HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Funk D'Void


スコットランドのテクノ・シーンを代表するアーティスト Funk D’Void ことLars Sandbergが、約一年ぶりに来日を果たした。最近は 別プロジェクト Francois Dubois としてのプロデュース / DJ活動や、UKのテクノ・アーティストPhil Kieran とのコラボレーション・ワークなど、Funk D’Void 以外の部分でもますます精力的な活躍を続ける彼に、HigherFrequency がインタビューを実施。偶然にも先日当サイトがインタビューした Petter と共演したというボート・クルーズやプロジェクトについて、そして来年からスタートするという自身のファッション・ブランドについてユーモアたっぷりに語ってくれた。

> Interview by Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation & Introduction by Kei Tajima (HigherFrequency) _ Photos : Boogie Man Jeff (Official Site)

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Funk D’Void : 先週の土曜日ボート・パーティーでプレイしてね。酷いレイヴ・クルーズ…いや、プログ(プログレッシヴ・ハウス)・クルーズだったよ。そんなボートに2日間も閉じ込められたんだぜ!エストニアからストックホルムに行って、またエストニアに戻るクルーズだったんだけど、オレの出番は一番最後の方だったんだ。

Higher Frequency (HRFQ) : そういえば、Petter も以前そのクルーズの話をしていましたね。

Funk D’Void : 彼はライブをやってたみたいだね。夢の中で聴いてたよ。寝ようとする度に、あの “Some Polyphony” って曲が聞こえてきて、頭の中であの曲が何度もクルクル回ってたんだ。船の上で酷いプログに合わせて踊ってるどうしようもない状態の奴らを見るのは面白かったけどね。でも、オレの出番は朝の6時〜8時だったから、みんな酷い状態ですっかり寝ちまってたんだ。だからフロアで踊ってる人間なんて10人くらいしかいなかったよ。あのクルーズで一番良かった出来事は、たっぷり13時間寝たこと。楽しい旅ではあったけど、参加者も千人と少なかったんだ。当初は2千人を予定してたみたいだからね。

HRFQ : あなたは今日 Funkadelic(George Clinton のバンド) の Tシャツを着ていますが、あなたの名前 Funk D’Void は George Clinton に由来しているそうですね。ファンクとテクノとの間に共通点を感じられますか?

Funk D’Void : いいや、全く(笑)共通点なんてないと思うな。ファンキーな音楽って、オレにしてみればちょっとしたスウィングが感じられるものって意味でしかないんだ。テクノにはあまりそういった要素がないけど、それがどういうタイプのテクノかにもよるよね。一言でテクノと言ってもいろいろあるし。ハウスにはもっとファンキーな要素がある。ただその名前が好きで、バンドが好きってだけなんだ。それに音楽的に影響された要素の一つでもあるしね。オレの音は一般的にそんなにファンキーじゃないけど、そういう姿勢が好きだし、ファンキーなものが好きなのさ。

HRFQ : 最近では Funk D’void とFrancois Dubois としての活動のどちらに重点を置かれていますか?

Funk D’Void : オレは精神分裂病っぽいところがあってね。例えば Phil Kieran とやる音楽みたいに、ハードな音楽を作るのも好きなんだ。ただ、音楽的な意味では、今は Francois Dubois の方にちょっとだけ偏ってるかもしれないね。というのも、個人的に Funk D’Void の作品よりこっちを聴くことが多いんだ。 Funk D’Void の作品の中にもソウルフルな要素はあるけど、Francois Dubois の楽曲にはディープ・ハウスっぽいヴァイブが前面に出てる。最近はそういうの音の方が心地良いし、フレッシュなんだ。Funk D’Void としては今までに何年も曲を作って来たから、新しいプロジェクトを始めたかったし、プログレッシヴ・ハウスやディープ・テック・ハウスのファンで、今まで Funk D’Void を聴いたことがなかった新しい層の人々にアピールすることが出来るしね。

HRFQ : このような音楽性の変化は、グラスゴーからバルセロナに移住したことにも関係しているのでしょうか?

