HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Kenny Larkin Interview

1990年から音楽キャリアをスタートし、Richie HawtinやJohn Acquavivaらの先駆者達との出会いを経て、Plus 8から今やテクノクラシックの1曲としてその名を燦然と輝かせる"We Shall Overcome"をリリース。Plus8を離れた後もDark Comedy 名義での"War of The Words"や"Serena X"、"Tedra"と言った名曲を数多く発表し、テクノシーンにおいて不動の地位を築いたKenny Larkinが、"Metaphor"以来約8年ぶりとなるオリジナルアルバムを引っさげて、ArcTokyoの招聘の元、5月初頭に1年ぶりの再来日を果たした。

Peacefrogへ移籍してからの第1弾となるアルバム"The Narcissist"は、Kennyの持つ耽美的な美意識と、テクノフィールドで培われたエモーショナルなビートに包まれた傑作として、早くも世界各地のシーンから大絶賛を受けている。そしてファンにとっては嬉しい事に、何と5月末には今度はDark Comedy名義でニューアルバムがリリース!その他にもPeacefrogからの12inchリリースも5月上旬に予定されるなど、2004年は大活躍の予感でい一杯のKenny LarkinにHigherFrequencyがレスペクトを込めて独占Interviewを行った。

> Interview & Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (以下HRFQ) : 去年の6月にYellowでプレイして以来、約1年ぶりの来日となりますが如何ですか?

Kenny Larkin : グレート!日本に来るのはとても好きなんだ。本当に独特なヴァイブがあるからね。

HRFQ : 海外から来るDJの多くが、日本のシーンは単に面白いだけではなく、他の国のシーンと比べてもとてもユニークなものだと発言していますが、この意見に賛成ですか?もしそうであれば、どう言った所が一番ユニークな点だと思いますか?

Kenny : 日本のシーンがどうしてそんなに特別でユニークなのか理由はよく分からないんだ。でも、まるでNYみたいな感じで、その街にしかないユニークなヴァイブを感じるね。そのヴァイブはNYのそれとは違ったものなんだけど・・・何となく分かってもらえるかな。

HRFQ : 今回の来日では大阪と名古屋でプレイされる事になっていますが、今まで訪れた事はありますか?

Kenny : どちらも今までに行った経験はなくて、全くの初めての訪問なんだ。

HRFQ: (アルバム発売記念の)ヨーロッパ・ツアーを終えられたばかりだと思いますが、反応は如何でしたか?

Kenny : 今回のツアーは最高だったね。あれほどまで良い反応を貰えとはホントに驚きだったよ。特にニューアルバムに関しては、みんなが「スゴイ!」って言ってくれていたしね。

HRFQ : テクノに関する幾つかの記事を見ると、アメリカのテクノシーンはヨーロッパや日本のシーンに比べるとそれ程大きくないと言う事が書いてあったりしますが、あなたもそう思われますか?地元であるLAのシーンはどうですか?

Kenny : それは間違いなく本当の事さ。アメリカのテクノシーンは他の国のどこと比べても小さいんだ。LAに関しては、音楽シーンはまさにヒップホップ一色って感じで、他のジャンル、特にエレクトロニック・ミュージックの入り込む余地は殆どないのが現状なんだ。ホントみんな興味を示さないんだよね・・・テクノのパーティーもある事はあるんだけど、どれも小さいものばかりだし、僕自身はあまり地元で行われているテクノやハウスのイベントには出かたけりはしないんだけど、たまに出かけても、混んでいる事はまずないんだよね。先週もCarl CraigがLAに来てプレイしたんだけど、たった100人しか見に来ていなかったらしいよ。

HRFQ : Transmat主宰のMovement Festivalがもうすぐ開催になると思いますが、今年も参加される予定ですか?

Kenny : まだハッキリとは決まっていないんだ。

HRFQ : さて、ニューアルバム"The Narcissist"についてですが、個人的にはここ数年の聴いた作品の中でも群を抜いて美しく、かつ、ソウルフルな作品だと思うのですが、このアルバムのコンセプトを教えていただけますか?どうして"The Narcissist"というタイトルにしようと思ったのですか?

Kenny : このアルバムのコンセプトは、僕が今までにリリースして来た他の作品のコンセプトと何ら変わらない。それは「良い音楽を作る」ってことだ。"The Narcissist"と言うタイトルを付けた経緯は、タイトルから想像できるような「自分に惚れ込んでいる」と言うものではなくて、アルバムに収録する楽曲を選ぶ際に「自分自身に依存する必要があったから」と言うのが本当のところなんだ。多くのアーティストが自分のファンを喜ばせるために音楽を作るという傾向に陥りがちだと思うけど、僕の場合は「自分の好きなもの」という考えをベースにして曲をピックアップしていくようにしたから、このタイトルとコンセプトになったんだ。

Kenny Larkin

HRFQ : 前回のアルバムをリリースされてから随分と間が空きましたよね?そして、今回はPeacefrogへの移籍後第1弾という訳ですが、その辺りの経緯をお話いただけますか?

Kenny : 色んな理由があって音楽制作から離れていたんだ。あちこち旅行もしていたし、音楽を書く事にあまりインスピレーションも感じなかったし・・・世の中ヒドイ音楽がたくさんリリースされていたって事も理由のひとつかな。

HRFQ : 今回の作品はアルバムを通してとても幅広い世界観で構成されていて、色んなタイプのサウンドが折衷した内容に仕上がっていると思うんですが、どのような音楽にこの作品を制作する時に影響を受けたりインスパイアされたりしましたか? やはり、Narcissistですから過去の自分自身の音楽と言うことでしょうか?

