HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

J Da Flex and Mr.Buzzard Interview

HigherFrequencyのパートナーであるSAKI Entertainment Inc.が主催するイベント「Future Funk Flava Vol.01 X'mas Garage」に出演するために、UK Garage / Urban Soundシーンのリーディング・アーティストでありBBC 1XtraでもDJを務めるなど活躍するJ Da Flexと、Artful DodgerのメンバーでもあるMr.Buzzhardが揃って来日。その情熱溢れるスタイルと超絶的なテクニックを駆使したパフォーマンスで、詰め掛けた多くのクラウドたちを完全にノックアウトしてくれた。そんな彼らに、HigherFrequencyがインタビューを実施、なかなか情報の伝わる事のなかったUK Garage/Urban Soundシーンについて多くを語ってくれた。

> Interview : Matt Cheetham (Samurai.fm) / Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (以下HRFQ) : 現在イギリスで新たにアーバン・サウンドという音楽の流れが生まれつつありますが、これについてお話して頂けますか?

J Da Flex (以下 J) : それは紛れもなくアーバンで、ダークでジャジー、バンピーでダーティーと表現できるサウンドなんだ。このサウンドに関わっているアーティストは本当にたくさんいて、例えばZed Bias。彼は何回か日本に来た事もあると思うけど、当初からこのシーンに関わっているパイオニアの一人だ。Oris JはブレイクビーツのシーンからUKガラージにアプローチしている存在で、他にもレスター出身のDubchildといったアーティストが居たりする。いずれにしても、大勢のプロデューサー達がこのサウンドをプッシュしているよ。ちなみに僕も今Radio One Extraの番組でDJをしているんだけど、非公式ながらもこのシーンの代弁者として、色んな人が送ってくるトラックを片っ端からプレイする事が出来てラッキーだと感じているんだ。あと、Urban Soundは世界中に伝播していきやすい性質をもったサウンドだと言えるんじゃないかな。ちょうど、今日もJUNOという日本のアーティストとサウンドを制作してきたばかりだし、ニューヨークから来たアーティストたちと一緒にサウンドを制作する事もあるしね。だから、イギリスではまだまだ小さなシーンだけど、今後あちこちに広がっていくとのは間違いないと思うよ。

HRFQ :アーバン・サウンドは「とてもイギリス的である」とよく言われますが、インターナショナルなレベルにおいてはどのようにオーディエンスにアピールしていると思いますか?

J : アーバン・サウンドは基本的にはドラムンベース、UKガラージ、テクノ、ブレイクビーツが混ざり合って作られたサウンドだから、世界中の色んなタイプのオーディエンスにアピールする事が出来ると思うんだ。それに、人がある音楽を聞く時には、その中に自分の好きなサウンドを探しながら聞くものでしょ。だから、(色んなサウンドが混ざり合った)アーバン・サウンドは確かにイギリスの音楽ではあるけど、世界中を駆けめぐる音楽でもあると言えるんだ。

HRFQ :どの辺りのアーティストがこのシーンを正しい方向にプッシュしていると思いますか?

J : Dubchild、Landslide、Oris J、Zed Bias、Slaughter Mob。他にもたくさんの人がいるよ。一度僕のショウ(BBC Radio One Extra)をチェックして見るといいと思う。僕が担当している土曜日のショウでは、普段より多くの人が聞いている事もあって、4つ打ちものやボーカル・トラックなんかの幅広い選曲が要求されるところもあるんだけど、最終的にはいつも自分の得意フィールドに持ってこれるような構成にしているんだ。去年の夏に水曜日の担当から土曜日の担当に移されたんだけど、本当の所を言うと水曜日の方がスペシャリスト向きの番組が作れるし、自分の音楽的なポリシーを変える必要もないので好きだったんだよね。もちろん、土曜日の番組でもポリシーを変える必要はないんだけど、多少はスマートさを要求されるからね。

J Da Flex and Mr.Buzzard Interview

HRFQ : あなたが今あげられたアーティストは全員イギリスのアーティストですか?

J : 彼らは全員イギリス人だ。でも、何年か前のようにロンドン出身のアーティストだけじゃない。イギリスの色んな所からやって来た連中なんだ。彼らはいずれもイノベーターであり、お互いのサウンドをコピーしたりはしない。自分たちのオリジナルサウンドを常に作り続けている連中なんだ。

HRFQ : 音楽のセールスがどんどん落ち込んでいる中で、音楽そのものは若い人たちに大きな影響を持ち続けていると思いますか?