Funk D’Void : どうだろう。どちらかと言えば、バルセロナに来てしばらくは仕事が出来なかったからね。落ち着くのに6ヶ月以上かかったんだ。それに、住んでいる場所からインスピレーションを受けることはなくて、だいたい人や人との関係からインスピレーションを得ることが多いんだ。バルセロナは住みやすい場所ってだけかな。確かに、グラスゴーに住んでいた時の音は今より少しダークだったかもしれないけど、住む場所によって音が変わることはないと思う。ただ仕事をする量が変わるだけさ。 今は自分も35歳になっていろんなことに対する責任もあるから、以前よりたくさん仕事をしているんだろうけどね。人生についても25歳の時とは全く違う考え方をしてるんだ。音楽を作るのは仕事だけど、「畜生、仕事しなきゃ」って考えながらやってるわけじゃない。オレは曲を作ってるだけなんだ。曲を作る気分じゃない時は、洋服のデザインや Myspace を永遠とやってる(笑)そういった人生にとって大切なことをね。何かインスピレーションがあってスタジオに入れば、アイデアが一気にあふれ出てきて、楽曲が仕上がってしまうんだ。オレは朝9時から夕方5時まで決まってスタジオに入るようなプロデューサーじゃないからね。

HRFQ : スタジオは自宅にあるんですか?

Funk D’Void : とんでもない。子供が2人いるから家にスタジオはないよ。仕事が全く出来なくなっちゃうからね。だから家とは別にスタジオを持っていて、それをプペイン人のバンドと、Groove Armada の Andy Cato とシェアしてるんだ。スタジオのヴァイブもいい感じだよ。 Andy Cato とは Antidote というイベントを一緒にやっていく予定なんだ。このイベントは今度オープンするクラブの前身のようなものでね。一年後に Antidote というクラブをオープンする予定で、このイベントはみんなにその名前を覚えてもらうためにやるのさ。イベントは Moog Club っていう有名なテクノのクラブでやるんだ。.

HRFQ : そのAntidote は、ハウスのクラブになるんでしょうか?

Funk D’void : ハードな音楽以外なら何でも流れるようなクラブになると思うよ。ハード・テクノのクラブにはならないね。常に魂をこめて作られた音楽がかかっているようなクラブにしたいんだ。ディスコでも、ファンクでも、ジャズでもアフロでも、テック・ハウスでも、何でもね。でも、ハード・テクノだけはやらない。 ”Antidote” という名前を選んだのも、今のシーンにハード・テクノが溢れかえっているからなんだ。

HRFQ : 地元のDJを中心にブッキングする予定ですか?それとも海外の DJ を多く呼ぶんでしょうか?

Funk D’Void : 友達全員だね。地元かもしれないし、海外でもいい。友達の輪でやっていくつもりなんだ。飛行機代だけ払えば回してくれる DJ とかね。週7日オープンするつもりだからかなり多くの助けが必要になりそうだけど。

HRFQ : Phil Kieran とMinistry of Sound の CD をリリースされるという話を聞いたんですが…

Funk D’Void : そうだよ。2枚組みのCD なんだけど、3月にリリースされるんだ。そのあとツアーもするよ。

HRFQ : どんな感じの仕上がりになるんでしょうか?

Funk D’Void : それが分からないんだよね。まだ考え中なんだ。流行りを意識した感じの CD にはしたくないし、自分たちの好きなトラックだけを入れたい。ただ、2枚ともディープ・ハウス系のミックスになることはないだろうね。テック・ハウスっぽい感じになると思う。古い曲も入るかもしれないね。まだ分からないけど、ファンキーで風変わりで、一つのジャンルでは留まらない感じになると思うよ。ただ、クラブを意識したミックスになることは間違いないかな。 MOS にとっても新しい旅立ちになるだろうね。彼らはいままでこんなにアンダーグラウンドな作品を出したことがないだろうから。 Phil Kieran とリリースした ‘White Lice’ はかなり反響が良くて、いろんなジャンルから絶賛されたんだ。ある意味“親しみやすい”楽曲なんだよね。“ミニマル”って言葉は使いたくないんだけど、音楽的に“親しみやすく”て、ちょっとだけ万人受けする感じなんだ。

Funk D'Void

HRFQ : あなたのミックス CD? “iFunk” も今聴いてもまったく古い感じがしませんよね。それと同じような感じですか?

Funk D’Void : どうだろうな。君が ”iFunk” を気に入ってくれているようで嬉しいよ。というのも、あの作品は期待してたほど評判にならなかったんだ。でも、あのミックスにはすごい時間をかけたんだよ。Konrad Black のトラックもすごく今っぽいよね。今聴いても全然新しいよ。あの CD には、エモーショナルなテクノとファンキーなダンス・トラックが入ってる。今夜 Air でもそういう感じのセットをプレイしたいと思ってるんだ。いろんなジャンルを少しずつミックスして、常にちょっとしたユーモアも加えたい。だから Phil と作る楽曲も好きなんだ。面白いからね。作るのも楽しいし、聴くのも楽しい。そして曲に合わせて踊るのも楽しいんだ。

HRFQ : ご自身もよく踊られるんですか?

