったかな。日本語で歌っているところは何言ってるのかほとんどわからなかったし、最初にオリジナルを聴いたときはこのリミックスを受けるのはやめようと思っていたんだ。でも、ひとつだけ良いアイデアが浮かんでね。だからレーベルに連絡して言ったんだ。「ひとつだけ可能性のあるやり方があるけど、もしそれで上手くいかなかったらこのリミックスは辞退するしかない」って…で、スタジオに入ったすぐにあのグルーブ感をつかむことが出来て…。あのレコードには本当にたくさんの最高のアーティストが集まってくれていて、EOLバンドでもプレイしているKennyと僕のキーボードプレーヤーでもあるSelan Lerner、ジャズとかラテンシーンで彼とプレイしたことのない人はいないってくらいのベースプレーヤーJohn Benitez。あと、彼もEOLバンドの一人でパーカッショニストのCarlos QuinteroにNathan Hainesのフルート、というわけで最高のメンバーが集まったんだ。とにかく、あのレコードを録音した日はマジックが起こったとしか言いようがないし、その意味であのリミックスも本当に気に入ってるね。 

HRFQ : 息子さんのことを話されていましたが、彼によって音楽に対する姿勢などが変わったということはありますか?

Louie : 彼のおかげで僕の人生はすっかり変わったと言えるだろうね。自分の分身でもある小さな子供っていう存在は、全てのものに対する考え方、見方を変えると思う。僕にとってクレイジーなナイトライフっていうのは仕方のないことだけど、これまでみたいに一晩中出かけていたくないし、あと、もちろんこれも仕方のないことだけど、トラベルでずっと家を空けてるのもいやなんだ。もっと息子と一緒にいたいとほんとに思うよ。今もすでに4〜5ヶ月家に帰ってないからつらいし、もっと時間の使い方をなんとかしなきゃと思うね。あと、ワイフのAnaneのためにアルバムを作ってて、今レコーディング中なんだ。KennyはもちろんJoe Claussell, Dj Gregory、Los Amigos Invisiblesなんかも参加してくれて、きっと最高のアルバムが出来ると思うよ。来年の夏にVega Recordsからリリース予定だけど、まあ音楽が僕たちファミリーをひとつにしてくれてるっていうのは良いことだよね。あと、EOLバンドのパーカッショニストLuisito Quinteroのパーカッション・アルバムも進行中なんだ。Tito Puenteスタイルのエネルギッシュなパーカッションに今風の味付けをした感じの作品と言えるかな。あと、もちろん今でもKennyとも一緒に制作してるよ。そうじゃないって思ってる人がいるみたいだけど、MAW Recordsから久しぶりにシングルをリリースするんだ。Viktor DuplaixをフィーチャーしたIn the Real Worldって曲で、これがMAW Records 100枚目のシングルになる。この曲はアルバムからカットされる最初のシングルになるんだけど、キーボードとかドラムマシーンを使ったよりエレクトロな感じの仕上がりになっていて、僕がキーボードでKennyがドラムを担当したんだけど、今回の音はオーガニック路線から少し離れて結構ロック色の強いものになってると言えるだろうね。MAWはジャズ、アフリカン・ソウルといった音では知られているけど、実は僕はZeppelinを聞いて育ったから、ロックのルーツも持ってるってわけさ。もちろん、今までのMAWサウンドはキープしつつだけどね。で、その作品がリリースされる来年の3月ごろには、MAWレコードの10周年とニュー・アルバム発売を記念したのビッグ・イベントをマイアミでやる予定だよ!!

End of the interview

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