J : 相変らずキッズには影響を与えていると思うけど、昔ほどではないかもね。理由はよくわからないけど、たぶんインターネットなんかもその一部で、特にコマーシャルミュージックにとっては大きな影響を与えているんじゃないかな。でも、今でもたくさんのキッズたちがスタジオに入って自分自身の作品をプロデュースしているわけだから、音楽のシーン自体がキッズ達に与えている影響は少なからずあると思うよ。ただ、音楽のセールスだけは落ち込んでしまっているけどね。

HRFQ : お二人自身、若い人たちに影響を与える立場に居るわけですが、その事についてはどう思いますか?

Mr. Buzzard (以下 B) : 僕自身としてはその立場を結構エンジョイしているよ。でも、僕とJとの間には微妙な役割分担があって、彼がもっとブレイクビーツ・サイドに立っているのに対して、僕は最近ではちょっと停滞気味の従来のUKガラージの側に立っているんだ。僕の方は、海賊ラジオ放送でDJをしたり、Artful Dodgerのメンバーをやったり、自分の出来る限りの事をやっている感じかな。でも、前にも話したかもしれないけど、イギリスのクラブでは暴力事件などもたくさん起こったりしたこともあって、こういった出来事がシーンを直撃してしまったのは間違いないと思うんだ。まぁ、これはUKガラージのシーンにとってはある種のどん底を経験したという事でもあるだろうから、ここから状況は再び上向きになってくるとは思うんだけどね。

HRFQ : 今あなたたちがいるシーンから、どのようなポジティブな要素が生まれて来たと考えていますか?

B : 多くのプロデューサーが2Stepや4 to the floorといったサウンドを作り始めた事が一番かな。でも、たくさんのプロデューサー達がUK Garageのシーンから離れてしまい、そのうち何人かは舞い戻ってきたりはしたんだけど、最初の頃に比べると随分と少なくなってしまったような気はするね。みんなR&Bのシーンに移ったり、ハウスや他のジャンルに移ったりしてしまったよ。

J Da Flex and Mr.Buzzard Interview

J :彼らの殆どが他のシーンに行けばもっとお金が稼げると思って鞍替えしたみたいなんだけど、実際のところ全くお金になっていないのが現実なんだ。僕は昔レコード店で働いていたことがあって、なんとなくハウスとR&Bの売上がどれ位なのかは感覚的に知っているんだけど、最近持ち直してきているとは言っても、やっぱり昔の勢いに比べると全然ダメでしょ。特にR&Bのシーンでは、売れ筋はアメリカ産のものがどうしても中心になってしまっているしね。本来は自分の国のアーティストをもっとプロモートすべきだから、これはとても残念な事だと思うよ。もし、仮にフランスのとある町で定められているラジオに関する法律(フランス人のアーティストの曲をプログラムの60%上は放送しなければならない)と同じものがイギリスにもあったりすれば状況は良くなるんだろうけどね。まぁ、いずれにしても、UKのヒップホップシーンは若干持ち直しては来ているけど、まだまだ理想には程遠いって感じかな。

HRFQ : アメリカ産の音楽がそれほど人気があるのはどうしてだと思いますか?

B : それは何も今に始まった事ではなくて、僕らはずっとアメリカの音楽に影響を受けてきたって事さ。残念ながらさっきJの指摘した問題点に戻ってしまうんだけど、我々が自分自身の国のアーティストをしっかりサポート出来ていないって事なんだ。Soul 2 SoulやIncognitoの時代に戻れば、みんな彼らの音楽を十分サポート出来ていたとは思うけど、その後は続かなかったしね。いずれにしても、イギリスにおいては、自分たちの国のアーティストよりアメリカから来たアーティストをサポートする風潮が長い間続いていることは間違いないんだ。

J: 僕的には、イギリスのマーケットと言うものが、多少の事では満足しにくい性質をもっているからだと思っている。彼らはともすれば自己否定する傾向があって、自分たちの音楽を批判しながら平凡なアメリカのトラックに興奮する向きがあるんだ。確かに僕自身、ヒップホップを音楽的な背景として育ったし、最初はNWAなどの西海岸系、カリフォルニア系のラップを聴いていたよ。でも、London PosseやHijackといったUK産のサウンドを耳にした時にはすぐにそれらにハマッてしまったものだった。だって彼らはアメリカのアクセントでは無かったし、より母国に近いものを感じさせる存在だったからね。でも、正直な気持ちを言うと、今のシーンにおいてはアメリカのアーティストの方がイギリスのアーティストよりもうまくやっている所もあるから、こう言ったトレンドにあるのはある程度仕方の無い事なのかもしれない。イギリスとアメリカのトラックの違いは聴けば歴然としているわけだからね。だから、イギリスのプロデューサーやアーティストが次のレベルに到達できるまでは、彼らがアメリカのアーティストの後塵を拝しているという状況が続いていくと思うよ。