Funk D’Void : いいや(笑)。若い時は踊ってたけどね。グラスゴーから移って以来全くだよ。ダンス・フロアにいることも少ないんだ。なんだか気になってしまってね。背が高いから、フロアにいるとキリンみたいに首だけ飛び出しちゃってさ。「クソッ!手をどうすりゃいいんだ?こんなにダラダラ動かしてちゃマズいぞ…よし、じゃあポケットに入れよう。あ、でもどっちかの手でドリンクかタバコを持たないといけないな…」って考え出すわけ。もう最悪さ。だから DJ ブースの後ろにいる方がいいんだ。そもそも DJ にハマり始めたのも、ブースにいればフロアで踊らなくていいからかもしれないね。

HRFQ : ニュー・アルバムをリリースされる予定はありますか?

Funk D’Void : 今予定してるのは2枚…いや、3枚かな。まず Phil とのアルバム。さっきのミックス CD とは別に、シングルと新曲3〜4曲プラスしたものをリリースするんだ。Funk D’Void のアルバムも、まだ2曲しか出来てないけど作り始めたばかりだし、Francois Dubois のアルバムも来年にもリリースしたいと思ってる。だから3枚だね。働きすぎだよな。

HRFQ : 果たして自分がFunk D’Void として曲を作っているのか、それとも Francois Dubois として作っているのか迷う時はありませんか?

Funk D’Void : そうだね。例えば今度の Funk D’Void のシングルなんかは、すごく Francois Dubois っぽいんだ。でも、Soma が気に入って Funk D’Void としてリリースしたがったのさ。だからオレも混乱してるし、みんなも混乱してしまうと思う。あのトラックは Funk D’Void じゃなく、Francois Bubois って感じなんだよ。あ〜どうしたらいいんだろうね。Aqua Bassino に歌ってもらったヴォーカル・ハウス系のトラックなんだ。Myspace に載ってるからそこで聴けるけどね。Soma は相当オレの作品が欲しかったみたいなんだ…本当はあげたくなかったけど、要求されたから仕方なかったのさ。これから B面も作らなくちゃいけないんだ。

HRFQ : Funk D’Void としては、これからも Soma でリリースされていくつもりですか?

Funk D’Void : そうだね、契約しちゃったから(笑)”アルバム20枚”と自分の血で書かれた契約書にサインしたというわけさ。まぁ、どうだろうね。 Soma もいいレーベルだけど、ダンス・ミュージックは常に変化していかなきゃならないと思っていてね。これは、Francois Dubois の活動から感じたことなんだけど、スタイルを変えるたびに、自分の音楽に興味を持ってくれる人が増えるんだ。同じスタイルで、常に良い作品をリリースし続けているプロデューサーなんて多くいないだろ?常に進化し続けないと、途中で脱落してしまうのさ。

HRFQ : ご自分でレーベルを運営されていますか

Funk D’Void : いいや、レーベルなんて絶対にやりたくないね。以前一度トライしたことがあったんだけど、最悪だったよ。でも最近のデジタル・フォーマットなら、トラックとアートワークを作ってしまえばすぐに楽曲が売れるからね…やっぱり、デジタル・レーベルなら自分でやりたいかも。普通のレーベルより簡単だしね。よし、バイバイ Soma!彼らには HigherFrequency の責任ってことにしとくよ。

HRFQ : そうですね。もし腕のいいグラフィック・デザイナーがいればですが

Funk D’Void : 今度スタートする洋服ブランドでは、洋服と一緒にエクスクルーシヴ・トラックの2曲入ったミニ CD を付けて販売するんだよ。まず10パターンのデザインで2月に始めるんだけど、自分が考えだしたTシャツ用のスローガンをグラフィック・デザイナーに伝えて、バック・グラウンドのデザインも含めてスタイリッシュにまとめてもらうんだ。そして、オレは CD にする音楽を作るというわけ。それが D’Void Clothing Company さ。 今年の Sonar 用に ” Fuck Berlin- Barcelona Has A Beach” って書いてあるTシャツ を作ったんだけど、ものすごく評判が良くてね!Magda からも電話がかかってきて、そのTシャツのことを尋ねられたりしたんだ。作業的にはものすごくシンプルなことなんだけどね。

End of the interview


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