Kenny : 他の音楽からインスパイアをされた事は全くなかったね。とにかく自分が好きなサウンドを作っていくように心がけたし、他の人が聞いて好きと思うか嫌いと思うか、なんて事も気にしないように心に決めていたんだ。完全なアーティスト表現というのは今の流れでもあるからね。だから今回のアルバムにおいては、とにかく自分自身を更に前進させることのみを考えたんだ。でも、今回は同時にもう1枚アルバムを制作していて、そっちのプロジェクトの方にはもう少し自由度を持たせるようにしたけどね。

HRFQ : Dark Comedy名義の「Funk Faker-Music Saves My Soul」が5月末には早くもリリースされ、しかもボーナストラック付きの日本先行発売ということですが、どうしてこれ程までに短期間の間に2枚の作品を出そうと思ったのですか?

Kenny : Dark Comedyのリリース日を数ヶ月早くしたんだ。なにせ前のリリースから8年間も出していないんだからね。今年は最低4枚のアルバムを出さなきゃいけないよ(笑)。

HRFQ : Dark ComedyとThe Narcissistとの間にはどのような違いがありますか?

Kenny : 両者の違いは丁度「昼と夜」と言った感じなんだ。The Narcissistの方はもっとエレクトロニック・サイドによったものなんだけど、Dark Comedyの方はエレクトロニック、ブルース、ジャズ、ハウスと言った要素が入った感じで、それぞれのコンセプトは簡単に区別が付けられるんじゃないかな。

HRFQ : Dark Comedyの方も後々にはPeacefrogからワールドワイドにリリースされる予定ですか?

Kenny : いや、Dark ComedyはPeacefrogからは出ないんだ。

HRFQ : 4月にはプライベート・ブレスの12inch "Let Me Think"が、そして5月の初めには"Ancient Beats/Seduce Her"がそれぞれPeacefrogからリリースされますよね。これらはいずれもThe Narcissistには収録されていない曲だと思いますが、次回のアルバムに収録される新曲なんでしょうか?

Kenny : いや、これらの曲はPeacefrogがアルバムから敢えて外して12 inchでリリースする事にしたものなんだ。"Ancient Beats"の方はストレートなクラブトラックだから、彼らがそうした理由はよく分かるけどね。"Let Me Think"の方は、数年前に制作したJazzトラックで、デトロイトのジャズ・ステーションでしばらく1位になっていた未発表曲なんだ。

HRFQ : "Let Me Think"は既にPeacefrogのカタログからも削除されていしまっていて、ラッキーな400人の人たちしか耳にする事が出来なかった訳ですが、ストリーミングか何かでこの曲を聴く方法はありませんか?

Kenny : Peacefrogがこの曲についてどんなプランを持っているのかは良く分からないな。今度聞いてみるよ。でも、いずれにしてもあのリリースは、いわゆる「プライベート・プレス・シリーズ」の流れで出てきたもので、レアで見つけるのが難しいって言うのが基本のコンセプトだからね。

Kenny Larkin

HRFQ : 今回のジャケットにNative Instrumentsのロゴが乗せてあったので、多分彼らのソフトを制作の際に多く使われたんだと思いますが、メインで使われたのはどのプラグイン・ソフトですか?Reaktorですか?

Kenny : いや、kontakt、FM7、absynthを主に使ったんだ。Reaktorはちょっと複雑すぎるし、しかもよくクラッシュするから使わなかったんだよ。

HRFQ : 最近のスタジオ・テクノロジーに関してはどのような感想をお持ちですか?技術の進歩によって制作は随分と楽になりましたか?それとも何か新しい悩みを持ち込む事になりましたか?

Kenny : 音楽制作は格段に簡単になったと思うよ。ホントのところ、メチャメチャ簡単になったかもね。最初から終わりまで全てコンピューターで出来てしまうんだから、これは本当に大きな進歩だよ!!

HRFQ : 90年代の初めにRichie HawtinやJohn Acquavivaと出合った事が、あなたのアーティストとしての成功の第一歩であったという事はよく知られていますが、この二人のテクノ界の巨匠たちとはどのようにして知り合う事になったのですか?

Kenny : RichieにはデトロイトのShelterと言うクラブで知り合ったんだ。そしてその後RichieからJohnを紹介された。当時、RichieはShelterのレジデントDJのオープニングDJを務めていて、最初は僕の方から彼に話しかけたんだ。その後、仲良くなっていつも一緒にDerrick Mayのミックステープなんかを聴いたりしていたんだけど、やがて二人とも音楽で身を立てていくことを決心して、それで、一緒に機材を買って制作をスタートする事にしたんだ。

HRFQ : あなたのキャリアの中で一番ベストだと思う曲は何ですか?

Kenny : TEDRAが一番好きだね。

HRFQ : 最も影響を受けたアーティストは誰ですか?

Kenny : Dark Comedyのプロジェクトに関しては、James BrownやJohn Lee Hookerかな。

HRFQ : 最後にアジアのファンに何かメッセージをお願いします。

Kenny : ダンスミュージックをこれからもよろしく。外へ出かけて、自分の好きなアーティストをサポートし続けてほしいね。

End of the interview

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