HRFQ : ポピュラー・ミュージックというのは、60年代のサイケ・ムーブメントや80年代後半のアシッド・ハウスのムーブメントがそうであったように、往々にしてそのときの社会的なフィーリングを反映するものですが、今日の音楽はそういった「現在イギリスで起きている事」を反映していると思いますか?

J : ストリートカルチャーは本当に大きな存在になっていて、いわゆるアーバンミュージックはかつて無いほどイギリスで人気を誇っていると思うんだ。5年前だったら、R&Bの曲が1位でラガが2位でヒップホップが3位、なんて言う状況は想像さえ出来なかったからね。でも、ここ数ヶ月間は実際にアメリカのアーバンミュージック系のアーティストが1-2-3に納まっているわけだし、如何にストリートカルチャーが大きくてアーバンがクールなものだと受け止められているかが判ると思う。それは単に彼らの作り出す音楽だけではなく洋服のセンスにも現れているし、R&Bのトラックは色んなコマーシャルで使われたりして、本当にあちこちで聞くことが出来る大きな存在になっているからね。

J Da Flex and Mr.Buzzard Interview

HRFQ : 普段どういったメッセージを音楽に込めたいと考えていますか?

B : 色んなバイオレンスがストリートやクラブで起こっている事を考えて、出来る限りポジティブな姿勢でいるように努めていて、自分のリリックの中では誰かの名誉を傷つけるようなメッセージをあまり強調しないようにしているんだ。基本的にはハッピーなホストでありたいと思っているし、ライムをする時はいつもその事を心がけるようにしているよ。例えば、誰かの誕生日をお祝いする為にクラブにやって来た人たちがいたとすれば、僕は全員に「Happy Birthday」を歌うように仕向けるんだ。例えそれがクラブの中だったとしても、自分の名前を呼ばれることは誰だって好きだからね。だから、つねにハッピーなホスト役に徹して、ジョークの一つや二つでもかますように心がけているんだ。あとDJをする時も、なるべく多くのボーカルものをプレイするようにしていて、重い感じのものはあまりプレイしないようにしているよ。

HRFQ : 暴力がクラブで増えてきているのは何故だと思いますか?

B : 本当のところはよく判らないんだ。キッズ達の毎日の暮らしぶりがそうさせているのかもしれないし、彼らにとってチャンスが余りに少ない今の状況がそうさせているのかもしれない。でも、僕としては、自分が彼らに対して持っている役割を果たす事にベストを尽くして、ポジティブでリアルな存在であり続けるように努力することしかないと考えているんだ。

HRFQ : 音楽シーンにおいての2003年のもっとも大きな成功はなんだったと思いますか?

J : Dizzy Rascalかな。彼はイギリス出身のアーティストで、「I Love You」というファーストシングルを皮切りに、UKヒップホップや「UK Grime」と呼ばれるシーンをスタートさせるきっかけを作った存在だ。彼はマーキュリー・ミュージック・アワードを獲得したし、他にもたくさんの賞を受けているよ。

HRFQ : 2004年のシーンはどのように変化していくと思いますか?

B : 基本的には楽観視しているね。UKガラージのシーンに関しては、間違いなく復活することになると思っている。メジャーなシーンからは離れて再びアンダーグラウンドのシーンに戻る事になるだろうけど、再び勢いを取り戻してくるのは間違いないし、僕もその一部として関わることになると思うよ。MJ Coleも相変らずビートを作り続けているし、Grant Nelsonたちもより多くの作品を作り始めている。イギリスのシーンは僕ら自身のものだし、僕たち自身がしっかり面倒をみて正しい方向に導いていかなければならないと思うんだ。過去に過ちを犯してしまったことは間違いないけど、そこから学んでいかないとダメだからね。Drum'n Bassのシーンにおいてもグループの再編が行われた事で、結束が以前よりも強くなって大きな愛情と連帯感が生まれつつあると聞くし、同じことをUK Garageのシーンで起こしたいと考えているんだ。

End of the interview

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